捻くれた少年としっかり者の少女   作:ローリング・ビートル

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  それでは今回もよろしくお願いします!


ほころび

「へえ、比企谷君って総武高校に通ってるの?」

「え、ええ…………」

「確か進学校よね。頭いいのね~」

「そうなんだ。どんな学校なの?」

「昔から学校行事が盛り上がるのでも有名だったわね。学生時代に友達と文化祭を観に行ったわ」

 高坂母娘の勢いに押されながら、たどたどしい会話を続ける。小町は時折口を挟むくらいで、あとはニヤニヤ見ているだけだ。お兄ちゃんを助けろよ。

「私、勉強苦手だからな~。比企谷君は学校ではどのくらい?」

「兄は国語だけなら学年3位なんですよ!」

「すごい!」

「数学は学年最下位ですけど」

 何でお前が説明してんだよ。しかも悪い方まで。いや、合ってんだけどさ。

「すごい!私と一緒だ!」

 数学最下位に高坂姉が共感してきた。あまり嬉しくない。

「穂乃果」

「あっ…………」

「お小遣い千円カット」

「そんなぁあーー!!」

 自ら墓穴を掘った高坂姉は頭を抱えていた喚いていた。ドンマイ。

「比企谷君からも何か言ってよ~!」

 高坂姉が俺の肩を揺する。ああ、さっきから感じる既視感めいたものの正体がわかった。こいつ由比ヶ浜に似てる。特にこの計算がなく、警戒もしない無邪気なスキンシップ。モテない男子をあっという間に死地へと送り込むから控えるように!

「あんまり騒ぐと1週間パン禁止にするわよ」

「やーめーてー!」

 頭を抱えたまま、畳の上をゴロゴロ転がる高坂。まあ、わからんでもない。俺もMAXコーヒー1週間禁止とか言われたら、学校を休む。

 小町が高坂姉を宥めていると、高坂母が傍にやってきた。

「比企谷君」

 耳元を大人の色気と吐息がくすぐる。高坂姉妹と同じ柑橘系の香りがした。

「うちの姉妹、どっちがタイプ?」

 唐突な質問に思いきり咽せる。お茶が気道に入りかけた。

「何の事ですか?」

「姉の方はズボラだけど優しいし、妹の方は小うるさいけどしっかり者よ」

「は、はあ…………」

 ちょっとしたイメージに繋がり、顔が熱くなるのを感じる。

「ふふっ。じゃあ、ゆっくりして行ってね」

 そう言うと、ぱたぱたとお店の方へと戻っていった。

「ふむ。こうなったら雪穂ちゃんだけじゃなく穂乃果さんもお義姉さん候補に…………さらに…………いや、さすがに人妻は…………」

 小町が一人でぶつぶつ呟いているが、内容は聞こえない。

「おはよ~…………ふわぁ~」

 引き戸をすーっと開け、眼鏡をかけた高坂が欠伸をしながら入ってきた。まだかなり寝ぼけ眼のようだ。

「あ、雪穂おそいよ!もう比企谷君達来てるのに!」

「仕方ないでしょ~。ここ最近毎晩読書してあまり寝てなかったんだから…………」

「おはよ~、雪穂ちゃん」

「おう…………」

「ど~も…………え?」

 小町を見て、次に俺と目が合うと、徐々に意識が覚醒していき、眼鏡の向こうの両眼がしっかりと俺を注視する。

「はっ!」

 ちなみに、今の高坂は足丸出しの短パンと、肩も露わなタンクトップだ。正直、目のやり場に困る。  

 高坂もそれに気づいたのか、顔が次第に真っ赤になっていく。

「わ、わ、し、失礼しました~!」

 ドタバタ走る高坂に、皆ポカンとして、開いたままの引き戸を眺めていた。  

 





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