ボッチな美少女は孤高のボッチを見て育つ   作:Iタク

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最初にこの章の説明をしたいと思います。
この章は、前章の冬華視点で進んでいたストーリーの八幡視点版となっております。

ただ、冬華視点のストーリーを全部やるのは、閲覧されている皆様にとって、視点は違うとはいえ同じ話を何度も見るのはつまらないと思いますので、、
…すいません私がめんどくさいので、必要最低限にとどめたいと思います。

視点が違うだけですが、前章とはまた違った味の話にしているつもりなので、引き続きよろしくお願いいたします。

二章一話目は、『彼女はただ困惑し、現状を見つめ直す』の八幡視点です。




悪戦苦闘する“非”日常~boy's side
比企谷八幡への個人依頼


 

「じゃあ八幡、ちょっとの間家開けるけどお願いね。」

 

「はいよ。気ぃつけてな。」

 

 社畜である素晴らしき俺の両親が、数日間家を空けると知ったのは昨日の夜。

 その時、妹大好きバカ親父はすでに出発しており家にはいなかった。それ自体は別段珍しいことではない。これは母に関しても同じだ。

 

 しかし、それはどちらか一方だけ、であったため今回両親二人ともいなくなることに少し驚いていた。

 男の上に高校生の俺だけならまだしも、中学生である小町のために必ずどちらかが夜遅くなっても必ず帰ってきた、のだが…

 

「今回結構重要な仕事任されちゃってね……。まあ、任されるっていうのも悪い気はしないんだけど。」

 

 つくづく思う、働く女性はなぜこんなにもカッコいいのかと。

 多分あれだな、将来養ってもらいたいから働く人に惹かれるんだろうな。やだ俺ってば根っからの専業主夫。

 しかしまあ、これだけ頼れると上司が母ちゃんに仕事を任せるのもちょっとわかるな……

 

「…ちっ……あのクソ上司…、隙あらば潰してやる…」

 

 クソ上司さん早く謝るか逃げてっ!じゃないと今朝のニュースに出ることになっちゃうよ!

 俺の周りの女性たちはなんとまあ好戦的なことか……。。そのうちの一人に関しては早く誰かもらってやってください。

 

 さて、そんなこんなで俺が責任をもって妹を守らなくてはならなくなったわけだが……つまり大して普段と変わらないわけだが。

 小町にはいつも以上に帰り道には気をつけろと言い聞かしたが、小町は無言で部屋に戻っていった。

 重要なことなのでもう一度言うが無言だ、無視ではない。ゴミを見るような目をしていたが、あれは無視ではないんだ。

 つまり、俺と小町の間にはもはや言葉など不要だということだ。大丈夫だぞ小町、俺には伝わってきたぜ。大丈夫だから安心して、という心の声がな。

 ついに妹と心が通じ合った感動で人知れず枕を濡らしたことは言うまでもない。

 

 ───ピロンッ

 

 すると真夜中、鳴るはずもない俺の携帯が音を立てた。

 いや実際には鳴るには鳴るが、メールを送ってくる相手がいない…って解説させないで?

 真っ先に送ってきた候補として浮かび上がったのが平塚先生という教師想いの俺を誰も褒めることはなかった。

 

「…って親父じゃねぇか。」

 

 両親の可能性を考慮しなかったのには理由がある。

 母の場合、何か用があるときは決まって電話で用件を伝えてくる。

 そして親父は、用があってもなくても連絡するのは小町にするのだ。まあ最近小町は連絡拒否したらしいがザマァ。

 ようやくそのことに気づいたのかと思いながら、メールの内容を確認する。

 

「………」

 

 雪のヘアピンをつけた女を助けろ?

 ついにおかしくなったのかと思ったが、わざわざ俺にメールするくらいだ。何かわけがあるのだろう。

 どうせ小町にもメール来てるだろうし、また詳細を聞くことにしよう…。今はすぐさま意識を手放すことにした。

 

 

 

 

 

 * * * * * * * 

 

 

 おはよう。

 そしてお家帰りたい。

 

 よし、いつものルーティンだ。まだ家にいるのに家に帰りたい欲が半端ないのはみんな一緒だよねっ!

 いやだなぁ……起きたくないなぁ……、まず起き上がることすら苦痛に感じるんだよなぁ…。まあ、結局は起きるんだけどね。

 

「あ、お兄ちゃんおはよー。結構時間ぎりぎりだから、ご飯早めによろしくね!」

 

 既にご飯を作ってくれている我が妹。時間ぎりぎりなのに待ってくれてるとか朝から感動で泣きそう。

 

「早くしてね~、小町も遅刻しちゃうから。」

 

「……ああ、そう。」

 

 ……うん、知ってた。待ってたのは俺じゃなくて自転車だってことくらい。朝から泣きそう。

 とまあ、いつも通りに準備をし、後部座席に妹を乗せ自転車を走らせた。

 

「あっ、そうそう。総武高に転校生が来るんだってね!」

 

「え、そうなのか?全然知らなかったわ。」

 

 むしろ何でお前が知ってんだよ。

 

「高校に転校生かぁ~。結構レアじゃない?高校でって。」

 

「まあレアかどうかは知らんが、よく転入試験に受かったな。」

 

 総武高の転入試験は全国的に見てもトップクラスらしい。以前雪ノ下が過去問を解いていた時は合格ラインギリギリだったそうだ。その後数日間、不機嫌だったのは言うまでもない。

 

「天才美少女…!どんな人か楽しみだねお兄ちゃん!」

 

「いや何が?」

 

 よくわからないが、目を輝かせやがら喜んでいるようだ、……多分。自転車こいでるから見えないけど。

 しっかし、こいつはどんな情報網を持ってるんだ…。その気になったら町全体の情報が回ってるんじゃないのか…。

 

 ………ん?

 

「美少女?転校生は女なのか?」

 

「あれ?お兄ちゃんもしかしてメール来てなかった?まあいつものことかっ。」

 

「確かにいつもはAmaz〇nか平塚先生しかメール来ないけどな?」

 

 自分で言っててあれだが、なんで平塚先生?

 

「それで、誰から聞いたんだ?」

 

「え?それはほら、夜中に」

 

 夜中、と聞いて他に小町に聞きたいことがあったことを思い出した。

 

 だが、小町の答えを聞いて、それはもう無駄になってしまう。

 

 

 

「お父さんから。」

 

 

 

 

 

 * * * * * * * *

 

 

 

 天使の送迎という重大任務を完了し、学校についてみればあっという間に昼休み。言っておくが授業中寝ていたわけではない。あれだほら、瞑想だ瞑想。

 

 普段購買部でパンを買っている俺だが、今日は四限目完全に寝ていたため、って寝てたって言っちゃったよ。まあともかくスタートダッシュに遅れたのでロクにパンが買えなかった。

 しかし、いつものベストプライスに行くことは変わらない。普段なら戸塚を見るためと言い張るとこだが、今回はそれどころではない。一人で考えたいことがある。

 

 夜中に来た親父からのメール。そこに書かれていた雪のヘアピンをつけた女、について小町が詳しいことを聞いているものだと思っていたが、それは違った。

 小町にもメールは来ていた。しかし、それは俺のところに来たメールと内容が全く異なるものだった。

 

『総武高校に美少女が転校してくる』

 

 言っておくが、俺の親父は別格のお偉いさんなどではない。それなりに上の人だが、それだって年齢的にも至って普通の階級だ。

 だから、こんな情報を持った経緯が分からない。というかこんなメール来たらちょっとは疑えよ小町…。

 

 つまるところ、結局何が何だかわけわかめな状態なのである。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………いや待て、

 

 

 もしこれが俺の知りたかった情報だとしたら…?

 

 つまり、“雪のヘアピンを着けた女”についての追加の情報だとしたら……?

 

 もちろん確証はない。俺の親父が女子高生について調べまくってる変態だって可能性もある。いやないないそれだけはない……と信じたい。

 

「…まあ、確認だけしてみるか。」

 

 こういう時は、あの人のところへ行くに限る。

 

 空腹を我慢し、俺は職員室へ向かった。

 

 

 

 

 * * * * * * 

 

 

「比企谷、どうしたんだ?君から私を訪ねてくるなんて。」

 

「いやちょっと、聞きたいことがありまして…」

 

 職員室、ここは何度来ても慣れない場所だ。え?そもそも何度も来るような場所じゃない?あれ、何回も来てるの俺だけ?

 

「聞きたいこと…?……あー、もしや……ほほう。」

 

 俺の言葉を聞いて、何故か先生はニヤニヤしている。なに、そんなに面白いこと言った?それならクラスの人気者になれちゃったり……しませんよね知ってる

 

「いや失敬。少し嬉しくてね。言わずともわかっている、転校生についてだろう?」

 

「え、よくわかりましたね。まあそうなんですが…、嬉しいって何ですか?」

 

 これはあれか、何か誤解されちゃってるパターンのやつか。俺が他人に興味を持ったことが嬉しい、的な感じで。

 確かに聞きたいことは転校生についてだが、知りたいのはたった二つ。

 

 転校生は本当にいるのか。

 いるとするなら、そいつはヘアピンをつけているのか。

 

 これを確認して俺はさっさといつもの日常に戻りたいだけだ。

 

 とりあえず誤解を解かないと。そう思い、俺が口を開くより先に先生が話し始めた。

 

「さっき雪ノ下に、転校生を部室へ呼ぶように頼んだのだが、まさか君と雪ノ下が既に連絡を取り合う中になっていたとはな。このことは雪ノ下から聞いたのだろう?」

 

「…え?雪ノ下?」

 

「おや、違うのか?このことはまだ由比ヶ浜には知られていないから、てっきり雪ノ下から聞いたのだと思ったのだが。」

 

 俺と雪ノ下が連絡をする仲になっている?ハッハッハッハ実に面白い。面白いからそれ絶対本人の前で言わないでくださいお願いします。

 

「聞いたのは小町から……ってそれよりですね、転校生ってホントにいるんですか?」

 

「そんなところから疑っているのか君は…。ああ、ホントだとも。しかも、中々綺麗な生徒だったぞ。その上転入試験は全科目九割超えだ。雪ノ下にとって良いライバルになってくれると助かるのだがね。」

 

「美人で天才…ですか……。そんな奴ホントにいるんですか?」

 

「何を言っている、雪ノ下姉妹なんていい例じゃないか。」

 

「…あ」

 

 それもそうだ。身近すぎて完全に忘れてた。

 まあ先生は何が言いたいかというと、容姿端麗頭脳明晰なのがあの二人なんじゃなくて、あの二人は容姿端麗頭脳明晰である、ってことか。

 なるほど、わからん。

 

「まあ、どこから知ったかはわからないが、ちょうどよかった。」

 

 八幡知ってる!この後面倒なこと押し付けられるやつだ!

 

「そうですか、では俺はこれで────」

「まあまあ、面倒なことではないから話だけでも聞きたまえ。」

 

 俺の行動を先読みしていたかのように、先生は俺の肩を掴む。くっ…!なんて速く重い攻撃だ!カカ〇ットはこんなやつを戦っていたのか!

 

「というか、後で部室に来るんですよね?その時にでもよくないですか?」

 

「もちろん、奉仕部として頼みたいことはその時に言うつもりだ。が、今回は君個人に頼みがあるんだよ比企谷。」

 

「俺個人に?」

 

 というか部としてまた別に依頼があるのかよ……

 

「はぁ……、聞くだけ聞きますよ…」

 

「ああ、それで構わない。何だったら、今から言うことは別にしなくてもいい。」

 

 普段とは違う真剣な声のトーン。俺に立ち去るという選択肢はすでになかった。

 

「その転校生ついてだが、驚くほどに情報がないんだ。」

 

「……は?情報がない?」

 

「ああ、少ないんじゃない。ほぼない(・・・・)んだ。だから、噂でも何でもいい。もし何か情報が入ったら私に知らせてほしい。」

 

 美少女で天才で身元不明の転校生とか、何のアニメだよ……

 そんないかにも主人公みたいな人と関わったら絶対めんどくさいことになる。

 

 …だが、

 

「情報が入ったら……ですよね?」

 

「ああ、入ったら、だ。」

 

 そう、場合によってはホントに何もしなくてもいいのだ。

 さっき先生が言っていた、別にしなくてもいい、とはこういうことだったんだろう。

 

「…まあ、一応覚えておきますよ。」

 

「ありがとう、助かるよ。……ああ、それから」

 

 そう言いながら再度俺の肩を掴んだ。…あ、この微笑みは今度こそ…

 

「ついでに手伝ってほしいことがあるんだよ。」

 

 ですよねぇ~。

 結局俺は、いつも通り仕事を押し付けられてしまった。

 

 

 * * * * * * *

 

 

『例の転校生だが、先日の校内案内の際にいくつか私物を忘れてしまっていてね。先ほどそのことを他の先生から聞いたんだが、今から反対側の校舎に用事があるからそっちに行けないんだ。悪いが、それを奉仕部の部室まで運んでおいてくれないかな?』

 

 仕事といっても、ただの荷物運びだった。

 もっとこう、生徒会の仕事とか押し付けられるのかと思っていたが……

 

 頼まれたものがあるのは、普段生徒が利用しない教室だ。立ち入り禁止というわけではないが、部室や授業で使うような教室でないため、こうして頼まれたりしない限り誰もここに来ない。

 

「何するとこかと思っていたが……」

 

 教室に入ってみると、転入に関しての資料が置いてあった。なるほど、転入生のための説明会を行う教室だったのか。通りで普段は使われていないわけだ。

 

「それで、例の物は……これか。」

 

 机の上に、見慣れないリュックが置いてあった。私物というのはこれのことだろう。学校指定のものではないのですぐに分かった。

 さっさと運んで、すぐ教室に戻ろう……よくよく考えてみれば、午後も授業あるんだよなぁ…

 

「っと、いっけね。」

 

 何も考えずにリュックを持ち上げると、思っていたよりファスナーが開いていたのか、ノートが数冊落ちてしまった。

 心の中ですまん、と言いつつ拾い上げる。

 

 

 もちろん、俺は転校生などに興味はない。

 

 もちろん、美少女だからといって特別意識することもない。

 

 

 だが、

 

 

 落としてしまった数冊のノートのうち、気になったものがあった。

 

 

 ノートの柄が変わっているわけではない。

 

 特別ノートが分厚いわけではない。

 

 

 気になったのは、ノートの表題だ。

 

 

 ノートノートと言っているが、これは…

 

 

 

「……日記、か。」

 

 

 

 いや、日記だから気になっているわけではない。

 

 

 普通のノートを、交換日記や一般的な日記として使っているのは不思議とは思わない。

 

 

 何度も言うが、気になったのは表題だ。

 

 

 あまりに変わった表題だったため、思わず声に出してしまった。

 

 

 

 

「………ただ本音を綴っただけ(・・・・・・・・・・)の、日記…?」

 

 

 

 

 

 

 


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