捻くれた少年としっかり者の少女   作:ローリング・ビートル

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エソラ

「すごいね!二人共上手!」

 完成したオムライスを見て、亜里沙がぱあっと子供のような笑顔になる。ここまで喜ばれると、2割程度しか貢献していない俺としては心苦しい。……うわあ、青い目がキラキラしてる。この子、俺の事好きなのかしら?

「……冷める前に食べましょうか」

 雪穂が冷めた視線でこちらを見ながら言ってくる。さり気なく足を踏まれているのですが、これはわざとなんですかね。

「どうかしましたか?」

「い、いや、何でも」

 まあ、気のせいだよな。痛いけど。

 

「片付けは私がやりますから二人は休んでてね!」

 こちらが返事をするより早く、亜里沙は洗い物を始めた。

「な、何とか切り抜けたな」

「ええ、切り抜けました」

「……ごちそうさん」

「八幡さんも一緒に作ってくれたじゃないですか」

「いや、野菜の皮剥いたりとかしかしてないから……」

「いえいえ、それだけで十分ですよ。その辺に寝転がって『雪穂~、ご飯まだ~?』なんていう姉よりずっとマシです」

「そ、そうか。何か大変そうだな」

「そうですよ!おまけに食後なんて『雪穂~、お茶~』なんて言ってくるんですから」

「……簡単に想像できたんだが」

 今度からさり気なく小町の手伝いをするよう、心がけよう。

 

 その後は小町も交え、ゲームをしていたら、あっという間に時間が過ぎ、二人の帰る時間になった。

 小町に連れられ、俺も駅まで見送る事になった。

「今日は楽しかったです!ありがとうございます!」

「またこっちにも来てくださいね。それと、またカマクラちゃんを触らせてください」

「うん、またね~!……あと不束な兄ですがよろしく」

「じゃ、気をつけてな」

 珍しく休日に自宅で誰かと過ごしたせいか、この別れの時間も少し寂しい気分になる。こんな事はちっとも自分らしくないと知りながらも。

「あ、そういえば……」

 雪穂が何かを思い出したように呟いた。

「私達……宿題してない」

『…………』

 

 その晩、雪穂から電話があった。

「あ、あの、こんばんは!」

「お、おう、ど、どうした……」

「いえ、その……今日のお礼と言いますか……」

「そうか……いや、むしろこっちが言わなきゃいけない気がするんだが……」

「いえいえ、カマクラちゃんに触れただけで幸せなので」

「そっか……あいつも普段、あれぐらい愛想がいいと可愛げがあるんだからな」

「ふふっ。猫ってそこが可愛いんじゃないですか?」

「まあ、そうかもな」

「八幡さんもそういう所ありますよね」

「……どうだろうか」

「図星ですか?」

「そういや宿題やるの忘れてた」

「ふふっ。わかりました。それじゃあ、今日はありがとうございました」

「……こちらこそ」

 

 今日は夢で逢えるのだろうか。




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