捻くれた少年としっかり者の少女   作:ローリング・ビートル

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終末のコンフィデンスソング

「ねえ、雪穂の好きな人ってどんな人?」

「はあ!?」

 帰り道、夕陽をぼんやり眺めながら歩いていると、亜里沙が訳の分からない質問をしてきた。

「どこ情報なの?それ」

「だって雪穂が私に聞いてきたから、もしかしたら自分が好きな人がいるんじゃないかと思って」

「ないないないない!絶対にない!」

「…………怪しい」

「怪しくない」

 あの人…………比企谷八幡さんの事は別に嫌いではない。休日に妹を連れて歩く家族想いなところは好ましい。ただ男性としては、と聞かれると…………もう少しシャキッとした人の方が…………。猫背だからかな。とりあえず、姉も親友もふわっとしてるから、せめて恋人くらいは…………。

「ふぅ~ん。じゃ、そういう事にしてあげる♪」

「何か引っかかる言い方…………」

 その日の夜。眠りについた私は、また似たような夢を見た。

 

『あの…………八幡さんの好きな女の子のタイプは?』

『…………養ってくれる人』

 俺の言葉に雪穂が頬を膨らます。

『またそんな事言う…………』

『穂むらの試食係なら喜んで就職する』

『はぁ~、どうしてこんな人…………になっちゃったんだろ…………』

『?』

『何でもないです』

 

「…………」

 またか…………。

 何だよ。欲求不満なのかよ。

 まあ、これは高坂に対する恋愛感情とは違う。ただの偶然。偶然も運命も宿命も俺は信じない。

 ただ欲求不満でこの夢は色々やばい気がする。いや、ここは何か別の事を思い浮かべよう。戸塚戸塚戸塚戸塚戸塚…………。

「何やってんの…………朝っぱらから…………」

「別に。いつも通りだよ」

「それがいつも通りなら早く病院行った方がいいよ、ゴミぃちゃん」

「それよか、どうしたんだ?ノックもせずに」

 軽く嗜めるように言った。

「いや、何か寝言がうるさいな~、と思ってドアの前まで行ったら、今度は戸塚先輩の名前を呼びまくるから、怖くなって…………」

「俺、どんな寝言を?」

「そこまでは聞いてないけど…………」

「そっか」

 むくりと起き上がる。本格的な夏はまだ先だと言うのに、じっとりと汗ばんでいる。

「でも、小町は嬉しいよ!」

「何がだよ…………」

「最近、お兄ちゃんの周りに女の子の影が多くなって!」

「気のせいだろ」

「そんな事ないよ!雪穂ちゃん、結衣さん、雪乃さん、沙希さん、平塚先生…………」

「おい、待て。色々おかしいのがいる」

 そんな事になる前に、お願いだから誰かもらってあげて!!

「それに高坂はもう会うかもわからんだろ」

「ふっふっふっ」

 何故か小町は不敵に笑う。

「実は穂むらのお菓子をお母さんが気に入っちゃって、取引先に上げたいから、買ってきてってさ」

「そうか、行ってこい」

「お兄ちゃんも行くんだよ。小町一人じゃ心配でしょ?」

 まあ、確かに小町を一人で行かせる選択肢など存在しない。

「…………いつだよ」

「今週の土曜日」

「…………はあ、わかったよ」

 どうやら土曜日は買い物。日曜日は小町の受験勉強に付き合わされそうだ。




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