同日
現在:雪子姫の城
洸夜との接触の後、悠達はテレビの中へと入り、雪子がいるである巨大な城へと向かった。
しかし、そこで雪子を心配した千枝が独断で行動をしてしまい、急いで千枝を追う悠達が追った先に見たのは千枝と千枝?が対峙している光景だった。
「あ、あれは!?」
「シャドウだクマよセンセイ! 抑圧された内面……不安定な精神状態が制御を失ってシャドウが出たクマ!」
クマの説明で悠達に気づいた千枝がこちらを向くが、その表情は青白く冷や汗が流れていた。
「み……皆……違う……違うよ! 来ないで! 見ないで!」
自分のシャドウが見られたくないのか手を広げ、シャドウを隠そうとする千枝。
しかし、彼女のシャドウである千枝?は可笑しそうに笑いだす。
『ふふ。雪子はトモダチ……雪子が大事……手放せない……はははは! あんな都合のいいやつを手放せる訳ないよね!』
「違う……違う!」
『雪子ってさ、美人だし女らしいから男子にいっつもチヤホヤされてる……。その雪子が時々あたしを卑屈な目で見てくる……それがたまんなく嬉しかったんだよね!! 自分よりも上の人間が自分を頼りにしてるんだからさ!!』
「黙れ!!」
認めない。全部が嘘。そんな事実は存在しない認めない。
千枝?の言葉を否定する様に遮る千枝だったが、その状態の危険性に悠達が気づかない筈がなかった。
「まずいぞ……!」
「よせ里中!」
不穏な空気をさした陽介が千枝を止めようとしたが、自分のシャドウのせいで冷静さを失っている千枝には届いてない。
そして、千枝はとうとう拒絶の言葉を口にしてしまう。
「あんたなんか! あんたなんか……私じゃない!」
その言葉が引き金となり、シャドウから闇が放出された。
『うふふ……はははは!!! そうよ私は私! あんた何かじゃないわ!』
そう言うと放出された闇が千枝?包み込む。
そしてその闇は覆面を被り、手には鞭を持ち、沢山積み重なっているシャドウ達の上に乗っているシャドウ『千枝の影』となって出現した。
真なる我となった影は、千枝を見下す様に笑いあげる。
『ハハハハハハハハハッ! 我は影、真なる我、うふふ、あんた……邪魔!』
「あ……ああ……」
「まずい、クマ! 千枝を頼むぞ!」
「任せるクマ!」
何が起こったのか理解出来ずに放心状態になっている千枝はクマに任せ、悠達はシャドウの前に出た。
まだシャドウとの戦いに慣れていない二人だが、此処で逃げる訳にも行かないが、どこか堅いそんな二人を見て千枝の影は鬱陶しそうに見下す。
『なに? あんたたちも邪魔よ。とっとと消えなさい!』
「消えろと言われて消えれるかよ! 行くぜ相棒!」
「陽介! 油断するなよ!」
「「ペルソナ!」」
その唱えるとジライヤとイザナギが召喚され、二人はそれぞれ戦闘体勢に入る。
「先手必勝だ!」
『ガル!』
陽介が先手をとり、ジライヤから放たれた疾風が千枝の影を襲い、そのままガルをモロに喰らった千枝の影は叫び声をあげた。
『きゃああ!この!』
ガルを受けて体勢を崩す千枝の影。自分達の想像以上のダメージの受けに悠達は相手の弱点を悟り、自分の属性である陽介は笑みを浮かべる。
「どうやら相手の弱点は風の様だ」
「ああ、なら俺の独壇場だ相棒!援護を頼む!」
「ッ!? 待て陽介!油断するなッ!」
相手の弱点属性が自分の属性と分かった途端に、考え無しに突っ込む陽介を悠が止めた。だが陽介はそのまま突っ込む。
「くらえ!」
そう言って再びジライヤはガルを放ち、千枝の影へ放たれた。……が。
『ふふふ、ただ突っ込むだけの馬鹿程倒し易いのは無いわよ。……コレでどう?――緑の壁!』
千枝の影が『緑の壁』を唱えると、その前に文字通り緑色の壁が出現した。その壁がジライヤのガルと衝突すると、ガルは壁にぶつかり威力が激減した微風となった。
『あ~ら、良い風ね』
「嘘だろ! そんなのありかよ!」
陽介が余りの事に混乱するなか、シャドウが視線を陽介へ向けた。
「ッ!……逃げろ! 陽介!!」
「攻撃がくるクマ!」
「え?」
攻撃を防がれての後で陽介の思考が遅れ、悠達の言葉を理解する事がすぐには出来なかった。
だが、そんな千枝の影の視界には自分達も映っていたことに悠達も気付いていない。
『何、人事みたいに言ってんの? あんたたちもよ!――マハジオ!』
「「ぐわぁぁぁ!」」
千枝の影が放つ雷が辺りに降り注ぎ、悠達はダメージで膝を付いてしまう。
弱点を突けば勝てると思っていた二人にとって、耐性属性を持つ敵との戦いが想像以上に手強い。
同時に確信もした。目の前のシャドウが陽介のシャドウよりも強いという事を。
「センセイ! ヨースケ!」
クマが二人に危険を知らせようとするが、千枝の影の方が早かった。
『これでとどめよ! 底知れぬ妬み!』
千枝の影は鞭を振り回しながら攻撃を放つ。
(アレは流石にマズイッ!)
いち早く攻撃に気付き、ヤバいと判断した悠が陽介を庇う為に前に出た瞬間、強烈な一撃が悠の体を襲う。
「ぐあッ!!」
「相棒!」
余りの威力に再び膝をつく悠は、初めて大型シャドウの恐ろしさを自覚した。
弱点を突けば楽に勝てる? 二人掛かりで挑めば余裕を持てる?
(俺達は……甘かった……!)
膝を着いて息を乱しながら悠は後悔しながらも、勝つ手を考えた。
残された手はやはり隙を作らなければ始まらない。
それしか手がなく、悠は隣で膝を着く陽介の方を見る。
「はぁ……はぁ……! 陽介、どうにか……ならないのか……!」
「どうにかって言ってもよ……あの壁をどうにかしねぇと!?」
やれたらとうにしているが、あの壁がある限り決定打にならない事に陽介は歯痒かった。
そしてどうすれば良いか分からず、陽介の顔に恐怖が写った時だった。
『疾風ガードキル!』
突然、何処からともなく緑色の光が飛び込む様に現れ、緑の壁と激突した瞬間、緑の壁に亀裂が入り、そのまま粉々に砕けて消滅する。
『ちょっと! ナニよこれ!』
突然の事に困惑するのは千枝の影だ。だが、その突然の事には悠達も驚きが隠せないでいた。
少なくとも自分達では無い別の力が働いたのだ。今の悠達はそれぐらいしか理解出来ず、呆気にとられてしまった。
「ど、どうしたんだ……?」
「よく分かんないが、今がチャンスだ!――イザナギ!」
我に返った悠の言葉を合図にイザナギが千枝の影を斬り付け、斬撃によるダメージを与える。
『キャアアアッ!』
千枝の影が怯んだ事で隙が生まれ、悠は更に追撃した。
「畳み掛ける! オロバス!」
『アギッ!』
悠がイザナギを一旦戻し、馬の姿のソロモン72柱の悪魔『オロボス』の名を持つペルソナを召喚すると同時に炎を放った。
炎は千枝の影を囲む様に走り、シャドウの周りは軽い火の海へと変わる。
『ぐああッ! ナメんじゃないわよッ!!』
「ッ!?」
追いつめられた大型シャドウの怒りの反撃。
千枝の影は鞭を握り絞めると振り回し、炎を凪ぎ払いながら悠を目掛けて振り下ろそうとした。だが……。
『スクンダ!』
『!……な……に……コレ……体が……!』
突如、先程の様に謎の光が千枝の影に降り注がれ、その光を浴びた途端、千枝の影の動きが鈍りだす。
そして今がチャンスと思い、悠はイザナギを再び召喚した。
「イザナギッ!!」
『スラッシュ!』
体の自由が効かない千枝の影は、イザナギの攻撃を避ける事が出来ずにそのまま攻撃が直撃した 。
『ああぁぁぁぁ……!!』
それが止めとなり、千枝の影は千枝?の姿へと戻っていった。
▼▼▼
あの後、千枝と千枝?は向かいあっていた。陽介からは、俺もそうだった……などと言った応援をして貰い。
悠も、それも含めて千枝だ。などと言って応援をした。
「私、最低だね……でもさ、こんな……わた……しでも雪子のこと……好きなのは嘘じゃ……ないから……!」
泣きながら答える千枝の言葉を聞いて、千枝?は静に頷くと光りだし仮面を付け薙刀を持つペルソナ『トモエ』へと転生した。
「知ってるよ……皆もそう言う所あるから。だから人間なんだ……」
「……うん、ありがとう」
悠の言葉に少し気が楽になったのかお礼を言う千枝。その時だ。
『うふふあははは! あらぁ? サプライズゲストかしら? どんな風に絡んでくれるの?』
突如、雪子?がその姿を現し、悠達を見ながら嬉しそうに笑っていた。
だが、やはりその姿にはいつもの雪子の姿は無く、千枝は目の前の存在を否定する。
「違う……! あんたは雪子じゃない! 本物の雪子は何処!」
『何言ってんの? 雪子は私、私は雪子』
千枝と雪子?が言い争っている間に悠はクマに聞いてみる。
「やっぱり彼女は……」
「そうクマね……“もう一人のあの子“クマよ」
(やっぱり彼女のシャドウか……)
陽介の時と同じ様な感じだと思いながら、悠は雪子?に警戒を解かなかった。
『それじゃ再突撃いって来まーす! 王子様! 首を洗ってまっててよ!』
だが、雪子?は何もせずにそう言って奥の方に走って行ってしまう。
「ま!……まって……!」
雪子?を止めようとする千枝だが、疲れが出た為か膝をついてしまう。
「今日は一回戻った方がいいな……」
「ああ、里中を休ませないとな」
「ちょ! ちょっと勝手に決めないでよ! 私は大丈夫だから!」
悠と陽介の話しに反論して叫ぶ千枝だが、何処をどう見ても無理をしている様にしか見えない。
「あのな……!」
千枝の説得は陽介とクマに任せ、悠はある事を考えていた。それは、先程のの戦いの最中に隙を作ってくれた光。
アレが無ければ、恐らく自分達は負けていたからだ。
「なんだったんだ……あの大型シャドウの技を糸もたやすく……」
そう考えていた時だった……。
「相棒!? 里中の野郎が! 勝手に行っちまいやがった」
「!? どういう事だ!」
実は……。陽介は気まずそうに説明した。
なんとか戻ろうと説得していたのだが、雪子は今も寂しい思いをしていると聞かず、どうするかクマと相談している隙を突かれて千枝は先に進んでしまったとのことだ。
「どうする相棒!? 里中の奴、まだペルソナに慣れてない筈だぜ。俺だってまだ扱い切れないのに、さっき覚醒したばっかで、しかも疲労してるんだぜ!?」
「とりあえず追うぞ。里中の向かう先は天城のところだ!」
悠はそう言うと、急いで次のフロアへ千枝を追っていった。
▼▼▼
現在、雪子姫の城。
洸夜は城の影から、悠達が次のフロアへ向かう眺めていた
「急いで来て正解だった。……しかし、花村の奴はまだまだか。緑の壁が破壊された時に奴も攻撃していれば、もっと楽に勝てた筈なんだが……」
しかし、それを除いても悠達の耐性持ちのシャドウに対する戦い方、それは仕方ないが撫様としか言い様が無かった。
今回は自分が居たから勝てたものを、いつでも自分がいる訳ではない為、悠達には早く自立して貰わないと困る。
本来なら洸夜が教えれば良いのだが、もし自分が名乗り出て共に戦う事になれば必ず自分を頼ってしまい、全く成長しなくなる可能性もある。
何より、経験談からあの年齢の子達に教えるのは実戦が良いと分かっているからだ。
(ゆかり達を思い出すな……)
洸夜は感傷に浸りそうになったが、先程の光景の中である疑問が生れ、そっちに意識を向けなおした。
「しかし……まさか、あの子まで覚醒するとは。……だが何故、この時期にペルソナ能力に覚醒する者達が増えたんだ……? 偶然にしてはイゴールの事件とタイミングが良すぎる」
経験談から言ってこの手の事は偶然で片付いた試しがない。
やはり何かの力が動いていると洸夜は考えながらも、今は悠達の後を追う事を優先させ、後を追っていった。
END