【完結】嵐を呼ぶうたわれるものとケツだけ星人(うたわれるもの 二人の白皇×クレヨンしんちゃん)   作:アニッキーブラッザー

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第9話 乙女の秘密を暴露だぞ

 その時、闇夜を背に、カンタムから一人の人影が飛び出した。

 全員を青一色に染め、その顔は見たこともない仮面に覆われている。

 全身の形状をハッキリと出すような衣服であるために、胸の形で女であることは分かった。

 だが、女であれ、男であれ、その身にまとう衣装や身につけている仮面が普通でないことは理解できた。

 

「さ、サクヤ……なのか? ……な、なんだそのカッコウ……いや、見たことがある。確か、カンタムと一緒に見たことのあるアニメ……ムツミが凄く好きだったのを覚えている」

 

 過去の記憶を探るように頭を抱えるハクオロ。

 するとその時……

 

「お父様……あれは、もう一人のお父様がこの世に残した仮面……」

 

 ハクオロの傍らでそう呟いたのは、カミュ……カミュ? いつもの天真爛漫なカミュではない、どこか異質を感じさせる様子だ。

 

「カミュ……いや、ムツミか……どういうことだ? もう一人というと……あやつか?」

「そう。かつてクンネカムンに居たお父様が……過去を懐かしみながら作ったもの……あの青い仮面をつけて、……わっはっはっは、とお決まりの構えと同時に声を上げていたところをゲンジマルに見つかり……恥ずかしさを誤魔化すために、これは非常に危険なものだから許可無く封印を解いてはならないとした……」

 

 なにやら、ハクオロとカミュと、ムツミ? と呼ばれた者たちには、なにやら複雑な関係があるようだが、とりあえずその過去の誰かさん……暇だからって、こんなもん作るなよな!

 

「わーっはっはっはっはっはっは! わーっはっはっはっはっは!」

 

 さっきまで、カンタムの中で泣きながら話していた娘と同じとは思えない。

 威風堂々として、独特な構えを見せたまま、サクヤという娘は自分たちの前に現れて、高らかに笑った。

 

「……サクヤ?」

「私はサクヤではない!」

「……えっ?」

「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ! 悪を倒せと我を呼ぶ! 私は、正義の味方! その名も――――」

 

 サクヤという女が軽快にいちいち色々な振り付けをしながら叫び、いざ名を名乗ろうとした瞬間……

 

「アクション仮面が女の子になっちゃったぞーっ!」

「そう、アクルカション仮面……えっ? な、なん、で? なんで知っているんですかー?」

 

 これまた、しんのすけが目を輝かせて叫んだ。

 

「アクション仮面、そのお胸どうしたんだー! かーちゃんや、エルルゥ姉ちゃんより大きいぞーッ!」

「しんのすけくん、君は、アレを知って……って、エルルゥ? ちょ、気持ちは分かるが今は堪えてくれ! 今、かなり大事なことを!」

「キシャアアアアアアアアアアアアアアアア!」

「あ、あ、は、母様ァ! 落ち着くかな! ね?」

 

 禍日神になったエルルゥさんをクオンとハクオロが必死に押さえ込んでいるが、それよりも、今は仮面だ。

 

「仮面……あれも、アクルカの一種か? 確かに、尋常ならざる気が漂っているが」

「しかし、小生らの持つ仮面とは何かが違う。まるで、仮面に全てが支配されているかのように……」

「ってことは、あれも兄貴……前帝のように、人工的に作り出された仮面の一つってことか……」

 

 この中で唯一仮面を所有している、ミカヅチ、ムネチカ、自分が冷静に分析する。

 そう、アレは今自分が身につけている、ハクオロから譲り受けたこのオリジナルとは違う。

 明らかに人工的に作りだされた……

 

「おい、そこのモロロ頭よ……我等クンネカムンの三大禁忌でもある、カン・タムゥだけでなく、アクルカションを何故知っている?」

「おっ? アクル何とかじゃないぞ! アクション仮面だぞ! アクション仮面は無敵の救いのヒーローなんだぞ! ……でも、お姉さんになってるのはなんで? ん~、でも、おらはこれはこれでいいと思いますな~」

 

 しんのすけは、カンタムだけでなく、あの仮面まで知っているのか? あの、クーヤという女もサクヤという女も相当驚いているな。

 そうだ、何でしんのすけは知っているんだ?

 いや、今は……

 

 

「ふっ、まあよい。知っているかどうかなど些細なこと。重要なのは、余の前に、ハクオロ……そなたが居るということだ」

 

「そうです……ハクオロ様……私たち、ずっとハクオロ様に操をと……ずっとずっとこの身体は殿方には触れさせず……この十数年……ずっと、ずっと……っ! それなのに、ハクオロ様は、他の皆さんとよろしくやっていたんですねーっ!」

 

 

 サクヤが飛んだ。「とう」という声と共に、クルクルと回転しながら……

 

「アクルカション蹴りーっ!」

 

 その時、二つの風が真横を駆け抜け、ハクオロへと向かった。

 

「はあああっ!」

「ッ! カルラ……さんっ……」

 

 勢いよく落下しながらの蹴り。それをカルラさんが両腕を交差させて防ぐ。

 だが、その威力は激しい轟音を響かせて、カルラさんの両足を地面に埋め込むほどだった。

 

「ッ、そ、それは少しやりすぎですわ……サクヤ……」

「どいてください、カルラさん! カルラさんに分かるはずがないです! ハクオロ様が眠りにつく前までに手をつけられなかったがゆえに、ずーっと生娘のままの私とクーヤ様の気持ちを、分かるはずないんですからーっ!」

 

 乙女の涙と共に、アクション仮面の力が増しているかのように……っていうか、本人の涙でだけどな……

 

「だがしかし、聖上を傷つけていい理由にはなりませぬ!」

「トウカさんっ!」

「サクヤ殿、偉大なるゲンジマル様のお孫に無礼を許されよ! 峰打ち御免!」

 

 もう一つの風が、一瞬で間合いをつめ、蹴りの体勢のままのサクヤに襲い掛かる。

 トウカの刃が、サクヤを……

 

「トウカさんにだって、分かりませんよ……」

「な……なにっ!」

「お側仕えとか言いながら、夜這いし放題のトウカさんには分かりませんよーっ!」

 

 馬鹿らしい喧嘩と思いながらも、流石にこの光景には、武士たちは目を大きく見開いた。

 あの、エヴェンクルガの剣士であるトウカの一撃が、サクヤの人差し指と中指の間で掴まれてしまったのである。

 

「余所見をしている暇はないぞ、ハクオローッ!」

 

 だが、ボーっとしていていい状況ではない。

 サクヤに気を取られていたら、カンタムが地響きさせながらハクオロへ。

 

「カミュ! そして、ムツミ!」

「分かっている」

 

 これは流石にシャレにならんと、ウルトリィさんとカミュが手の平に紋章を浮かべて術を発動。

 力ではなく、術の力でカンタムを押さえるつも……

 

「なっ……こ、これはっ!」

「お、抑えきれ……な……」

 

 すぐに、ウルトリィさんの表情が驚愕に染まる。

 何と二人が出した術の紋章が、粉々に砕けてしまったからだ。

 

 

「たわけものどもーっ! 我がカン・タムゥには、術式完全無効化能力を備えておるのだーっ!」

 

 

 待て待て待て待て、暇な時間に作ったにしては、何でそんなに本格的に作りこんでいるんだよ。

 

「いけません! クロウッ!」

「ういっす!」

 

 ハクオロがまずい。ベナウィとクロウも前へ出て、二人同時にカンタムを左右から斬撃を叩き込む……がっ……

 

「硬いッ!」

「……お、おいおい……んだよ、この硬さは!」

 

 その強固な装甲に、刃を弾かれてしまっていた。

 

「無駄だーァ! 余の無敵のカン・タムゥに、人の力など通ずるものかーっ!」

 

 おいおい、術も剣も効かないって、とんでもない無敵じゃないか。

 アベルカムルの時も思ったが、トゥスクルの領土にはとんでもない武器が眠ってたもんだ。

 こりゃー、兄貴が生きていた時のトゥスクルとの戦争も、最終的にはとんでもない兵器を兄貴は持ち出したかもしれんな。

 

 

「静まれ、クーヤッ! サクヤもだ!」

 

 

 その時、ただの人でありながら、威厳に満ちた声が響いた。

 

「ひぐっ!」

「ひいっ!」

 

 思わず情けない声を漏らすのは、クーヤとサクヤ。

 その声を発したのは、これまで情けない姿ばかりを晒していたハクオロだった。

 ハクオロの表情、それは「これ以上は冗談ではすまない」と真剣味を帯びていた。

 

 

「クーヤ、サクヤ……今宵は、同盟を結んだヤマトの方々だけではなく……お前たちにとっても娘であるクオンも居る。客人と愛娘を前に、なんという醜態だ!」

 

 

 さ、さすがはハクオロ。クーヤとサクヤがシュンとなっている。

 

「勿論、私自身が至らなかったが故に、お前たち二人を傷つけてしまったことは理解しているが、限度というものがあるぞ」

 

 そうか、強さや知識だけではない。

 この存在。この言葉。この人を惹きつける何か。

 それに、トゥスクルの人たちは惹かれ、この男についていったんだ。

 なんだか、初めてこいつを尊敬できたような気がする……

 

「まずは二人とも……私に……顔を見せてはくれないか? それとも、もう私の顔など見たくもなく、私はお前たちに直接……ただいまを……言わせてもらうこともできないのか?」

 

 これはこのまま、いくか? というか、ハクオロの奴、女に対する扱いがうまいな。

 自分はああいうのは全くダメだと、よくクオンにどやされていたな。

 しかし……

 

「ええい、黙れエ! そのような言葉で簡単に靡くと思うな、このたわけものめえ!」

 

 一瞬、ハクオロの説得に応じかけていたものの、クーヤは直ぐに反発した。惜しいッ!

 

 

「何がお胸モミモミだ! 悪かったな! あれから十数年の時が経つも、余の胸もそれほど大きくなっていなかったのだからなァ!」

 

「いや、待つのだ、クーヤ、しんのすけ君の発言など気にするな。私は断じてそのようなことでお前たちを蔑ろにしては……そもそも、お前の胸の大きさがどうかなど、会ってもいないのだから分かるはずがないであろう」

 

「そだぞー! おじさんは、お胸のないエルルゥおねーさんともイチャイチャしてるから、差別はしないぞーっ!」

 

 

 グリグリグリ……

 

「ひ、ひえええ、お、おたすけだぞー!」

「しんのすけく~ん、誰のお胸がどうだって~?」

「え、エルルゥおねーさん、なんでグリグリ攻撃できるんだーっ!」

 

 エルルゥさんにより、両拳で頭を万力で締め付けるかのような攻撃を受けるしんのすけのうめき声が上がった。

 

 

「クーヤ。私の記憶の中に居るお前との最後は……大英雄ゲンジマルを目の前で失い、精神を崩壊させ……最後には別れの言葉すら告げることが出来なかったお前だった。しかしな……私たちがああなる前に、よく、夜に城を抜け出して、くだらない話を含めて数限りなくお前と時間を積み重ねてゆき……例え、肉体的にお前たちとの繋がりがなかったとはいえ、お前とは確かな絆を紡いだと思っている。無論サクヤもだ」

 

「ハクオロ……」

 

「ハクオロ様……」

 

「そして今、幾多の試練や時を越え、ようやくこうしてお前たちと会うことが出来たのだ。私にお前たちとの……時間を取り戻す機会を今一度与えてはもらえぬだろうか?」

 

 

 優しく語り掛けるハクオロの言葉からは、口先だけのものではなく、本心からの二人への親愛を感じ取れた。

 その言葉を聞き、トゥスクル勢たちも「仕方がないな」と微笑ましそうにしている。

 

 

「う、ううう~、ハクオロ……お前は、もう一度、余と……こ、この歳になっても未だ生娘というみっともない余すらも、う、受け入れてくれるというのか! 余だけだぞ? トゥスクルで、まるで経験がないのは、余とサクヤだけだぞ!」

 

 

 いい歳して、未だ生娘であることの恥ずかしさ。ほ~、女もそういうこと気にするんだな。

 確かに、男も、何歳まで経験がなければ、魔術師になれるとか、賢者になれるとか聞いたことがあるな。

 

 

「ええい、さっきから黙って聞いていれば、それの何が恥だというのだッ!」

 

 

 するとその時だった。

 ハクオロでもない。トゥスクル勢でもない。

 この問題に口を出したのは、意外にも、顔を真っ赤にさせながらも胸を張って叫ぶ、ノスリだった。

 

「おいおい、ノスリ」

「姉上?」

 

 意外な人物の叫びに、視線が一斉にノスリに向けられる。

 すると、ノスリは……

 

 

「た、確かに、あなたの言うことも理解できよう。事実、私もそうであった! 生娘であることを恥ずかしいと思い、見栄を張っていた! 良い女というのは経験豊富である。そういうものだと思っていた。しかし、……しかし、い、今の私は考えは違う! 女の純潔とは、捨てるものではなく、捧げるもの! その捧げるべき相手のために取っておいたことを、何故、恥と思う必要がある!」

 

「そなた……なにを……」

 

「そんなに生娘であることが恥ずかしいのか? な、ならば、ならば私も言ってやろう! わ、私は、け、経験豊富な良い女と皆には言っていたが……じ、実は……実は生娘なのだッ!」

 

 

 顔を真っ赤にしながらも、落ち込むクーヤとサクヤのために自らの秘密を暴露するノスリ。

 ノスリ。お前はやはり良い女だよ。

 でも、一つ言うことがあるとすれば……

 

 

「「「「「(いや、知ってたし)」」」」」

 

「いやー、なんと、そーだったのですか、姉上! しかし、そのことを堂々と告白する姉上の勇気に僕は感服します!」

 

「「「「(いや、オウギ、お前が知らないはずないだろ)」」」」

 

 

 ゴメンな、ノスリ。どー考えてもお前は生娘だというのは分かっていた!

 あと、オウギ、お前、本当に面白がっているな。

 しかし、このノスリの暴露は意外にも状況を大きく変えた。

なぜなら、これに便乗して……

 

「ま~、せやけど、それならうちも生娘やえ~。操を上げる人は決まっとるんやけどな~、まあ、それはこれからやえ~。ルルやんもそやろ~? 好きな人にあげるんやから、取っとくよな~?」

 

 アトゥイが援護するかのように、クーヤに慰めの言葉を贈った。

 

「は、はうううっ! あ、アトゥイ様、どど、どうしてそこで私にふ、振るんですか! い、いえ、その、き、きむす……でも、私だって……いつかハク様と……ううう~……で、でも、その、す、好きな人以外になんて絶対に嫌ですから、わ、私もそれが恥ずかしいことだなんて思いません!」

 

 き、聞こえてない。自分は何も聞こえていない。

 

「おー、それなら、シノノンもきむすめだぞー。キウルにあげるけど」

「く~、娘にお赤飯を炊く日も近いじゃなーい」

「いや、シノノンちゃん、意味分かってる? ヤクトワルトさんも笑わないで! ちょ、ね、ネコネさん? そ、そんな顔で僕を見ないでくださいー!」

「……あまりにも、低俗な会話過ぎて眩暈がするのです」

 

 こらこら、シノノンとネコネには、まだまだ早いぞ?

 

「あらあら、なら、クーヤ様、サクヤ様。な~んにも気になさることはないですから。私たち、み~んな、生娘です。ね? ウルゥルちゃん、サラァナちゃん」

「フミルィル、いみふ」

「私たちの穴という穴、純潔はとうの昔に主様に―――――」

 

 もらってないもらってないもらってない。

 

「こ、これは、小生も答えねばならないのでしょうか?」

 

 いや、無理して答える必要はないぞ、ムネチカ。

 だが、その時、何だか自分は猛烈に嫌な予感がした。

 それは、勘。本能。そして細胞が告げていた。

 乙女たちの「生娘暴露」を前にして、自分は物凄くこのままではまずいという気になった。

 だって、あれだろ? この話の流れだと、やっぱ全員に話が行くよな?

 となると……

 

「ええい、まだるっこしい! 生娘がどうした! 余とて生娘だ! しかし、それは決して恥ずべきことではない! 捧げるべき相手をずっと待ち続けることを、誇りと思えど恥等と思うことはない! 我等も生娘といえど、ようやくハクを見つけたのだ! ならば、時間の問題! そしてそなたらも、ハクオロ皇とようやく再会できたのだ! これから捧げればよかろう!」

 

 皇女さんもまた、生娘暴露を堂々とし、そしてその想いをクーヤとサクヤにぶつける。

 いや、正直皇女さんは自分にとっては姪っ子みたいなもんで……まあ、チーちゃんには、お嫁さんになってあげるとか言われていたけど……ってそうではない! 

 そう、クーヤとサクヤが皆の「生娘暴露」に心が揺れ動いている中、もしこの話が、このままあいつに及べば……全てが台無しに!

 

 

「のう、クオン! そなたも何か言ってやるのだ! 愛する男を想い大切にとっておいたのなら、生娘等恥ずべきことではないとな!」

 

「……へっ……?」

 

「そなたも生娘であろう!」

 

 

 あっ……皇女さんから……クオンに振られた……

 

「えっ、あ、アンジュ、き、生娘って……えっと……だ、だって、わたくしは、ハクともう……遺跡で……えへ……えへへへへ……」

 

 ―――――ゾワリ。

 

 

「ねえ、どうしよっか、ハク~? や、やっぱり、みんなにはまだ、内緒にした方が、いいかな~?」

 

「「「「「…………………」」」」」

 

 場が一瞬で凍りついたような気がした。

 そして、クオンが照れながら、でも嬉しそうにしながら、何だか幸せそうに……

 

 

「え、えっと、ま、まいったかな。う、うん、好きな人に取っておいたものは全然恥ずかしくないかな……で、でも、それをわたくしが言っても嫌味かな……だって、わたくしは……もう……ハクと……ふふふふ」

 

 

 その時、トゥスクル勢は察した。

 

「く、クオン……お、お前まさか……」

 

 口を半開きのハクオロ。

 

「まあ、……やはり、そうだったのね、クオン。どうりで大人っぽくなったと思っていたの」

 

 嬉しそうなエルルゥさん。

 

「あら、わたくしはとっくに気づいていましたわ」

 

 冷やかすように笑うカルラさん。

 

「あらあら、クオンったら、いつのまに大人の仲間入りしていたのね」

 

 娘の成長に微笑むウルトリィさん。

 

「は? へ、ど、どういうことでありますか?」

 

 一人よく分かっていなさそうな、トウカさん。

 

「うわ~、ハクちゃんったらいつの間に。どうしよっか、アルちゃん」

 

 イタズラっこの顔を浮かべるカミュ。

 

「………クーをキズモノにした」

 

 真顔で一言呟くアルルゥ。

 

「だーはっはっはっは、こいつあーめでてえ! お嬢の成長は嬉しいような、泣けてくるっつーか! 若大将が居たら、泡吹いて気を失ってたぜ」

 

 腹抱えて笑うクロウ。

 

「ハク殿。あなたは、われらが皇女に手を出したにも関わらず、逃げ回っていたのですか?」

 

 そうと分かればもう逃がさねーぞと殺気を飛ばしてくるベナウィ。

 あ、いや、ちょっと待ってくれ……みんな……

 そして、ヤマト勢も

 

「は? へ? な、えっ? なななな、えっ?」

 

 顔を真っ赤にしてうろたえるノスリ。

 

「は~……クオンはん……いつの間に抜け駆けしてたんやな~」

 

 あ、アトゥイさん? 瞳孔が開いた目で、そんな真顔で言われると恐いぞ?

 

「あっ……お菓子作り……そうです、私がハク様と一番上手に作れますから……そうです、ああ、鍋でお菓子を作っていたんです……ハク様の幸せを望むのが私の役目ですから……ハク様の幸せが私の幸せですから……」

 

 ルルティエーーーッ! なんか、お玉で空鍋をかき混ぜて現実逃避……ど、どうした? 何か別の意味で恐いぞ?

 

「おー、あねごはてがはやいぞ。キウルもはやいほうがいいか?」

「な~んだ、旦那も姉御もヤルことヤッてるじゃなーい」

「……は、あ、あにうえがく、クオンさんと……お、おちょにゃのかいだんを……」

「ふぐっ、ひっぐ、うう、あ、あにさまとあねさまが、私を置いて遠いところに行ってしまったのです……」

 

 ま、待て、シノノン、キウル! 泣くなネコネ!

 

「まあ、クーちゃんってば。もう、大人になったのね♪」

「いみふ。妄言乙」

「ウソに決まっています。主様の気を惹くためです。だって……クオン様のお腹の中……中に誰も居ませんよ?」

 

 嬉しそうなフミルィルに、こちらは物凄く恐くなったウルゥルとサラァナ。

 そして……

 

「せ、聖上、お、お気を確かに! 聖上!」

 

 ムネチカが血相を抱えて呼びかける。そこには、ムネチカの腕の中で倒れている皇女さんが……

 

「は、はははは、く、クオンよ、なな、何を言うておる……そそ、そなたは、き、生娘であろう?」

 

 明らかに動揺しまくった皇女さんが、何とか言葉を搾り出すも、クオンは勝ち誇った顔をして……

 

「だから言ったかな? しんのすけの母様役は、わたくしが一番適任って。ね? ハク♪」

 

 さてさて、いい加減、自分もしんのすけと風呂に……

 

 

「……む……娘に先を越された……」

 

「クオン様が私より先に……」

 

 

 と、そんな中、誰よりもショックを受けていたのはこの二人だったかもしれない。

 それは、クーヤとサクヤ。

 

「は、ははは、ハクオロ……ははは、こ、滑稽ではないか……のう? よ、余にとっても愛娘であるクオンが、す、既にき、生娘ではなく、母たる我等が未だ生娘なのだからな……は、はははは、は……」

 

 その時、先ほどまでとは比べ物にならないほどの瘴気がカンタムとアクション仮面から。

 すると、その瘴気を発したまま……

 

 

「やはり許さあああああああん、ハクオロオオオオオ! ついでに、そこの仮面の男も、許さあああああああああん! 娘が大人で、母たる余が生娘とはなんたることかあ!」

 

「うわああああああああああああああああああああああんん! もうどうなろうと構わないですーっ! アクルカションビイイイイイイイイイイイム!」

 

 

 どわあああああああああああああ、なんか、怒りが自分にまで飛び火した!

 

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