※この話では転生しません。
「ねえどういうことよ!ねえ」
こっちが聞きたい。
「もう私の知ってる友達や家族に会えないの!?」
「わからないよ…俺にも」
半泣き状態で、後半部分ほとんど聞き取れない声で僕に問いかけてくる幼馴染みの詩月。俺はぼそっとつぶやくように返した。
「もしかして死後の世界?うわーん!ぐぅ、ひゃっく、ろぐがしだドラマ見で逝きだかった!ヒック」
「落ち着けよ少しは!あぁ、鼻水やばいって!」
しかし詩月が混乱するのも無理もない。そう、僕達はラノベ風に言うのならば異世界らしき世界に転生したのだからだ。
数時間前
だいぶ冷え込んできたこの季節。大下和夫は1人で帰り道を歩いていた。友達はとある事情により、今はいない。
「…早く帰ろう」
考えちゃいかんとコートのポッケに手をぐっと入れのしのしと歩いていき、しばらくしたところで、誰かと肩がぶつかった。
「ちょっと!痛いじゃないの…って…え?」
「…?ごめんなさい」
和夫は最近のJK怖ーと思いながらそそくさと帰ろうとしたのだが、肩のぶつかった女の子に「待って」と言われた。
「はい?」
(いちゃもんつけられるのかなぁ?)
「あなた、カズくん?」
その呼び方には聞き覚えがあった。そう、それは幼稚園の頃初めてできた友達につけられたあだ名だ。それは知っているということは?
「もしかしてシーちゃん?」
「カズくんなんだ!久しぶりー!会いたかったよ!」
そう詩月はそう言うと商店街というのにも、ましてや自分がお嬢様だというのにも関わらず俺に抱きついてきた。
久しい再開をし、2人は思い出話をしながら帰っていた。
「メルモー元気か?」
「ええ、元気よ」
メルモーとは、詩月の家で飼っているゴールデンレトリバーである。
「最近、唐沢シェフの作った料理しか食べないのが悩みね」
「犬にシェフがいるのか…なんというかすごいな。お嬢様って感じがする」
俺は食生活で犬に負けてしまったのか。
「あなただって充分金持ちでお坊ちゃまじゃないの?」
詩月の返答に、俺は素っ気ないフリをして静かに答えた。
「親父が死ななかったらな」
はっ、と申し訳なさそうな仕草をする詩月に俺は「いいよいいよ」と軽く答えた。
「新しいお父さんとはうまくやってる?」
俺は少し声のトーンを低くして吐き捨てるように答えた。
「殴られたから殴って蹴ったら出て行った」
「…はい?」
俺は元々とある会社の社長の息子であった。だが、それは幼稚園の3年目までのことだった。父は突然の病で倒れ、そのまま死んでしまった。親族は父しか知らなかった俺がいったのは養子だった。
俺は日山家に引き取られた。日山家は父である日山晃介を始め妻と娘がいた。
最初はとても歓迎された。しかし、日山晃介は酒癖が悪く、アルコールが入ると俺たちに暴力を振るうようになった。
俺はこの家に迎え入れてくれた恩は仇では返すまいと晃介に酒が入る度、義母と義妹の為に殴られに行った。
ある日、義母と義妹は出ていった。
それからというもの、晃介の暴力は日に日に激しくなっていき、俺は学校へ行けなくなってしまった。そんな時出会ったのが古武術の師範柳沢さんだ。この人との出会いが俺の人生を大きく変えた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。