「へえ、林間合宿ですか~」
「ああ」
八幡さんに電話したら、今は林間合宿で宿泊施設にいるようだ。もちろんって言ったら失礼だけど、本人は嫌がってるらしい。
でも、林間合宿かあ……なんか夏らしくていいなぁ。八幡さんも楽しんでくれればいいけど。
「八幡さん」
「どした?」
「楽しんできてきださいね」
「……ああ、空いた時間にゲームぐらいできるだろうから、大丈夫だ」
「い、いや、そういう意味じゃなくて……まあ、そっちの方が八幡さんらしいですけど……」
「まあ、あれだ……何とか切り抜けるわ」
「ただの林間合宿でなんかハードル高くないですか!?」
「ハードル高いから、くぐり抜ける方向で行くんだよ。じゃ、そろそろ戻るわ」
「あっ、はい。頑張ってください」
通話を終え、ふと窓の外に目をやると、突き抜けるような青い空だった。
いつか機会があれば、四人で山に行くのもいいかもしれない。八幡さんは嫌がるだろうけど。
……手作りのお弁当とか、喜んでくれるかなぁ?……いや、いきなり、何考えてるのよ私は。まだそんな上手くもないのに。
……また明日、電話してみよっかな。
*******
「あっ、お兄ちゃん。誰と電話してたの?」
「……ああ、雪穂からだった」
「お兄ちゃん……」
何故か小町が目元を拭っている。ちなみに一滴も涙は流れていない。
「お兄ちゃんが当たり前のように女の子と連絡を取るなんて……小町は嬉しいよ……うっ、うっ……」
「わけわかんねえ事言ってないで、さっさと戻るぞ。確か夕飯はカレーだっけ?」
「そだよ。自分達で作らなきゃだけど。てかまだ早いよ。他にやることいっぱいあるでしょ?」
「へいへい」
ジリジリと肌を焼く暑さに顔をしかめながら、俺は手伝いに戻った。
ふと見上げた空には、雲一つなかった。
*******
翌日、私は亜里沙と一緒に夏休みの宿題を終わらせていた。
そして、その休憩中に八幡さんと小町ちゃんの話をしたら、亜里沙はものすごく食いついてきた。
「へえ~、八幡さんと小町ちゃん旅行中なんだ~」
「旅行じゃないよ。小学生の林間合宿にボランティアとして参加してるんだって」
林間合宿という言葉に、亜里沙は首を傾げる。
「リンカン、ガッシュク……って、何をするの?」
「どこも同じ事やってるかはわからないけど、自分達で晩御飯作ったり、キャンプファイアーしたり、水遊びしたり……まあ自然と触れ合うのが目的かな」
「ハラショー……雪穂、私もリンカンガッシュク行きたいよ!」
「いや、普通にキャンプでいいんじゃないかな……道具何も持ってないから、すぐには無理だけど」
「そっかぁ……あっ、じゃあ明後日二人で八幡さんと小町ちゃんを迎えに行こうよ!」
「えっ?迎えにって、あの二人千葉なんだけど……」
「ほら、この前は二人がこっちに来たでしょ?次は私達が行かなきゃ!」
「はあ……」
「雪穂だって、本当は会いたいくせに~」
亜里沙の言葉に、この前の事を思い出し、顔が熱くなるのを感じた。
まだ、左手にはあの日の感触が残っていて、それは不思議と胸を締めつけた。
そのことを知られたくなくて、私は亜里沙を怒る。
「い、いきなり何言い出すのよ!?」
「顔赤いよ?」
「ああもう、ほら、早く宿題終わらせるよ!」
慌てて両頬を抑えた私は亜里沙を急かして、夏休みの宿題の続きに取りかかった。
「そして、雪穂は八幡さんと会える日を心待ちにするのであった」
「もう、亜里沙!」