気がつけば、家に帰ってからそこそこ時間が経っていた。
さすがにそろそろ出たほうがいいだろう。
「じゃあ、もう行くか」
「そうですね。あ、その前にカマクラちゃん撫でていいですか?」
「……好きなだけどうぞ」
それを聞いた雪穂は嬉しそうにカマクラに近づいていき、よしよしと優しく頭と背中を撫でた。
おい、カマクラ。なんか俺の時より気持ち良さそうにしてないか?気のせいですかね……。
*******
雪穂と千葉に向かう道中、夏休みの課題やら、二学期のイベントやらについて話していると、割とはやく到着した気がした。
そして、すぐに二人の姿を見つけることができた。
「八幡さん、もう疲れはとれたんですか?」
「むむぅ、これはもしや……いや、なんもなかったっぽい」
「いや、あんま遅くなると、2人の帰りが遅くなるからな」
「お兄ちゃん、何言ってんの?今日二人ともウチに泊まるんだよ」
「……え?マジで?」
「マジだよ。てか、帰りの車の中で言ったじゃん」
「…………」
疲れてぼーっとしてたからか、どうやら聞き逃していたようだ。そういや、今さらながら雪穂達が持っていた鞄は、割と大きかった気がする。
「すいません、昨日いきなり決まっちゃって」
「いや、別に謝るようなことじゃない。まあ、せっかくの夏休みだし……いいんじゃねえの?」
「そういえば、あと少しで夏休みも終わりなんですよねぇ」
「どした?急にしみじみと……」
「あと1ヶ月欲しいなぁ、なんて」
「お前もそういうこと考えるんだな」
「考えますよー。ほら、うちはお姉ちゃんがあんな感じだから、私がやたら真面目に見えるだけというか……」
「なるほど……ちなみに俺はあと2ヶ月欲しい」
「ああ……予想的中しちゃいました」
「……マジか」
「マジです。当たったから、アイスとか貰えたりするんですかね」
「いつからそんなルールが……まあ、幸い合宿で金使うこともなかったから、そのぐらいなら構わん」
「やった!じゃあ、私はお礼に今度ほむまん持ってきます」
「そりゃどうも」
「そ、それか……この前亜里沙達とプールに行ったんですけど、その時の写真を見せても……いいですよ?……なんちゃって」
「…………は?」
今、なんかすごいこと言わなかった、この子?
当の本人は、あからさまにそっぽを向いているが……ていうか、耳まで赤いし。
すると、いつの間にか結構先を歩いていた2人が、こちらを振り返り、声をかけてきた。
「もしもーし、お二人さーん!」
「置いていっちゃうよ~!」
二人からの呼びかけに、俺と雪穂はようやく足を動かすが、しばらく彼女はこちらを見なかった。
*******
ああ、もう!私ったらいきなり何言い出してんの!?馬鹿じゃないの!?これじゃあ、見せたがりの変な人みたいじゃん!
とはいえ、出した言葉はもう飲み込めない……うぅ、変な子だと思われてなければいいけど。この後お泊まりもあるわけだし…………ん?
そこで1つの事実に気づく。
私ほどじゃないけれど、八幡さんも頬を赤くしていた。
そして、そのことに何故かほっとしている自分がいた。
「八幡さん、顔赤いですよ?」
「……そりゃ、お互い様だろ」