ボッチな美少女は孤高のボッチを見て育つ   作:Iタク

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今回はオリキャラしか出てきません。


とある友人の恋文(ラブレター)④

「こ、恋バナ……?」

 

 鳩が豆鉄砲を食ったよう、という表現がぴったりの表情をしているのは私の後輩である麻奈美だ。私が言うのもなんだが、先ほどまでの真面目な話から一転して軽い話をしようというのだ。戸惑うのは無理もない。

 恋バナとは、男子なら修学旅行の寝る前に好きな人を言い合ったり、女子ならもう日常茶飯事に行われるような話題………え、羨ましいのかって?はっはっは、反吐が出る。

 

 さて、そんな酷評している恋バナを何故するのかというとそれはもちろん………

 

「うん。私そういう恋愛?の経験が全然なくてさ。絶賛恋愛中の麻奈美さんに話を聞きたくてね~。それに、それについて話してる麻奈美が恥ずかしがってる姿も見たいしっ。」

 

 と、少し笑みを浮かべながら言ったがもちろんそんなことは無い。先ほどの話に戻るが、興味本位でこんなことを聞いているのではない。恐らくあの会議の場では話せなかったことがあったはずだ。人が大勢いる場で話せない情報はかなり有益のものだ。聞いておいて損はないだろう。まあ、素直に話してくれたらだが……………

 

「ええっ!!?……は…恥ずかしいです…! で、でも冬華先輩なら………でもでも…………うぅ…」

 

 そこにはリンゴがあった。

 

 いや、もちろん実際にはリンゴはない。だか、そう表現しても問題ないほど真っ赤なリンゴが、そこにはあった。

 三度言うが、私はこんな話を本気で興味本位で聞いているわけでもなければ、恥ずかしがるこの後輩の姿を見たかったわけでもない。

 しかし再度言おう、お持ち帰りしたい…!家ないけど。

 

「うぐっ……う、うん。ダメ……かな?」

 

 可愛すぎて若干鼻血が出そうになった。どっかのゲーマーも言っていた通り可愛いは正義、つまり最強だったようだ。一色さんはこれに耐えれてるのかな?まあ、さすがは生徒会長というべきか。

 

 しかし、問題なのがここで話してくれなかった場合。いくら仲良くなったからといって流石にこればかりは運次第だ。むしろ、話してくれない可能性のほうが高い。同級生なら話しやすかっただろうが、相手である私は年上で初対面。そんな相手にデリケートなことを暴露するのはなかなか難しい。彼女が私のことをどれだけ信用してくれているかに限る、のだが

 

 

 

「……………………絶対に秘密、ですからね?」

 

 

 

 涙目で上目遣い…だと?!

 よし決めた、家を見つけたらまずこの子を家に招待しよう。

 まあ、今はそんなことより……

 

「わかった、約束するよ。絶対に秘密、だよね。」

 

 私を信用してくれたこの後輩のことを、少なくともこの依頼を受けている間は私も全面的に信用しようと決意した。

 

「じゃあさ、お互いに秘密を共有しよっか。」

 

「えっ?!………お互いにって…冬華先輩のも…ですか?」

 

 私の提案に、麻奈美は少し困惑していた。

 

「私もさ、誰にも言えない秘密があるんだよね。私だけ聞くのも不公平でしょ?だから私も教える。……どうかな?」

「そっそれはいいですけど……そんなことしなくても私は」

 

 

「それはダメ。」

 

 

 自分でも驚く程冷たい声が出た。

 なぜかはわからないが、秘密の共有に関しては私の中で譲れないものがあるのだろうか。

 

「秘密はね、使い方によっては脅しの道具にもなるの。だから共有。お互いに弱点を知っておかないと。」

 

 まるで過去に何かを経験しているかのようだ。反射的に言葉が次々と出てくる。その間、麻奈美は多少おびえてはいるが、私の目を見てじっと聞いている。

 

「だから、お互いにお互いを信用する契約、しよ?」

 

 そういうと私は、彼女の前に指を突き出した。契約とは、俗に言う指切りと呼ばれるものだ。そして若干恥ずかしいです

 麻奈美も驚いた表情をしていたが、一瞬で事を理解したようで彼女も指を突き出した。

 

「ふふっ、冬華先輩って、意外とこういうこともされるんですね。」

「うんそこには触れないでもらえると嬉しいかな……」

 

 こうして、比企谷君以外の人で初めて、事情を知る人ができたのだった。

 

 

 

 

 

 * * * * * * *

 

 

 

 まず初めに、私から自身の事情を説明した。信じてもらえないことは覚悟してたが、麻奈美は何の疑いもなく信じてくれた。彼女いわく、自分のことを信じてくれた先輩のことは絶対に信じる、だそうだ。一人だったら絶対泣いてたよ……。

 話のついでに、記憶喪失以前の私と何か関係を持っていたのかと聞いてみたが、麻奈美とは今回が初対面のようだ。今回は先日の比企谷家のような初対面のふりをしているわけでもなかった。

 

 さて、いよいよ麻奈美の話を聞くことにした。

 

「その人には、直接何かされたわけではないんです。」

 

 そう語り始めた彼女の目は、間違いなく恋する少女の目だ。

 

「私はただ見てるだけでした。いつかこの感情が冷めるのを待って、待って、待ったけど、むしろどんどん熱くなってきて…………もう、見てるだけは嫌だったんです。」

 

 私でなくてもわかる。彼女のこの感情に嘘はないと。

 

「だから勇気を振り絞っていろはに相談したら、古典的だけど手紙で思いを伝えるのはどうか、とラブレターを勧められたんです。」

 

 ……まあ、半分冗談だったらしいけどね…

 

「試しに気持ちを紙に書いてみたら、なんだかいっぱい書けちゃって…//」

 

 ………もうこの状態で告白したらオッケーもらえるんじゃないの…?控えめに言ってめちゃくちゃ可愛いよ君。

 

「ただ、今まで見ることしかしてない私にはその人との接点なんてなかったものですから、渡すことに困ってたんですよ……そんなとき、いろはが代わりに渡してくれるって言ってくれたんです。」

 

 ああ、一色さんなら渡す相手と接点があったね。

 

「けどその手紙は………………」

 

 わかってるよ、だから依頼したんでしょ?君の悲しい表情は見たくないよ…

 

「んんっ!えっと、その人を初めて意識したのはいつなのかな?」

「あ、すいません…!」

 

 そういうと、麻奈美はすぐさま表情を元に戻した。

 

 

「えっと………意識し始めたのは、私が文化祭実行委員をやってた時です…!」

 

 

 文化祭…………なるほど。

 

「ねぇ麻奈美」

「はっはい、何でしょうか冬華先輩………?」

 

 少し困惑した後輩の返答を聞くと、私は口元をにやけさせて、

 

 

「私、多分手紙がどこにあるかわかったんだけど、取り戻しに行かない?」

 

 …………

 

「えっ?」

 

 

 

 

 

 

 * * * * * * *

 

 食事も終わり私は一人廊下を歩いていた。

 廊下はやっぱり肌寒いなぁ……外のほうがちょっと温かいかも…。

 

 さて、屋上で麻奈美に言ったことだが、もちろん冗談ではない。確証はないが、高い確率で私の予想は当たっているだろう。それさえ確認できれば、もうこの依頼も終わったも同然だ。

 

 そのためには、もう一人協力者必要なのだ。私の考えに関連していて、なおかつ麻奈美の事情を深く理解していて、それでいて麻奈美が信用している人に……

 もしこの行動が間違っていたら素直に怒られよう……

 そう決心しながら、私はその協力者として必要な人物に声をかけた。

 

 

「あの、急にごめんね?ちょっと二人っきりで話せないかな?」

 

 

 




なんか最近別作品を書きたくなってきました……

引き続きこの作品の作成を頑張りますので、今後もよろしくお願いします。

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