普通に2,3万超えるとか予想外でした(;´・ω・)
月下の光が周囲を照らす。
温泉の湯気が周囲を幻想的に彩る。
そんな光景を見て菜々子は感動の表情を浮かべていた。
「うわぁ~!! 温泉だ!」
菜々子は温泉に来た事がない。
男手一つで多忙な堂島故に無理はないが、それ故に初めての温泉に感動を覚えていた。
兄・洸夜と一緒の広い客室。悠がいなくて寂しいが、それでも嬉しい感情が湧いて仕方ない。
「どう? 菜々子ちゃん……うちの温泉、凄いでしょ?」
「うん! すごい!! 菜々子ね! 温泉はじめてだからビックリ!」
タオルを巻く雪子からの言葉に菜々子は、はしゃぐ様に元気な声を出した。
広いお風呂というだけでテンションが上がるというものだ。
菜々子は目をキラキラさせながら周りを見ていると、他の女子メンバー達も次々と入って来た。
「ほら直斗! 観念しなさい!」
「うわっ! 押さないでくださいよ!?」
恥ずかしそうにする直斗をりせが連れて来る。
直斗はタオルを前に広げて身体を隠そうとしているが、その豊満な胸は完全には隠しきれていなかった。
「うわぁ~直斗くん、肌綺麗ね? 少し嫉妬しちゃうわ」
「うん……羨ましいかな」
ゆかりと風花も温泉に入って来ると、直斗の綺麗な肌を見て素直に頷いていた。
まるで美術品の様に綺麗な直斗の肌。そして年齢よりも豊満さを感じさせる胸。
それを女性陣はガン見していると、直斗の顔は更に真っ赤に染まって行く。
「も、もう! 良いでしょ!――は、早く温泉に入いろうか菜々子ちゃん」
「うん!」
「あっ! 逃げた!」
菜々子をダシに逃亡を図る直斗をりせが追うとした時だった。
「どうした? こんな入口に集まって?」
「何かありましたか?」
「入らないの?」
次に入って来たのは美鶴とアイギス、そしてチドリだった。
アイギスはいつもの姿で特に変わりはないが、彼女の姿と美鶴の身体を見たりせ達はおぉ~と思わず声を漏らしてしまう。
アイギスは肉体がロボット故の物珍しさもあったが、美鶴の場合はその肉体の美しさがあった。
年齢に似合った大人の色気というのか、腰は細く、胸やヒップの形も良くてりせ達は驚くしかなかった。
「うわぁ~綺麗……美鶴さん、それスッピンですか?」
「む……あぁ、化粧は事前に落としている。――そんなに見ても楽しいものじゃないだろ? 綺麗と言われても、そこまで自覚はないしな」
「いやいや! 文句なしで綺麗ですってば! うわぁ~同じ女としてすっごい差を見せられた気がする!」
「うん、大人の女性って感じするもんね美鶴さんは」
謙遜する美鶴に千枝と雪子もそう言うが、美鶴は少し気恥しそうに困惑した様子だった。
褒められて悪い気はしないのだろうが、彼女の性格もあって素直に自分が綺麗だという自覚はない様だ。
勿論、美貌やスタイル維持の為に美鶴も努力はしているが、やはり自慢する程に自惚れてはいない。
「ゴホンッ! そ、それよりも早く温泉に入ろう。冷えてしまうぞ」
「あっ! 美鶴さんも逃げた!」
気恥しくなった美鶴も直斗の様に素早く身体を洗いに向かい、それを見たりせ達は追いかける様に美鶴の後を追うのだった。
▼▼
身体を洗い、温泉に美鶴達が浸かって暫くした時だった。
りせが不意に美鶴達へ近付いた。
「あの美鶴さん達に聞きたいんですけど……昔の洸夜さんってどんな人だったんですか?」
「昔の洸夜……っと言うと、高校時代の洸夜という事か?」
「そうですそうです! 断片的な洸夜さんの記憶は『黒の駅』で見ましたけど、やっぱり全部は分かりませんでしたし。だから直接、聞きたくなって!」
りせの言葉に美鶴達は顔を見合わせた。
話と言っても言うほどの事の内容じゃないのか、少し悩んだ様子だったが、ゆかりが最初に口を開いた。
「う~ん、強いて言えば……私達って寮暮らしだったんだけど、その時に料理の担当をしてくれたのが鳴上先輩だったわね」
「料理……? それって皆さんの料理当番していたってことですか?」
「へぇ……やっぱり洸夜さんも料理とか上手なんだねぇ」
りせの言葉に千枝や雪子、そして直斗もやってきた。
そして彼女の言葉にゆかりは頷く。
「そうそう。朝食からお弁当、そして夕飯までね。鳴上先輩って家庭料理とか上手だし」
「うん、玉子焼きとか肉じゃがとか美味しかった。お弁当もバランス良くてね」
ゆかりの言葉に風花も思い出す様に頷くと、それを聞いていた菜々子も手を上げた。
「うん! 洸夜お兄ちゃんのお弁当ね! ほんとに美味しいんだよ! いつも菜々子やお父さんのお弁当つくってくれるし、この間はクマさんのキャラ弁つくってくれたの!」
「フフッ……そうなんだね。洸夜先輩……変わってないんだね」
風花が菜々子の話を聞いて思わず笑ってしまうと、美鶴も思い出す様に口を開いた。
「何だかんだで当時、洸夜には随分と助けられたな……」
食事係は当然そうだが、同時にシャドウ事件の時もだ。
美鶴が思い出す限り、戦いの時は洸夜の背中を見ていたことの方が多かった。
「アイツのペルソナ能力は『ワイルド』だ。だから、いつも前線に明彦と一緒に真っ先に出てな……やんちゃもしていたが、洸夜にも随分と頼ったものだ」
「洸夜さんは……そんな前からシャドウと接していたんですね」
考える様な直斗の言葉に美鶴は頷くと、少し暗い表情を浮かべる。
「巻き込んだのは私だがな……最初は困惑していたが、後は嫌な顔をせず、よく付き合ってくれたものだ。――気恥しくて、真っ正面からはアイツには言えないがな。言えば調子に乗るのも目に見えているしな」
そう言って美鶴は困った様に笑った。
調子に乗った洸夜は面倒くさいのだ。色々とイジられた事もあるしと、美鶴はやれやれと思い出すが、その表情はやはり嬉しそうだった。
そして、そんな顔を見たりせは少し頬を膨れさせた。
「なんか良いな……美鶴さん、洸夜さんのこと理解してるって感じがするから」
「まぁ長い付き合いだからな、私達は」
美鶴は当然だと言う様に、そう言ったがりせは納得した様子ではなかった。
「そう言うことじゃなくて……なんていうか、互いに信頼し合ってる感があって羨ましいんです! ねぇ! 風花さん! 雪子先輩!」
「えぇ!? ど、どうして私に聞くの!?」
「……えっと、そのちょっとね」
りせからの言葉に風化と雪子は顔を赤くしているが、隣にいた直斗は理解している様に頷いた。
「でも少し分かります。洸夜さんは調子に乗りますし、すぐに僕のこともからかって来ますから。全く、すぐに子供扱いしてきて迷惑です」
「そう言う割にはミスコンの時もそうだったけど、直斗くんって洸夜さんに甘えてるよね?」
「えっ、ちょっ! 里中先輩! 僕がいつ洸夜さんに甘えているんですか!」
千枝の言葉に直斗は顔を真っ赤にして反論した。
だが千枝は、えっ違うの? と言わんばかりに首を傾げた。
「いやだって、直斗くん……私達とは違って、洸夜さんには本音をぶつけるし、それに本気で嫌がってる感なくない?」
「僕は本気で怒ってます!――全く、誰があんな子供っぽくてからかってくる人なんかに」
直斗はそう言って顔を赤くしながら、別の方向へ身体ごと向いてしまった。
だがそれは誰がどう見ても照れ隠しにしか見えず、千枝達は思わず笑ってしまう。
明らかに自分達の時とは反応も違うし、キャラも違う。
直斗が素を見せていたのは、やはり洸夜であり、千枝達もそれに気付いているのでそれ以上、深くは追及しなかった。
そして、直斗がそっぽを向くと今度は雪子が美鶴達へ聞いてみた。
「そう言えば……洸夜さん、結構やんちゃしてたって言ってましたけど、そんなに凄かったんですか?」
「あぁ~そのことね。確かに今は大人しいけど、高校時代の鳴上先輩は凄かったわね」
「……私がイジメられていた時は教室に殴り込んで来てくれたり」
「ゆかり達が駅裏――治安の悪い場所に行ったと聞いた時は、木刀を持って助けに行ったりな。今は落ち着いた様だが、昔は色々とやっていてなアイツも」
ゆかり、風花、美鶴が順に話すのを雪子達は頷きながら聞いていると、やがて雪子達は意外そうな表情を浮かべていた。
「なんか意外です。洸夜さん……落ち着いた雰囲気がありましたから、そんな風な高校時代だったなんて」
「うんうん! もっとクールな学生生活だと思ってた」
「フフ……洸夜も大人になったという事だな。流石に今もあの頃のままなら、そっちの方が心配する」
美鶴はおかしそうに笑い、雪子達もそりゃそうだと思って一緒に笑った時だった。
「へぇー大センセイも、やんちゃしてたクマね! 青春の1ページってことクマね!」
「当時、生徒会長だった私は大変だったぞ? 全く、他人事……だと……」
美鶴はそこまで言った時だった。
今の言葉は誰が言った? そんな疑問が浮かび、錆びた人形の様に美鶴達が自分達の隣にいる人物に顔を向けた。
「ヤッホー!」
――そこにいたのはクマだった。
――瞬間、温泉に叫び声をが響いた。
「キャアァァァァ!!!」
「なんでいるの!? こっち見んな!!」
風花が叫び、千枝も叫んだ。
同時にゆかり達やりせ達も一斉にタオルを巻いて能天気に手を振るクマから距離を取った時だった。
温泉の入口から話し声が聞こえてきて、ぞろぞろと入ってくる者達がいた。
――悠達と洸夜達だった。
「おーい! クマ、ちゃんと身体洗ってから入れよ?」
「露天風呂なんて久しぶりだ……良いな真次郎は、毎日ここの風呂に入ってんだろ?」
「拠点にしてんだからしゃあねぇだろ……」
「しかし全員で入る必要あったのか? 俺はもう少ししてから入りたかったんだが……」
「良いじゃないっすか真田先輩! こういう時は皆一緒に――ぐべっ!?」
悠と洸夜。そして真次郎、明彦、順平が話しながら入って来て、その後ろから陽介と完二も入って来た時だった。
不意に桶が順平の顔面に直撃した。
「順平!? 一体、何が――」
「――って、えぇぇ!!? なんでお前等がいるんだよ!? 山岸さん達まで!?」
「こっちの台詞よ!! 花村達だけじゃなく荒垣さん達までぇ~!!」
明彦が驚き、そして陽介が気付いた。
目の前に千枝達、そして美鶴達がいることに。
「なっ!?」
これには流石の真次郎も驚愕し、目を見開きながらも咄嗟に顔を逸らして女子達を見ない様にした。
明彦も顔を逸らしたが、不意に殺気を感じて真次郎とその方向を見た瞬間、二人は思わず絶望した。
「ゲッ!! 美鶴がいる……!!」
「ゲッ!! 美鶴がいる……!!」
二人がそう言ったと同時だった。
二人の間を桶が風を切って横切っていった。
そして同時に彼等は見た。
――赤い修羅を。
「明彦ぉ……!! 荒垣ぃ……!! そして洸夜ぁ……!!」
そこには修羅となり、羞恥と怒りの表情を浮かべた美鶴が立っていた。
それを見て悠達は思わず金縛りの様に動きが固まり、明彦と真次郎も思わず恐怖で固まってしまった。
「覚悟は出来ているだろうなぁ……!」
「ま、待て! 今の時間を見ろ! 今は男湯の時間――」
「問答無用!!」
真次郎は必死に何かを言おうとしたが、残念ながら帰って来たのは美鶴の全力投球の桶だった。
「うおっ!?」
それを紙一重で避ける真次郎だったが、同時に何個も投げられてくる桶の数々。
女子達による一斉攻撃に悠と明彦達は怯み、どうしようかと悩んでいた時だった。
洸夜はと言うと。
「ほ~ら菜々子? 痒いところはないか?」
「うん! だいじょうぶ!」
菜々子の頭を洗っていた。
まるで何事も無かったかのように堂々と。
そんな洸夜の姿に皆も動きが止まり、代表する様にりせが手を上げた。
「あ、あの……洸夜さん? 今、どういう状況か分かってますか?」
「勿論だ」
洸夜はそう言って菜々子の頭を流してあげると、まるで獲物を見つけた肉食動物の如く、その眼光が光った。
「事前に調べたが……今は男湯の時間の筈だ!」
「えっ!? あっ――ホントだ! もう男湯の時間になってたんだ!?」
「えっ……うそ?」
洸夜の言葉に雪子が時計を見て、そう言うとようやく女子達の攻撃が止んだ。
そして、それに洸夜が頷くと、洸夜は鋭い眼光で美鶴達へ指差した。
「そう! つまり!! 覗きはどちらかと言えば美鶴達!! お前等だぁぁぁぁ!!!」
――!!!
洸夜の堂々とした宣言に美鶴達は強烈なショックを受けた。
悠達と洸夜達が覗きだと思っていたら、気付けば立場が逆転していたのだ。
そんな光景に男子組――陽介や完二は感動レベルで洸夜を見ていた。
「す、すげぇ……洸夜さん、この絶望的状況を逆転したぞ!?」
「男っスよ……! いや漢だぜ!」
「んな事より、視線や顔は逸らしておけ。年頃の連中もいんだろ」
感動する二人に真次郎が注意を促すと二人は慌てて顔を女子達から逸らし、明彦達も倒れている順平を回収する。
しかし陽介達には疑問があった。
何故、洸夜はここまで冷静なのか、どうしてこんな絶望的な状況で堂々としていられるのかが。
「なんで洸夜さん……まるで執念みたいに堂々していられんだ?」
「さ、さぁ……?」
二人は疑問に思ったが、それに答えたのは明彦だった。
「実は昔な……似た様な事があったんだ。その時も事故だったんだが、美鶴達には言い訳が許されず処刑されたんだ。恐らく洸夜は、当時の事を根に持っていたんだろうな」
明彦の言葉に二人は絶句した。
似た様な状況ってなんだと、そして“処刑”ってなんだと。
そんな表情を浮かべる中、洸夜は背中を見せながら美鶴達へと言い放っていた。
「どうだ美鶴! 今回ばかしは処刑もできないだろ! 何故なら俺達に非はないからだ!!」
「えぇい! 減らず口を……! だ、だが少しは見ただろ!!」
「見てないな! 菜々子が帰って来ないこないから……おかしいなと思っていたが、こんな事態も予想していた俺はすぐに顔を逸らした! だから見てないな!!」
「予想しているじゃないか!! なら見たも同じだろ!!」
「全然違うな!!」
洸夜と美鶴はそう言い始めると、ああだこうだと言い合いを始めた。
背中を向けたままの洸夜に、美鶴がその背中へ色々と言っているというシュールな光景になっているが、互いに退く気も見せない。
男湯の時間なので美鶴達が出れば終わりなのだが、頭に血が上っている美鶴には冷静な判断はできなかった。
それに釣られて他の女子メンバー達も、洸夜と美鶴の言い合いが終わるのを待つ形となり、状況がより混沌となっていた時だった。
「あら? それなら混浴でも良いわよ? 洸夜くん達なら信頼できるし」
――えっ?
――へっ?
悠達と雪子達が一斉に声のした方を見ると、そこには和服を着た一人の女性が立っていた。
「うおっ!?」
そんな女性の登場に陽介達は驚いて腰のタオルを急いで巻き直し、その女性を見た雪子はタオルを前に広げながら急いで近寄った。
「お母さん!?」
「おばさん!?」
雪子と千枝が一斉に声をあげた。
雪子がお母さんと呼んだ。つまりは、その人はこの旅館の女将であった。
洸夜も豆腐の配達や雪子繋がりで何度か会った事があるから知っていたが、何故にここにいるのかが不思議だった。
「どうしてここに!?」
「あら? 温泉が騒がしいから様子を見に来たのよ?――それにしても雪子。あなた、また男湯の時間と間違えたのね?」
「あっ……その、はい……」
女将の言葉に雪子は恥ずかしそうに頷くと、女将はやれやれと首を振った。
「もう……変なところで抜けてるんだから。ごめんなさいねぇ、皆さま」
「あっ……いえ、そんな」
「え、えぇ、こちらも被害が出た訳ではないので……」
頭を下げる女将に洸夜と美鶴も何か言える事はなかった。
寧ろ、自分達が幼稚に見えて少し恥ずかしくなり、何とも言えない雰囲気にある中、洸夜が女将へ口を開いた。
「いや、あの女将さん。流石に混浴はあれじゃ……」
「いえいえ、お客様もそんないませんし……それに洸夜さん達なら変なこともしないでしょ?」
女将の変なこと、という言葉に女性陣は顔を赤くしてしまうが、洸夜だってそんな気持ちは一切ない。
悠達と明彦達にも視線を送ると、当然だと言う様に頷いている。
「っていうか、美鶴達はどうなんだ? 普通に混浴って……」
「あっ、いや……その私達だってなぁ」
美鶴達も気まずいのか言葉が出ることは無く、あとは流れに身を任せることになってしまった。
――その結果。
「……」
「……」
男性陣と女性陣は、対極の位置にそれぞれ陣取る形となり、両者は黙ったまま温泉に浸かっていた。
「みんなで温泉だ! 楽しいね!」
唯一天真爛漫なのは菜々子ぐらいで、男性陣と女性陣の両方を行き来して楽しそうにしている。
そんな彼女が唯一の癒しだが、ハッキリ言って気まずいのが実情だった。
「気まずい……」
陽介が何とも言えない表情でそう言葉を漏らすと、完二も同じ様に頷いた。
「……俺、混浴とかってもっとロマンあるもんだと思ってたっス」
「なんだ! あたし達じゃ不満かコノヤロー!」
完二達の言葉に千枝が向こう側から抗議してくるが、気まずい理由は普通にあるのだ。
それは、温泉の傍で氷像と化しているクマにあった。
『ヤッホー! 混浴クマ! じゃ! クマはユキちゃん達の所に――』
それがクマの最後の言葉となった。
堂々と女性陣の方へ行ったクマは美鶴によって処刑され、今は氷像となっている。
「……チッ! こんな状況でゆっくり浸かれるか」
「まぁ……確かにそうっすよね」
真次郎は不満そうにそう言うと、順平も同じ様に気まずい表情を浮かべている。
明彦も処刑を免れたが、やはり表情は微妙だった。
「何とか美鶴の怒りから逃れられたが……こんな風に混浴したところでな」
「混浴はロマンです!」
「……悠、君は何故にそんなイキイキとしていられるんだ?」
明彦は明るい表情の悠を見て不思議そうにしていたが、悠と菜々子でどうにか出来る程、今の雰囲気は生きてはいない。
「よし! ここは俺に任せろ。この悪い雰囲気をうち破ってやる!」
「……やめとけ。どうせろくでもない事だろ?」
洸夜の言葉に真次郎が既に呆れた顔をで見てくるが、洸夜は諦めない。
「まぁ任せておけって!――お~い直斗!」
「えっ!? な、なんですか……?」
突然、名を呼ばれた直斗は困惑した様子だったが、洸夜は雰囲気を悪化させない様に言葉を選んでみた。
「湯加減どうだ~?」
「……まぁ、良いと思いますけど」
「そうか! 因みに温泉とかって初めてか?」
「……そうですねぇ。昔はおじいちゃんに連れて行ってもらいましたが、最近はあまり……」
「そうか……因みにどこから洗うんだ?」
「えっと……頭から――って、何を聞いてるんですか!?」
直後、女性陣側から桶が飛んできてそれは綺麗に洸夜の頭に直撃した。
「いでっ!?」
「鳴上先輩! それって普通にセクハラですから!」
「この作戦は失敗だ……」
ゆかりからの怒りの声が聞こえてくる中で、洸夜は撃沈した。
しかし明彦達は予想していたのか特に何も言わず、洸夜の心配もしなかった。
「もう出て良いだろ……」
真次郎の言葉に全員が内心で頷く中、これでは面白くないと洸夜は再度立ち上がった。
「いや待て!――最後にやってみたいことがある」
「なんだそれは?」
洸夜の言葉に明彦達は反応すると、洸夜は明彦達に説明した。
すると、真次郎は少し険しい表情を浮かべた。
「なんだそりゃ……ガキじゃあるまいし、それにマナー違反だろ」
「なんだ自信ないのか?」
「……そうじゃねぇ。普通にガキ過ぎるって話で――」
「いや、でも最後に何かはやりたいって感じはしますね」
「俺もっス。こんな気分で風呂から出ても、モヤモヤするっていうか……」
「俺もだ……最後に馬鹿やって温泉から出たい」
「自信はある!」
「まぁ良いじゃないっすか荒垣先輩。今日だけ! 今日だけっすから!」
「……しょうがねぇなぁ」
陽介、完二、明彦、悠、順平の言葉に真次郎も遂に折れると、洸夜達は円陣を組む様にすると、それを始めるのだった。
▼▼
「なんか、あっちの方……静かになりましたね?」
「何か企んでたりして……!」
男性陣が静かになったことにりせが不思議そうにしていると、ゆかりが疑う様に呟いた。
流石にクマみたいに強硬突破する者はいないと信じたいが、洸夜や悠の様に動きが分からない者もいる。
だから油断は出来ないと女性陣が思っていると、不意に男性陣の方から声が聞こえてきた。
「アハハハハ! なんだ完二! 見た目の割にそのちっこいのはよ!」
「なっ! う、うっせぇな! 良いじゃねぇかよ別に! 花村先輩だって大きさ的には、ちっこい方だろうが!」
――!!
はしゃぐ様な陽介と完二の言葉が聞こえてきた瞬間、女性陣達の動きが固まった。
小さい、大きい。そんな会話が聞こえてきたのだ。
彼女達の中で男性陣でそんな会話の内容――それは察するのに早く、アイギスを除く全員の顔が真っ赤に染まる中、男性陣の会話はまだまだ続く。
「おっ! 悠! 結構デカイんだな! 良いぜ、俺っち的にもポイント高いぜ!」
「当然です! 真田さんも、かなり大きいですね?」
「そうか? 普通か妥協点だと思うんだが……?」
「あうあうあう……!」
「これって……やっぱり……!」
向こうからの会話に風花や直斗の表情が更に真っ赤に染まる。
そして言葉も出てこない中、美鶴達も言葉が思わず出せずにいると会話は更に加熱していく。
「うおっ! 洸夜さんでけぇ!!」
「マジかよ……男として自信なくすぜ」
「フッ、年季の違いだな!」
「こ、洸夜さん……大きいんだ」
陽介達の会話に思わず雪子は呟いてしまった。
その言葉に更に顔を真っ赤にしてしまう女性陣。
しかし会話はまだ終わらなかった。
「えっ!? 荒垣さん超でけぇ!!」
「馬鹿な……俺が負けるなんて……やるな真次郎!」
「……どうでも良いだろそんなこと」
――!!!
「わ、私! もう出る!!」
「ぼ、僕も!」
「あ、あたしも!!」
「菜々子も、もう出るね!」
「わ、私も出る……!」
風花や直斗。そして千枝が出ると同時に楽しそうな菜々子や、顔を真っ赤にした美鶴達も一斉に温泉から出て行ってしまう。
「どうしたんだろ……?」
そして、そんな女性陣の行動に悠は不思議そうにしていると、洸夜も不思議そうにする中で話を続けた。
「のぼせたんだろ?――良し! 最後にもう一回だけ作るぞ!」
「よっしゃ! 次は負けねぇからな!」
洸夜の言葉に完二は気合が入った様に言うと、全員が一斉に温泉にタオルを浮かばせた。
そして空気を入れて、一斉に手で縛ると、タオルに空気が入ってタコの様な形となった。
「よし! さっきよりデカいぜ!」
陽介が嬉しそうに言うと、他のメンバーもそれぞれの大きさの空気タコを作っていた。
しかし、やはりデカいのは洸夜と真次郎だった。
「やっぱり鳴上先輩と荒垣先輩、凄くデカイっすね!」
「コツがあるんだコツが」
「これで最後だぞ……美鶴達が着替えたら俺等も出るからな?」
順平の言葉に洸夜と真次郎はどこか楽しそうに話していると、やがて彼等も温泉から出るのだった。
そして余談だが、温泉から出た後、洸夜と真次郎は女性陣からガン見されたとかされなかったとか。
END