ボッチな美少女は孤高のボッチを見て育つ   作:Iタク

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遅くなって申し訳ありません。



とある友人の恋文(ラブレター) ③

「あの、依頼人を連れてきました。」

 

 七宮さんを部室に連れてきたあと、自分の席に再び座った。これで依頼人本人から話を聞けるのだが、正直そんなことは頭から離れていた。それよりも、先ほどの七宮さんの発言が気になって仕方がなかった。

 

『……何も見えなかったんですよ…』

 

 人の心や人格を色として見ることが出来る共感覚を持っている七宮麻奈美さんから唐突に言われ、ますます自分が何者か分からなくなってきた。

 しかし、思い出してみると、たしか七宮さんはこう言った。

 

『色が見えるのは、初対面の人限定で………』

 

 つまり、私は彼女と以前からの知り合いだったということなのか……?しかし、出会った時の反応を思い返してみる限りあれが初対面のはずだ。

 

 ……………やはりわからない…

 

 どちらにせよ、七宮麻奈美という女性は私の記憶を取り戻す重要なキーパーソンであることに変わりはない。重要なキーパーソンってなんか意味被ってますねはい。

 

「────さん?」

 

 それから、あの時は話をそらしてしまったが、一色さんに関しての『赤じゃない赤』というのも、冷静に考えてみればおかしな表現だ。

 

「───かちゃん?」

 

 おかしいと言えば、今までの私の行動も。そもそもなんで比企谷家で足を止めたのだろうか……書店で彼と会ったのは果たして偶然なのか?昨日頭の中で聞こえてきたあの声も、結局何だったのかまだわかっていない。比企谷父のメールにあった女性とは本当に私なのか?ならなぜ私を比企谷家に泊めるようにメールしたのか……

 あまりにも普通に過ごせたから気づかなかったものの、今思えば、私が過ごした昨日の一連の流れはうまく出来すぎている。記憶はない、家族も家も不明。そんな私が一日危なげなく過ごせたのはあまりにも不自然、最悪野宿をしなければならない状況だった。

 

 そんな中、一人の男子高校生に声をかけられただけで私の危機的状況がすべて解消された。

 

 ここだけ見ると、その男子高校生はまさにヒーローともいえる偉業を成し遂げたのだ。そして私は、そのヒーローに恩返しをしなければならないのは確かだ。私といるだけで十分ご褒美、なんてことは流石にこの場面では言えない。いやでも、それでほんとに彼にとってご褒美というのなら可能な限りご一緒するけどね?

 

 でも、

 

 

 私としては

 

 

 やっぱりちゃんとしたお返しを──────

 

 

 

「─────冬華?」

 

 

「ひゃっ!!?」

「うぉい!!」

 

 本日二度目の奇声。まったく、何度も驚かせてくれるぜこのジャリボーイは。だが言い訳をさせてもらうと、同世代の男の子に急に名前で呼ばれて冷静でいられるほど男慣れしてないのだ。今回も大目に見てほしい。

 とはいえ、朝からほんとに恥ずかしいなぁ……ほらぁ、皆さんからの視線がとても痛いよぉ……

 

「橙山さん、やっぱり転校してすぐ休日での部活は大変だったかしら…?もし無理しているのなら今日はもう帰っても大丈夫よ?」

 

 どうやら雪ノ下さんは人一倍仲間思いのようだ。こんなに純粋に優しくされると変な理由で困らせたことに心を痛める。

 

 いくらめんどくさいとはいえ、ここまでくると帰ることは出来ない。

 

 

「いっ、いえ…!私は───

「え、マジで?なら俺帰りたいんだけど。」

 

 ………………………………………

 

 一瞬にしてこの場の空気が静まり返った。

 

 どんな状況でも、やはり彼はいつも通りだった………

 

「比企谷君?」

「ヒッキー?」

「先輩?」

「…………………………」

 

 さっきの視線が全て比企谷くんに集中した。というか、無言でただ見てる七宮さんが地味に怖いんですけど。

 

「んんっ!!……さて、そろそろ本題に入ろうか。」

 

 視線に耐えられなくなった比企谷君が話を進めた。初めからそうしてればよかったのに……

 

 

 

 

 

 

  * * * * * * * * *

 

 

 ……………………さて、これからどうしたものか…

 

 え、話し合い?なんというか、何も聞いてませんでしたてへっ♪いやだってね、ほんとに必要だったのあの会議?三人寄れば文殊の知恵という言葉があるけど、知恵が出ても所詮は高校生。探偵まがいのことをしても底が知れてる。

結局、真相を解明出来たわけでもなく、お昼時になったので、みんなで昼食をとることにした。しかし、ここで私が小町さんから頂いた弁当を出してしまうと比企谷と弁当が同じということを見せてしまうため、私だけ屋上で食べることにした。

 

「はぁ…………こんな感じでいいのかなぁ…」

 

 初日で勝手がわらなかったが、この部活の大体のことはわかった。わかった上で、少し不安を感じていた。このペースだとなかなか終わらないだろう。なので、あの会議での進行の遅さに疑問を抱いていた。

 

 ……………まあけど…

 

『絶対見つけるから安心してね、まなみんっ!!』

『ええ、どこかの屍君に手紙を見られる前に必ず見つけるわ。』

『おい、こっちを見ながら屍とか言うんじゃねぇよ。うっかり脈測っちゃっただろ……。まああれだ、うちの部員たちはやる気みたいだから心配すんなよ。…一応、俺も仕事はするから。』

 

『……皆さん………はいっ、ありがとうございますっ……!』

 

 

 部屋でずっと暗い顔だった彼女も、少し元気になったことを考慮すると、あの会議も一概に不必要だったとは言えないかな。

 そんなことを考えていると、屋上の扉が開いた音がした。

 

「あ、あの…橙山先輩っ。」

「あれ、どうしたのかな七宮さん?」

「その、ご一緒してもいいですか…?」

「え?あ、うん。それはいいけど…」

 

 どうやら私をわざわざ探しに来たようだ。一色さんとは食べないのか…??

 

「それでその…橙山先輩…」

「ど、どうしたのかな……??」

 

 あ、あれ……私ホントに何かしたかな…??

 

「今日は、ありがとうございました…!橙山先輩が部室に連れて行ってくれたおかげで少し楽になった気がします。」

 

 ………あー、そのこと。そんなことね。

 

「お礼なんて別にいらないよ。実際、私が今日したのはそれくらいだから。」

「それでも…!あの時声をかけてくれたから……何かお礼をしたくて…」

 

 ホントにいい子だなぁ………ここまで純粋だと逆に心配になってくるよ。ここで何も言わなければ彼女が納得しないだろう。ここは……

 

「んー、じゃあ二つだけ、私のお願い聞いてくれない?」

「は、はいっ!私が出来ることなら…!」

「じゃあ一つ目は、私のことを名前で呼んで?」

「えっ?そ、そんなことでいいんですか?」

「うん。ダメかな?」

「いっいえ、そういうわけでは!」

 

 再度言うが、私は群れることは好まないし、なるべく人とは関わりたくない。嘘ばかりで作られた関係などこちらから御免だ。もちろん、七宮さんに親しい友達がいないことを哀れんで言ったわけでもない。

 ただ単に、ここまで素直に気持ちを伝えてくれる彼女との仲を深めたくなった。

 

「では、その…………」

 

 どうやら名前で呼ぶことを恥ずかしがってるようだ。ふふふっ、愛いやつめ。あ、私もこんな感じだったわ。まあいくら可愛いとはいえ、年下相手に心を乱されるようなことは────

 

 

「と、とうか……せん、ぱい…」

 

「ぶはっ!!」

 

 どうやら私はとんでもない核兵器を作ってしまったらしい。思わずお持ち帰りしたくなったぜ……

 

「だ、大丈夫ですか!?」

「ご、ごめんね……ちょっと嬉しかったからつい。」

「そ、そうですか?………えへへっ」

 

 やめて、そんな純粋な笑顔を見せないで…!冬華ちゃんのライフはもうゼロよ!

 

「あ、あの、でしたら私のことも名前で……」

「え、あ、そうだね。えっと……麻奈美?」

「っ!は、はいっ!冬華先輩っ!」

 

 若干百合への道が見えてしまうかもしれない今日この頃。とまあ、内面でお巫山戯するのもこの辺にして……え、本気だっただろって?全部冗談だよ?ホントニホントニ……

 

「それでその、もう一つのお願いって…?」

「ああ、そうだったそうだった。あのね………」

 

 さて、ここからが本番。

 実のところ、昼食を終えたら七み……麻奈美と二人きりで話そうと思っていた。今回はまだ彼女を部室に連れて行くということしかしていない。新人として、もう少し仕事をしておかなければ…

 さて、私が彼女と何を話そうとしていたかというと……

 

 

 

 

「私と、恋バナしよっか!」

 

「………へ?」

 

 

 




久しぶりすぎて設定ちょくちょくミスってるかも知れません。もしあったらご指摘のほどよろしくお願いします…

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