新訳:ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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仁王のヌエが強いよ(´;ω;`)


第三十二話:久保 美津雄と言う男

 7月30日 (土) 曇り

 

 現在:ジュネス 【特別捜査本部】

 

 平日の午後に賑わうジュネスの休憩所。ある客は売店でアイスやかき氷を購入して食べていた。又ある者は備え付けのテーブルに座りながら談笑し、またある者は立って食べて楽しんでいた。

 そんな賑わうジュネスの一角、屋根付きの休憩所で悠達は集まり、昨日のマヨナカテレビについて話し合っている。

 犯人は模倣犯であり、テレビの世界の存在も知れない者で真実を追う者達に偽りの真実をばらまいて惑わす。

 それが直斗と洸夜の考えだったが、既に美津雄は知らない筈のテレビの世界に逃げ込んでおり、最初の二人の殺害を仄めかす事を周囲に言いふらしていた事も既に判明している。

 警察は行方を眩ませた美津雄を血眼になって追っているが……決して見付かる筈はない。

 

(どっち道、早くあの少年をテレビから連れ出さなければシャドウに殺されて死ぬ)

 

 気付いているのかどうかは分からないが、美津雄が自分が今までしてきた殺害方法によって自分の身を危険に晒している事に悠は何とも言えない想いを抱く。

 

「皮肉だな……今度は自分がシャドウに殺されそうになるなんて」

 

 その悠の言葉に陽介達は顔を上げた。

 

「このまま放っとけば、アイツは裁かれる前に死んでしまう。だが、そんな事はさせない」

 

「勿論だ!……アイツはなんの償いもしてない。絶対にそんな事は許さねぇ!」

 

 陽介は人一倍強い気合を抱いていた。

 犯人を救出するのはやはり抵抗があるが、このままシャドウに殺されてしまえば分かる事も分からなくなり、出るとこに出て裁けない。

 悠達は自分達の胸に生まれる複雑な感情を静め、テレビに行く事を決めた。

 

「良し……なら、此処で少し情報を整理したらテレビの中に行くぞ」

 

 悠の言葉に陽介達は頷き、洸夜から預かった一枚の写真を取りだしてテーブルの上へと置く。

 

「……一応、皆に聞いておきたい。この少年……"久保美津雄"と接点は? 少なくとも、りせの所には来ていたと兄さんは言っていた」

 

 悠は真剣な眼で陽介達へ言い、陽介達も言葉に合わせて写真を見つめると全員が思わず表情を歪ませた。

 

「ニュースでも映ってるけど……相変わらず気味が悪いな」

 

「このうっすらとした笑みが何か見下されてる感じがして、良い印象が持てないよ」

 

「……少なくとも、どっかで会ってたら忘れらんねえ顔だな」

 

 陽介は険しい表情を浮かべ、りせは複雑な表情、完二はあまり興味を持てない様だ。

 全員が手厳しい意見の中、悠は意外にも情報が出ない事に一息入れて己を落ち着かせる。

 

(誰も会っていないのか。……今までの被害者にも接近していると思ったけど、そうでもなかった?)

 

 悠は自分の考え過ぎかと思い、スポーツドリンクをと飲んで頭を冷やす。

 

(本当にモロキンはただテレビに入れずに殺しただけだった?)

 

 悠はスポーツドリンクをテーブルへ置いて腕組をし、他のメンバーも同じ様な格好で考え込む中で千枝だけが何かを思い出そうとしていた。

 

「……私、こいつの事を雪子の近くで見た気がする」

 

「えっ?」

 

「本当かよ里中! いつだ?」

 

 陽介が食い付き、千枝に追及するが千枝の表情はハッキリしていない様に悩みの表情であった。

 

「それが思い出せないんだよね。でも何かつい最近の様な……」

 

 千枝は更に考え込むが、答えはすぐに思い出す事が出来た瞬間、千枝は叫んだ。

 

「あっ! あぁぁぁぁぁぁっ!! 思い出した……こいつ、確か鳴上君が転校してきた日に校門でいきなり雪子の事をナンパした奴だ。出会いがしろに雪子! とか言って」

 

「転校初日? ナンパ……? ……あっ! いたな。確かに久保だ」

 

 眠れる記憶から思い出した千枝と悠の二人だったが、そんあ事とは裏腹に雪子は納得した表情はしていなかった。

 

「そんな事あったっけ? 千枝達の気のせいじゃあ?」

 

 ある意味で天然である彼女は自分が告白された事も気付かない事もしばしば。

 故に久保の存在を思い出せない雪子の言葉に千枝はブルブルと首を振って否定する。

 

「そんな事ないって! 雪子ってそういう事はすぐに忘れるけど、よくよく思い出してみるとアイツ……事あるごとに雪子の側にいたんだよ。つい最近は見なくなったと思ってたけど、停学して転校してたんなら当たり前か……」

 

「確か、ニュースでコイツを停学にしたのがモロキンって言ってたスよ」

 

 完二が思い出したようにニュースの事を話し、悠はそれで久保が雪子達を狙う動機を理解する。

 

「天城はフラれたから。モロキンは停学した恨み……それが動機か」

 

「そんな……私、そんなつもりじゃないのに」

 

 悠の呟きに雪子はショックを受けた様に小さく呟いた。

 

「でも、雪ちゃんへの動機は分かったけども……完二は?」

 

 現実世界に来た事で何故か人間が”生えて”きたクマのその呟きに伴い、悠達も悩み始める。

 雪子の場合はフラれた恨みだが、完二の場合は何なのかが分からない。

 カツアゲ、喧嘩、暴行。何故か物騒な事しか思い浮かばないが完二の性格を知っている悠からすれば否定するしかない。

 しかし、最初の出会いで自分達は完二に襲い掛かられている事もあった悠達。彼等は多少の疑いの籠った眼差しで完二を見詰めると、それに気付いた完二は思わず冷や汗を流す中、陽介が代表して口を開いた。

 

「完二……お前、一体何した?」

 

「はあッ!? 俺は何もしてねえよッ!」

 

 完二は身を乗り出して抗議するが、悠達は気にする事なくドリンクを飲み干す。

 

「ゴクゴク……喧嘩売られて返り討ちにしたとか?」

 

「絶対あり得ねえ! こんな奴、顔を忘れらんねえッスよ!?」

 

 今度は陽介が再度、聞き返す。

 

「本当に本当か?」

 

「本当だっつうの!」

 

 千枝も更に聞き返す、

 

「もしかして……あれか? って事は?」

 

「あ……いや、やっぱりねえって!」

 

「もしかして……完二くんが意識してないだけで、何か恨みでもかってたんじゃ?」

 

「……」

 

 雪子の言葉に黙り混む完二。

 彼の記憶の中でそんな事ならば覚えがあったのだ。

 初対面だと思った相手に『あの時はよくも……』等と自分が分からない恨みによって喧嘩を売られる事もしばしば。

 完二は冷静に今までの事を思い出して行く内に、心当たりが大量に蘇る。

 

(あれか?……いや、あれはもう終わった筈。じゃあ、去年の……いや、あれは三年の奴等だ。コイツとは無関係……)

 

 頭を押さえて必死に考える完二の姿に、悠達もその様子に本当に何かしたのかと不安を抱き始めたが、完二達が悩んでいる間にも既にりせには見当がついていた。

 

「……まさかとは思うんだけど」

 

 久保の写真を見て何か思い出したりせは語りだした。

 それは久保が豆腐屋に来た時の事。りせは久保をあしらう様に相手をしていたが、その時の会話は覚えている。

 

「久保って人との会話の内容って、基本的に誰かの悪口だったから基本的に無視して結局は洸夜さんに助けてもらったんだけど、その時の悪口で一番多かったのはアイツ等は集団じゃないと何も出来ないとか……"暴走族"とかに対する事だった」

 

「暴走族……?」

 

 悠達はその単語をそう呟くと、視線は静かに再び完二へと移動する。

 そしてりせの言葉からその視線の意味が分かった瞬間、完二は驚きの声を上げた。

 

「いやちげーよ! 俺は族じゃねえ! つーか、何でそんなイメージついて……まさか、あの番組のとばっちりかよ!? ふざけやがってッ!」

 

 完二は番組に対する怒りから飲んでいた缶を握り潰して丸め、そのままゴミ箱へと投げる。ゴミは見事にゴミは箱へと入り、少し離れた所から子供が拍手を送った。

 

「じゃあ結局……最初の二人も含め、誘拐した全員に対する動機があるのか」

 

「そうなるクマね……」

 

 悠とクマが話をまとめた結果、少なくとも久保には殺人の動機とは断言できないが、少なくとも今までの被害者全員に対して良い感情を抱いていない事が分かった。

 その事実に小西 早紀の件もあって、拳を握り絞めていた陽介の怒りが爆発した。

 

「ふざけやがってッ! あの野郎……! そんな理由で人を殺してきたって言うのかよ!」

 

「行こう! この事件を終わらせに!」

 

 陽介に続き、雪子の言葉に頷く悠達は椅子から立ち上がって自分の飲み物を飲み干した。

 既に皆の表情からは覚悟が現れており、既に戦う準備は整っている。……だがそんな中、陽介は悠の足下のとある一点に視線を奪われてもいた。

 

「なあ相棒、さっきから気になってたんだけど……一体、そいつは何なんだ?」

 

「コーン!」

 

 陽介の言葉に応えるかのように今の場では場違いな鳴き声が響く。そんな鳴き声の出処である悠の足下に視線を動かすと、そこに居たのは悠の椅子の真下で欠伸をを噛み締めている一匹のキツネがいた。

 身体中に付けている傷跡故に多少は怖くも見えるキツネだが、首から掛けているハートの柄のエプロンがギャップだからか雰囲気は怖可愛いで済んでいる。

 しかし、気配も極力消していただけあって陽介を除くメンバー達は驚きの声を上げた。

 

「うおっ! なんでキツネ!?」

 

「私も全然、気付かなかった……」

 

(なんか……お揚げが食べたくなってきた)

 

「皆……実はこのキツネは只のキツネじゃないんだ!」

 

 完二が驚き、りせも目をパチクリさせてびっくりしており、雪子は一人、お揚げに意識を奪われている。

 そんな中で悠は力強い眼差しと口調で言い放つが、そんな事は言われなくとも分かっている。

 こんなキツネが一般常識の産物ならば、明らかに裏で動いているのはエプロンの業者しかいない。

 

「実は……このキツネは身体を癒す不思議な葉っぱを持ち歩いている。お金を請求が……多分、テレビの中での戦いで役立つ筈だ」

 

「で、でも……葉っぱですよね? 本当なんですか、その非現実的な葉っぱって……」

 

 一般常識ならばりせの言う通り。そんな都合の良い葉っぱがあるならば見てみたいと陽介達全員が思っており、例え存在していたとしても山菜とは訳が違い、口に入れるのは怖い。

 

「いや実際に食べてみた。――問題はない」

 

「なんで微妙に間があるんですか?!」

 

 悠が既に食している事に驚きと微妙に間を開けている事に不安を覚え、りせは椅子から立ち上がりながら言い放った。

 

「悠先輩もなんで食べたんですか! 非現実でしかも葉っぱですよ? 青汁でもなんでもないんですよ!?」

 

「……非現実にはもう慣れた。ペルソナとシャドウに関わっている時点で俺達は非現実の人間だ」

 

「あっ……確かに」

 

 少し楽しそうに話す悠の言葉にりせも思わず納得。

 感覚が麻痺しているが身体を癒す葉っぱよりも、ペルソナやシャドウの方が非現実。

 結果的に自分達の感覚がマヒしている事を実感したのか、りせだけではなく陽介達も苦笑しながらも納得するしかなく、陽介達が納得すると悠は表情を真剣なものへと変えた。

  

「……それじゃあ行こう」

 

「おう!」

 

 悠の真剣な表情、そして言葉に陽介が応え、他のメンバーも力強く頷く。

 そして、洸夜達は新たに仲間となったキツネと共にテレビの中へと足を踏み入れた。今度は友を救出するのではなく、全ての元凶かも知れない者を救う為に。

 

 

▼▼▼

 

 

 現在:テレビの世界【いつもの広場】

 

「う~分かりづらい……」

 

「頑張れ久慈川! 気合い入れやがれ!」

 

「うるさい馬完二! 探知って神経削って大変なんだからね! 」

 

 りせはヒミコの力を使いながらも発見できない事に嘆き、そんな彼女に気合が足りないと発破を掛けようとする完二。

 そんな二人の言い合いを悠達は苦笑しながらも見守る。

 今まで行方不明者が作り出したダンジョンの場所を特定していたのは、殆ど洸夜の力によるものだが洸夜は戦えない。

 その事を悠が陽介達に説明すると不安や複雑な表情をそれぞれが浮かべたが、洸夜が言った成長しているとの言葉を思い出して気合を入れ直して、洸夜が裏から手伝えなくとも陽介達は不安を一切感じさせていない。

 

「じゃあ……鳴上君の腰の刀は洸夜さんの……」

 

「あぁ……兄さんからの選別だ」

 

「二刀流かぁ……格好いいな」

 

 悠の腰に掛けてある今まで使用して来た悠の刀と洸夜からの刀を見ながら陽介は羨ましそうに呟いた。

 

「あんただって二つ使ってんじゃん?」

 

「いや、クナイ二本と刀が二本じゃ全然違うっつうの。やっぱ男は刀だろ?」

 

 千枝からの言葉に陽介はそう返答した。

 自分が好きで使っているとは言え、ロマン的には刀の二刀流の方が格好良く見える。使い易さとロマンは全くの別物なのだ。

 

 そして、暫く悠達がそんなやり取りをし、りせが愚痴に近い言葉を呟いていると、りせが”何か”を捉えて目を大きく開けた。

 

「――見付けた! ここからそんなに遠くない」

 

 りせの言葉を聞き、互いに頷きあって気を引き締める悠達は急いでその場所へと向かって行った。

 

 

▼▼▼

 

 現在:ボイドクエスト【入口】

 

「此処だよ……」

 

「此処だよって……この場所、まるで……」

 

 りせの案内で足を踏み入れた雪子は殺人犯とは思えない場違いの光景に言葉を失い、悠はその光景を一言で表した。

 

「ゲームの世界」

 

 目の前に広がる古いレトロゲームの様な場所。

 周りに生えている草木、火、水はおろか空や大地までもがピカピカと点滅し、ドットの様に存在している。

 眩しい、チカチカする。悠達はそう思いながら、目の前の世界で酔いに近い症状を感じながら辺りを探索し始める。

 

「何処もかしこもゲーム一色かよ。――あん?」

 

 ふざけた世界に怒りを抱く完二だったが、入り口の隣に設置されているモニターを発見して覗き込んだ。

 

"勇者の名前を入力してください"

 

ミツオ

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

「人を殺しておいて勇者かよ……」

 

 完二はその文章に怒りを通り越し、逆に冷静になれた。

 人を殺しておいて、よく自分を勇者等と言えたものだと逆に感心してしまう。

 完二の呟きに気付き、同じように覗き込んだ悠達もそう思う中、悠はモニターの下に設置されているパネルを弄り、何か変化が起きないか試してみた。

 旧式のゲームコントローラーの様なデザインのパネルだった故に、悠は簡単に操作を行えた。

 しかし、だからこそ異変に気付く事が出来た。 

 

「……駄目だ。名前が"ミツオ"から一切変更出来ない」

 

「当然だよセンセイ。此処はあの子が作った世界なんだから。……しかも、今までの中で一番強い力を感じるクマ。今までよりも断然注意した方が良いクマよ?」

 

「コーン!」

 

 状況が分かっているのか、クマの言葉に応える様にキツネは鳴き、そんなキツネを見ていたりせは考える様子で悠に言った。

 

「悠先輩……この子、シャドウと戦う時どうしよう?」

 

「基本的にはりせと一緒に行動させようと思っている」

 

 伊達に怪しい外見をしている訳ではなく、このキツネの気配の消し方は異常のレベルで上手く、気配を察するのにも長けている。

 万が一、探知中のりせにシャドウが近付いて来たとしてもキツネが教えてくれる、そんな考えを悠はりせへ伝えると、りせは納得した様に頷いた。

 

「分かった! この子の事は任せて!」

 

 ピースで応えるりせに悠は頷き、キツネにもりせの側にいる様に教えると悠達はボイドクエストへと足を踏み入れた。

 

 

▼▼▼

 

 その頃、悠達が足を踏み入れた同時。

 

 現在;ボイドクエスト【最上階】

 

 目的の人物である久保 美津雄はボイドクエストの最上階、まるでコロッセオを彷彿させる広場に立っていた。

 ここまで走って来た為に息も切れて足もフラフラだが、その表情は気味の悪い笑みを浮かべ続けている。

 

 自分を警察が捜している。他の連中もそうだ。皆、自分の事を知っている、捜している。

 

 美津雄は自分が追われている事を自覚していたが、内心では焦ってもいなければ不安でもない。

 自分が捕まらない事を知っているからであり、美津雄は確信した様に唇の端を歪ませる。

 

「は……はは……皆……皆が俺を捜してる。捕まえてみろよ……無理だけどな……!」

 

 誰もいない静寂の広場に、美津雄の他者を見下す言葉が響き、我慢していたが耐えられずに美津雄は歪んだ笑みを更に濃く浮かべた。

 此処にいる限り自分は捕まらない。誰も此処には来れない。それにも関わらず、今もこうしている間に此処が分からない警察や町の人が捜している。

 小馬鹿にした様に楽しんでいる美津雄の内心の声、その内容は――。

 

”今、町の中心にいるのは自分だ”

 

 それを己に再度自覚させた事で美津雄は心臓の鼓動が早くなり、強烈に興奮を覚えた。

 

「へ、へへ……どいつもコイツも馬鹿な奴だ。俺よりも下の癖に……俺を見下しやがって!――まあ、だから死んだんだけどな、あの馬鹿な女子アナも……調子乗ってた女子も……モロキンの奴も……どいつもコイツも……!」

 

 興奮から急転、歯を食い縛る美津雄。

 今までの事を思い出したのか、先程とは売って変わって歪んだ笑みが消え、代わりに憎しみに満ちた顔が現れる。

 だが、その憎しみの意味がなんなのかは誰にも分からない。そんな時だ。

 

『……』

 

「っ!? だ、誰だっ!!」

 

 何者かの気配を感じた美津雄は背後に向かって叫び、冷や汗をダラダラと流しながらその気配のある場所から視線を固定し、その正体を瞳に写す。

 

「……!?」

 

 だが、美津雄は言葉を失い、思わず尻餅すら付き、そのまま気配の元凶を震えながら指差した。

 美津雄も自分の起きている事が理解出来なかった。何でこんな事が起きる、そう疑問をずっと己に問い掛けながら叫ぶ。

 

「なんでだ……なんで……俺がもう一人……いるんだよ!」

 

『……』

 

 叫びに怯む事無く美津雄?は感情一つ無い表現で美津雄を見ていた。まるで、自分の目の前には最初から何もいないかの様に……。

 

 

▼▼▼

 

 

 同日

 

 現在:堂島宅【居間】

 

 悠達がボイドクエスト内に侵入していた頃、洸夜は自宅で一人、洗濯物を畳みながら時折時計を眺めていた。

 

「……今頃は久保の世界だな」

 

 信頼はしている。悠達の成長によってペルソナの力も、悠達自身の事も。

 しかし、それでも心配や不安はある。だが、それはあくまでも家族としての心配や不安。

 お使いに行く子供を心配する親の心境の様なものであった。

 

「……買い物に行くか」

 

 家で今やれる事は大体済ませ、このまま家にいても無駄に不安がるだけでしかない。

 洸夜はそう思うと、誤魔化すように独り言を呟きながらエコバックを肩に掛け、商店街へ向かおうと家の鍵を持った時だった。

 

――ピンポーン!

 

 家に響くチャイム音。

 タイミングが悪いと思いながらも居留守をする理由もある訳なく、洸夜はエコバック等を手に持ちながら玄関へ向かい、玄関の前から相手へ声を掛けた。

 

「どちら様でしょうか?」

 

「……新聞の集金で~す!」

 

 返って来た言葉は何やら阿保っぽい間の抜けた男の声であった。

 胡散臭さもすれば怪しいと言う感情が何故か沸き上がったが、同時に不思議と開けても良いとも洸夜は思えてしまい、己の感情に困惑しながら玄関の扉を開けた。

 

「はい、おいく……ら?」

 

「……ど、どうもぉ」

 

 玄関の扉を開けた洸夜を待っていたのは本当に怪しい新聞の集金ではなく、見覚えのある四人の姿。

 その内の集金と嘘をついた人物の気まずそうにしている姿を目の当たりにし、同時にその背後の三人の姿を認識すると洸夜は思わず上を見上げて呆れる様に息を吐いた。

 

「はぁ……ここまで来るか? 普通は来ないだろ……()()?」

 

「……すまない」

 

 申し訳なさそうな表情を隠さない美鶴と付き添う様に左右にいた明彦・アイギス・順平の姿に洸夜は諦めた様に溜め息を吐くしか出来なかった。

 

 

 

 

END

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