新訳:ペルソナ4~迷いの先に光あれ~   作:四季の夢

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第五話:我は影、真なる我

 同日

 

 現在:異様な商店街

 

 それは悠の戦いが終わってすぐの事だった。

 

『ジュネスなんて潰れればいいのに……』

 

『娘さんがジュネスで働いているなんてご主人も苦労するわねぇ』

 

『困った子よねぇ』

 

『ジュネスの息子に言い寄られてるらしわよ?』

 

『あらあら。何を考えてるのかしらね』

 

 突然、何処からか流れる声を悠達は聞いたが、その声はどれもこれも悪意ある様な内容ばかりだった。

 

「この声は一体……?」

 

 まるで陰口の様な声だが、一体誰に対しての事なのか分からない。

 そう疑問に思いながら同じように聞こえた洸夜も辺りを警戒していると、陽介がこの内容に心当たりがあるのか、何かの気付いた様に口を開いた。

 

「おいクマ! ここは、ここにいる者にとっての現実だとか言ってたな。それって……ここに迷いこんだ先輩にとっても現実って意味なのか?」

 

「す、少なくともそういう事になるクマ。その……センパイって人がどういう人なのかはクマには分からないけども、この声はそのセンパイにとって現実だという事に……」

 

「んだよそれ……ジュネスと先輩は関係ないだろ!!」

 

 陽介は知っていた。ジュネスによって稲羽が潤い始めていたことを。

 だが同時にそれによって今まで稲羽を支えていた商店街の客が減り、幾つもの店が閉店に追い込まれた事も。

 それ故に商店街の関係者には心無い言葉も多く陽介は言われてきたが、商店街の関係者であるにも関わらず小西 早紀は数少ない理解者だったのだ。

 

「先輩……俺は……」

 

 陽介は知りたくもなかった現実を知り、肩を落とした。すると……。

 

“私、ずっと言えなかった……”

 

 先程とは違い今度は別の声が辺りに響き渡るが、それは悠と陽介には聞き覚えのある声だった。

 

「この声って確か……」

 

「間違いない! 先輩の声だ……!」

 

 そう言って悠と陽介達は酒屋の中に入ると、その声は更に大きく鮮明なものとなる。

 

『私、ずっと花ちゃんの事……』

 

「えっ……先輩、俺の事……」

 

 そう言って何か楽しみに次の言葉を待つ陽介を見て悠はやれやれと、そう言った表情で見守るが現実は非情であった。

 

『ウザいと思ってた……!』

 

「えっ……?」

 

「……おい、花村」

 

 小西早紀の声に、倒れそうになる陽介を悠が心配して声をかけるが声はまだ続いた。

 

『仲良くしてたのは店長の息子だから都合いいってだけだったのに、勘違いして盛り上がってホントにウザい……!』

 

『なんで私だけこんな目に遭うの!? 私が店長の息子に言い寄られたからってなんで私が何か言われなきゃならないのよ!!』

 

 最早、追い撃ちと言う次元を越えているであろう言葉に、陽介は顔を天井に向けて叫んだ。

 

「ウソだ! 先輩は……先輩はそんな人じゃないだろ!!!」

 

 見たくない現実は認めたくないのが人間の性だ。

 陽介の悲痛の叫びが酒店に響き渡った時、悠は店内の雰囲気が重くなった様な気がした。

 

(なんだ……?)

 

 悠は異変の正体を知ろうと周りを警戒すると、答えはすぐに現れた。

 

『ククク……可愛そうだな……苦しいな……でも、何もかもウザいと思っているのは自分の方だっつうの! アハハハハハハハハッ!』

 

「な、何だアイツ……!」

 

 突如、酒屋の部屋の隅に陽介そっくりの人物が姿を現した。

 だが雰囲気も目の色も全く別物で、その姿や雰囲気からシャドウに近い。その姿に悠と陽介は驚愕したが、クマは別の意味で驚愕し、クマは陽介?の方を見て叫んだ。

 

「シャドウだクマ! 抑圧された内面が具現化した存在! それがシャドウだクマ!」

 

「抑圧された内面?……じゃあ、あれは花村なのか?」

 

「嘘だろ……そんなの……」

 

 クマの言葉に言葉を失う陽介だったが、陽介?の言葉はずっと続いた。

 

 こんな田舎暮らしが嫌な事。

 この世界に来たのも小西 早紀を最もな理由にしただけで実際は未知の刺激を楽しみたかった事。

 更に陽介?が何かを言おうとした時だった。とうとう陽介の怒りが爆発する。

 

「うるせぇッ!!! 散々、勝手な事言いやがって……! 何なんだよお前はッ!」

 

『ククク、アハハハハ! 何言ってんだよ? オレはお前だよッ!』

 

「ッ!? 黙れ、黙れよ! お前は俺じゃねえ!!」

 

 陽介は、まるで陽介?を否定するかの様に話すがそれが引き金となってしまう。

 その言葉を聞いた陽介?は可笑しそうに笑い、やがて全身から闇を放出させた。

 

「ククク……そうだよ。オレはオレだ! テメェと一緒にすんじゃねえ!!!」

 

 陽介?が放出した闇に包まれると、下半身は緑色のカエルの様な化け物で、上半身はマフラーを首に巻いたシャドウ『陽介の影』が出現する。

 まるで漫画かアニメの主人公の様にも見えるが、残念ながら今は化け物にしか見えない。

 

『我は影、真なる我……ククク……アハハハハ!!此処も、お前も、全部オレがぶっ壊してやるよ!!!』

 

「ば、化け物だ……!」

 

 陽介の先程までの勢いは既に死に、巨大な化け物となった『陽介の影』の姿に腰が抜けてしまう。

 

「花村! クソッ!クマ、花村を頼む!」

 

「わ、分かったクマ!」

 

 悠の言葉に、クマは自分のシャドウに怯えて動けない陽介を運びだし、悠はシャドウの前に立ちはだかった。

 

『あぁ? 何だお前は? 目障りなんだよッ!』

 

「イザナギ!」

 

 殴り掛かってきた陽介の影を悠はイザナギで迎撃して向かい打ち、陽介の影の拳とイザナギの大剣の衝突がゴングとなり、悠の初めての大型戦が幕をあけた。 

 

『ヒュ~! やるじゃねえか! 楽しくなってきたぜ!!』

 

 陽介の影は楽しそうにテンションを上げてゆき、両手に巨大なエネルギーを溜めてそれを悠へ放つ。

 

『喰らいな! 忘却の風だぁ!!』

 

「くっ!」

 

 巨大な風をイザナギで悠は防ぐが、陽介の影はそれを見て歪んだ笑みを浮かべていた。

 

『よっしゃ! なら何発で死ぬか試してやるよ!』

 

 陽介の影は再び手に力を溜めると再び放った。

 

「まだだ!」

 

 イザナギが大剣で陽介の影の攻撃を斬り払ったが、今度の攻撃は一発では止まらない。

 

『オララララララララララッ!!!』

 

 今度は連続で攻撃が放たれ続け、悠は防戦を強いられてしまう。

 

「くっ……!」

 

 イザナギが悠を守るように大剣で防いだが、徐々にそれは押されて行き、イザナギのコートは破れ、鉄仮面に亀裂が入る。

 

「マズイクマよ!?」

 

「畜生! いい加減にしやがれ!!」

 

 陽介は近くにあった酒瓶を持って己のシャドウへ向かって行くが、攻撃の余波によって吹き飛ばされてしまい近付くことも叶わなかった。

 

「ぐあ!……ちくしょう……!」

 

『アハハハ! 雑魚は後回しだっつうの!……さ~てお前はまだ耐えるのか?――なら特大で行くぞ!!』

 

 陽介の影は先程までとは比べ物にならない力を溜め込んだ。次で殺しに来るのは明らかだった。

 

「マズイ! イザナ――!」

 

『遅せぇ!! 特大・忘却の風だ!』

 

 悠がイザナギで仕掛けようとするも先に陽介の影が攻撃を放った。

 周りの酒瓶を巻き込みながら迫る巨大な疾風。

 

(ここで……終わるのか?)

 

 悠の目に光が失いかけたその時だった。

 突如、悠の目の前に光が降り注がれ、その光はやがて一つの光の壁となる。

 

『マカラカーン』

 

『……へっ?』

 

 陽介の影は何が起きたのか分からなかった。

 光の壁にぶつかった瞬間、陽介の影が忘却の風が跳ね返った事実に気付くのは攻撃が自分に直撃してからだった。

 

『ギャアァァァァァァァ!!?』

 

 風が己の体を抉り取る。攻撃が止み終わった頃には陽介の影はボロボロになっており、既にグロッキーとなっていた。

 

『な、なにが……起こっ……た……!?』

 

 陽介の影は訳も分からないまま不意に顔を上げた瞬間、時が止まる。

 己の眼前に写るのは大剣を振り上げるイザナギの姿。

 

『へ……へへ……!』

 

 諦めの笑いのまま、イザナギの大剣によって陽介の影は両断された。

 

▼▼▼

 

 消滅した陽介の影の場所には再び陽介?の姿が現れたが。先程までの敵意は感じられない。

 その様子に悠は陽介の背中を押すと、陽介はゆっくりと頷きながら陽介?の前で止まる。

 

「頭の中では分かってたんだ……だけど、認めんのが怖かった。だけどよ、今はちゃんと言えるぜ。お前は俺だ」

 

 陽介の言葉に陽介?は頷いて光り輝き、両手に星型の武器を持つペルソナ『ジライヤ』に姿を変えた。

 そしてペルソナはそのままカードになり、陽介の手の平に舞い降りる。

 それを見て一安心する悠。それを店の外から見守っていた者がいた。

 

「……フッ」

 

 その光景を洸夜と一仕事終えたような雰囲気のアイテルが見ている事に悠達は当然ながら気づかず、洸夜は満足そうな表情でその場を後にした。

 そして暫く歩くとそれは起きた。

 

「……?」

 

 不意に左手に異変を感じた洸夜は何かと思い左手をマジマジと見つめた矢先、突然視界が光った瞬間、洸夜はこの世界から姿を消した。

 次に洸夜が目を覚ましたのは自分の部屋の中だった。

 

 

END

 

 

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