捻くれた少年としっかり者の少女   作:ローリング・ビートル

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「…………」

 着替えた高坂はまだ少し顔を赤くしたまま俯いている。

「雪穂~。どうしちゃったの~?」

「大丈夫だって!お兄ちゃんもいきなり変な目で見たりしないから!ね、お兄ちゃん!」

「あ、ああ…………」

 別に見てない。

 タンクトップで強調された、同い年の小町より明らかに大きな胸とか、名前通りの色白な背中とか、同じくしろく、そして細長い足とか、短パンが強調した尻とか断じて見ていない。ハチマン、ウソ、ツカナイ。

「比企谷君」

「ゴミぃちゃん」

「お、俺は何も見てないろ!」

 噛んだ。

「…………」

 高坂は俺を数秒間、ジト目で見て、溜息を吐いた。怒られちゃうんだろうか。

「ま、まあ、私の不注意も原因ですし…………」

 どうやら許してもらえたようだ。

「あ!そういえば比企谷君、スカイツリー観に行ったんでしょ?」

 高坂姉が突然話に割り込んでくる。多分、話を逸らそうという気遣いだろうが、話題の振り方やら入るタイミングやらが滅茶苦茶すぎる。見ろよ。高坂からジロリと見られてるぞ?

「高かったでしょ!?」

「いや、当たり前だから」

「あの透明な床どうだった?大丈夫だった?」

「もし抜けてたらここにいないから」

「そういう事じゃなくて!」

「まあ、あれだ。たまには人を上から見下すのもいいもんだ」

「ダメだよ!そんなひどい事言っちゃ!」

「じゃあ、あれだ。たまには愚民から見上げられるのもいいもんだ」

「うんうん。いや、あまり変わってない!むしろひどくなってない!?」

 他にどう言えばいいのか。ふと隣を見ると、いつの間にか座っていた高坂がジト目で俺と高坂を見比べていた。

「ふぅ~ん。ずいぶん仲良くなったんだね」

「そうか?」

「そうかな?」

 首を傾げる。特に仲良くなるような事はしていない。

 会話が続いたのもただの偶然だ。今お茶を飲むタイミングが重なったのも。そんなものに深い意味はない。

「ふぅ~ん。ま、いいですけど」

 高坂はそっぽを向く。すると、小町がこちらを睨みつけて、アイコンタクトで何か話しかけるように指示を出してきた。

「あー、高坂。最近夜遅くまで読書してたのか?」

 先ほど高坂自身が口にしていた事を改めて確認する。

 俺ぐらいの会話スキルになると、年下女子との会話なぞバリエーションがほとんどない。…………よくよく考えたら、ぼっちなので、対人スキル自体あまりありませんでした。てへっ!

「あ、はい…………」

 何故か気まずそうに視線を逸らされる。…………何で?

 高坂がまた少し顔を赤くしたのは、きっと気のせいなんだろう。






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