【完結】嵐を呼ぶうたわれるものとケツだけ星人(うたわれるもの 二人の白皇×クレヨンしんちゃん) 作:アニッキーブラッザー
同胞たちに安らかなる眠りと救いをもたらすまで、神となった自分の旅は終わらない。
たとえその結果、大切な女の子を泣かすことになったとしてもだ。
分かっているさ。あいつの気持ちは。あいつらの気持ちは。
そしてその心にどれだけ救われたか。
だからこそ、もう自分はあいつらの悲しむところは見たくない。
今、あいつらの前に現れるわけにはいかない。
もう、自分は普通の存在とは違うモノになってしまった。
そんな自分が、あいつらと共に居ることはもうできないんだ。
そう、というより会えるわけがない。
今、会ったら絶対に殺される。
「ハクとーちゃん、なんでいつもそんなお面着けてんだ?」
うん、殺されるよ。ああ、会えるわけがない。
この問題を抱えてから、その気持ちがより強くなった。
「あ~、だからな、しんのすけ、自分はお前のとーちゃんではない」
悩みで痛くなった頭を抑えながら自分は言うものの、目の前の子供は変わらずに自分を「とーちゃん」と呼んで来る。
「オ~、そうかそうか。ハクとーちゃんも男の子ですな~。そんなお面を着けていれば浮気もし放題で母ちゃんにバレないという作戦ですな~」
「主様。顔を隠してでも肉欲に溺れたいというのであれば……」
「どうぞ私たちを平らげてください。お肉、食べ放題」
「ウルゥねーちゃん、サラァ姉ちゃん、しゅぽ────! しゅぽー! ハクとーちゃん、うらやましいぞ────!」
かつての時代、資料で見たことがある。確か、蒸気機関車か? 顔を真っ赤にして興奮したように足元を走り回るしんのすけの姿に、自分は憂鬱になった。
それにしても、とーちゃんってどういうことだよ。
「ハクとーちゃんは、オラのとーちゃんと声は同じだけど、オラのとーちゃんよりモテモテだゾ」
「声か……声ねえ……。そんなに似ているのか?」
「そだぞ。ハクとーちゃんの声は、オラのとーちゃん、野原ひろしと同じ声だゾ!」
「ヒロシ……ヒロシときたか……」
おい、兄貴。自分って結婚してないよな? してなかったよな? 子供居なかったよな? 絶対いなかったよな?
だから、しんのすけが言ってる「とーちゃん」ってのは、「声がそっくり」で「たまたまヒロシという名前」ってだけで、自分とは何も関係ないよな?
『ようやく会えたな……ヒロシ……いや、ユウジだったか?』
常世へと旅立った兄貴の生前の冗談が、今になって利いてくるとは思わなかった。
「で、ハクとーちゃん、次はどこに行くんだ?」
どちらにせよ、自分はタタリ云々とは別に、この問題も解決しなければクオンたちに会いに行くことは絶対に出来ない。
ああ、もし勘違いされようものなら、クオンの尻尾で締め上げられ、ネコネにぶっとばされ、皇女さんにはあの大刀で……アレはシャレにならないから……本当に……
「次か……そうだな~」
にしても、どうしてこうなった?
あの最後の戦いにて、ハクオロからその力と座を譲り受け、タタリ浄化のために世界を渡り歩き、その途中で発見した遺跡とゲート。
まさかそのゲートが突如誤作動を起こしたと思ったら、坊主頭の五歳児の子供『野原しんのすけ』が、自分たちの目の前に現れた。
ゲートはこの子を転送して以降、ウンともスンとも言わなくなり、更にはこいつの家も帰り方もまるで分からないということもあり、結局こうやって連れて歩いている……おかしい……自分は神様になって大抵のことが出来るようになったはずなのだが……
「まあ、とりあえずは起動可能なゲートに行かないとな……だから次は……オンカミヤムカイ……始まりの国……出来れば最後にしたかったんだけどな……」
オンカミヤムカイ。かつてハクオロが封印されていた地。
「あそこはトゥスクルとも懇意だし、特にあのウルトリィさんは、すべてを見透かしているかのような感じだからバレないように行けるか? でも、あそこにはゲートもあるから、しんのすけを帰せられるかもしれないし……行くしかないか……でもな……」
タタリ浄化の旅は、もはやヤマトどころではなく、海を越えた地にまで自分の足は向いていた。
海を越えた大国トゥスクルを中心とした大陸。
今、自分はヤマトを離れた地に居た。
「は~、実体化しないで透明化して移動できたら楽なんだけど、しんのすけは出来ないから自分も実体化で歩き回らなければならない……でも、この大陸はかつてハクオロが居たこともあって、自分が今つけているこのハクオロの仮面は非常に目立つ……トゥスクルの関係者に見つかれば一発でバレる……そうなると、トゥスクルの女皇でもあるクオンの耳にも……」
そして、ようやく眼前に巨大な遺跡を利用して作られた建造物と、その下に広がる街が見えて来た。
「大きい建物だぞ、ハクとーちゃん。なかなか赴きがありますな~」
「ほう、しんのすけにも分かるか?」
「おお、ハクとーちゃん、見て見てー! なんか、空飛んでる人居るぞ! アクション仮面の新しい怪人?」
「あっ、いや、あれはオンカミヤムカイの人の特徴で……まあ、羽が生えてるヒトが居るんだよ」
「ほうほ~う。これまで犬の耳のお姉さんとか、猫のお姉さんとかも居たから、あそこには天使のお姉さんも居るのか?」
「そりゃーな。それこそウルトリィさんなんて女神のような金髪美人で胸もでかくて……」
「ッ! えへ~、それは楽しみだゾ。父ちゃん、この世界、いいところですな~」
「ああ、だろ? って……お前、ものすごいしまりのない顔してるが……本当に五歳児か?」
ウィツアルネミテアの総本山でもある、オンカミヤムカイ。
大神ウィツアルネミテアの教義を守る宗教国家でもあるこの国に、まさか、その大神本人が来るのを躊躇ってしまうというのも皮肉な話。
でも、危険が伴う旅にこれ以上、しんのすけを連れまわすのも難しいし、あんまりのんびりしていたら二度と会わないと決めていたクオンたちにまで感づかれてしまうかもしれない。
だから、ここは……
「じゃ、ハクとーちゃん、オラ、町の中を探検してくるぞー!」
「ん? って、お、おい、しんのすけ!」
って、そんなことを考えていたら、しんのすけが走って行っちゃったぞ! しかも早い! 前々から思っていたけど、五歳児でありながらあの行動力と運動能力は一体どういうことだ?
そして、短い付き合いでも分かるほどの、あのしんのすけという子供のトラブル体質。放っておけば何かとんでもないことが起こる気がする。
そうやって、慌てていた自分は、「何故か賑やかで騒々しいオンカミヤムカイの様子」にはまったく気づかずに、しんのすけの後を追った。
そう、オンカミヤムカイの中にあるとある茶屋で……
「にしても、どうしてアンジュは会談をココにするかな~? ヤマトの帝が来訪するからって、オンカミヤムカイは大騒ぎじゃない。ココの見張りは私に任せてくれればいいって、何回も言ってるかな?」
「何を言う! 神となったハクの手がかりがあるかもしれないのなら、余は地の果てまでだっていくのじゃ!」
「帝。そう言って疎かになっている政務は後でキッチリとやってもらいますからね? また、後ほど到着されます、トゥスクルの始祖皇であるハクオロ様へのご挨拶も小生と……」
「姉さま、ごめんなさいなのです。ただ、兄さまがひょっとしたら……そう思ったら、私もココに来たいという想いにウソはつけないのです」
「私も、ハク様がひょっとしたら……そう思ったらいてもたっても居られずに……」
「そうやえ~、クオンはんの本当のおとーさんは、ずっとこの国の下におったんやろ~? せやったら、おにーさんもおるかもしれないと思うんよ」
「そのとおりだ、クオン! 抜け駆けを見逃さずに自らも積極的に動くのが、良い女の条件だ!」
「あんしんしろキウル。キウルがどこかにいてもシノノンがおこしにいってやるぞ」
「く~、羨ましいじゃな~い、キウル」
「は~、でも、こうやって僕たちが揃うのって久しぶりですね」
「ええ。それほど時間も経っていないようで、僕も懐かしく思います」
「ええ。だから、クーちゃんもせっかくまた会えたお友達を前に、そんなことを言ったらダメですよ?」
クオン、アンジュ、ムネチカ、ネコネ、ルルティエ、アトゥイ、ノスリ、シノノン、ヤクトワルト、キウル、オウギ、フミルィル……
とりあえず、なんやかんやで全員集合していた。
そしてそこに……
「オオー綺麗なおねえさんがいっぱいだ──ーっ!」
コレが現れてしまった。
トゥスクル皇女とヤマトの帝が、庶民が行き交う町でのんびり茶屋でくつろいでいる。
その状況に、町の者たちは遠めで眺めているだけしか出来なかったが、そこに一人の子供が乱入した。
「ほうほう、……合コンですな~? う~む、しかし男女の人数が一緒じゃないと。なら、ここはオラが参加して人数合わせましょ~」
いがぐり頭の小さな少年。そして今その場に集っている者たちの存在がどのような者たちなのかも知らずに接してくる子供に、クオンやアンジュたちは少々驚いて反応に困ってしまった。
だが、その場に現れた少年、しんのすけはクオンたちの返答を聞かずにそのまま、その輪の中に入って腰を下ろした。
「えへ~、おっす、オラ、しんのすけだゾ。おねえさん、お名前は?」
「む? あ、そ、その、小生はムネチカというものだが……その、童よ……」
「ほうほう、じゃあ、ムネちゃんですな~」
「むむ、ムネちゃん?」
「ム~ネちゃんのオムネはボインボイ~ン、ついでにモモちゃんもむっちむち~」
現ヤマトの忠臣の一人にして、武人としても名高いムネチカ。その存在を相手に「ムネちゃん」と言いながら品のない顔で歌い出す子供。その状況に、オンカミヤムカイの者たちは卒倒しそうになった。
「な、なん、なのかな、この子?」
「なんという品のない幼子なのじゃ!」
「まったくです。親の顔が見てみたいのです」
突然現れ、突然驚きの言動を繰り返すしんのすけの姿に、クオンたちはどう反応していいかが分からず呆気に取られていた。
ヤクトワルトだけは笑っていたが……
すると、その時だった。
「ちょ、ちょっと君! ま、待つかな!」
「おっ?」
その時、クオンが何かに気づいてしんのすけの両肩を掴んだ。
勢いよく。
その勢いにビックリしたしんのすけ。眼前には恐い顔をしたクオンが真剣な眼差しで……
「も、もう、強引なのね。でも、オラ……そういう積極的なのに弱いの……ん~!」
「ひっ、ちょ、ちがーう!」
思わず自分は口説かれていると勘違いしたしんのすけは顔を赤らめて唇を突き出すが、クオンが慌てて制止。
そして……
「やっぱり……あなたの耳……間違いない……あなた……大いなる父(オンヴィタイカヤン)……」
クオンの発言に、場が一斉に凍りつく。
「な、なんッ!?」
「オンヴィタイカヤンって……それって……」
「そうなのです。兄さまと……あ、兄さまと同じなのです!」
「オシュトル……いいや、ハクと同じ!」
ヒトではなく人。この世を創生した大いなる父である、既に滅んだ種族。
そしてその存在は、彼ら彼女たちにとっては、決して忘れられぬ一人の愛すべき男の存在と直結するもの。
「ハク? オオ。おねーさんたち、ハクとーちゃんの友達?」
「「「「「…………………………えっ?」」」」」
そして、そこから更に続けざまに放たれた爆弾に、もはや世界を救った英雄たちは唖然とするしかなかった。
「ハク……ハクッ! ハク!? き、君、ねえ、君! ハクと、ハクを知ってるのかな!? ハクが、ねえ、ハクを!」
血相を抱えて身を乗り出すクオン。その形相はもはや冷静さ等、微塵もなかった。
「答えよ、童! ハクを知っているのか? ハクを見たのか? どこにいるのか知っているのか!」
「教えて欲しいのです! ハクさん……兄さまが! 兄さまのことを!」
「ハク様が! 御願い、教えてください! ハク様は今どこに!」
クオンだけではない。アンジュ、ネコネ、ルルティエ。そして他の者たちも全員身を乗り出して、しんのすけを取り囲み、その尋常ならざるプレッシャーに、しんのすけも思わず身を仰け反らせる。
「な、なんなんだ、こ、恐いぞ! そ、それに、は、ハクとーちゃんが何かをしたのか?」
「いいから、ハクは! ハクはどこかな! どこに居るのかな!」
「どこって、さっきまで一緒だったゾ。オラ、探検するっていって置いてっちゃったけど……」
さっきまで一緒に居た。それはつまり、「今この国に居る」ということになる。
その言葉を聞いてしまえば、もはや、落ち着けと誰が言っても無意味。
しんのすけがどうとかなど、もはや小事。
ハクが居る。この国に今来ている。
それが分かっただけで……
それだけで……
「ハクとーちゃん? なんだ、おまえはハクのこどもなのか~」
そのとき、一人冷静なシノノンの何気ない言葉に、クオンたち(女性陣)の肩が大きく震えた。
「おお、ハクとーちゃんはハクとーちゃんで、オラの父ちゃんは野原ひろしだゾ」
ハクはあくまで「とーちゃん」と呼んでるだけで、自分の本当の父は「野原ひろし」と説明したかったしんのすけ。
だが……
「ヒロシ……その名前……聞き覚えあるかな……」
顔を俯かせ、前髪で瞳が隠れて表情を伺えないクオン。
しかしその背には、闇の瘴気のような禍々しいものが溢れていた。
「アンジュや皆にも言ったよね? アンジュのお父様……つまり前帝は大いなる父であり……そして、ハクのお兄さんだって……」
「むっ……そ、そういえば……」
「私、聞いたことあるの。帝はその時、ハクのことを……ヒロシって……」
その時、帝の様子から「アレ? ユージだったっけ?」と言っていたので、名前については冗談なのだろうと、クオンは大して気にも留めなかった。
しかし、今のしんのすけの発言で、ハクの真名は本当にヒロシであり、そして目の前に居る子供は……
「しんのすけくん? その、ハクとーちゃんはどこに居るのカナ? カナあ?」
ニッコリと微笑んで優しく尋ねるクオン。
だがその笑顔に、しんのすけは思わず恐怖ですくんでしまった。
そしてその笑顔と似たような表情の女性陣のプレッシャー。
それを受けてしんのすけは体をブルブルと震わせながら……
「え、んと、えと、ど、どこって……わ、わかんないぞ……た、たぶん、ハクとーちゃんは、ウルゥ姉ちゃんと、サラァ姉ちゃんと、お楽しみだゾ」
その瞬間、クオンたちの握っていた茶器が粉々に粉砕された。
「急いでウルお母様に国を封鎖してもらうかな? そして、ベナウィとクロウにも動いてもらって……」
「ムネチカ! 今すぐ、ミカヅチにも召集をかけるのじゃ! 蟻一匹すらこの国から出られぬ包囲網を作り、ハクを確保する!」
そして立ち上がった『二人の白皇』による号令が下された。
大神ウィツアルネミテアの教義を守る宗教国家でもあるこの国にて……
「「これより、神狩りを行う!」」
「「「「「応ッ!」」」」」
その前代未聞の号令に、仲間たちはその瞳に魂を宿らせて立ち上がった。