新訳:ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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ペルソナ6もスイッチ2で出れば良いのに。
PS5、そこまで欲しくないんだよね(;´・ω・)


第五十一話:混沌

 

 洸夜の影が消滅すると周囲の気配に変化が起こった。

 シャドウ達の気配が一斉に減ったこと、殺気に塗れた気配が変わり、穏やかな雰囲気になったこと。

 

 そして、洸夜の影がいた場所に青年の洸夜・幼い洸夜の姿をしたシャドウ達が立っていた事だった。

 

「っ! まだ消滅していないのか……!」

 

 それを見た瞬間、美鶴達は再び武器を構えるが悠がそれを手で制止した。

 

「大丈夫です……あぁなったシャドウはもう攻撃して来ませんから」

 

 穏やかな悠の声に美鶴達は互いに顔を見合わせると、最後に洸夜を見てくれていた風花の方を向いた。

 悠の言葉が真実なのか確かめる為で、美鶴達の視線に風花も頷いた。

 

「はい。もう敵意は感じません。だから、恐らくは……」

 

 ユノの能力を使っても洸夜のシャドウ達からは敵意は感じず、風花はの言葉が正しいと言いたいのか視線を悠へと向けた。

 

 すると悠もその視線を見て、静かに頷くのだった。

 

「こうなったシャドウは待っているんです。宿主であった者が自身を受け入れるかを……」

 

「受け入れる?――つまり、洸夜が何とかしないと消えないのか?」

 

 悠の言葉に明彦が疑問的に言うと、悠は頷いた。

 

「はい……受け入れればペルソナとなって味方となり、もし否定したら――」

 

「まさか……また戦うことになるの?」

 

 ゆかりも流石に疲れたのだろう。

 勘弁してくれと声に現れ、肩を落としていたが今度は悠も頷けず黙るしかなかった。

 

 陽介達の例はある。だがシャドウ化した後に受け入れており、否定した者はいない。

 久保という例外もいたが、あれは本当に例外だと悠は思っている。

 

 だからもし再度否定したらどうなるか、それは悠にも分からなかった。

 

「どの道、彼等をどうするかを決めるのは……」

 

「俺しかいない……だな」

 

 背後からの力ない声に悠と美鶴達が一斉に振り向くと、そこにはフラつきながら立ち上がる洸夜の姿があった。

 しかしその表情は憑き物が取れたかの様に穏やかな笑みを浮かべていて、悠は少し驚いた。

 

「……兄さん」

 

 ずっと最近は苦しみ、悩んでいた表情ばかりの洸夜を知っているからか、悠は兄の穏やかな表情にどこか安心してしまう。

 

 そしてフラつきながら前に歩き出す洸夜を見て、風花が慌てて駆け寄ると洸夜へ肩を貸した。

 

「洸夜さん! 大丈夫ですか……?」

 

「……あぁ、すまないな。どうやら随分と迷惑を掛けた様だな」

 

 そう言って洸夜の顔は己のシャドウ達へと向けられる。

 洸夜には月光館学園からの記憶がなかった。だが周囲の異様な景色に霧を見れば、ここがテレビの世界だと分かる。

 

 テレビの世界にシャドウ。そして傷や汚れが見て分かる美鶴達の姿を見て、自然と何があったか洸夜にも分かった。

 

 だが驚くことも一つあった。

 

「……なぁ、ここは天国じゃないよな、真次郎?」

 

「……あぁ。安心しろ、お前も……そして俺も生きている。ここは天国じゃなく現実だ」

 

 ニット帽を深く被り、洸夜から目を逸らす真次郎に洸夜は嬉しく思うよりも先に、真次郎らしいと懐かしく感じていた。

 だが驚いていない訳じゃない。寧ろ、今目の前にいるのが本物なのかも分からないぐらいに困惑はしていた。

 

 だが雰囲気で分かる。本物の真次郎だと。

 それに親友の生存を喜ぶのもそうだが、それよりも自身にはやらねばならぬ事があるのを理解していた。

 

「風花……あのシャドウ達の前に行かせてくれ」

 

「……分かりました」

 

 本当は止めたいのだろう。風花の表情には不安があったが、洸夜のお願いを断れる彼女ではなかった。

 好意を寄せている相手――大切な相手故に、風花は頷くしかできなかった。

 

 無論、洸夜も風花の不安を察してたのだろう。

 穏やかな笑みを風花へと向けていた。

 

「ありがとうな……風花」

 

「い……いえ……!」

 

 洸夜の表情に風花は顔を赤くした。

 そして洸夜と共に歩いていき、皆に見守られながら洸夜はやがて自身のシャドウ達の下へ辿り着いた。

 

「ここまでで良い風花……あとは、俺がやらなきゃ駄目なんだ」

 

「……分かりました。気を付けてください」

 

 洸夜の言葉に不安そうに離れる風花。

 すると洸夜はフラつきながらも立ち、己のシャドウの目の前に立った。

 

『……』

 

 何も言わずにジッと自身を見てくるシャドウの姿に、洸夜は少し申し訳なさそうに笑うと不意に上を見上げた。

 上にあるのは真っ黒な月のみ。しかし、今はその月が不思議と洸夜を落ち着かせてくれた。

 

 そして洸夜は意を決した様に口を開いた。

 

「……怖かった。一人は寂しくて、ただ悲しかった」

 

 洸夜の言葉に悠と美鶴達は黙って聞くことにした。

 シャドウと洸夜の間のやり取り、それを見守る様に。

 

「ずっと一人で……そんな時に悠が産まれて、俺は孤独な子供のまま兄になってしまった。だから演じるしかなかった。望まれる兄の姿を、両親から望まれる子の姿を、周囲が望む姿に……」

 

「兄さん……」

 

 悠は兄の言葉に思わず呟いてしまう。

 自身の知る洸夜の姿は頼りになり、カッコイイ姿の兄だった。

 

 しかし、兄の言葉を聞いてようやく兄の本当の姿を知れた気がした。

 それが悲しい事でもだ。

 

「だが……そんな時だった。俺は美鶴達に会えた……皆の前では本来の俺でいられた。だから俺は切り捨ててしまったんだ。【道化師】の側面を……」

 

 そう言って洸夜は道化師の――幼い姿の自身の姿をしてシャドウを見る。

 道化師のシャドウは洸夜の言葉を黙って聞いており、洸夜の言葉を肯定する様に頷いていた。

 

 偽りの自身――同時に本来の側面でもあった【道化師】の姿。

 それを切り捨てた事を自覚、思い出した洸夜は今度は青年の姿をした自身のシャドウを見る。

 

「けど……俺は皆との居場所を守れなかった。そんな時に顔を見せたのが俺の【ワイルド】の側面……寂しかった故に、孤独を恐れて他者との繋がりを求めた……それが良いか悪いか関係なくな」

 

「黒き絆か……」

 

 美鶴が思い出す様に呟くと、明彦達も何とも言えない表情をする。

 

 他者との負の感情すらも絆としてしまう黒きワイルドの力。

 それもまた洸夜自身の姿であったが、それを洸夜は皆を守る為に否定してしまった。

 

 それは同時にワイルドの否定――絆の否定であった。

 そうなれば根本的な部分が揺れ、ペルソナ達が暴走するのは必然であった。

 

 それを洸夜も今、完全に自覚した。

 顔を僅かに下げ、自身の否定が他者を守る為ではなく、自身を守る為であったことも。

 

「……結局、俺は自分を守りたかっただけだったんだ。皆との大切な時間を……だから負の側面が出た時、それを受け入れたくなくて逃げてしまった。これ以上、自分が傷付きたくなくて……」

 

 洸夜はそう言って胸の中からこみ上げてくるものがあり、悲しそうな顔を浮かべる。

 美鶴達だけでもここまでの騒動になったのだ。

 

 もしその場に風花達もいれば騒動は、もっと激しい結果を招いていたと洸夜は分かっていた。

 皆の為、けれど自分の為でもある為に逃げてしまった洸夜はそれを悔いた。

 

「だけど……やっぱり気付かされたよ。間違いなくお前も、そして君も俺自身であるってな。――ハハッ……やっぱり怖いな。自分を受け入れるって……また同じことを繰り返すかも知れないって思うと……」

 

 洸夜はそう言って情けなく笑った。

 最後の一歩が前に出ない。怖いのだ。受け入れるのが、また黒き絆が何かしてしまうのが。

 

「……洸夜」

 

 するとそんな情けない仲間の姿に察したのか、美鶴は――美鶴達は洸夜の後ろに集まった。

 

「大丈夫だ。その時は私達が一緒にいてやる。お前は一人じゃないんだ……だから安心して前に進め」

 

「今度は俺達がお前を支えてやる」

 

「……まっ、親友だからな」

 

 美鶴、明彦、真次郎の言葉にアイギス達も頷いていた。

 それは洸夜には見えなかったが、振り向かずとも分かった。

 

 背中から温かい気持ちが伝わってくる。

 まるで背中を押してくれるかの様に。

 

 だから洸夜もそれを感じ、嬉しそうに穏やかな笑みを再び浮かべた。

 

「ありがとう……皆」

 

 そう言って洸夜は顔を上げると青年・幼い姿両方のシャドウを見た。

 

「傷付いたよな。ずっと頑張ってくれていたのに、それを否定されれば誰だって。……すまなかったな。今更になってしまったが、頼む……戻って来てくれ。――ごめんな。お前達は俺だ……おかえり」

 

 そう言って洸夜が両手を広げると、幼いシャドウは満面の笑みで洸夜に抱き付いた行った。

 その姿は寂しさから解放された幼い子供そのもので、抱き付いたシャドウはそのまま光の粒子となった。

 

 そして青年の姿をしたシャドウも頷くと同じ様に光の粒子となる。

 すると洸夜の背後にアイテールが現れ、その粒子はアイテールと一体化していった。

 

「これは……!」

 

 洸夜がアイテールを見上げるとアイテールは徐々に姿が黒く染まって行き、やがて形状も変わって行った。

 それを悠や美鶴達も目を奪われる様に見ていると、彼女達はその姿を見て不意に思い出した。

 

「そうだ……これが洸夜の本来のペルソナだった」

 

「そうっすよ! なんで忘れてたんだ!? この黒いペルソナ……鳴上先輩のペルソナっすよ!」

 

「俺等を救った……黒いペルソナ」

 

「覚えてる……あの謎のペルソナ」

 

 美鶴と順平の言葉に真次郎とチドリも思い出す様に呟いた。

 そして、やがてアイテールは姿を変えるとその名も変えた。

  

「黒いペルソナ……【カオス】」

 

「カオス……それが兄さんのペルソナ」

 

 洸夜の言葉に悠も思わず呟くと、転生を終えたカオスが洸夜を見て頷くとその姿を消した。

 それと同時だった。周囲の十字架が消滅していき、陽介達が解放されて静かに降りてくる。

 

「……おっと! 俺等どうしてたんだっけ?」

 

「確か……洸夜さんを助けたと思ったら、実は洸夜さんじゃなくて……シャドウで……?」

 

 未だに混乱している陽介達を見て悠は安心し、美鶴達も彼等が無事であったことに安心していると、洸夜は離れた場所から静かに姿を消すエリザベスに気付いた。

 

 エリザベスは軽く手を振ると、そのまま消えてしまい、洸夜はそれを笑みで見送った。

 

「終わったね」

 全てを見守っていた悠が洸夜へ言うと、洸夜は振り返って悠達の方へ振り向いた。

 

「ああ、ようやく終わらせられた」

 

 そう言う洸夜の表情は、とても穏やかなもので迷いも苦痛の表情も一切なかった。

 黒のワイルドが生んだ絆、二年前の一件はようやく終わることが出来たのだ。

 

 そして、その洸夜の表情を見て、美鶴たちにも笑顔が戻り、美鶴は洸夜の傍へ行こうとする。

 

「……洸――」

 

「洸夜さぁぁぁん!」

 

――のだが、洸夜と美鶴達の間に割って入る様に突っ込んで来た者がいた。

 それは、りせだった。 

 

 りせは全力で洸夜へ向かって行き、そのままの勢いで抱き付いた。

 あまりの勢いに洸夜も避ける訳にもいかず、りせをそのまま受け止めた。

 

「おおぉ! りせ!?」

 

「洸夜さん! 私、頑張りましたよ! 」

 

 抱き付いたまま洸夜の胸にスリ付き、甘える様にりせは言う。

 そして、その光景に陽介達は呆気に取られていた。

 

「いや私じゃなく……私達な」

 

「って言うか、この子はまた。行動が日々エスカレートしている」

 

「仕留めるなら……今かな」

 陽介、千枝、雪子がそう呟くがりせの耳には入っておらず、りせは抱きつくのを止める気配はない。

 半分呆れた空気が流れる中、美鶴達はと言うと。

 

「……」

 目の前の事に無言の直立不動状態を維持する美鶴。

 何も言わないが、美鶴の周りには確かな威圧感が存在し、少なくとも彼女の機嫌が良くない事だけは明彦達は悟る。

 

「み、美鶴……無言で威圧するのは止めろ。洒落になってないぞ」

 

「止めとけ、アキ。今は触れねえ方が良い」

 

 明彦が説得に乗り出すが、真次郎は無駄だと判断して明彦を止める。

 美鶴には触れられない状態、その中で他のメンバーの意識は元凶であるりせへ向けられる中、順平が気付いた。

「つうか、よく見るとあの娘……アイドルのりせちーじゃん!?」

 

 休業しているとはいえアイドルのりせ。

 ノーメイクだからと言えど、順平の目は見抜いていた。

 だが、正体はこの際どうでも良く、問題は何故に洸夜がアイドルに抱きつかれているのかと言う事だ。

 

「ア、アイドル……そんなの、勝ち目なんて……」

 

 風花は風花でショックを受けており、思わずその場に崩れて落ちてしまう。

 

「ふ、風花さん! 大丈夫ですからしっかり!」

 

「これが修羅場……でございますね」

 

 風花をフォローする乾、状況に新しい何かを学んでいるアイギスの二人。

 また、場を見ていたチドリはチドリで興味が無いらしく、少し離れてコロマルと戯れていた。

 その中で何故か、ゆかりはりせから隠れる様に距離を取っていたが、それに気付く者は誰もいない。

 

 そんな中、事の原因であるりせはと言うと……。

 

「洸~夜さん! 私、洸夜さんの為に頑張ったんですよ?」

 

 相変わらず洸夜の胸に顔を沈めながら甘えており、千枝と雪子は溜息を吐いていた。

 しかも洸夜が基本的に優しい事を知っているりせは、既にこうしてしまえば洸夜が無理やり引き離す様な事を出来ないと計算にいれている。

 

 ただ、今回に限っては一つりせにも誤算があった。

 

「ああ、ありがとう……りせ。お前たちのおかげで助かった」

 

 自分の胸に顔を埋めるりせを、今度は洸夜がそのまま抱きしめた。

 両手を優しく背中へ回し、りせを自分の方に近付けた事で洸夜とりせの頬が接触を起こす。

 そんなまさかの反撃を喰らう、基本的に純粋なりせは……。

 

「ふぇッ!!? こ、こうや……さん!?」

 

 先に仕掛けたのは自分にも関わらず、りせの表情はリンゴの様に一気に真っ赤に染まる。

 顔に熱が発生しているのを、りせ自身も気付いている。

 

「ええぇ!? こ、これは流石に予想外すぎるよ!?」

 

 恥ずかしさと緊張で頭がショート寸前のりせ。

 そんな中で彼女が考えたのは、肌が荒れてないか、顔がむくんでいないかの心配。

 そして、戦闘終了してばかりで変な匂いをしていないかと言う事だった。

 

 最早、思考がおかしくなるのは時間の問題のりせだが、反撃はまだ終わっていなかった。

 

「悠、お前もりせに礼があるだろ?」

 

「ふぇ、ふぇえ?」

 

 洸夜の言葉にりせは後ろを振り向くと、そこには素敵な笑みを浮かべて両手を広げる悠の姿があった。

 そして、洸夜がりせをくるりと回して悠へ正面に向けると、今度は悠が感謝の抱擁をする。

 

「$%#&%$#!?」

 

 最早、言葉にもならない声を出すりせ。

 頭は完全にショートしてしまった。

 

「ありがとう、りせ」

 

 悠がお礼を呟くが、りせは口をパクパクと酸欠の金魚の様になっている。

 そして、悠が少し力を入れた時だった。

 

「ご、ごめんなさ~~い!!」

 

 りせのやっとの言葉が辺りに響いた。

 そして……。

 

「うぅ……」

 

 真っ赤な顔を両手で隠し、皆から少し離れているりせ。

 積極的な行動はするが、相手からの真っ直ぐな事にはこうなってしまう初心な心を持つ少女、それが久慈川りせだ。

 そして、りせに反撃を終えた鳴上兄弟はと言うと。

 

「ブイ」

 

「ブイ」

 

 兄弟揃ってVサインを陽介達に向ける洸夜と悠。

 りせの扱いに慣れている二人に、陽介達はまた溜息がでてしまう。

 

「……あいつ、あんなに初心なのになんでやるんだ?」

 

 完二は一人、別の事で悩んでおり、周りの様子には気付いていない。

 そんな中、洸夜は今度は陽介に近付くと彼の頭にポンっと手を置いた。

 

「花村、ありがとな。……今回は随分と迷惑をかけた。――大したもんだ」

 

「え? あ、いや、その……」

 

 成長等を認めたと受け取れる洸夜の言葉に陽介は一瞬、戸惑ってしまうが高校生で頭を撫でられた事への照れくささも手伝って顔を背けた。

 

「俺だって、いつまでも子供じゃないんですよ。やる時はやるんだ」

 

「フッ、そうか。なら、俺から言える事はもうないかもな」

 

 洸夜はそう言って陽介の背中を優しくポンッと叩くと、後の事は悠に任せて自分は自分の仲間の下へと足を進める。

 そして、メンバーの先頭にいた明彦と真次郎の前に立った。

 

「……洸夜」

 

「……」

 

 二人は気まずそうに小さく言った。

 先程まで洸夜のシャドウと言う倒すべき敵がいた事でなんとかなっていたが、それが終わった事でどこか気まずい感じを覚えてしまう。

 

「……」

 

 洸夜もまた二人の前で黙ってしまう、と思ったが。

 

「……フッ」

 

 洸夜は両手を上げ、それぞれ拳を作ると明彦と真次郎の前に突き出す。

 二人はなんなのか理解に遅れてしまうが、洸夜はそんな二人を見て笑みを浮かべて言った。

 

「やっと、終わったよ」

 

 洸夜はもう一度、拳を突き出す。

 そして、今度はその意味を明彦と真次郎も理解する事ができ、二人も笑みを浮かべて拳を作った。

 

「フッ、そうか」

 

「……ハッ」

 

 互いに拳をぶつける三人。まるで、昔ながら悪友達の挨拶だ。

 その光景を見て、順平が一人で感動していると、乾とチドリも互いに顔を見合わせて一息入れ、コロマルは嬉しそうに尻尾を振っていた。

 

「やっと、全員が揃いました」

 

「……お前にも心配かけたな、アイギス」

 

 そう言って互いを顔を合わせる洸夜とアイギス。

 もう、前の時の様に洸夜が彼女にも感情をぶつける事はない。

 洸夜はアイギスとも拳をぶつけ合っていると、後ろから洸夜は呼びかけられた。

 

「あ、あの……洸夜さん」

 

「……風花か」

 

 洸夜が振り向くと、風花は少し緊張した感じにモジモジしていた。

 

「ありがとな、風花。お前にも随分と守ってもらった」

 

「えッ、いえ、私……あんまり役立てなかったし」

 

 時折、アナライズを封じられた事を風花を気にしていた。

 ここぞと言う時に役立てなかったのが辛かったが、洸夜は勿論、誰も責めてはいない。

 洸夜はそれを伝える為、彼女の前に立った。

 

「風花、俺は覚えている。お前が皆を助けてくれていたことを。――見違えたよ」

 

「ええっ!? いえ、私、そんな……」

 

 お礼を言われた事は嬉しいが、それを素直に受け止める事が出来ずにオドオドしてしまう風花。

 そして、そこから会話が続きそうにない雰囲気が漂い、洸夜は困りながらも移動しようとした時だった。

 

 後ろから風花に近付く影が一人……ゆかりだ。

 ゆかりは何気なく風花に近付くと、さりげなく風花の背を押した。

 

「きゃッ!」

 

 突然の事でバランスを崩し、前方に倒れる風花はそのまま目の前にいた洸夜が受け止める形となり、洸夜の胸の中へとダイブしてしまう。

 

「へッ!?」

 

「おお、どうした!?」

 

 何が起きたか分からない風花、突然の事で焦る洸夜。

 それから一瞬の間が空いた瞬間、我に返った風花は叫びながら洸夜から離れた。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁッ! ゆかりちゃんッ!!?」

 

 顔を真っ赤にして風花は原因であるゆかりへ詰め寄って抗議するが、ゆかりは真剣な顔をで風花へ言った。

 

「私ね、美鶴先輩も風花も応援する事にしたんだけど、少なくとも風花に積極性がないのよ。元が悪い訳じゃないんだから正面から攻めれば良いのよ!」

 

「で、でもそんな……!」

 

 真顔で言い張るゆかり、少なくともそんな度胸はない風花。

 そして、状況を理解するために二人に近付く洸夜。

 

「どうした? 一体、何を……」

 

「実は風花が―――」

 

「ゆかりちゃん!?」

 

 慌ててゆかりの口を封じる風花。

 全く状況は分からなかったが、これ以上は話を聞けそうにないと判断して洸夜は最後の一人の下へ向かう。

 何故か、辺りを無言で威圧している人物、美鶴の下へ。

 

「……」

 

「……」

 

 二人はお互いを確認するが、言葉が見つからず黙っている。

 美鶴も威圧するのは止めたが、互いの溝が深かったのは事実。

 

 なんて言えば良いのか分からない。

 明彦達もここが一番心配であり、二人を黙って見守るが互いに何も話さない。

 このまま平行線で終わるのかと、誰もが思った時だった。

 

 洸夜と美鶴は何も言わず、互いにハイタッチをした。

 言葉はないが、お互いに表情は穏やかな笑みを浮かべている。

 何も言わずとも、お互いを理解しているのだ。

 もう、この二人の溝は想い等によって埋められていた。

 

 そして二人がハイタッチを終えると同時だった。

 洸夜の左腕から光が溢れてきた。

 

「これは……帰還か?」

 

「帰還? この世界からか?」

 

 美鶴の問いに洸夜は頷いた。

 

「あぁ……なんかいつの間にか、こんな力が宿ってたみたいでな。これは帰還の予兆だ」

 

「じゃあ悠くんとは一旦、お別れね」

 

 洸夜の言葉にゆかりは少し寂しそうに言うと、悠とクマも思いだした。

 

「そうか……ゆかりさん達は稲羽のテレビから入った訳じゃないから……!」

 

「そうクマね。多分、戻る場所は本来の場所クマ」

 

「逆に稲羽市に戻るとこっちは困るんだがな」

  

 悠とクマの言葉に明彦は勘弁して欲しそうに言った。

 荷物も辰巳ポートアイランドにあれば、予定だってある。

 

 伏見も自分達が行方を晦ましたと思っているかもしれず、これ以上は迷惑を掛けられない。

 そう言っている間にも洸夜の腕の光は強くなり、美鶴達も光に包まれていく。

 

「どうやら時間の様だな……」

 

 美鶴がそう言って明彦達も頷いていると、陽介が慌てた様子で口を開いた。

 

「いやいや! ちょっと待って!? この凄い格好のお姉さん方は誰なの!? なんか見覚えはあるけどよ!」

 

「洸夜さんの記憶に映ってた連中じゃねぇっスか? 多分、洸夜さんの仲間っスよ」

 

 慌てる陽介と違って完二は意外と冷静だった。

 それを聞いて千枝達も頷いていると、光は溢れて美鶴達は次々と姿を消してしまう。

 

 そして最後に洸夜が残されるが、消える直前に洸夜は悠達を見てこう言った。

 

「辰巳ポートアイランドで待ってるぞ。修学旅行、楽しみにしておけ?」

 

「分かった。向こうに着いたら色々とサービス頼むよ兄さん?」

 

 悠の言葉に洸夜はやれやれと笑うと、その姿は完全に消えてしまい、辰巳ポートアイランドへと帰還していった。

 

 そして残された雪子達は少し記憶の混乱があるらしく、悠の方へ集まった。

 

「ねぇ、鳴上くん? 結局、私達が捕まった後、何があったの?」

 

「さっきの人達の事も含めて説明するよ。でも、まずは帰ろう……流石に疲れた」

 

「私もぉ……ここのシャドウ、結構強くて大変だったんだもん」

 

 悠の言葉にりせもそう言うと、悠達は歩き出して【黒の駅】を後にするのだった。

 

 こうして洸夜の黒き絆を巡る戦いは終わりを告げるのだった。

 

END

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