遊戯王THE・STORY 『メタモルとユベルと時々私』   作:半生緋色

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デュエル描写なしの、入学デュエル編後半その一です!
いつものように長くなったのと場面切り替えのための分割です!
というよりも、回を追うごとにどんどん長くなってる気がします。
分割後編は今日中にUPしたいなー


シェアワールド元の小説に追いつけるのか心配になってきたorz


敗北、そして

砲撃の爆音が止み、閉じていた瞳をゆっくりと開く。

デュエルディスクから投影されていたソリッドヴィジョンは光の粒子になっていき、最後まで残ったユベルに、私は小さくだけどごめんと呟く。

 

次は負けないから。

 

そう心の中で言葉を続けて、消えていくユベルを最後まで見つめる。なんとなくヴィジョンのユベルも微笑んでくれた気がする。

悔しい…負けたこともそうだけど、ユベルをまだうまく使いこなせていないことが。自分の全力がまだこの程度なのが。

でも、この悔しさがあればまだ成長できる。成長すれば、いつかユベルを使いこなすことができるかもしれない。

そう思えば、少しだけ前にすすめる気がした。

私は今までと同じように止まっている訳にはいかない。ユベルの隣を歩くつもりなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで試験デュエルは終了だ。合否の発表は全てのデュエルが終了してからこの会場で行われる。負けたからと言って…」

 

「帰ったりはしませんよ!こんなに楽しそうなところ…じゃなかった。えっと、デュエルありがとうございました」

 

 

反射的に声を出してしまう。…多分これは久しぶりの楽しいデュエルのせいだ。敗北は辛いけど、それでも自分の全力で破れたのだ。全力を出すことができた事、それが嬉しくて、私はいつものように敗北したというのに笑顔を浮かべていた。

そんな私の笑顔に、どこか毒気が抜かれたのか、少しだけ困ったような表情の試験官が少し面白い。

 

 

「まあ何だ、君には少しすまないことをしたかもしれないが…」

 

「すまないも何も、負けたのは私の実力不足だし、試験だからといって、手を抜かれて勝っても嬉しくありません。…だから、さっきのはアレでいいんです。いや、負けるのは悔しいし、良くないけど。だからこそ…次はそう簡単に譲りませんよ?私はこう見えて、負けず嫌いですよ?」

 

 

そんな試験官が言い切るよりも前に、そのままありったけの悔しい嬉しい感情を言葉に乗せてぶつける。仕方がない、こんなに感情的になるのなんて久しぶりだから。それに試験官さんなら受け止めてくれそうな気がしたから。

 

 

「…君には必要ない言葉かも知れないが、負けは勝利するよりも学ぶことが多い。負けはいつか君の財産になる。君が私を倒せるまでに成長するのを楽しみにしているよ。…では、次のデュエルがあるので1192番藍沢、終了まで会場の中で待機していてくれ」

 

 

待機という言葉に、私は名残惜しそうにデュエルフィールドを見つめる。『もっとデュエルをしたい』もちろんそんな我儘は許されないがそれでもこれぐらいは言ってもいいだろう。

 

 

「わかりました。…私必ず再戦します。だから、再戦の約束をしてくれませんか?」

 

「…それは、来年もまた受けるという意味でとってもいいのかな?」

 

 

あ、これは意地悪な笑みだ。わかってやっているのはわかるけど、一応は止めておこう。

それはそれは困ったような顔を私はわざと浮かべながらも言葉を返す。

 

 

「ああ、それは困ります!えっと、できれば、入学してから再戦したいかなー…なんて」

 

「それは君次第だ。君が合格していればその機会は必ずある。しかし…こんなことをこの場で言うのもあれなのだが、一応今も試験中だからな?」

 

 

やはり喋りすぎてしまったようで釘を差された。それでも約束とも取れるその言葉に私は満足したように頭を下げる。

 

 

「あ、はい、すみません黙ります!…試験官も、残りのデュエル負けないでくださいね」

 

 

私が勝てなかったのだ、そんなこの人に勝つ人がいたら、ちょっとだけ悔しい。

 

 

「…まあ、努力させてもらうさ。では、次のデュエリストの呼び出しを行う。次は…」

 

 

そんな私の考えを読み取ったのだろうか、少し考え苦笑しながら返してくれた試験官に私はもう一度小さく礼をして、その場を離れるように歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それにしても…

 

 

「お、アイツがデッキ破壊使ったやつか?」

 

「お前声かけてこいよ?」

 

「すごい根性してるよな…」

 

 

少しだけ目立ちすぎてしまったかな?

…なんとも野次馬根性あふれる会話だろうか。なお、その当事者な自分には辛いものである。

聞こえる声、視線に苦笑いを浮かべながら私は会場の中を見回す。

先程の対戦相手である試験官さんは相手がまだ到着していないので、他のフィールドを見ようと立ち止まれば、それと同時に野次馬数人の足が止まる。少ししてその中のひとりが何かを言いたそうに私に歩み寄ってきた。

その気配に野次馬さんにしては根性あるな~なんて思いつつ、そっとそちらに視線を向ければ近寄ってくる影は小柄で、多分女の子だろう。

このまま声をかけられると少しだけ荒ぶった感情では何を口走るかわからない…こういう時は

 

 

「あの、試験でのあのデッキ…」

 

「私、日本語分からないノーネ」

 

 

なんて、昔何故かデュエルアカデミアで流行っていた、とある教諭の口調らしい?言葉で聞かなかったことにする。

今日始めて会っただけのただのギャラリーならだいたいこれで煙に巻ける。

…そう思ってたのだが。

 

「え?あ、あの!…あ、ちょっと、待ってください!」

 

「待たないのでアール」

 

 

どうやら駄目だったらしい。呆気にとられつつも果敢に声をかけてくる彼女を無視して私は歩き出す。

それにしてもしつこいな…楽しいデュエルの後だから、私全然落ち着いていないのに。

今、仮にデッキ破壊を、メタモルを、私の戦略を否定される言葉を聞いたら、きっと溢れる思いが悪い意味で止まらない気だろう。

端的にいうと、相手が男性なら感情のままに無言で腹パンを繰り出す可能性もある。

いや、余程のことを言われなければそんなことはしないけど。そもそもそんなことすれば多分受験で落ちてしまうけど。

それぐらい今の私は抑えが効かないのだ。…早くこの場を離れなければ。

ああ、建物のスミスが恋しい…あそこなら人の目なんて気にならないのに。

そもそも、なんでデッキ破壊ぐらいで私は目立たなければいけないのだ!

デッキ破壊の一般浸透を私はプロになったら訴えてみよう。

そう心に誓いつつ、彼女を無視して歩く…だが、やっぱりそれを止めるように立ち塞がる彼女。

 

 

「…待たなくてもいいので、これだけは言わせてください」

 

 

言いたいこと?…そんなに私のデッキが気に入らないのかな?そう思い、真っ直ぐに彼女の顔を少し睨みつける。

男性の体にしては小柄な自分よりもさらに小柄な、きっと男子的に見れば可憐で華奢などという言葉が似合うのだろう眼鏡の彼女を。というよりも、どう考えても相手の印象は見た限り内気な感じがするのだけど。普通ここまでされれば何も言わずに立ち去ると思ったのに。

こういうのはアカデミアを辞める前に何度もあったから私は慣れっこです。いや慣れすぎて、それで荒んでアカデミア辞めたのだけどね!

 

そんな私の心を読んだわけではないだろうけど…それでも、そんな私を止めるように、彼女は私に諦めず予想外の言葉をかけてきた。

 

 

「…すごかったです!あんな風にメタモルポッドでデッキを回し切るの」

 

 

そう喋る彼女の目には、その言葉には悪意など無くて、純粋に尊敬の念さえ感じた。

だから私は、その言葉を理解するのに少しだけ時間がかかってしまって、そんな少しの空白の間、辺りからは険悪な雰囲気に様子を見ていた周りのギャラリーの「え?」なんて声が聞こえた気がする。

少しだけ気持ちを落ち着かせるための深呼吸。

うん、落ち着かない。深呼吸すれば大丈夫って言ったの誰だ!

ああもう、そんなこと言っちゃいけないのに。今私全然落ち着いてないのに…。

でも、仕方ないよね?これは向こうから話しかけてきたことだし。

…つまり、私と話がしたいということだよね?きっと私が今から何か口走っても受け止める覚悟があるということで、ファイナルアンサー?うん、答えは聞かないけど。

押し黙る私に、どうやら何か不味い事を言ってしまったと勘違いしたのか、少し慌てだす彼女に私は…

 

 

「わかる?これも愛のなせる技だよ!」

 

 

ギュッと躊躇すること無く彼女の手を握り、先程とは違ってとても楽しげに、実際嬉しくて仕方がない私は満面の笑みを浮かべながら彼女に言葉を続ける。

彼女の言ったそれは、今の私にある意味一番言ってはいけない言葉。そして、これが長い付き合いになるその子との忘れられない最初の接触になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さて、一番の難題は色んな意味で終わっちゃったけど、後は気を楽にして色んな人のデュエルを見に行こうか。…それにしても、ここだとユベルも元気そうだね』

 

 

声をかけてきた女の子にありったけのデッキ自慢とデュエル論を語りきって、すっきり顔で落ち着いた私は、その女性(名前は聞き忘れたが今度会えたら聞いておこう)と別れブラブラと試験会場を歩き回っていた。

先程の彼女との問答の様子が程よい人払いになったようで、遠目に私を見てくる目はあっても直接話しかけてくる人はいない。というよりも、なんだか聞こえてくる声に「メタモルポッドフェチの変態」って聞こえたのはきっと気のせいだと思いたい。

そんな声を無視して私は心の中でユベルに語りかける。理由は単純に周りの目があるからだ。

…人の目が気になるなら普段から心の中で会話すればいいのだが、これはこれで結構集中力と精神力を使うもので、普段は普通に声に出して話しているのだけど。

 

 

『…デュエルエナジーが溢れてるからね』

 

 

そんな私のデュエルと激論の後で減っている精神力と集中力を使った言葉の返答はそっけないものだった。そっけないくせに声からは元気が有り余ってる感じがする。端的にいうと覇気がある。

ねえねえ、元気そうなユベルさん、そろそろ私は聞いてもいいと思うのだ。

 

 

『出会ってから思ってたんだけど、そのデュエルエナジーって結局何?』

 

『口で説明するのは難しいね。僕みたいなカードの存在が存在するのに必要なエネルギーだと思ってくれれば』

 

 

うん、意味がわからない。カードの存在が存在するためってところが特に。

これはきっと私の理解力が低いからではないと思う。

そう思いながら、私は目についたデュエルフィールドのデュエルに何気なく視線を向ける。

うーん…おお!レッドアイズだ!アレでデッキを作るなんてお金持ってる人もいるんだなーなんて思っていると、続く試験官側の無慈悲なバスター・ブレイダーを見て私はそっと目をそらした。

受験生、強く生きるんだよ。まあ、私も負けたのだから何も言えないが…。

 

 

『…ユベルが存在するのに必要ってことは、逆に言えばエナジーがあれば他のカードも?』

 

『その意思があればね。…そもそもどの様なカードにも、モンスターカードであれば少なからず意思がある』

 

 

無茶苦茶なことを言っている気がするが、ユベルの言葉に私は少しだけ納得する。

もしそうなら、私の手札に彼が来てくれるのも理解できたから。

 

 

『なら、メタモルポットさんにも?』

 

『…むしろ、意思がないと思ってるのかい?』

 

 

ユベルがジト目で逆に問いかけてくる。あ、その視線とてもいいです。

何となくドキッとする自分にそっち方向の何かがあるのかもしれない。

…ダメダメ!おかしな事を考えてはいけない。最近気づいたのだけど私の考えてること、断片的ではあるがユベルにも知られている気がする。

私は誤魔化すように、そっとその視線から目をそらし。

 

 

「…全然。いつもありがとうございますメタモルさん」

 

 

デッキからカードを一枚取り出す。適当に選んだカードだけど多分来てくれると思ったメタモルポットさんに小さく声をかける。

 

 

『何を動揺してるかわからないけど、声が漏れているよ陽彩。…まあ、喋る喋らないはそのカードの精霊の力次第だね。君のメタモルなら喋れても可笑しくはないけど』

 

『動揺なんてしてないよ!…でも、それは聞きたいような聞きたくないような』

 

 

さっき硫酸に落とした上で吊り天井で叩き壊した後ですし。あ、もちろん愛のムチです。

でも、愛着か…私はまず間違いなくこの子に愛着を持っている。それがこの子に力を与えたのなら嬉しいのだけど。そういえば、似たような話を何処かで聞いたことがある。あれは…

 

 

「…なんだか付喪神みたいだね」

 

『付喪神?』

 

 

思考ではなく、声に出た言葉にユベルが今度は逆に聞き返してくる。

 

 

『長い年月使ったものに、霊や神様が宿ること…だったかな?私流石にそこまでは詳しく知らないけど、昔何処かで聞いたことがある』

 

『その認識はあながち間違いじゃないね。思い入れ、デュエリストの思いが強ければ強いほどカードに込められるデュエルエナジーも増えるし』

 

『じゃあ…ユベルも昔は誰かに使われていたのかな?』

 

 

それは何となく今まで聞けなかった言葉。ただ、帰ってきた言葉はどこまでも悲しげで

 

 

『残念だけど、僕はその記憶を無くしている』

 

『…そうだったね。なんかごめん』

 

 

淡々と語られるそんな心の声を聞いて、私はただ謝ることしかできなかった。

記憶が無いという状況は私にはわからない。生まれたときの記憶が無いのか、それとも断片的に抜けているのかそれすらまだ私はユベルから聞き出すことが出来ずにいた。

ただ、これだけは想像できる。それは恐怖しかないのだろうということ。

私には苦い経験も、後悔もいっぱいある。それらの積み重ねで今の私がある。

その今の自分を構成する記憶と経験が一部でも欠けているのなら、そして、それが理解してしまったのなら、そう考えるだけで私はきっと私でいられなくなる自信がある。

 

それから私達は何となくお互いに声をかけづらくなって、周りで行われている試験デュエルの様子を只々眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数刻、最後の試合終了の合図が聞こえる。残っていたデュエリストの興味がその一点に集る中、私はデュエルフィールドの周り人混みの中からではなく、自分たちが最初にいた、人気の少ない会場の隅、壁沿いに設置された長椅子に座りながらモニター越しにその様子を眺めていた。

 

 

「…さっきのデュエルで一応は全部終了かな。うーん、やっぱりデュエルはいいね~。観戦してるだけでもワクワクする。えっと、ユベルは…どう思った?」

 

 

なんとなくずっと話しかけられずにいたユベルに、私はちょうどいいきっかけとだと思い、そう話を振ってみた。これで、只々無言で流されたらさすがの私も凹んでしまうが…

 

 

『…流石にそれなりのデュエリストは揃っていただけはあるね』

 

 

ぎこちなくではあるが言葉を返してくれるユベルに安心しつつ苦笑を漏らす。どうやらお互い話しかけるタイミングを図っていたらしい。

 

 

「それにしても、やっぱり面白いデュエルがいっぱいだった。…これじゃあ、デュエルに負けた私は入学は難しいかな…」

 

『君はデュエルの内容に夢中で勝敗は気にしてなかったみたいだけど…僕が見ていた限り、試験官に勝った受験者一人もいないみたいだけどね』

 

「え?何それ試験官怖い」

 

 

正直それが本当なら、試験官達は化物か。いや…でも、伝説のデュエリストクラスの実力者が先生ならそれが普通なのかも…なんて考えていた私にユベルが補足するように言葉を続けた。

 

 

『普通に考えれば、ある程度受験者のデッキ戦術を会場側が把握していて、それぞれにあった対戦相手にぶつけられたんじゃないかな?』

 

「…確かに、相性悪いと思う試合も多かったし、あ、それで私のことを知っている素振りだったのか。デッキ枚数も変だったし、各試験デュエル前にデッキを組み替えてましたね…試験官さん。だから本来試験で使うようなカードじゃないと。…まあ、私は楽しかったからいいんだけど」

 

 

ただ、仮にそうだとすればそこには必ず意図があるはず。

…受験者を全員可能なら負かしておく必要があったということか。

理由はいくつかあるだろうけど、あくまで渡しができるのは想像だけ…

 

 

「仮に勝った人がいたら、入学は確定で奨学金が出る!とかかな?まあ先生を超えてたら、確かに授業料払って学校に入る意味もそんなにないもんね。デュエルアカデミアを卒業した段階でプロ入りしている人も多いし。……私、入れるかなー」

 

 

少なくとも全員が負けたのなら、後はデュエルの内容が審査対象になるはずだ。

そう考えると、少し不味いかもしれない。…だって

 

 

『陽彩の戦略ははっきり言って外道だからね。心証悪いんじゃないかなー』

 

 

ユベルが私の考えていたことをズバリそのまま口にする。

いけない、その言葉は私に効く。

 

 

「ああ…、身も蓋もないこと言わないで。地味に一番気にしてるのに」

 

『でも、変える気はないんだよね?』

 

 

ユベルは表情を変えることなく、いや、少しだけ楽しそうにそう囁いた。

そんな表情でズバズバと言ってくれるユベルさんは本当に天使だと思います。

ただその言葉に、私は数秒考える素振りを見せ

 

 

「私思ったんだ、嫌われたのはさ、きっと私の実力不足だって」

 

『…今誤魔化したね』

 

 

ああ、やっぱりそのジト目がいいです。っと悟られてはいけない。

緩む顔を引き締めて私はユベルを見て言葉を続ける。

 

 

「だから、私はもっと強くなって自由自在にデッキを回せるようになる。信頼してるよ?ユベル」

 

『信頼するのはいいけど、使いこなせるかどうかは君の努力次第だよ?』

 

「はい、肝に銘じておきます」

 

『…緩んだ顔で言われてもねぇ』

 

「あ!?やっぱり緩んでた?」

 

『冗談だったんだけど。…っと、陽彩、誰か来たみたいだよ?』

 

 

ユベルの言葉に慌てて辺りを伺う。この状況を見られていれば完全にただの独り言を言っている不審者だ。更にフードもかぶっているので怪しさに拍車が掛かっている。

 

 

「あ、やっぱりいた!藍沢さんですよね?」

 

 

ただ、そんな怪しい私に声をかける相手の顔を見て、どこか安心して少しだけ顔が緩む。

流石に友達をすごい勢いで無くし、黒歴史にして思い出を心の奥に封印した私でも、さっきまで話していた相手の顔までは忘れない。

 

 

「えっと…わざわざどうしたのかな?」

 

「もうすぐ、合格者の発表なのですよ。それで、あの…なんだか人混みを避けてるみたいで気づいていないかもしれないって…」

 

 

そっけなく返す私に、彼女は先程の最初のやり取りを思い出したのだろう、途端に表情が曇る。ああごめん!あのときは落ち着いてなかったから。私は急いでフォローするように自分の中で柔らかい方だと思う笑みを浮かべる。

 

 

「…うん、ごめん。それと、ありがとう」

 

 

私の声を聞き、曇っていた表情がとたんに晴れる。なんていうか、コロコロ表情が変わる子だなーなんて呑気に思っていると。

 

『デュエル中の君も人のこと言えないレベルで、コロコロ変わっているけどね』

 

 

なんて言葉が聞こえる。うう、やっぱり心を読まれてる。

ただ、彼女の言葉はそれで終わりではなかった。

 

 

「それで、よろしければ一緒に見に行きませんか?私、ここに一人で来たんで、なんとなく心細くて…」

 

 

多分、こっちが本題なのかな?意を決したよう問いかける彼女の言葉に

 

 

「あ~…私は別にかまわないけど…。ただ…」

 

「ただ?」

 

 

少しだけ言葉を濁して答える。その言葉で察したのか

 

 

『…僕も別にかまわないよ』

 

 

ユベルがそう答えたのなら、私は安心だ。どこか不安げな彼女に、最初の悪い印象をここで払拭しようと、もう少しだけ努力して優しく微笑みかける。

 

 

「ごめん。言い方が悪かった。私からもお願い。…実は私も知り合いがいなくてさ。こうやって一人寂しく建物のスミスで結果を待ってたんだ。」

 

「…建物のスミスですか?」

 

「そ、建物のスミス。私にみたいなはみ出し者はこういう所がお似合いなのさ!じゃなかった、単純に落ち着くんだよ」

 

「…なんとなくわかります。私も時々一人になりたい時がありますし」

 

 

うーん、実は私の場合二人で話したい時なんだけどなんて、口が裂けても言えない。

 

 

「そんな感じ。それとさっきはごめんね。…私って、デュエルが大好きだったから。こう、デュエルが終わった後は、感情が高ぶったままで、何ていうかふわふわしてるからさ。何か話しかけられると感情的になっちゃうんだ。だから、あの時話しかけられないようにあんな態度取っちゃっただけだから」

 

「え?あ…いえ、気にしてません。その後の感情的なお話も大変興味深いものばかりでしたし。特に、友達を作ろうと思って作った握手デッキの話とか」

 

「アレは…うん、すっごく楽しいデッキなんだよ。相手のえ!?とした顔なんて特に。っと、その話をすると長くなるからさ、とりあえず先に結果発表見に行こう?」

 

 

危ない危ない…、彼女がとても楽しそうに笑うものだから、私もまた語りだしそうになったじゃないか。そんな私に淡く笑みを浮かべながら彼女はキャリングケースから、入学試験概要が書かれた資料を取り出す。

 

 

「えっとですね、合格者はメインデュエルスペースで試験官が名前を読み上げて発表するらしいです。…一応はいない人の為に会場設置ディスプレイでも合格者の番号はわかるらしいのですが、入学に際しての注意事項などもあるみたいです」

 

『緋彩、デュエルで頭いっぱいで、そういうこと忘れてたわけじゃないよね?』

 

 

番号が発表されるならモニターでも良いか。…なんて思ってた私の思考を読んでいたユベルに釘を差される。誤魔化すように私は急ぎ歩き出し始め早口で

 

 

「なら、善は急げ!できるだけ前に行って、合格したデェリストの顔覚えておかなきゃ」

 

 

そう言って彼女に手を差し出す。

 

 

「そうですね、もしかしたら同級生になるかもしれませんし」

 

 

そう言って、私の手を取ろうとする彼女に…

 

 

 

「私が落ちていた場合、辻デュエルで鬱憤を晴らすためだよ」

 

「…え?」

 

「ああ、ごめん!冗談だから、そんな地味に距離を取らないで!…でも、確実に強い人だから機会があれば戦いたいかなって」

 

 

少しだけ巫山戯てみたのだけど、思った以上に普通に返されてしまって戸惑う私を見てユベルが笑っている。仕方ないじゃないか!最近ずっと一人だったから。

でも、そんな彼女はそんな私を笑うでもなく

 

 

「…本当に、デュエルがお好きなのですね」

 

 

ただ、真っ直ぐそう問いかけてくる。いや、問い掛けというよりも確信を持って。

そう問われて私は考える。今まで出すことのできなかった答えを。好きだったデュエル、友達を奪ったデュエル…それでも、それを含めても私は

 

 

「うん。間違いなく大好きだよ」

 

 

すんなりと出すことができた嘘偽りのない言葉。いざ言ってみるとやっぱりそうなんだなと実感する。

私からデュエルは外せない。楽しい思い出はデュエルとともにあって、悲しい思い出も、友達もデュエルで無くした。良いことも悪いことも含めて、きっと私の全てが詰まっているのだろう。

だからだろうか、なんとなく私にもわかった。

 

 

「そういう君だってそうだよね?じゃなかったら私にあんなこと言わないもん」

 

「…はい。私も大好きです」

 

 

そう言って笑う彼女につられて私も微笑んだ。なんとなく出せなかった答えを引き出してくれた彼女に心のなかで感謝しながら私達二人は自然に手をつなぎ歩き出した。

 

 




期待の新キャラです!使用デッキは既に決まっていたりします。
ある意味私の自己満足で書いているストーリーなので、仮にキャラクターで出たい方がいらっしゃいましたら連絡していただけると助かります!
あと、求むネタ!
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