捻くれた少年としっかり者の少女   作:ローリング・ビートル

31 / 38

 感想・評価・お気に入り登録・誤字脱字報告ありがとうございます!

 それでは今回もよろしくお願いします。


エソラ ♯2

 

 ふわふわした感覚……。

 どうやら俺はまた夢の中にいるようだ。

 目の前には当たり前のように雪穂がいて、こっちを向いて微笑んでいる。

『八幡さん……』

『……どした?』

『また……逢えましたね』

『そう、だな』

 戸惑いながら頷くと、雪穂は頬を膨らませた。

『……あまり嬉しそうじゃない』

『いや、そんな事はない』

『じゃあ…………て』

『?』

『な、何でもありません!』

 やがて、ゆっくりと夢から覚めていった。

 

「七夕祭り?」

「うん!」

 亜里沙が笑顔で頷く。まだ日本に来て、それほど時間が経っていないからか、祭りという言葉にやたらと反応する可愛い親友だ。クラスの男子達も、チラチラと見ている。

「今度の土曜日だって!八幡さんと小町ちゃんも誘って、花火見ようよ!」

 周りからガタガタっと椅子が鳴った。その様子に他の女子がしらーっとした目を向けている。

 もちろん、亜里沙はそんな事には気づいていない。

「雪穂、どうかした?」

「いや、何でも……うーん、八幡さん達かあ。でもわざわざ来てもらうのも悪い気がするし、帰りが……」

「じゃあ、小町ちゃんが家に泊まって、八幡さんが雪穂の家に泊まるのは?」

「はえ!?な、何言ってんの!?」

「ほら、うちはお姉ちゃんいるし」

「うちもいるよ!!」

 グータラで色気など欠片もないけど!今朝も寝坊するし!

「雪穂の部屋とかダメかなあ?」

「ダメに決まってるよ!」

 一瞬だけ想像してしまった。あわわ、べ、べ、別に意識してるとかそんなんじゃないんだからね!

「顔赤いよ?」

「亜里沙のせいでしょ!」

「ふふっ、ごめんね?二人、仲良いから♪」

「それに……亜里沙はいいの?」

「何が?」

「い、いや、何でも……」

 本当にこの子は何を考えているのか、わからなくなる時がある。でも、そこが小悪魔的で可愛らしいのかも……。

 でも、七夕祭りかあ……。

 

「…………じゃあ小町。気をつけろよ」

「お兄ちゃん。ゴミいちゃんを発揮してないでいくよ」

 小町に叩き起こされ、何事かと思えば、秋葉原の七夕祭りに行くとの事らしい。

 そして、到着してみればこの盛大な賑わい。行き交う雑多な人の群れ。色とりどりのコスプレ。最後だけイベントの趣旨にあっていない気がするが、そこはご愛嬌なのだろう。

「あ、二人共こっちこっち!」

 声のした方を向くと、亜里沙がこちらを見て、ぴょんぴょん跳ねながら手を振っている。隣には雪穂がいて、控え目に手を振っていた。

 まあ、ここまで来て何もせずに帰ったら、交通費がもったいない。

 俺は既に談笑を始めている3人の元へ駆け寄った。





 読んでくれた方々、ありがとうございます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。