最初に謝罪します。すみません。
様々な諸般の事情により、ヒロインを変更する事にしました。その最たる理由は作者の知り合いにオリ×箒で書いてる人がいたから……すまない。期待してくれてた人、本当にすまない。でも、それを見た後だと話がかぶりそうなので、楯無に変更しました。
それに伴い、プロローグも少し変更。本当にすみません。
『一緒に遊んでくれてありがとう。楽しかったよ』
『ううん、私も楽しかったから。また遊ぼうね』
『……ごめん。僕のお家はここじゃないから。明日には帰らなくちゃいけないんだ』
『そう……なんだ』
『でも、また来るから。その時は一緒に遊ぼうね」
『うん……でも、私も次会えるかわからないかも』
『どうして?』
『お家を継ぐ?ためのお稽古をしなくちゃいけないの。いっぱいお勉強しないといけないし、強くならないといけないの。私が一番お姉ちゃんだから。大きくなったらお家を私が守るんだ』
『ーーじゃあ、僕も守るよ。ーーちゃんと一緒に』
『え?無理だよ、それって、私のお婿さんになるって事だよ?それにお父さんは『強い男』じゃないと駄目だって』
『わかった。じゃあ『強い男』になる。それにーーちゃんのお婿さんにも。ーーちゃんの事、僕好きだもん』
『っ…………ほ、ホントに?』
『うん!だから、これあげる。僕からのプレゼント』
『わぁ……綺麗……』
『次いつ会えるかわからないけど、絶対にーーちゃんに会いに来るから』
『ーー』
『え?』
『私の本当の名前。お父さんはお家の人以外教えちゃ駄目だって言ってたけど、お婿さんになるって事は家族になるって事だもん。だから、私の本当の名前、ケイくんだけに教えるね。それと……はい』
『おお!かっこいい!これくれるの!?』
『うん。ケイくんもプレゼントくれたから、お返し』
『ありがとう!大切にするよ!』
『うん。そしたら、きっと私達また会えるから。その時はーー』
「……あの夢か。久しぶりだな」
ベッドから身体を起こして、ガシガシと頭をかく。
いつもなら目覚まし時計のけたたましいアラーム音に叩き起こされるものの、一ヶ月ぶりに見る不思議な夢でその能力を発揮する前に目を覚ました。
三年前ぐらいから見るようになったあの夢。
何処の誰かはわからないし、割と結構な頻度で遠出していたために、いつ会ったのかもわからないが、まだ自分がかなり幼かったのはわかる。初めはロクに内容も覚えていなかったのに、今となっては一言一句まで思い出せてしまう。
ただ、会話の内容は覚えていても、場所も、時間も、そして相手の顔や名前も。重要なことは何ひとつ覚えちゃいない。まぁ、幼い日の懐かしい出来事。相手様だって覚えていないだろうし、それをアテにされたって、寧ろ困るというものだ。というか、どこの馬の骨とも知れないやつを婿には選びたくないだろうし。
「……だってのに、律儀に自分磨きしてる俺は真性の馬鹿なんだろうな」
机の上に積んである参考書の類を見て、軽く自己嫌悪に陥る。
勉強もさることながら、わざわざジムに通っての筋トレもしている。おかげで部活もやってないのに、ムキムキになってしまった。
男としては、全然問題ないんだが、その動機がなんとも言えない。
そんな事をしても、その夢の主に会えるわけじゃない。会えるはずがない。
でも、何故だかその約束を守らなければいけないような気がするのだ。
第六感とでも言うのだろうか、兎にも角にも、俺は律儀に『強い男』とやらになるために日々切磋琢磨していた。『強い男』の判定基準がわからないのだが、少なくとも弱くはない自信はある。
……しかし。
「これは必要ないかもしれないな」
俺が手に取ったのは、ISに関する参考書。興味本位で、昨年まで従姉妹が使っていたものを俺が譲り受けている。
内容は研究者を目指す者というよりは、操縦者を目指す者向けだ。何せ、これはIS操縦者育成機関。IS学園で利用されるモノであり、それも操縦者向けの本なのだから。
それは単に従姉妹がIS操縦者を目指していたからに他ならないわけだが、そもIS操縦者になれる人間というのは企業の人を含めても、ほんの一握りしかいない。そも入学の時点で圧倒的倍率を勝ち抜いたエリートでも、卒業後の進路でIS関係の仕事につけるかどうかは努力次第なのだ。IS学園に行っても、一般就職はザラにいるそうだ。
もっとも、一般就職でもIS学園に入った時点でエリートもエリートなので、就職先もそれはもちろん大企業。そういう意味では、あの学園に行った時点で将来は約束されていると言える。
なので、将来の事を考えると、もうIS学園に入ったら勝ちになるわけで、目指すしかない……と言いたいところではあるものの、男である俺には全く関係のない話である。
ISーー通称インフィニット・ストラトスは宇宙開発を目的としたパワードスーツで、紆余曲折を経て、今は競技用に落ち着いている。
何故宇宙開発を目的としたそれが、競技用に落ち着いた理由は諸説あるが、その中でも最も理由として挙げられるのがーー。
『ISは女性にしか動かせない』。
というものだった。
それは言葉通りの意味で、ISは男には動かせない。というのが世界の共通認識だ。故に男のパイロットは存在せず、全世界に存在するISの国家代表と呼ばれる存在は軒並み女で、企業の人間も女だ。
研究者に関しては男でもなれる。
しかしながら、ISは女しか動かせないという確固たる事実の元、現代社会は一世代前の男尊女卑を彷彿とさせるほどの女尊男卑社会となってしまっている。男がそんな中に入ろうものなら、苛め抜かれること間違いなし。最近では、特に酷さを増していて、痴漢冤罪は年々増加の一途をたどっている。
こんな酷い世界があっていいものか、と言いたいところだが、そればかりはもう気をつけるしかない。ISを上回るものは今後生まれることはないのではないかとさえも言われているのだから。
そんな事もあって、何の気なしに読んでみたこの参考書も、今後の俺には全く培われない。豆知識レベルの価値しかない。
……まぁ、パワードスーツなんてそんな近未来の物には男として当然憧れはあったわけで、うっかり何度も読み直しては『なんで男は乗れねえのかな』って絶望もしてたりする。
………そういえば『男は乗れない』じゃなくて、『ほぼ乗れない』に変わったんだっけか。
床に投げ捨てていたリモコンを拾い上げ、テレビを点ける。
朝起きたらニュース番組を観るのが習慣付いているが、ここ最近は大体同じ話題で持ちきりだ。
『世界初!男性IS操縦者現る!』。
これである。
なんでも、世界で初めて男性IS操縦者が発見されたそうだ。
名前は織斑一夏。世界最強の名を冠するブリュンヒルデこと織斑千冬と同じ姓なので、関係者かもしれないが、そんな事よりも世界で初めてISを動かせる男が現れたのは誰もが今世紀最大の驚きを見せたに違いないニュースだった。
ISが現れてから十年。
当時、世界中にいる十六歳以上の男が簡易適性検査なるものを受けたが、全員D。つまり不適合という結果に終わった。
女しか動かせないといっても、女でさえも動かせない者がいる。それなのに、十年経った今、ISを動かせる男が現れたのは世界中の女性、より厳密に言えば表には出さなくても女尊男卑を推進している女性には寝耳に水だっただろう。
三日あれば男と女の戦争は終わるとさえも言われていた時代に、変革が訪れようとしているわけだから。
とはいえ、その織斑一夏が現れてから適性検査が十年越しに再度実施されてはいるが、他に適性を持った男は現れない。
都心部から始まっているので、そろそろ田舎の方にいる人間ーー俺たちみたいな奴らにも回ってくる。
お蔭で友達周りは大盛り上がりだ。何せ、適性を持っていれば、女の園。IS学園に入学できる……というか、させられるからだ。昨今、男子校と女子校で分けられた学校が多い中、異性との出会いに飢えている男としては、夢みたいな話だ。かくいう俺は、女尊男卑に染まりつつある女子と同じ学校で楽しく生活なんて送れないと思い、自ら進んで男子校に入ったので、思うところはなかったが、期待していないわけじゃないが、まさか入学した翌日にしなきゃいけないなんてな。市役所に行って手続きを済ませてから、なんて面倒なものじゃないからまだいいけど。
「……っと、いけね。早く準備しないと」
どうにも、あの夢を見た日はぼうっとする時間が多くて困りものだ。
高校の制服に手を通し、鞄を引っ掴む。朝飯は食べてないけど、そんな時間はない。
自分の部屋の扉に手をかけて……忘れ物に気づいた。
「……本当。律儀なもんだな、俺」
ケースの中に入っていたリングの通ったネックレスを取り出してつけると、俺は急ぎ足で学校に向かった。
ーー結果、こうなった。
『速報!二人目の男性IS適合者現る!』
テレビの報道が、少しだけ違うものに塗り替えられた。
内容はさして変わらない。単に男がまたISを動かしただけの話。名前を
そう。世間的にも奇跡と称されていた事態が、また起きてしまったわけだ。
いやはや、今世紀最大と言ったが、それを軽く上回った。流れるような作業で皆が適性検査を受けてはDの文字がコピペのように出される中、俺の時に出たのがB。担当教員が目をむき、すぐに政府に連絡して、俺は実家から、政府の用意したホテルに連れてこられた。超お高いホテルです。多分、平民の俺みたいなのは超出世しないとまず使わないようなところです。
とはいえ、する事はなーんにもない。テレビも同じようなのしかしてないし、それは俺のせいなんだけど、私物は何もない。
いや……一応あるか。これが。
ネックレスを外して、それを眺める。
取り上げられなくてよかった。携帯はもしもの為にと取り上げられたが、アクセサリーの類は元々パンピーで何の細工もされてないだろうと、取り上げられはしなかった。
とはいっても、取り上げられなかったのはこれぐらいなので、これじゃあ待遇が良いだけで囚人と大差ないような気がする。明日には家に帰れると言ってはくれたが、それまで半日以上ある。せめて娯楽品があれば話が変わるんだけどな。
「……ひょっとしたら、こいつをくれた相手が見つかるかも……なんてな」
自分で言ってみて、随分アホな事を言ってると思う。
確かにIS学園は世界中の人間が集まるが、世界中の女性がいるわけでもない。世界に何人の女性がいると思ってるんだ。第一、相手の子は日本人だろうし。一パーセントにも満たない数の人間の中にいるとすれば、それはもう奇跡だろう。運命ってやつだろうか。
自嘲するように鼻で笑ってから、俺はネックレスをそっと机の上に置いた。
その奇跡が、本当に起きる事も知らずに。