新訳:ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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第二話:霧の洗礼

 同日

 

 現在:???

 

 辺りが霧で包まれた場所に洸夜は立っていた。

 無表情で辺りを見ながら、自分は部屋で眠っていた筈だと洸夜は思い出していた。だが、思い出しても何故この様な場所にいるのか答えにはならない。

 更に言えば洸夜は自分の状態を確認すると左腰には袋に入れて稲羽に持ってきた刀が、腰の後ろにはペルソナ全書。そして左肩にはホルスターに入った白き銃型の召喚器がある事が確認できた。

 これらは全て自分の部屋に置いていたものだった。

 

「なのに何故……?」

 

 洸夜がこの異常な事態が飲み込めずに混乱しそうになった。その時だった。

 

“良く、来ましたね……”

 

「……!」

 

 まるで頭に直接声を流された感じで声を聞かされ、洸夜は刀に手を添えて警戒した。

 だが、何処からも気配は感じない。霧だけが辺りを支配し、強いてあげるならばこの霧が洸夜が直接確認できる唯一の存在だった。

 

(まさか、いきなりこんな事になるなんてな……)

 

 洸夜は頭の隅には常にこういう万が一の事態との遭遇も置いていたが、まさかの初日からのエンカウント。

 実際は動いてもいない為エンカウントとも言えないが、早速、巻き込まれた事実には流石に驚くしかなく、困った笑みを浮かべてしまう。

 

(……見張られているのか?)

 

 いつまでも笑っていられない。洸夜は視線だけで辺りを見るが意味のない事だとすぐに知る。

 

“私はそこには居ませんよ。私に会いたいならば追って来て下さい。さあ、奥にどうぞ……”

 

「……」

 

 語り掛けてくる声に洸夜は罠の可能性も考えた。だが、此処が何処か分からない以上は既に罠に嵌められたと同じ。

 何処か分からない場所、そして謎の声からの誘い。完全に洸夜は相手の言われるがままだった。

 

「こちらからどうする事も出来ない以上、この声に従うしかなさそうだ……」

 

 半ば諦めた様に呟きながら洸夜は歩き出した。霧が濃く、ちゃんと前に進んでいるのかどうかすら分からないが、それでも洸夜は足を止めずに一歩、また一歩と少しずつ前進して行った。

 

▼▼▼

 

 あれからどれ位歩いたのだろうか? 正確に分からない、かなりの距離を進んでいると洸夜は思った不思議と足には疲れがなかった。

 そして、暫く歩いている内に洸夜はこの場所の雰囲気が“影時間”に似ている事に気付く。

 

「雰囲気は影時間。だが、不快感はそれ以上だ……」

 

 それに……。洸夜はそう呟いて辺りを覆う霧に視線を向けた。その霧が自身に纏わり付く様な感じを抱いたからだ。

 一体、何故これ程までに霧が濃いのだろうか。ここの居場所を知られたくないからなのだろうか。

 洸夜は己の疑問に答えは出ないが、直感的にここの霧はただの霧では無いという答えが出た。

 そんなことを思いながら再び歩くと、前方に扉らしきモノを洸夜は見つけた。

 

「コレは……?」

 

 洸夜が扉に触れると、ガチャガコンッとパズルが解けたような音と共に道が開ける。

 だが扉の先もまた霧で覆われていた。全く全貌は確認できない。暫く進んだと思えばこんな一方的なイタチごっこ。

 洸夜はそんな現状に面倒そうに息を吐いていた。

 

「……全く。……しょうがないが行くか」

 

 覚悟を決めたと言うよりも諦めが勝り、洸夜はその先へ足を踏み入れる。

 

▼▼▼

 

 現在:???

 

 扉の向こう側を暫く歩き続けると、霧で覆われていた世界の一部が若干だが晴れ、ここが広い空間である事が分かった洸夜はその場で足を止めた。

 

(マシにはなったが霧が濃いのは変わらないか……晴れるならばいっその事、全て晴れてほしかったが)

 

 中途半端に晴れる霧に文句を思う洸夜だが、その瞬間に空間の空気が一変する。

 

“良く来ましたね”

 

「ッ!?」

 

 再び洸夜に聞こえた謎の声。しかし、今度はそれがとても近くからのものだと本能が警報を鳴らす。 

 洸夜はそれに従い刀を握り、いつでも戦える体勢に入っていた。

 すると、洸夜は気付く……。

 

「!……ようやくか」

 

 自分の目の前に霧で覆われて完全に姿は見えないが、霧によって見えるシルエット。そこに何者かがいる事に……。

 

「お前か、俺を此処に呼んだのは?」

 

”えぇ……貴方の力に興味があるのですよ。他の方にはないその力に……”

 

 ???の言葉は純粋な興味からの様に読み取れたが、同時にどこか挑発的な様だとも洸夜は思った。

 要約するならば……。

 

「力を見せろ……って事だろ?」

 

 瞬間、洸夜から蒼白い光が溢れ出た。幻想的な美しき蒼白き光だが、洸夜の髪と服をなびかせる力強きものでもある。

 その光景を霧に中から見ているのだろう。???はクックックッと笑い、洸夜の力が本物であることを認めた。

 

”素晴らしい……これ程とは……”

 

「……」

 

 ???の言葉など意味ないもの。そう言わんとするかのように洸夜は沈黙しているが、その左手には白銀の拳銃が握られている。

 それを洸夜はそのまま左の蟀谷(こめかみ)へ銃口を押し付け、その瞳は閉じていた。

 動きは先程よりも静か。だが溢れ出る蒼白き光の輝きは更に強くなり、洸夜は己に眠りし存在を呼んだ。

 

「ペ……ル……ソ……ナ……!」

 

 その言葉が言い終えた瞬間、洸夜は瞳を開き、その瞬間に引き金を引いた。

 

 パリィィン――!

 

 何かが割れる様な音。それが反響するかのように辺りに響き渡った。

 己の内なる存在、もう一人の真なる自分を呼ぶ条件が揃っていた。

 故に、洸夜はその『仮面』の名を叫ぶ様に呼んだ。

 

「来い……!――”アイテル”!!」

 

 洸夜のペルソナ。それは澄み渡った輝く大気の神格化、その天空神『アイテル』の名を持ちし仮面だった。

 アイテルの黒き長髪の隙間から覗き込む赤き瞳が???へ向けられる。

 

『我は汝、汝は我。……我が名はアイテル。黒き可能性の一つなり』

 

 洸夜とアイテルの動きがシンクロし二人の左腕が???へ翳された。

 瞬間、アイテルの手に蒼白い光が集まり、それは()()()()

 

『上天の光明』

 

 巨大な光。巨大なエネルギー波。一言で言えばその様な例え。

 それが???を己を隠す霧ごと呑み込む。

 

”!?”

 

 音もなく全てを呑み込む光明。

 それがこの瞬間だけ空間を支配した。並みの大型シャドウならば塵も残せないだろう。

 洸夜もそれを一番理解している。そしてある異変に気付き、洸夜が鋭い眼光で先程まで???がいた場所へ向けた。

 その場所はまるで傷を治すかのように霧が再び集まり出しており、そこに再びシルエットが浮かび上がっていた。

 

「お前は……そこにいるのか?」

 

”勿論、それが”真実”なのですから……目に見えて、実際は全く違うものを見ている。又は魅せられている。真実はいつもあなた方の近くにあるにも関わらず、それを気づけない……”

 

「……そうか。なら……!」

 

 面倒になると表情に出しながらも、洸夜は己を包む蒼白い光が再び強くした。

 そして再び引き金を引き、新たな仮面が呼び起こす。

 

「ヘメラ!」

 

 新たな仮面、昼の神『ヘメラ』の名を持つペルソナ。

 ヘメラは暖かな光を放ち、その神々しい女神は瞳を閉じた。

 

”む……?”

 

 先程の様な先手必勝な攻撃が来ない事に???は疑問を持つ。

 攻撃が来ない、ならば何か策を練っているのだとしか思えない。

 

”フッフッ……!”

 

 ???は霧の中を移動し周り、再び洸夜の前にシルエットが現れた。

 この迷いの霧の中で洸夜に打つ手はない。そんな上からしか見ない存在、その行動が洸夜の狙う隙を生み出した。

 

「ヘメラ!!」

 

 洸夜の言葉にヘメラの瞳が開き、辺りに光を放つ。

 

『昼光の道標』

 

 光が辺りへ放たれた瞬間、洸夜の顔付が変わった。刀を抜刀し、そのまま己の背後へ振り下ろす。

 それは丁度、シルエットとは正反対の場所であり、シルエットも何もない場所だった。――しかし。

 

”があぁ……! 馬鹿な……何故……!”

 

 ???の悲痛な声、そしてポタリポタリ……と何かが滴る音が辺りに反響する。

 

(手応えはあった……)

 

 洸夜の反撃の要。それはヘメラの能力があったからこそだった。

 ヘメラは洸夜のペルソナの中で唯一の『探知特化』のペルソナであり、その能力を用いた僅かな隙を突いた攻撃を洸夜は仕掛けた。

 探知特化のペルソナに()()()の刀。

 少なくとも好き勝手やられた事への一矢は報いた。

 そして己の疑問に答える気がないと分かったらしく、???の様子が変わる。

 

”……やはり危険な存在でもあったか……フフ……今回はこれまでのようですね”

 

「流石にここで逃がす気はない……」

 

 洸夜は再び刀を振ろうとしたが、それよりも先に霧が洸夜を包み込む。

 

「なんだ……! やはりただの霧じゃ……!?」

 

”……フフフ。また会いたいならば……真実を追うのですね。それがあなたの……人の望む真実ならばまた会えるでしょう……”

 

 その言葉を最後に通信を切断された様に、洸夜の意識は現実へと強制的に戻された。

 次に目覚めたのは新しい己の部屋の布団の中だ。

 

 

END

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