完結までやってやるからなー!( ゚Д゚)
10月28日(金)
現在:堂島家
「へっ? 稲羽に来る?」
時間は夕方。
バイトを終えた洸夜が堂島家でサンマを焼き、ニラと卵の味噌汁を作っている時に電話が来た。
連絡してきたのは明彦であり、洸夜はサンマを見ながら携帯電話で明彦の話を聞いていると、明彦達が稲羽に来るとの事だった。
『あぁ、そっちのシャドウ事件の事も気になっていたからな。丁度良いと思ってな。流石に天田とコロマルは行けないが、岳羽達は行けるとの事だ』
「それはありがたいが……泊まる場所とか大丈夫なのか?」
「それに関しては順平の奴が既に予約してくれた様だ。確か美鶴達も泊ってる……なんて言ったか――天城か?」
「あぁ、天城温泉旅館な」
間違いなく雪子の実家の温泉旅館の事だ。
美鶴達も泊っている(拠点にしている)場所はそこしかない。
何より、稲羽で有名で安定して泊まれる場所はそこだけだ。
洸夜も美鶴達に会いに行ったり、豆腐の配達に行っているので良く分かる場所だった。
「まぁ、あそこなら間違いはないな。美鶴達もいるし情報共有には丁度良いだろ。――おっと、焼けたな。脂が乗ってるな」
洸夜はそう言うと、脂が焼ける良い匂いがするサンマを取り出し、皿へと盛りつけた。
勿論、大根おろしも忘れずに。
『なんだ忙しそうだな?――まぁとりあえず、明日には向かうって思っていてくれ。それじゃあな』
夕飯の準備を感じたのか、明彦はそう言うと話を終わらせてくれた。
丁度、味噌汁の準備の為、卵を割っていたから丁度良かったのもあり、洸夜もその場で頷く。
「あぁ、気を付けて来いよ? それじゃ――」
そう言って電話が切れると洸夜はポケットに携帯電話を入れる。
「明彦達が来るか……」
明日から土・日曜日だ。
短い間だが騒がしくなるなと思いながら洸夜は卵をかき混ぜ、ニラの入った味噌汁の中に入れて軽く混ぜていく。
「よし、良い塩梅だ」
出汁も入っているし良い味になった味噌汁を味見しながら洸夜はそう言うと、不意にカレンダーを見る。
すると30日に菜々子の字でこう書かれていた。
【お兄ちゃんの文化祭】
「……あぁ、そうか。文化祭か。本当に騒がしくなりそうだな」
良い町ではあるが稲羽は田舎町だ。
そうなると、こんな学校の文化祭でも一種のイベントになる。
近所の人も来るし、洸夜が思い出すだけでも菜々子が行きたがっていた筈だった。
――あと、何故か悠が妙に張り切っていたのを思い出した。
何やら文化祭のイベントに出るらしいが、そんなに張り切るイベントなのかと洸夜は少し疑問だった。
まぁ本人が楽しんでいるならば、それはそれで良いが明彦達が来るなら悠達の様子見も兼ねて文化祭に行くだろう。
勿論、洸夜も菜々子繋がりで行くつもりだった。
「……そういえば」
また不意に洸夜は思い出す。
何故か洸夜が文化祭に行くことを陽介達にも伝えると、雪子とりせが恥ずかしそうにしていたのだ。
『えっと……洸夜さんも来るんですか?』
『うぅ……嬉しい様な恥ずかしい様な……!』
一体、本当にどんなイベントをやるのだろうか。
少なくとも悠達は合コン喫茶だった筈であり、りせと直斗はメイド喫茶と聞いている。
「そんな恥ずかしいイベントなんかね?――さて、お~い菜々子! 悠! 夕飯できたぞ!」
「は~い!」
「今、行く!」
二人を呼んだ洸夜はそう言うと、真っ先にやって来た菜々子へサンマの皿を渡すと、自分は味噌汁を持ってテーブルへと向かうのだった。
▼▼
10月29日(土曜日)晴れ
現在:稲羽駅→八十神高校
午前10時頃、洸夜は明彦達の迎えの為に稲羽駅へと訪れていた。
因みに足は真次郎が運転する車であり、洸夜と真次郎は無事に明彦達――明彦・ゆかり・順平・風花・チドリと無事に合流することができた。
そして今は車の中で現状報告をしながら、悠達の学校へと向かっていた。
洸夜が今日は文化祭だと言うと、悠達の様子見がてら見に行きたいと順平達が言うので決まった。
それを美鶴とアイギスにも連絡すると、ならば自分達も息抜きがてら向かうと言うので八十神高校で合流することも決まった。
そんな中で車内では洸夜と明彦達の情報共有が行われていた。
「なに……? 脅迫状が届いただと?」
「あぁ、美鶴達に渡したらしいが指紋も何も痕跡は出てこなかったらしい」
「確か鳴上先輩の叔父さん家って刑事っすよね? そんな場所に脅迫状って……やべぇんじゃないっすか?」
現状報告の最中、明彦の言葉に洸夜は考える様にそう言うと、事前に堂島のことを聞いていた順平も流石に能天気なことは言わなかった。
寧ろマズイんじゃないかと心配そうにしており、それを聞いていたゆかりも思わず額に手を置いていた。
「全くあの子達は……でも仕方ないのかも。悠くん達には桐条みたいな後ろ盾もないし」
ゆかりは悠達の軽率さに少し呆れていた様子だったが、言葉からは心配していることが分かる。
事実、悠達はペルソナを除けば一般人だ。後ろ盾はなく、現実世界で守ってくれる存在がいない。
実際、脅迫状が届いているのだ。犯人からの攻撃が行われている事実がある。
「……それよりもマズイのは“犯人”が悠くん達を認知しているってことだと思う。【コレイジョウ タスケルナ】……それってテレビの世界の事とかも知っていて、それを助けているのが悠くん達だって知っているってことだから」
「実際、ピンポイントで鳴上 悠に脅迫状を送っている。しかも刑事の家に送るなんてリスクしかない。それでも送っているってことはバレない自信があるってこと」
風花とチドリはもっと根本的な部分を心配するが、その通りだと洸夜も思っていた。
犯人は悠達を見ている。しかし悠達には犯人が分かっていない。
「……相手がシャドウなら対処できる。だが今回はそうじゃない。もし被害が菜々子や叔父さんにも及ぶなら……」
洸夜は悩む様に手を組んで考える。
それだけは阻止しなければならない。菜々子や堂島は現実側の人間なのだ。
洸夜の本音を言えば、シャドウやテレビの世界などの非現実に巻き込みたくはなかった。
「だが、その可能性だってある。お前の弟達は止めても止まる連中じゃねぇ。警察も既に事件は解決したと決めつけてやがるから、まともな捜査情報も入って来ねぇ。――今は次の動きを待つしかねぇぞ?」
悩む洸夜に真次郎がまるで覚悟だけはしておけと、そう言っているかの様に真次郎からの言葉がくる。
分かっている。分かってはいるのだ洸夜も。
今は耐える時、受け身の立場でしかないことを。
「……分かってはいるんだがな」
「……んな顔はすんな。今のところは大丈夫だろう。――ここ数日、堂島宅を監視していたが怪しい奴は来てねぇ。来てんのは堂島刑事の相方の情けねぇ刑事ぐらいだ」
情けない刑事――つまり足立の事だろう。
確かに堂島家に出入りしているのは足立ぐらいだと洸夜も納得するが、同時に気になる事もあった。
「監視って……そんなことしてくれていたのか真次郎?」
「シャドウワーカーとして仕事だ」
真次郎は特にリアクションもせずに、静かにそれだけ言った。
だが洸夜には分かっていた。きっと真次郎なりに守ってくれていたのだということが。
「すまんな……真次郎」
「……別に気にすんな。こっちは仕事でしてる事だ」
真次郎はそれだけ言って運転の方へ集中し始めた。
だが頼りになるのは変わりない。洸夜は真次郎に心の中で感謝し、同時に実感する。
自分は一人じゃないこと。自分には頼れる仲間がいること。
それが洸夜には不安を取り除く要素となり、少し胸が軽くなった。
「……悪いな皆。なにかあった時は頼む」
「フッ……任せておけ。その為に俺達は来たんだ」
洸夜の言葉に明彦はそう言って拳を握ると、ゆかり達も頷いていた。
どうやら明彦達は旅行気分で来たのではなく、事件解決の為に来てくれた様だ。
「……悪いな」
そう言って嬉しそうな表情をする洸夜の姿に、明彦達もどこか嬉しそうな表情をするのだった。
洸夜との絆の問題は解決した。だからこうやって普通に過ごせることが嬉しいのだろう。
皆、どこか嬉しそうに、そして優しそうな表情を浮かべている。
そして、そんな会話をしながらも洸夜達は八十神高校へ向かうのだった。
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現在:八十神高校
学校の前ではそれなりの賑わいを見せていた。
飾られた校門の前には近所の人間や学生達が大勢おり、まさにお祭りムードであった。
そんな校門の前で真次郎は車を停めると、洸夜達は車から降りた。
「俺は車を停めてくる。文化祭は……気が向いたら行ってやる」
「素直にくれば良いだろ?」
素直じゃない真次郎の言葉に洸夜達は少し笑うと、真次郎はその反応を無視して車を走らせて行ってしまう。
そして車が見えなくなった後、洸夜達は周囲を見渡して美鶴達を探した。
すると、校門の傍で佇む美鶴とアイギスの姿があった。
「美鶴! アイギス!」
「洸夜! 明彦達も……無事に着いた様だな」
美鶴達も洸夜に気付くと笑顔を見せてくれて、皆の方を見た。
因みにだが美鶴の服装はジーンズ等で、今回はボディスーツではなく普通の格好をしている。
アイギスもワンピースを着ており、明彦も布切れではなく普通のズボンとTシャツだ。
チドリは相変わらずのゴスロリファッションだが、彼女にそれが似合っているので特に違和感はなかった。
しかしここは田舎町――稲羽だ。
洸夜と美鶴達は良い意味で目立っており、周囲の学生達はザワつき始めた。
「うおっ……なんだあの集団、美人だらけじゃないか!」
「うわっ! あの人イケメン!」
「ゴスロリファッション! リアルで始めて見た!」
「……目立ってるな俺達」
洸夜は思わず笑ってしまうと、美鶴と明彦達も軽く笑う。
「さっさと中に入った方が良さそうだな」
明彦がそう言うと洸夜と美鶴達は頷き、学校内へと入って行くのだった。
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「おっ! 昔ながらの学校って感じだな! それに色々とやってるみたいっすね!」
校内に入ると更にお祭りムードが強くなる中、我先に入るとパンフレットを数枚持って洸夜達の下へ戻ってきた。
そして皆でパンフレットを見ると、確かに校内外で一般の出店から学生達の出店やイベントが多く書かれていた。
「本当に色々とやってるな……えっと、悠達の合コン喫茶は2階か」
「合コン喫茶って……こんな所で?」
場違い感があり過ぎると、ゆかりは呆れた様子でパンフレットを見ていた。
確かに場違い感があるのは同意だった。
まるでネタで言ったら採用されたかの様なギャグ感もある。
「りせと直斗のメイド喫茶にも顔出してやらないとな……」
そんな中で洸夜は、りせと直斗のメイド喫茶の場所も把握していた。
どうやら1階にあるらしいが、同時に気になる場所も見つけた。
「……占いの館【THE長鼻】?」
通路の脇にポツンと存在する違和感ある出店。
しかし洸夜は何故か不思議な存在感を感じており、何故か脳裏にイゴールやエリザベスが過って仕方なかった。
「色々と見て回る前に悠達の方にも顔を出しておくか」
「合コン喫茶……興味があります!」
美鶴の言葉にアイギスが興味深々と言った感じで頷き、ゆかり達は2階へ行こうとしたが、それよりも先に順平が動いた。
「あっ! グランドで野球部のノック的当てやってんじゃん! 俺っち、こっち行ってから合流しま~す!」
「あっ! ちょっと順平!――もう順平は本当に順平なんだから!」
ゆかりが呼び止めるが、それよりも先に順平はパンフレットを持って一人で行ってしまった。
それを見て、ゆかりは呆れた感じで溜息を吐くが、洸夜もちょっと顔を出したい場所があるので、皆にそれを伝えた。
「すまん。先に行っておいてくれ。俺も一ヶ所だけ寄りたい場所がある」
「なんだ洸夜、お前もか? 仕方ないな……じゃあ先に行っているから後から来いよ?」
「分かってるって」
明彦からの言葉に洸夜はそう言うとパンフレットを振りながらそう言うと、明彦と美鶴達は2階へ上がって行き、悠達の合コン喫茶へと向かって行く。
それを洸夜も見送ると早速、洸夜も移動を始めた。
目的の場所は占いの館【THE長鼻】だ。
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現在:占いの館
洸夜がパンフレットに書かれた場所へ来ると、そこは確かにあった。
幻想的な蒼を強調した占いの館。
「ここか……」
その中に洸夜が入ると、中は幻想的な暗さと蒼白いライトに照らされていた。
中にあるのはテーブルとイスぐらいであり、その向かいの所に洸夜にも見覚えのある彼女がいた。
「よっ! マーガレットさん。今日はイゴールとエリザベスは?」
「フフッ、主様はお休みです。今日は出張サービスですので。エリザベスは……今日もあちこちを見て回っております。――それはそうと、占って行かれますか?」
洸夜の姿を見ると夢の世界の住人――マーガレットは微笑みながらクールに言うと、洸夜は頷いた。
「頼めるか?」
「かしこまりました。では――」
マーガレットはそう言うと手慣れた手付きでタロットカードをテーブルへ並べると、やがて一枚のカードを捲った。
捲られたタロット――それは№13にして骸が鎌を持った絵【死神】のカードの正位置だった。
「……【死神】の正位置――それが示すは“死の予兆”……近い未来、貴方様に何か大きな試練が訪れるご様子。何か心当たりはございますか?」
「ハハッ……無いな。手の掛かる弟達がいるんでね、死ぬ余裕もないよ」
マーガレットの占いの結果に洸夜は笑いないがらそう言った。
悠達が心配ばかりかけるから、簡単に死ぬ余裕も予定もない。
しかしマーガレットの表情は真剣だった。
「お気を付けください。【死神】のカードは逆位置にならない限り、その意味は暗い未来となります。同時に“終末”や“破滅”を意味するカードでもあります。しかし【死神】の正位置には“決着”を示す意味もあります」
マーガレットはそう言うと静かに頷き、洸夜もそんな彼女から目を逸らさなかった。
「これが何を意味するのか、貴方のペルソナ能力――全ての繋がりを絆とする【黒きワイルド】 それは無限の可能性、どんな試練とも戦いうる“切り札”となる力。そして一度は旅路を終えた貴方様のワイルドが何を示すのか……その先に“原初”の光があらん事を願います」
マーガレットはそう言うとタロットカードを手の中に一瞬で収めた。
そしてもう一度、顔を上げた。
「しかし今日は祭り……嘗ての絆、新たなる絆。他者と関わり絆を豊かに育まれるのが宜しいでしょう。――そうすれば“死の予兆”が訪れる試練すらも打ち勝つことが出来ることでしょう」
「成程……つまり、こういう事だな?」
洸夜はそう言うと、微笑みながらマーガレットへ手を差し出した。
「?……これは?」
「君とは……ちゃんと話した事がなかったからな。エリザベス関連を除けば接点がなかったし、今更だがキチンと挨拶をな。――お互い、心配ばかりかける弟や妹を持つと大変だよな!」
そう言って笑う洸夜の姿に、マーガレットは一瞬だけ驚いた様に固まったが、すぐに笑みを浮かべた。
「……本当に不思議な人ね。貴方は。エリザベス……あの子が気に入ったのが少し分かった気がするわ」
そう言ってマーガレットは洸夜の手を掴み、二人は握手を交わした。
「……悠を頼む」
「こちらこそ、妹をお願いね。――貴方の歩む先に光があらんことを」
お互いにそう言うと、少し長い握手を続け、やがて手を放すと洸夜は一礼してから館を出た。
そして、そんな洸夜を見送るマーガレットの表情はどこか優しい笑みだった。
▼▼
占いの館から出た洸夜は約束通り、合コン喫茶へ向かった。
だが洸夜自身は繁盛している期待は一切なかった。
田舎町の学校の文化祭で合コン喫茶なんて流行る筈がない。
そう思いながら洸夜が訪れると……。
「なんだこれ……?」
「飲み物足りないぞ!! 早く追加!」
「は~い! こちらの席、順番待ちです! 並んで並んで!」
「こっちの席はすぐに座れますよ~!」
目の前に映る光景。それは大繁盛する合コン喫茶だった。
一部の席は何故か順番待ちで、係員の生徒が行列を整理する程の混み具合だ。
洸夜は何かの間違いかとパンフレットを見るが、やはり場所は合っている。
ここが悠達の合コン喫茶の場所だった。
「なんでこんな混んでるんだ? とりあえず美鶴達と合流しないと。――って、あぁ丁度良かった! 雪子ちゃん!」
「あっ! 洸夜さん! 来てくれたんですね!」
洸夜が何とか喫茶内に入ると、丁度飲み物を運び終えた雪子に会えた。
雪子も洸夜の姿を見て、嬉しそうに近寄って来ると洸夜は周囲の光景を見て思わず笑った。
「いやぁ驚いた。凄い大繁盛じゃないか?」
「え、えっと……はい。おかげさまで……!」
「ん? おかげさま……?」
洸夜が少し気になる言葉に違和感を持つと、雪子は苦笑しながら混んでいる席の方を見た。
それに釣られて洸夜も見ると、そこには……。
「いや……だから私は――」
「あの! ご趣味は!?」
「もう! 話、聞きなさいよ!!」
「え~と……その……あの……!」
「……こういう時、どうすれば良いのでしょうか?」
「……天使だ」
そこにいたのは美鶴・ゆかり・風花・アイギスの四人が席にいた。
そして、その向かい側の男子側の席には行列ができていたが、美鶴は困惑、ゆかりは怒っており、風花はどうすればいいのかあたふたし、アイギスも良く分かってない様子だ。
「……あ~納得した」
何でこんなに大繁盛しているのか。洸夜はそれがようやく分かった。
美鶴達がいるからだ。ハッキリ言って美人の領域に入っている美鶴達がいるから男子達が押し寄せたのだ。
美鶴達は断ろうとしているが、男子達は必死に趣味とかを聞こうとしている。
これは中々、終わることは無いだろう。
そして同時に別の方を見てみると。
「あ、あの! 写真一枚良いですか!」
「かまわない」
部屋の片隅で何故か開催されているチドリの写真撮影会。
男子女子関係なくチドリの写真を撮っており、チドリも何故か乗り気だ。
また同時に洸夜は気付いた。
男子だけではなく、女子も多いことに。
「まさか……?」
洸夜は女子達の列の先頭を見ると、その席にいたのは明彦と真次郎だった。
「悪いが恋愛に興味は無い」
「キャー! クール!!」
「……チッ! なんでこんな事に」
「……キュン! 強モテ……最高」
流石は学生時代、ファンクラブがあった明彦だ。
普通に対応しているだけで女子達はキャーキャー言っており、真次郎はやや疲れた様子だが一部の女子から凄い熱狂的な支持を得ていた。
どうやら美鶴達と明彦達のお陰大繁盛しているらしく、よくよく見ると悠や陽介、千枝達が忙しく飲み物を運んでいた。
そして別の席では、メイド服のりせが割り箸を持って盛り上げ担当をしていた。
「王様ゲーム!!」
「イエ~イ! りせちー最高!!」
その席だけは別の盛り上がりで合コンには見えなかったが、盛り上がっているならそれで良いのだろう。
そんな時だった。洸夜は一人でソワソワしているメイド――直斗の姿を見つけた。
「え、えっと……」
人混みも多く、どうすれば良いか分からず不安そうにソワソワしている直斗。
そんな浮いている彼を見つけた洸夜は、やれやれと一息入れた。
「全く、あいつは……」
普通に楽しめば良いのにと洸夜は思いながらも、気付けば直斗の傍に移動していた。
「よっ! 可愛いメイドさん?」
「えっ!――あっ、洸夜さん!?」
洸夜の姿を見た直斗は驚いた後、顔を真っ赤にして身体を隠そうとしたが、そんなんでメイド服を隠せる筈もなく洸夜は思わず笑った。
「アハハ……! 似合ってるじゃないか直斗。可愛い姿になったな!」
洸夜はそう言って直斗の頭に手をポンポンと置くと、直斗は顔を真っ赤にして怒って見せた。
「も、もう! 頭撫でないでください! 子供扱いしないでくださいよ!」
そうは言うものの、直斗は手で払って来ることはなかった。
しかも上目遣いで見上げてくるものだから、怒っていても可愛かった。
「アハハ! 悪い悪い!」
これ以上は更にイジメたくなってしまいそうなので、洸夜は直斗の頭から手を放した。
しかし、同時に洸夜は気付いた。直斗が自分の服の袖を掴んでいる事に。
「どうした、直斗?」
「……す、すみません。人酔いしたのか、少し疲れちゃって……苦手なんですよ、こういう雰囲気っていうか場所って言うか……」
「……成程な」
洸夜はそう言うと直斗の傍から離れることはしなかった。
逆に少し距離を詰めてやると、直斗の袖を掴む力が強くなるのを感じた。
「やれやれ……まだまだ子供だな」
洸夜はそう言うと再び直斗の頭に手を置いた。今度は優しく。
「……だから子供扱いしないでください」
直斗はそう言って顔を下へ向けるが、その顔を真っ赤だった。
メイド服が恥ずかしいのか、それとも今の状況が恥ずかしいのか。
どちらにしろ直斗が洸夜を解放するのはもう少し先だった。
こうして文化祭一日目は終わりを迎えるのだった。
END