捻くれた少年としっかり者の少女   作:ローリング・ビートル

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ロックンロール

 

 亜里沙も合流して、5人で移動する事になった。

 今日は6月の割には空は晴れ渡っていて、その分日差しが強く照りつけている。

 前を歩くお姉ちゃん、小町ちゃん、お兄さんを見ながら、天気の事を考えでいると、亜里沙が顔を寄せてきた。

「あのかっこいい人が雪穂の好きな人なの!?」

「はあ!?」

 小声で囁いてくる亜里沙に驚きで返す。

「な、何をいきなり…………」

「違うの?」

「違うよ!」

 まったく、お母さんといい、お姉ちゃんといい、亜里沙といい…………ん?

「今、亜里沙…………かっこいいって…………」

「うん!」

 ものすごく目をキラキラさせている。

 う~ん。そこそこ整っているけど、そんな絶賛するほどかなぁ。

「ちなみにどの辺りが?」

「目!!!」

「…………」

 嘘でしょ!?

 あのそこそこの顔で唯一残念な部分じゃん!

「鋭くてかっこいい~♪」

 亜里沙がまたぽ~っとしている。まあ、好き嫌いは人それぞれだ。

 当の本人はお姉ちゃんのパン論議を聞かされている。少しだるそうに頷き返していた。まったく私が色々聞かれて大変なのに。あ、ほら、お姉ちゃん。近すぎ。誤解されちゃうよ?

 考えている内にファミレスに到着した。

 

 大きめのテーブルに案内されて、適当に座る。

 俺と高坂が並んで座り、残り3人が向かいに座った。

「あの!」

 天使…………じゃなくて絢瀬が身を乗り出して聞いてくる。

「比企谷さん!彼女いますか!?」

「…………は?」

「比企谷さんモテそうだから…………」

 マジか。そんな事を言う人間がいるとは…………。いや、本当に戸塚と同じ天使なのかもしれん。

「い、い、いや、いた事がない」

 なるたけ平静を装い、独り身を高らかに宣言する。いや、平塚静を装い独身を高らかに宣言する。効果は抜群だろう。

「お兄ちゃん、テンパりすぎ」

「亜里沙もいきなりそんな事聞いちゃ失礼でしょ?」

「あはは、比企谷君モテないんだね~」

 三者三様のリアクションを示される。てか、高坂姉の遠慮のなさ。まんま由比ヶ浜じゃねーか。

「ほっとけ。俺は気ままな独り身を楽しんでんだよ」

「てゆーか、お姉ちゃんも彼氏いた事ないじゃん」

「うっ…………わ、私は女子高だもん!そ、それに雪穂もじゃん!」

「わ、わ、私はまだ興味ないし!」

「あれ?この前…………」

「知らない知らない!」

「あ、そうだ!」

 絢瀬が手をポンと叩く。戸塚と並べてみたい。

「比企谷さん。この中で誰が1番タイプですか?」

 天使が小悪魔に変わりました。

 とはいえ、このメンバーなら即答できる。

「小町」

『…………』

 本日2度目の気まずい沈黙が訪れた。 






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