――周囲のアルカナを破壊すること。
それが洸夜の影を倒す手段である事が判明した後の悠と美鶴達の動きは速かった。
「よっしゃ行くぞ! トリスメギストス!」
「アオォーン!!」
順平とコロマルがペルソナを召喚し、アルカナへと攻撃を仕掛ける。
それを洸夜の影が腕で防ごうとするが、そこを悠や美鶴達でカバーし妨害。
そのまま順平とコロマルの攻撃で【女教皇】・【皇帝】のアルカナは破壊され、更に洸夜の影が弱体化していく。
『うわぁぁぁ……! 絆ガ消エテイク……! 黒の絆ガァァ……!!』
「シャドウの弱体化を確認しました! 各属性の耐性が更に低下! 今ならどんな攻撃も通ります!」
「……なら仕掛けるぞ!」
風花の言葉に真次郎が号令を出すと、真次郎はカストールを再度召喚すると、そのまま突っ込んでいき洸夜の影と激突。洸夜の影は大きく怯んだ。
そこへイザナギやアルテミシア達が追撃を掛ける。
『ガアァァァァァ!!』
洸夜の影の悲鳴が周囲に響き渡る。
そこへチドリ達も洸夜の影を休ませない為に攻撃を仕掛けた。
「メーディア!――アギダイン!!」
「イシス!――ガルダイン!!」
「カーラ・ネミ!――ジオダイン!!」
三人の属性攻撃が嵐の様に荒れ狂い、洸夜の影を襲った。
「グオォォォ!! 何故ダ……何故、死ノキズナヲ受ケ入レナイ!! ソレコソガ救イデアルト何故分カラナイ!!」
「私達は死ぬ気はないからだ。生きて……洸夜と共に生きて……この先を歩いていく!!」
美鶴はそう叫ぶとアルテミシアの鞭が一気にアルカナを薙ぎ払うと、一斉に砕け散るアルカナ。
それはダイアモンドダストの様に光となって周囲に降り注ぐと、洸夜の影の纏うオーラが消えていった。
そして洸夜の影は苦しむ様にもがく中、残ったアルカナの一つ【星】のアルカナが洸夜の影の頭上に止まると、現れたのはルシファーの姿を模した影だった。
『死ヲ!! 死を!! 死ヲォォォ!!――明けの明星!!』
狂った様に叫び、両手に強い光を持つ洸夜の影。
それを見た美鶴達が身構えるが、最初に動いたのは悠だった。
悠は前に飛ばした。
そして自身が繋いだコミュの力【悪魔】のペルソナカードを砕くと、そのペルソナを召喚する。
「来い! ベルゼブブ!!」
それは巨大な蝿の魔王――【ベルゼブブ】だった。
巨大な杖を持つ巨大なペルソナを召喚すると、美鶴達は目を見開いた。
「ベルゼブブ……! こんなペルソナまで!」
「やるな……!」
「フッ……兄弟揃って大したもんだな」
美鶴は驚き、明彦と真次郎はどこか嬉しそうに笑みを浮かべていた。
洸夜の弟だからではなく、鳴上 悠個人でも大したものだと、彼等は認めたのだ。
「ベルゼブブ!――コンセントレイト+メギドラオン!!」
美鶴達が驚く中、ベルゼブブは悠の言葉に応えた。
そして杖を構えて巨大な光を纏うと、明けの明星よりも巨大なメギドラオンが空に現れる。
「行け! ベルゼブブ!!」
悠が刀を洸夜の影へ向けると、ベルゼブブはメギドラオンを洸夜の影へと放った。
同時に洸夜の影へ明けの明星を放つが、二つの光は互いに接触すると一瞬だけ拮抗した。
だがすぐにベルゼブブのメギドラオンが明けの明星を呑み込んだ。
そして洸夜の影は両手でメギドラオンを抑え付けたが、やがてその巨大な光に呑み込まれた。
『バ……カ……ナ……! 黒キワイルド……負ノ感情……死ノ……絆ガ――』
徐々に消滅していく洸夜の影の肉体。
腕が消滅し、最後には残ったアルカナと共に全ての肉体が消滅。
最後にメギドラオンは大きく爆発すると、爆風と共に洸夜の影を完全に消し去った。
「やったか……!」
「シャドウ反応消滅! やりました! 私達の勝ちです!」
「ふぅ……」
順平の言葉に風花はそう言うと、空にいたアイギスも降りてくる。
そして爆煙が晴れると、洸夜の影のいた場所には洸夜が倒れていた。
「洸夜!!」
「無事か!!」
悠の左右から美鶴と明彦が――そしてゆかり達も洸夜の下へと駆け出して行く。
「センセイ! クマ達も行くクマよ!」
「……あぁ」
ベルゼブブを召喚したことで多少は疲れた悠に、クマが肩に触れながらそう言ってきた。
そして悠もクマと共に洸夜の下へと歩いていくと、美鶴達に囲まれながら、倒れていた洸夜は起き上がったのだ。
「……皆」
「洸夜……! 大丈夫なのか?」
平然と起き上がった洸夜に美鶴は心配しながら声を掛けると、洸夜はゆっくりと頷いた。
「……あぁ、もう大丈夫だ。皆のお陰で助かった。ゆかり達も強くなったんだな」
「えっ……そんな……ただ必死なだけでしたから」
「俺っちも……流石に今回は真面目モードって言うかっスね」
洸夜に褒められてゆかりと順平は少し恥ずかしそうにしていると、洸夜は乾達の方も見た。
「皆……随分と心配をかけたな」
「……いえ、気にしてませんよ。洸夜さんが無事で何よりです」
「……心配掛け過ぎ」
「ワン!!」
乾は安心した様に穏やかな表情でそう言い、チドリは少し飽きれた様子だったが笑みを浮かべていた。
そしてコロマルは元気に吠えると、洸夜は真次郎の方を見た。
「……真次郎」
「……おう」
二人の会話は短かった。
そう言って互いに言葉が出ないかの様に微妙な間が空いていると、風花とアイギスも洸夜の下へとやって来た。
「洸夜先輩! 良かった……本当に良かった!」
「ご無事ですか洸夜さん」
二人は近付いて洸夜に話しかけた。
二人の表情や言葉遣いから本当に洸夜を心配していたと分かる中、洸夜は二人に対して――
「……」
何も言わなかった。まるで見えていないかの様に。
そんな反応に思わず二人は首を傾げた。
「洸夜先輩……?」
「洸夜さん?」
二人は洸夜の名を呼んだが、洸夜はそれでも反応しなかった。
そして洸夜は視線を悠とクマの方へ向くと、優しい笑みを浮かべていた。
「悠……お前にも世話になったな。さぁ、早くこっちに来てくれないか?」
自分達を呼ぶ洸夜の言葉に悠は頷くと、すぐに兄の下へ向かおうとした。
その時だった。
『……鳴上 洸夜を信じてはいけません』
「!」
不意に悠の脳裏にエリザベスの言葉が過った。
同時に周囲の様子を見てみると、陽介達とエリザベスはまだ磔にされたまま。
しかし、洸夜はそんな見えていない様に悠をジッと見ていた。
「どうした悠……早く来てくれ」
悠は少し違和感を感じた。理由は分からない。しかし胸がモヤモヤする。
「センセイ? どうしたクマ? 早く大センセイの下に行こうクマよ!」
「……あぁ」
クマの言葉に悠は頷くと、ゆっくりと歩いて洸夜の下へと向かう。
そして洸夜の前に立つと、悠は――
悠の選択肢
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無事で良かった
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……お前は誰だ?