捻くれた少年としっかり者の少女   作:ローリング・ビートル

34 / 38
エソラ #5

「へえ、林間合宿ですか~」

「ああ」

 

 八幡さんに電話したら、今は林間合宿で宿泊施設にいるようだ。もちろんって言ったら失礼だけど、本人は嫌がってるらしい。

 でも、林間合宿かあ……なんか夏らしくていいなぁ。八幡さんも楽しんでくれればいいけど。

 

「八幡さん」

「どした?」

「楽しんできてきださいね」

「……ああ、空いた時間にゲームぐらいできるだろうから、大丈夫だ」

「い、いや、そういう意味じゃなくて……まあ、そっちの方が八幡さんらしいですけど……」

「まあ、あれだ……何とか切り抜けるわ」

「ただの林間合宿でなんかハードル高くないですか!?」

「ハードル高いから、くぐり抜ける方向で行くんだよ。じゃ、そろそろ戻るわ」

「あっ、はい。頑張ってください」

 

 通話を終え、ふと窓の外に目をやると、突き抜けるような青い空だった。

 いつか機会があれば、四人で山に行くのもいいかもしれない。八幡さんは嫌がるだろうけど。

 ……手作りのお弁当とか、喜んでくれるかなぁ?……いや、いきなり、何考えてるのよ私は。まだそんな上手くもないのに。

 ……また明日、電話してみよっかな。

 

 *******

 

「あっ、お兄ちゃん。誰と電話してたの?」

「……ああ、雪穂からだった」

「お兄ちゃん……」

 

 何故か小町が目元を拭っている。ちなみに一滴も涙は流れていない。

 

「お兄ちゃんが当たり前のように女の子と連絡を取るなんて……小町は嬉しいよ……うっ、うっ……」

「わけわかんねえ事言ってないで、さっさと戻るぞ。確か夕飯はカレーだっけ?」

「そだよ。自分達で作らなきゃだけど。てかまだ早いよ。他にやることいっぱいあるでしょ?」

「へいへい」

 

 ジリジリと肌を焼く暑さに顔をしかめながら、俺は手伝いに戻った。

 ふと見上げた空には、雲一つなかった。

 

 *******

 

 翌日、私は亜里沙と一緒に夏休みの宿題を終わらせていた。

 そして、その休憩中に八幡さんと小町ちゃんの話をしたら、亜里沙はものすごく食いついてきた。

 

「へえ~、八幡さんと小町ちゃん旅行中なんだ~」

「旅行じゃないよ。小学生の林間合宿にボランティアとして参加してるんだって」

 

 林間合宿という言葉に、亜里沙は首を傾げる。

 

「リンカン、ガッシュク……って、何をするの?」

「どこも同じ事やってるかはわからないけど、自分達で晩御飯作ったり、キャンプファイアーしたり、水遊びしたり……まあ自然と触れ合うのが目的かな」

「ハラショー……雪穂、私もリンカンガッシュク行きたいよ!」

「いや、普通にキャンプでいいんじゃないかな……道具何も持ってないから、すぐには無理だけど」

「そっかぁ……あっ、じゃあ明後日二人で八幡さんと小町ちゃんを迎えに行こうよ!」

「えっ?迎えにって、あの二人千葉なんだけど……」

「ほら、この前は二人がこっちに来たでしょ?次は私達が行かなきゃ!」

「はあ……」

「雪穂だって、本当は会いたいくせに~」

 

 亜里沙の言葉に、この前の事を思い出し、顔が熱くなるのを感じた。

 まだ、左手にはあの日の感触が残っていて、それは不思議と胸を締めつけた。

 そのことを知られたくなくて、私は亜里沙を怒る。

 

「い、いきなり何言い出すのよ!?」

「顔赤いよ?」

「ああもう、ほら、早く宿題終わらせるよ!」

 

 慌てて両頬を抑えた私は亜里沙を急かして、夏休みの宿題の続きに取りかかった。

 

「そして、雪穂は八幡さんと会える日を心待ちにするのであった」

「もう、亜里沙!」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。