朝だけどっ!!!
練火デース!!!
『ーーー冬木ハイアットホテル爆破事件は未だ詳細は掴めず、警察ではテログループによる犯行ではないかと捜査を』
プツンッ
雁夜がフライドポテトを摘まみながらテレビの電源をリモコンで切った。
「物騒な世の中に成ったな……」
「その物騒な戦争の真っ只中にマスターはいるけどな。どうだ?旨いよな?」
同じくフライドポテトを桜に食わせるアーク。
「うん、おいしい」
サクサクサクとリスのようにポテトを食べる姿に二人はふんわりと和みながら会話を続ける。
「でだ、話を戻すが。マスター……言いにくいが、このままだと負けるな。自滅で」
それまで、二人の間に有った和みの空気は少しだけ重くなる。
「……魔力が足りないのか?」
「一番の問題はそれだ。マスターは…雁夜は魔力が少ない。俺が本気で戦闘をしたらーー」
そこで、紙コップに入ったジュースを飲み。
「ーーーーー一分持てば上出来だ」
真剣な顔つきでそう告げた。
「……やっぱりか」
雁夜は顔を伏せながら、そう呟いた。
解ってはいたのだろう。いくらアークがあの時臣が召喚したアーチャーより強く最強だとしても、その分の消費量や何かしらの害が来なければおかしいと言うもの。
「ーーーーそれでも、俺は勝たなくちゃいけない」
不安そうに雁夜を見る桜の頭を撫でながら、決意の籠った目でアークに言う。
「爺との約束?…違う…時臣を見返すため?……それもあるが違う!」
桜は邪魔なのかと思い、部屋から出ていった。
「俺は桜ちゃんの人生を今度は
「……お前の勝手で人の人生をやり直させると?」
アークから歪な気配が漏れでる。
「どれだけ最悪で最低な事かは解ってる!だが!それでも!!桜ちゃんみたいな幼い娘が
ドンッと机を叩きながら、雁夜はアークを見ながら血を吐くように叫ぶ。
その目には涙がツゥッと滴り落ちる。
「もう後戻りは出来ない。桜ちゃんはもう心に深い傷を負ってる。俺は間桐の秘術で時間が足りない。このままだったら桜ちゃんは遅かれ早かれ感情を持たない人形に成ってしまう……それに桜ちゃんを遠阪家に戻しても、時臣が他の魔術家に養子に出すのは目に見えてる」
「それであの娘の人生を…か」
アークの問いに雁夜は頷くと、アークは片手で自分の額を押さえながら、ため息を吐く。
一言で言いきった。
「馬鹿だよマスター」
「んなっ!?」
「うん、馬鹿だわ」
「な、なんだと!!」
いきなりの言葉に雁夜はアークの胸ぐらを掴み睨みながら言うが、アークは額を押さえたまま続けた。
「だったら、自分の寿命を延ばすでも聖杯を心臓代わりにするのでも良いだろうが?」
「そ、それは…」
「思い付かなかったのか……」
「う、うるさいよ!」
雁夜の顔が赤くなり、胸ぐらを掴んでいた手を放す。
「まぁ、雁夜が何処まで本気で命懸けなのかは充分理解した。その上で問う。ーーー今すぐ死ぬ覚悟はあるか?」
「……どういう意味だ?」
「俺が今からとある禁術魔法の一つをその身に刻み付ける。まぁ、焼き付け刃だから通常の三割しか効果は出ないハズだが、この先の戦力にはなるだろ」
「禁術……」
ゴクリと雁夜が生唾を呑み込みながら、呟く。
「あぁ、使いすぎれば廃人確定の魔法だがな…だが多大な戦力になり、しかもすぐに使えるとすればこれだけだ。後はマスター……アンタ次第だ」
まるで悪魔の取引のように重苦しく、そして蜘蛛の糸のような希望とも似つかわしい何かが雁夜を誘う。
「俺は…」
雁夜はギュッと目を瞑り、か細い声で答える。
「受けない。すまないアーク。俺には…出来そうにない」
申し訳なさそうに答えた。そして目を開け、アークを見ると
「了解したマスター」
アークが笑顔でそう頷いた。
「なっ。お前は、怒らないのか?」
「何、これはテストだからな。ここでアレを受け入れるようなら、わざと失敗させて廃人か殺すつもりだったからな」
その発言に雁夜はゾッとした。
「だが、そこまで執念に囚われてても、まだやってはいけない線を解っている。俺は雁夜がマスターで良かったよ」
そう言って、アークはマント裏の懐から一つのネックレスを取り出すと、雁夜に渡した。
「これは……?」
「これか?これは魔法具だ。この宝石にはとある魔法が入ってて、トリガーである呪文を言うと発動する」
そう答え、アークは雁夜の耳元でその呪文を囁き
「それじゃ、俺は外へ散歩に行ってくるから。雁夜はちゃんと休んどいてくれよ?」
そう言い残すと、その足で外へと出ていった。
「見ててくれよ桜ちゃん…俺は、俺は絶対に……」
後に残る雁夜の呟きは空へと消えていった。
ちなみに雁夜に禁術が授かっていたら禁術魔法暴走ルートで冬木消滅があり得ました(笑)