ボバ・フェット(偽)はウィッチとともに空を飛ぶ   作:KeI77777

12 / 25
賞金稼ぎとウィッチと本編なお話
賞金稼ぎはウィッチとともに空を飛ぶ。


映画を見ていた。

憧れのキャラクターが出ているその映画を。

特徴的な音楽とともに始めるお決まりのプロローグ。

 

壮大さを感じさせるストーリー。

 

ライトセイバーと呼ばれるビームソードを武器に、帝国と呼ばれる巨大な悪と戦う。

 

そんなスターなウォーズを何度も何度も見ていた。

 

仲の良い知り合い二人もこの映画をみていたというのでよく議論を戦わしたものだ。

気がつけば夜が明けていたこともある。

 

そんな時は決まってそのまま寝てしまっていた。

 

好きなキャラに関しては全く合わなかったが、一つだけ共通の項目があった。

それは、“悪役”のキャラクターが好きだということ。

 

俺はボバ・フェットというキャラクターが大好きだった。

一匹狼で立ち振る舞うあの姿が何とも言えない。

 

ジェットパックを背負って空を飛び、ブラスターガンで相手を射抜く。

 

装備している数豊かな装備は火炎放射器、ワイアー、ミサイルランチャーと歩く武器庫さながら。

 

それらを駆使して戦い続ける、銀河一の最強の賞金稼ぎ。

それがボバ・フェット。

 

しかし、彼は不運だった。

 

エピソード6の「ジェダイの帰還」ではあっさりと退場してしまった。

エピソード5のあの有能っぷりが嘘に思えるくらいの扱いに思わず涙してしまった。

 

それでも俺が彼を好きな気持ちは変わらなかった。

 

子供から大人になるまで年を取り、大きくなっても、彼みたいなかっこいい男になりたい。

そんな感情は消えなかった。

 

 

そのチャンスがやってくるとは夢にも思わなかった。

 

よくあるあれだ。

 

神 様 転 生。

 

神様が殺した場合も、死んだ人間が間抜けだった場合もあるが、俺にも二次創作でよくあるテンプレートとやらに出くわす時が来たようだ。

 

死んだのにほかの世界に都合よく転生させてくれる上に、特典とやらをおまけしてくれる神様っているのか?と疑問を感じつつも、もらえるものはもらう、と思い、そのまま従う。

 

俺が望んだものはもちろん

 

 

・・・・・・・・・・・

 

「・・・・・・バ」

 

誰かの声が聞こえる。

まだ眠いんだ。あと1時間くらいは眠らせろ。

 

そういって寝返りをうつ。

しかし、俺の名前を呼ぶ声は大きくなる。

 

「・・・・・・・ボバ!!」

 

すると、かぶっていた布団をはがされ、寒い思いをする羽目になる。

おいおい、ひどいじゃないか、と思いつつも体を起こし、布団を奪った強盗の顔を眼に収める。

 

目の前には銀色の髪を持つ、お嬢さん。

あどけない顔つきに、優しそうな目をした俺からしたらまだまだ子供な女の子。

 

「サーニャ。おはよう。」

「もう夜だよ。おそよう。」

 

ふああっ、とあくびをしながらそういう俺にあきれながらじとっとした目を向けてくる彼女。

 

どうやら俺は眠っていたらしい。

頭をぽりぽり掻いて時間を尋ねる。

 

「サーニャが起きているっていうことはもう夜か?おいおい、もしかしてディナーを食い損ねちまったか。」

 

せっかくの夕食がもったいない。そう思いながら近くに置いてあった服に着替える。

「私がいるんだけど。」

 

女の子の前で着替えないで、と顔を赤らめながらそういってくるサーニャ。

そんな姿に吹き出し、笑いながら頭をぽんぽんと撫でてる。

 

子供扱いしないで、と言わんばかりの不服な表情をしながらも、獣耳をだして、ぴこぴこと動かしている。

 

俺がこの世界に来てからもう何年もたつ。

 

時が経つのは早いな。

 

そう思いながら今まであった出来事を思い出していく。

 

なぜ、俺が彼女と一緒にいるのか。

 

初めてこの世界に来た時へとさかのぼる。

 

 

・・・・・・・・・・・

 

「ってえ・・・・」

 

路地裏で男たちに絡まれ、ぼこぼこにされて、赤くはれた顔を抑えながら歩く。

返り討ちには何とかできたが、こちらもただでは済まなかった。

 

神様とやらがいうところの転生というものは果たした。

 

俺は確かに“ボバ・フェット”の特典を得た。

だが、問題があった

 

(まさか装備だけで能力は普通の人間並みとは)

そううまい話は世の中ないか、と思いつつも、装備が入った袋を肩にかついで路地裏を抜ける。

 

周りの見慣れない風景を眺めながら一歩一歩歩み続ける。

 

見たところ、どうやら地球でいうところの外国みたいな文化のようだが。

空に浮かぶ、毎日目にしていた太陽が、異世界に来て、少々不安だった俺の気持ちを和らげてくれる。

 

(文明レベルは俺のいた21世紀とどっこいどっこいか。でも、柄が悪そうなやつも結構歩いているな。)

 

よくよく街を見ていると、ちらほらとギャングのような武装集団を見かける。

 

目を合わせないように必死に道を歩きながら、大通りに出る。

ここまでくれば、さっきよりは幾分かましなようだ。

 

市場のような店が多く並んでいた。日本でいう、縁日のような小さな屋台のお店。

それが点々と奥の方まで続いていく。

 

旨そうなフルーツを見ていると、腹が減ってきた。

袋の中に、金目のものがないか再度確認する。

 

(ねーわ。もしかして結構やばいか?)

 

入っているのはボバの装備一式。

経済通貨は一切持ち合わせておらず、このままでは餓死する可能性も考えられる。

 

盗みは論外だった。それは道徳的な点からいってもそうだし、何より、あのボバ・フェットがそんなせこいことをするとは思えなかったから、彼の能力を借りている自分がそんなことをするのも許せなかった。

 

(とはいっても、つてもなく、腹は減っていくばかり。・・・ああ、おなかが鳴るたびにますます空腹になるぅ・・・・)

 

どうしようか考えていると、何か騒ぎが起きる。

 

果物をもった男が自分の背後から走り抜けていった。

「ドロボーーーーーッ!!!」

 

後からそれを包丁を持って追いかけるおっさん。

鬼の形相で追いかけまわすその姿に思わず盗人に同情してしまう。

 

あんなのに追われたらおしっこちびるわ。

 

そこであることを思いつく。思いついてしまった。

 

(あの犯罪者を捕まえればお礼がもらえるんじゃね?)

 

おなかが減っていて、思考が単純なものになっていたからか、そんな方向に考えが行ってしまう。

 

(・・・・・・・よし。)

 

顔をぱんぱん、とたたき、物陰に入る。

 

この時の俺は知る由もなかった。

 

まさか、本当に“ボバ・フェット”として名をはせるようになるとは。

 

この一件がその始まりになるとも。

 

・・・・・・・・・・・・・

 

「まてやこらあああああっ!!」

 

後から鈍く光る、さぞや切れ味抜群であろうナイフを片手に追いかけまわしてくる店主。

 

おなかが減っていたところに、うまそうなフルーツを見てしまったばかりに、いつもの手癖の悪さが出てしまった。

 

それにしても怖い。

 

後ろを決して振り向かないようにしながら必死に走る。

腕を大きく振り、足で地面を強く蹴って、今自分が出せる最高速を出して逃げ続ける。

 

 

(しっつこい・・・!!)

 

よりにもよって執念深い相手に関わってしまった。そう後悔するもあとは遅く、どんどん距離は縮まっていく。

 

(ああ、ここまでか)

 

観念しかけたその時

 

「ぶげえっ!?」という悲鳴とともに何かが吹っ飛んだ鈍い音がする。

 

「は?」と素で驚きながら後ろを向くと

 

マスクにアーマーを着こみ、背中のジェットパックで空を飛んでいる人物が目に入る。

 

 

その後ろではさっきまでこちらを追いかけてきていたおっさんが目をまわして倒れている。

 

「だ、だれだ・・・・?」

 

そう問いかけ、目の前にいる人物が何か言おうとしてきたその時。

特徴的なサイレンの音が鳴り響く。

 

その音を聞いて、そのまま無言で空を飛んで遠くに消えていってしまうマスクの人物。

 

その後ろ姿をぼーっと眺めていると、後ろから声を掛けられる。

 

「おい!!何ぼやっとしてるんだ!!」

逃げるぞ!!と言われながら腕を引かれて入りくんだ裏道に入って逃げ続ける。

 

その間も、警察に追われ続けた自分が考えていたのは、先ほどの不思議がマスクの人物のことだった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

間違えて、おっちゃんを跳ね飛ばしたときには本気で焦った。

まさかあんなに速度が出るとは思わなかったし。

 

「はい、これ。」

そういって後ろからお盆にのったご飯をテーブルに乗っけてくるサーニャ。

お礼を告げる。

「ありがとよ、お嬢ちゃん。」

「お嬢ちゃんはやめて。」

 

むすっとしながらも甲斐甲斐しくこちらの世話をしてくるサーニャに感謝しつつ、今日は誰のところまで遊びに行こうかなーっと考えていると、サーニャの視線を感じてそちらに向き直る。

 

「・・・・・・・どうした?」

「みんな、ボバが夜中にどこにいっているのか知っているよ。」

 

思わずスプーンをぽろっと落としてしまう。

それをすぐに布巾できれいに掃除してくれる彼女。

声を若干震わせながら、聴いてみる。

 

「マジで?」

「マジだよ。」

エイラとかは「ふ、不潔だゾ!!」とか言っているよ。と声真似をしながらそう述べる。

 

そういわれてちょっと心が痛む。でもこればっかりはしょうがない。

 

「男だから?」

こちらの思考を読まれてドキリとする。

これではまるで、不倫がばれた妻に糾弾されているようではないか。

 

「俺は一人の女に縛られたくないからな。」

「ほんとうは違う理由のくせに。」

容赦なくそう問われても、どこ知らぬ風といった体を装って食事にありつく。

彼女がいうほんとうの理由。

 

俺も彼女たちも分かり切った答えだ。

 

魔女と呼ばれる彼女たちは魔力を持つ。

そして、あることが起きるとその魔力を未来永劫失ってしまう。

目の前に女の子がいるので言わないでおくが、そればっかりは避けるしかない。

 

この世界で彼女たち、ストライク・ウィッチーズは貴重な戦力でもあり、未来の希望でもあるのだ。

 

乾いた喉を潤すためにコップの水をぐいっと傾けて飲み干し、ドン、とテーブルに置く。

「お前らとそうなる気はない。」

「あの子は特別扱いなのに?」

 

どうやら逃がす気はないようだ。

商売女に入れ込んでいる男と一緒に戦う気が起きないということなのだろうか。

しかし、「万が一」のことがないための彼女たちとの遊びだ。

 

軍部のお偉いさんからの見合い話を断る口実にも使っている。

 

しかし、ほかのウィッチーズはともかく、サーニャは気が付いているらしい。

「あいつは特例の体質をもっているだろう。」

「私も同じような体質だったらそんな関係になれたの?」

 

今日はやけにとげがある花だな、と思いつつも茶化さずに答えていく。

「俺はこの世界に生まれてから、生き残るためにずっと戦い続けてきた。」

ぽつり、ぽつり独白していく。

 

「今までずっと、一匹オオカミというやつを演じて生きてきた。」

あのキャラだったらそうするだろうから。

 

「そんな時に、あいつに出会っちまったんだ。癒されて、絆されて、愛されて。」

俺も愛しちまった。

 

ぴしっ、とサーニャがつかんだテーブルにひびが入る。

どうやら相当おかんむりなようだ。

 

「あいつは俺とそういう関係になっても魔力は失わないというのも俺の背中を後押しした。」

まあ、まだそういうことはしていないが。

 

彼女が首元に噛みついてくる。

血が出るくらいに強く噛みつかれ、血が出てくる。

 

内心怖い、と思いながらもこれ以上刺激しないようにうまく言葉を選んでいく。

「なんでも一つだけいうこと聞くから機嫌を直してくれ。」

 

ぴた、と噛む動きを止めて、首元から口を離し、こちらをじっと見つめてくる。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・キスして。」

目を閉じる彼女。それはつまり熱い口づけを望んでいると?

 

このまますねられてもしょうがない。そう思って口づけする。

 

どこか不満げな顔でむーっとうなる彼女。

「・・・おでこじゃなくて、くちがいい。」

「百年早い。」

 

そういうとカチンときたのか、今度は腕をあぐあぐと噛まれる。

 

俺は今日、あと何回彼女に嚙まれるのかな。

 

これじゃあさすがに今日は夜の店に遊びに行けない。

観念して彼女にある提案をする。

「散歩行こうぜ。」

「デート。」

 

言い直してくる彼女。

仕方なく折れる。

「わかったよ。じゃあ夜のデートとしゃれこむか。」

「ん。」

 

いつもの装備を付けて、彼女と一緒に空を飛ぶ。

 

元からそのつもりだったらしく、ストライカーユニットを準備していた彼女の手際の良さに笑ってしまう。

 

飛んでいくうちに、また過去の記憶を思い出していた。

 

今度は、俺が賞金稼ぎとして名をはせるようになりはじめた日々のことだった。

 

・・・・・・・・・・・・

 

「これで終いか。」

ブラスターガンをしまい、警戒を解く。

あの日から数年が経ち、今では俺も立派な犯罪者だ。

 

経歴、履歴がない俺がまともな職につけるはずもなく、ある意味念願の生き方をすることになった。

 

 

賞金稼ぎ。

 

なんともまあ、平和な世界に生きていた時にあれほど憧れていたものに、俺はなっていた。

 

ネウロイとかいう化け物が跋扈するこの世界では、犯罪者がはびこるようになっているとか。

生活に困窮して、犯罪者となるものも多いのだろう。それを抑えるために警察がいるのだが、ネウロイに対抗するために軍事費をねん出するほうを優先させている。

 

おいおい、国民を守るための政府だろうが、と思いつつもどこの世界でもお役所仕事っていうのはあるもんだな、と納得する。

 

賞金を犯罪者に掛ける。

これが政府の出した犯罪者対策だった。

 

 

まあ、国民からは不安と不満の声が出るわ出るわ。

 

とかいいつつも、ちゃっかり賞金を狙いにいっているあたり、人間の二面性が見える。

口ではどうのこうのいってもお金がほしいらしい。

俺はその日の分の稼ぎがあればいいが。

 

手配書を確認して、犯罪者たちを踏んじばる。

生きていくために殺したこともあるが、運のいいことに、今日戦った賞金首たちはみな生きているらしい。

「うわあ、食い逃げとかしょっぺーなぁ。」

よほど生活に困っていなけりゃこんなこともしないだろうに。

同情しつつも、自分の今日の飯のタネになってもらうために警察まで連れていく。

 

捕まえた犯罪者たちを自分の”家“へと運ぶ。

鋼鉄製のワイヤーで縛り、身動きをとれなくしてある。

 

適当な部屋に収容して、運転席に座って発進させる。

 

この世界に来てからずっと一緒にいる相棒。

スレーヴⅠ(奴隷その1)。

ボバ・フェットの持つ宇宙船だ。

 

もちろん、俺のこれも宇宙まで行ける。

原作通り、ミサイルも、キャノン砲もつけているし、爆弾も搭載してある。

 

生きていくうちに自分の能力に関して気が付いたことがある。

それは、“ボバ・フェット”の装備を出せるということだ。

 

ここでラッキーだったのが装備に該当するとみなされたのが、この船だ。

 

最初にこの世界に来てから何日か経ってから能力を試していたら、船が出てきた。

まじかよ、と思いつつも、性能テストをしたら、この世界ではかなりのオーバースペックの様だった。

 

本来、俺が元いた世界でも実現していないレーザー砲がある上に宇宙まで行けるのだからそりゃそうか、と思いつつも、興奮しっぱなしだった。

 

なんというか、こう。じぶんだけの船、秘密基地。

男なら、ロマンに憧れるというか、そんなところだ。

 

スイッチを入れて、警察署の近くまで飛んでいく。

一目につかないように空高くを飛ぶ。

大気圏すれすれまでくれば、目立つこともない。

 

近くの無人地帯に降りて、捕まえた犯罪者たちを連れていく。

 

こいつらを換金した金で何を買おうかな、とわくわくしつつ、警察署に入った。

 

 

・・・・・・・・・・

 

「何を考えているの?」

隣で飛んでいるサーニャに顔を覗き込まれ、そう聞かれる。

 

「むかしのこと。」

「ボバの過去?」

 

俺は、彼女たちに自分のことを大して話していない。

話したところで同情されるだけだと思ったから、よき職場の仕事仲間である彼女たちにはうまくごまかしてある。

 

家族は誰一人いない。そういえばそれ以上追及してくることもないのはありがたかった。

嘘はいっていない。もともとこの世界には血のつながった家族はいないのだから。

 

「ボバの方から言ってくるのは珍しいね。」

周りをちゃっかりと索敵しながらそういうサーニャ。

さすがナイトウィッチ、とほめると気をよくしたのか頬を緩める。

 

どうやらすっかり機嫌を直したようだ。

 

先日出かけたときの手に入れたものを渡す。

石の様な金属片をペンダントにしたものだ。

 

おそらく、この地球上に一つしかないものだろう。

「これを私に?」

「ああ。」

 

プレゼントを渡す。

しかし、受け取ろうとせずに後ろを向いて首を向けてくる。

 

「・・・・・・つけろと?」

こくり、と小さく頷く。

俺がつけるまで待ち続けるようだったので後ろからつける。

 

首にきれいな石の破片が付いたアクセサリーがつけられる。

 

彼女によく似合っていた。

「似合っているぞ。」

「ありがとう。」

 

にこりと笑いかけてくる彼女にくらっときながらも、顔を背ける。

マスクをしているので表情はばれないが、どうにも気恥ずかしいものがある。

 

雲を突き抜けて出ると、星が輝く夜天に繰り出した。

上には星座や、月がまばゆいばかりの光を放っている。

 

あそこの星とあそこはまだ行ったことがないな、と思いつつも彼女と手をつなぎながら一緒の風景を眺める。

 

そのままずっと空を飛んでいると連絡が入る。

通信機の機能をオフにして、無視する。

 

さすがに今は野暮だ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

警察署に賞金首を連れ込んだらまたお前か、みたいな顔をされた。

えー、治安向上に貢献しているんだからそれはどうなのよ、と思いつつも受け取るものを受け取ってさっさと出る。

 

賞金稼ぎ。そう呼ばれるようになった。

ただし、それも一部の人間たちからちょっと名が知れているという程度だが。

 

まあ、ボバ・フェットが銀河系一の賞金稼ぎと呼ばれるようになったのは子供のころから20年たった後だし。

 

 

今はこんなものか、と思いつつも、食べ物と必要な物資を買って、船に戻る。

今俺がいるのは前世でなじみがある場所。

 

和の国、日本。ではなく、扶桑皇国とかいうお国だ。

いや、ここどうみても日本だろ、と言いたくなるような類似点がある国だが、やはりというか食べ物がおいしいので入り浸っている。

 

醤油、味噌は元日本人として欠かせない。

 

ボバのマスクだけつけて、下はジャージにスウェットみたいなラフな格好ってシュールだな、と思いつつも買ってきた惣菜を取り出し、ちゃぶ台に乗せる。

 

この国に来てから和服や、ちゃぶ台を買っておいたのだ、スレーヴⅠも今では日本の住居にありそうな、和室みたいな内装へと変貌した。

 

漬物とか自分でやるの面倒だから助かるなぁ、と思いつつ、保存食の乾麺をしまっておく。

船の船底部には大量の日本食をため込んである。

 

武装を少し削ってでも乗っけているぐらいだ。食は大事だと身にしてみてわかっているし、やはり日本食だけを食べたくなってくる。いや、本当に旨いからなぁ。

 

他の国にもいい食べ物はたくさんあったが、やはり和食に落ち着いた。

 

さて、料理をすべて並べたし、いただきます、と手を合わせて食べようとしたら、

 

大きな轟音と、地響きでちゃぶ台がひっくり返った。

 

無残な姿になるご飯。

 

米粒が畳にこぼれる。

 

その時、この世界に来て初めてキ本気でキレた。

 

・・・・・・・・・・

 

(ブラスターとか最初は全く当たらずにくいっぱぐれることとかあったなぁ・・・)

遠い目をしながら隣で眠っている彼女に肩を貸しつつ、逡巡する。

 

空中でのお散歩を堪能して、近くにあった俺の船でともに休んでいたら、疲れたのか寝てしまったサーニャ。もたれかかってくるので身動きがとれない俺。

 

気がかりなのは先ほどの通信。

サーニャと一緒に散歩中だったからぶっちして出ずにいたが。

 

電源を入れると、すぐに通信が入る。

「はい、もすもす。」

『今どこだ。』

 

凛とした声が通信機から聞こえてくる。

 

「あー、ちょっとそれは言えないっていうか・・。なぁ?」

横で気持ちよさそうに寝ている彼女をちらり、と見てそう答える。

 

起こすのも忍びない。

通信相手はおかんむりのようだが。

 

『また商売女のところか?』

怒気を含んだ声を受けて、おっかねーと思いつつもなんでもないように答える。

「違う。でも、デートしているのは本当だ。相手が疲れて寝ちゃっているからこうして通信している。」

もし、彼女が起きていたら、さすがに通信を開くことはしなかった。

ケータイの電源をつけっぱなしで情事に励む鈍感男じゃないかぎりはそんなことはしないだろう。

 

 

『・・・・サーニャか?』

ぴたりとデートの相手を言い当てられ、心臓が止まりそうになる。

彼女の勘は鋭く、言い逃れしようものなら怒られるので、下手な嘘はつかないほうがいいと

というのはわかり切っている。

「もっさんにばれているっていうことは他の娘達にも?」

『今日は索敵任務もないのに基地に居なければ不審だろう。』

ごもっともで、と答える。

まずった。せめて何かしらごまかせるようにしておいた方がよかったか。

頭に手をやり、ままならぬ、とため息をつく。

 

今のうちにスレーヴⅠで宇宙に逃げようかな、と考えつつ、一応船を起動させていつでも脱出できるようにしておく。

あ、サーニャはどうしよう。

まあ、一緒に宇宙旅行しに行くだけだから大丈夫だろう。

 

会話を続けながら時間を稼ぐ。

「もっさん。他の娘達はどうなっている?」

『ミーナは冷静にふるまおうとしているが、かなり動揺しているな。エイラはサーニャと二人っきりでお前が出かけているのが羨ましいと言っていたぞ。果たしてどちらに嫉妬しているのだろうな?』

 

げ、原作のボバ・フェットが女ったらしなのが悪いんだ・・・。

と心の中で言い訳をする。結局、自分の責任であることに一切の変わりはないのだが。

 

『ルッキーニはつまらなーい、と言って夜食を食べている。太るからやめておけ、とお前からも言ってやれ。シャーリーはあほ、ばか、あんぽんたんとか言っているぞ。』

モテモテだな、このスケこまし。

 

彼女の言葉がぐさぐさと胸に刺さっていく。

関係を持っていないとは言え、来るものがある。

 

『バルクホルンはサンドバックを叩いて穴をあけているぞ。帰ったらお前がスパーの相手をしてやったらどうだ?エーリカはいつも通り、と思いつつ、寂しそうだぞ。』

 

金がなくて、生活と潤いのために、必死こいてネウロイとかいう化け物を全力で彼女たちと倒していったら、いつの間にか信頼されるようになっていた。

 

スレーヴⅠとボバのジェットパックがあれば、彼女たちと同じように空を飛んで戦えるかし、何よりかわいい女性に囲まれて少しだけテンションが上がっていた。

 

見渡す限りの美女、美少女。しかもなぜかズボンをはいておらず、パンツ姿の痴女集団。

マスクをかぶっていなければチラ見してたことがばれていただろう。

 

最初は全く信用されていなかった。

どこの馬の骨とも知らない、それも経歴不明の男と一緒に共同戦線を張るなんて屈辱だったのだろうか。彼女たちは命を賭けて世界をネウロイの魔の手から守ろうとしている。

 

俺はあくまで金と、とある目的のためだった。

 

 

もっさんこと坂本美緒少佐だってれっきとした軍人だ。

 

それはあのときから変わっていない。

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

扶桑皇国の食糧事情がネウロイのせいで思わしくなくなったと聞いてすぐに殲滅しに行った。

原作のボバみたいに、怪物に飲み込まれたりした。アーマーが無ければ冗談抜きで

死んでいたほどの窮地だったが、腹の内側から火炎放射器であぶって、ミサイルでドテっぱらに穴をあけて脱出した。

 

舐めプしていたのを反省しつつ、スレーヴⅠに搭乗して砲台からレーザーを発射する。

シールドのようなもので防がれるが、高性能爆弾でネウロイの巣ごと吹き飛ばす。

 

おらあっ!!俺の日本食をうばおうとしてるんじゃねーぞ!!と別人のようなテンションで敵を滅ぼしていった。

 

一通り倒したので、撤収して帰る。

 

後日、町にいって情報を集めてみたら、食糧事情がよくなったらしい。

食糧自給率が下がると、うまい飯が食えなくなる。それだけは本気で阻止したかったのでほっと胸をなでおろす。

 

いきつけのお店に行って食べ物を買い足す。

「あら、あら、ボバちゃんじゃない!!」

 

マスクにアーマーといういでたちの俺にここまでフレンドリーに接してくれる、商店のおばちゃんは、癒しだった。

 

「今日もお米を買いに来たの?ほんとにすきねえ~」

「おばちゃんの笑顔を見に来たのさ。」

あら、上手ね、と言って笑いかけてくる。

 

死んだおばあちゃんがこんな風に笑っていたな、としんみりとしつつ、必要なものを全部買いそろえる。

 

買うならこのお店と決めている。

「いつもたくさん買っていってくれるから嬉しいわぁ。」

「またくるよ。」

はぐはぐしつつ、袋をもって歩く。

 

さて、かえって別の国に行くか、と思いながら歩いていると、前に誰かが立ちふさがる。

格好からして軍人っぽいが。

 

踵を返して、後ろを向く。

 

 

後ろにも同じような奴らがいた。

 

理由はよくわからないが追われているらしい。

 

わきにある道に入る。

 

追ってくる男たち。

俺、何かしたっけと今までの行いを振りかえるも、心あたりが多すぎて混乱する。

 

しかたない。飛ぶか。

 

 

ジェットパックを点火し、空を飛ぶ。

 

幸い、空を飛んでまで追ってくるような男はいなかった。

 

あっけにとられながらこちらを見つめる男たち。

 

ばーか、とジェスチャーであおりつつ、空を飛ぶ。

どうにか撒いたようだ。

 

「やれやれ、どうなることかと思ったぜ。」

「ほう、安心するにはまだ早いぞ?」

 

急に隣から声が聞こえてきて、驚きながら横を向くと

 

なんかズボンをはいていない、パンツ姿の眼帯をつけた将校服の美女が刀を構えながら並走して飛んでいた。

 

「空飛ぶ痴女だ。懐かしい。」

「誰が痴女だああああああああっっ!!!!」

 

 

これが、「軍人」坂本美緒とのワーストコンタクトにして、ファーストコンタクトだった。

 

・・・・・・・・・・・・

 

「あのあと、ぶちぎれたもっさんに追いかけまわされて、死にかけたんだよな。」

『な!!お、お前が痴女と言ったからだろう!!』

 

声を荒げてそういうもっさん。

あの頃と全く変わらない姿なのはびっくりだ。

 

一体何歳なんだろう、と思いつつ、話を続ける。

 

『話がそれたが、何時までに戻ってくる?』

「朝帰りは・・駄目だよな。」

 

通信機越しでも殺気が伝わってくるところを見る限り、それはまずいらしい。

外面とか考えると、やばいよな。

基地にいる、賞金稼ぎのマスク姿の怪しい男と、貴重なウィッチが同じ夜に居なくなったとか。

 

新聞記者が喜んで飛びつくようなネタだ。

 

「そういえば最近軍部のお偉いさんから勲章押し付けられそうになっているんだけど、売ってもいい?」

『良い訳ないだろ。』

突っ込まれる。

 

勲章を与えて、英雄(笑)に仕立て上げて、コントロールしようとする政治的思惑が見え隠れしてどうも素直に受け取れない。

代わりに誰かに押し付けるか。

 

『ところで今、どこにいるんだ?』

「宇宙。」

『エイプリルフールはとっくに過ぎたぞ』

 

こっちの世界にもあるんだな、と思いつつ、本当のことを言っているんだけどなぁ、と困惑する。

『夜が明けるまでに帰ってこい。でなければ処罰せねばならん。』

ここまでやっても温情があるのがもっさんの優しさゆえである。

 

本当にいい女だよ。あんた。

 

『と、ところでだ!!』

語気を強めて話を切り替えるもっさん。

 

突然の大声に耳がキンキンとなりながらも話を聴く。

『軍上層部から所帯を持つことを勧められていると聞いたが・・・・』

 

やはりこういった話が女子は好きだな、と少々辟易としつつも答えていく。

「滅茶苦茶推されているぞ。あ、もっさんも俺との結婚候補に挙がっていたの知っている?」

『え?』

 

普段の彼女ならまず出さないような間の抜けた声。

珍しいこともあるものだ、と感慨にふける。

 

「ほら、俺ともっさんって長い付き合いだろ?ウィッチを退職したら俺と一緒になるのはどうかっておっちゃんたちにすすめられてな。聴いてるのか?」

返事がないので、おかしいな、と思いつつ応答を待つ。

沈黙が長く続いているのでこん、こんと通信機を叩いて様子をうかがう。

 

「おい、どうした?」

『・・・・・・・・・なんてへんじをした?』

 

ああ、そのことが気になっていたのか。

「“検討させていただきます”と返しといた。」

ぼんっ、という小さな爆発音が聞こえてきた。

 

くああああっ・・・耳ががががががが。

小型の爆弾が爆発した時のような音を聞いて、耳が痛くなる。

頭を押さえてうずくまる。

 

『そ、そうか。そうか・・・・・』

何かに納得しながら頷くもっさん。

何がそうなのかは知らないが、許されたようだ。

 

「じゃあ、もうちょっとしたら帰るから。心配かけてごめんな。」

『う、うむ。気にするな。』

 

ぶつり、と通信が切れる。

椅子にもたれかかり、息を深く吐く。

どうやら修羅場は回避できたようだ。

 

「誰から?」

 

いつの間にか起きていたサーニャにそう尋ねられる。

これはまずったかな、と思いつつも向き合う。

「おはよう。もっさんからだよ。心配していたからなるべく早く帰ってほうがいいかもな。」

「そう。」

 

船の外を見ながらそうつぶやくサーニャ。

一体何を考えているのだろうか。

 

「ここって宇宙?」

「ああ。この景色はきれいだからサーニャに見せたくってな。」

 

星々がきらめくこの黒い海の景色ほかの奴と一緒に見るのが楽しくてたまらない。

サーニャにはまだ見せたことがなかった。

 

「・・・・・・ほかの娘達にもみせているの?」

「ノーコメント。」

 

爪で引っ掻かれるが、マスクをかぶっているのでダメージはない。

そう油断しているとマスクを外されて、いい一撃をもらう。

「いったああああああ!!」

 

どやあ、という顔をしているサーニャからマスクを奪え返そうと腕を伸ばすがひょい、と軽い身のこなしでよけられる。

 

「マスクをかえせ!」

「素顔のほうが好きだからやだ。」

 

おなかに抱えられてしまう。

どうやら戦利品として持ち逃げする気の様だ

 

そうはいくか、としっぽをつかむ。

「にゃあああああっ??!!」

どうやら予想だにしない一撃を与えられたようだ。

 

正直、ちょっと胸がスッとした。

ぴくぴくと体を震わせるサーニャからマスクを取り返してつけなおす。

 

「もう少ししたら地球に帰るぞ。いいな?」

「ううう・・・・。」

もうちょっとここに居たい、といった感じでうめくが無視して設定をいじる。

 

ジェットが点火し、地球へと進路をとり始める。

ストライク・ウィッチーズ。

 

彼女たちの基地へと戻るために。

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

基地から離れたところに船をとめて、ジェットパックを使って基地まで飛ぶ。

サーニャも隣で一緒に飛行している。

 

他のウィッチたちにばれないように、静かに着地し、中に入ってクリアリングする。

 

どうやら誰もいないようだ。

 

サーニャの手を引き、彼女を引き連れて中を歩く。

夜間警務の軍人たちに出くわした時にはからかわれたが、ヘッドロックをかけて黙らせておいた。

 

そうして、ほかのウィッチに出くわさずに彼女の部屋の近くまでこれた。

確かエイラと同じ相部屋だったか。

これ以上近づくとばれそうなので、部屋から数十メートル離れた場所で立ちどまり、彼女に早く部屋に入るように促す。

 

「・・・・・・・一緒に寝る?」

「我慢できなくなるから駄目。」

というか、エイラはそういうのを許さないだろう。

あいつヘタレというか、耳年増だからな。

今もきっと、俺とサーニャがよからぬことをしていないかどうか、悶々としながら想像しているのだろう。顔を真っ赤にしながら「サ、サーニャに近づくナ!!この色情魔!!」とか叫んでそうだ。

 

「おやすみ。」

「おやすみ。」

首元のペンダントを手でもてあそびながら部屋に入っていく彼女を見送る。

扉を閉めるまでちゃんと見届けてから、胸をなでおろす。

 

(いやあ、やっぱ我慢するのはキっついなぁ・・。)

俺も男だ。いくら自制心をもって下心を抑えようとしていても、あんな美少女と二人っきりのデートに行って、平気なはずもない。

いくら意中の相手がいるとはいえ気が気でなはい。

下手をすると、なんでも手を出していた時はあった。

我ながらよく最後の一線を越えずに済んだものだ。

 

(でも、遊びに行く気だったのを急きょプラトニックなお出かけにしたからクるものがある。)

今日は船で寝るとしよう。

そう考え、飛ぼうとしたときに、肩をつかまれる。

ものすごい力だ。振りほどこうにもびくともしない。

 

襲撃者の顔を見る。

ツインテールの髪型に、獣耳と尻尾をはやしているきれいな女性が立っていた。

ただ、顔は笑っているのに目が怒りの火をともしているのがジョークにしては笑えないところだが。

よう、とあいさつしておく。

 

「おかえり。楽しかったか?二人っきりのデートは?」

ん?とこちらの肩をつかむ力が徐々に強まっていく。

結構痛んできた。面白くないのはわかるが、これはちょっとやりすぎでは?

ああ、これお土産、と機嫌取りをする。

 

「ありがとう。で、どうなんだ?」

律儀にお礼を言って、プレゼントを受け取るが、追及の手は緩めてくれないらしい。

どうもこういったときの女性は強いように思える。

観念して洗いざらいしゃべることにする。

 

「一緒に宇宙で二人っきりで星を眺めていた。悪魔に誓って何もしていない。本当に。」

「・・・・・その言葉、信じるぞ。」

 

信じてもいない神様ではなく、悪魔にそう誓って断言した。

肩をつかむ手から力が抜けて、解放される。とてもとても痛かった。

少しきしむ肩を軽く押さえて、向き直る。

 

しかし

「なんだ?」

「おまえ美人だよな。」

「は、はああああっ!!?」

何言ってるんだ?!突然!!と魔力を開放して、動揺するバルクホルン。

俺は正直な気持ちを言っただけなのに。

何度脇腹を刺されても、口が勝手に動いてしまう。

彼だったらきっとこうするだろう、とふるまい続けてきたら、自然とこうなっていた。

 

料理が上手な彼女からも時々、じとっとした目を向けられるが変える気もない。

これが俺なんだから。

 

「そういうことを急にいうんじゃない!!」

「夜だぞ。静かにしろ。」

ううう・・・と正論を言われて押し黙り、恨めし気な目つきでこちらを見据えてくる。

寝ているやつだっているんだからこればっかりは正しいだろう。

 

「俺も寝るわ。おやすみ。」

飛んで帰ろうとしたら、今度は腕をつかまれる。

先ほどの力強く抑える感じとは違い、そっと握ってきていた。

 

バルクホルンの顔を見ると顔を赤らめながら熱っぽい視線を送ってきていた。

普段のたたずまいの彼女もきれいだったが、今の彼女は可愛いといった雰囲気か。

何というか、情欲をそそられるような感じだ。

 

「またあの船で寝るのか?たまにはこの基地で寝ていったらどうだ?」

「あそこが俺にとって一番安心できる場所だからな。」

「ここには私たちがいる。それでも不安か?」

その聴き方はずるい、と思い、返答に窮する。

彼女たちを信頼していないわけではない。

もう、何年も一緒に戦い続けてきている。

彼女たちを救ったこともあれば、逆に救われたこともある。

何度も、何回も喧嘩するし、衝突し続けているが、うまくやれている。

 

彼女、宮藤に俺が惚れるまでは。

 

なんというか、彼女にけがを治療されて、身も心も癒された結果。

俺は彼女に首ったけになってしまった。

 

彼女は扶桑皇国出身のウィッチで、とても心優しく、タフさも兼ね備えた女性だ。

問題点があるとすれば一つ。

 

良い女過ぎて、一時期ヒモになりかけたとこか。

なんというか、底なしの沼にはまっていくような感覚で、そこから抜け出そうという気力もわかないくらい心地が良かったのだ。

 

そんな俺を見て、彼女は「ボバさん。私が代わりに働きますから心配しないでください。」

と笑顔で言われたときには穀つぶし、と言われているようで男としてのプライドが砕け散りそうになった。

その夜は泣いて枕を濡らした。

 

次の日に書置きを残して、仕事に行くことを伝えた。

無論、ネウロイ退治と賞金稼ぎだ。

ヒモのボバ・フェットとかありえない、と思いながら鬼気迫る様相で仕事に明け暮れたものだ。

 

生活には困らないくらい稼げているからありがたい。

寂しそうな顔で「お仕事、がんばってください。」と言われたときには奮い立ったものだ。

彼女も同じ戦場で一緒に戦う仲間だが。

 

現実逃避のために、思考に没頭しているとそのまま腕をつかまれて連行される。

どこに連れていくつもりなのだろう?

一抹の不安が頭をよぎる。

 

「動き回っておなかがすいていると思ってな。軽い夜食を作っておいた。ぜひ食べてほしい。」

実はスレーヴⅠの中サーニャと一緒に軽食をとっていたが、断るには遅すぎたようだ。

嬉しそうにそういう彼女にいらない、なんて言えるはずもない。

宮藤には悪いが、このままおとなしく連れていかれるとしよう。

 

・・・・・・・・・・

 

「さあ、召し上がれ。」

そういってテーブルの上で出されたのはあたたかいスープだった。

これなら飲んでもたいして胃にたまらないので、寝つきが悪くなるようなこともない。

やっぱり気遣いが上手い女だ。宮藤がいなかったら惚れていただろう。

 

スプーンで器の中に入っているポタージュをすくって口まで運ぶ。

オーソドックスなコーンポタージュだった。

しかし、まろやかさが市販のそれと違う。

 

「すこし牛乳とバターを加えてみたんだ。」

なるほど、このコクの深みはそのおかげか。

思っていた以上においしいので、ごくごくと飲んでいく。

それを上機嫌な様子でにこにことしながらこちらを見つめてくるバルクホルン。

 

あれ、これってかなりの贅沢じゃね、と今更になって気が付く。

厳しくて、シスコン気味だけども、なんだかんだまじめで責任感があって、優しい。

情も深く、きれいといいとこ尽くし。

そんな彼女に料理を作ってもらっている。

世の男性に知られたら、きっと嫉妬されまくるだろう。

 

気になったことを聴いてみる。

「そういえば、なんでバルクホルンの部屋じゃないんだ?てっきりそこで食うものかと。」

「エーリカがいるからな・・・・」

ふっと何かをあきらめたような顔つきでそういう彼女。

そうだった。ごみ部屋の錬金術師、エーリカと相部屋だったんだ。

 

そりゃ、人を招こうとは思えんよな。

以前、一度だけ入ったら、思っていた以上の状態で絶句して立ち尽くしたものだ。

エーリカもさすがに男性に自分の部屋を見られるのは恥ずかしかったのか、以前よりもましになっているとは聞いているが・・・。

 

「やっぱり、まだ入れないか?」

「入れないというか、入らせたら恥ずか死ぬ。」

私はちゃんときれいにしているからな!!と訴えかける彼女をしり目にあの日のことを思い出す。

 

俺がもっさん以外のウィッチたちと初めてあった日のことが、はっきりと浮かんできていた。

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

「ということで、協力者として彼を迎え入れることになりました。我々と同じくネウロイと戦う仲間です。そのことを念頭に置いて接するように。」

 

賞金稼ぎをしていて、ネウロイがあまりにも邪魔だったので、一人で戦い続けていたら、軍部の人たちに拉致られた。

もう、何年もネウロイと戦い続けていることがばれていた。

特徴的な格好をしているから無理もないが。

 

少しでも戦力になりそうなやつだから利用してやろうという気が丸わかりだが、いい加減ネウロイをなんとかするか、宇宙に引きこもろうか迷っていたところだったので、お金を要求して、一緒に戦うことを了承した。

 

前金として、日本円で換算すると一億円余りの報酬をもらった。

ネウロイの撃墜数や、戦線に対する貢献度によってもらう金額が増えるように取り付けた。

 

万が一、向こうが約束を破るようだったらすぐにスレーヴⅠでどこか遠くに雲が隠れしてしまえばいい。

俺は全く困らない。

 

一通りの説明が終わるまで、適当に聞き流す。

それはいいのだが、俺は今、ものすごく動揺している。

 

軍人と一緒にネウロイと戦うと聞いていたが、まさか全員女性とは。

しかも、なぜかズボンをはいておらず、パンツが丸見えの格好の痴女ルックだ。

 

やはりそうなのか。

 

ウィッチというのはやはりあのパンツスタイルしかいないのか。

1910年代に見かけたときも,

それから先もそうであったし、やはり痴女ばかりなのか。

 

 

なんども腐れ縁で出会っている、坂本美緒というウィッチがこちらをにらんできている。

ああ、あのときに痴女って呼んだからか。

今にも刀を抜いてとびかかってきそうなくらい、物騒な空気を身にまとっている。

 

こわっ、と震えつつ目を合わせないようにする。

いくら美人でも、刀で切り付けられるなんて御免だ。

 

ミーナとかいう女性の説明が終わる。

「じゃあ、自己紹介をお願いします。」

 

えっ、前振りなしで急に?

という視線を送るが早く、とせかされしぶしぶと行う。

 

「初めまして。ボバ・フェットだ。賞金稼ぎをやっている。よろしくな。」

そういって挨拶をする。

 

彼女たちの反応は様々なものだった。

あるものは敵意をあらわにし、

あるものは興味を抱き、

あるものは不信感を見せていた。

 

もともと仲良しこよしで戦おうなんて思っていない。

 

そして、眼鏡をかけた釣り目の女子が声を荒げて言う。

「なぜ男性である彼と一緒に戦うのですか?!まさか魔力を持っているわけでもないでしょう?!」

軍人なんだから黙って上官の命令に従っておけよ、と思いつつ彼女の言葉を思い返す。

 

ネウロイに唯一対抗できる女性の戦士。

魔力をもつのは女性だけなので、部隊の隊員も自然とそうなったのだろうか。

 

魔力が無ければ足につけて空を飛ぶためのストライカーユニットを装着できない。

そう考えているからこその発言だろう。

 

まあ、そういった事情を抜きにしても、単純に俺のことが気に入らないっていう顔つきだが。

周りの娘達も口を開き始める。

 

「この人が悪名高いあのボバ・フェットですか・・・?」

ちょっと怖いものを見てしまったような様子でそういってくる東洋系の顔立ちのショートカットの女の子。

あのかどうかは知らないが、ボバ・フェットではあるな。

 

「狙った獲物は絶対逃さない賞金稼ぎ。素性、素顔、経歴、年齢、一切不明。」

男であることはばれている。

 

坂本美緒には顔ばれしてしまっているからな。

俺が男性だということはもう知れ渡っている。

 

犯罪は起こしていないが、どうも冷徹なイメージが俺にはあるらしい。

賞金稼ぎなんてやっているぐらいだからそりゃいいイメージはわかないか。

 

「というより本当に一緒に戦えるのか?」

懐疑の目を向けてくる女性。

 

えーっとなんて名前だっけ。

ゲ、ゲ、

 

「ゲルトルート・バルクホルンだ。ネウロイは甘い相手じゃないぞ。」

いや、知っているが。

「ウイッチの中には戦死したものもいる。ましてや、ただの人間である貴様にやつらと戦えるとは思えんというのが正直なところだ。」

 

そこまで言うか、と思ったが軍人としての誇りと矜持が見え隠れしていた。

一応、一般人である俺を戦闘にあまり巻き込みたくないようにも見える。

 

世界平和のために戦っているというのは大変だな、という人ごとのような感想がわいてきた。

 

「そう考えるのも無理はない。俺の足を引っ張らなければそれでいい。」

挑発の言葉を投げかける。

頭に手をやって「なにやってんだ。」みたいにミーナ中佐が困っているが知ったことじゃない。

 

 

俺の言葉に気を悪くしたのか、全員の顔つきが険しくなる。

明らかに怒っているようだ。

 

「ただの人間なのにそこまで言うなんてたいそうな口を利くじゃないか。」

「事実を言ったまでだ。俺はもう何年もネウロイを相手に戦ってきている。独りっきりでな。」

 

一切の嘘や誇張を抜いて、事実だけを伝える。

誰も与太話と受け取って、信じていない。

空を飛んで、ネウロイを倒しているのは自分たちだという自負がある彼女たちからしたら、俺は単なる異物で邪魔ものだろう。

 

さっさと帰ることにするか。

出口まで歩いていく。

 

「まて。」

声のする方を見ると、刀をこちらの首元に突き付けてきている坂本の姿が見える。

これは何のつもりだろうか。

 

「皆、お前が本当に戦えるだけの実力をもっているのかどうか判断しかねている。」

いや、俺の仕事はネウロイをスレーブⅠで虐殺することだし・・・。

はっきり言って俺がどう他人から思われようがどうでもいいんだよな。

 

「だから、私と戦って証明しろ。」

俺にメリットがない提案だったので、突き付けてきている刀をどかして出口をくぐろうとした瞬間、聞こえてはならない一言が聞こえてしまった。

 

 

「ボバ・フェットとやらも大したことないな。」

ぴた、と足が止まる。

あ?今こいつなんて言った。

 

大したことがない?

誰が?

俺を侮辱するならともかく、俺の大好きなキャラのボバが大したことないだと?

 

「気が変わった。ボコボコにして病院生活を送らせてやるよ。」

装備を整え、向き合う。

にいっと笑いながら刀を納刀して、喜ぶ坂本。

 

「決まりだな!!ミーナ!!」

「はいはい、どーせ止めてもやるんでしょ?だったら周りに被害が出ないような場所でやってよね。」

 

いつものことのように受け流すミーナ。

苦労人気質だな、と思いつつも目の前のアマをぶっ倒すために神経を集中させていく。

 

 

この世界に来た時は、銃の扱いも、船の操縦もままならなかった。

それを文字通り血のにじむような鍛錬を重ねて、彼に少しでも追いつくために励み続けた。

それを、彼を、この女は侮辱しやがった。

 

許せねぇ。

 

「殺しは絶対ダメよ!!時間制限は30分!!どちらかが気絶するか負けを認めたらその時点で決着!!いいわね!!」

「ああ、それで十分だ。」

 

脚にへんてこな機械をつけて空を飛ぶ坂本。

それに続いて背中のジェットパックを使って空を飛ぶ俺。

 

ワイヤーよし。リストミサイルよし。火炎放射器とブラスターガンよし。

高振動ブレードに、カミーノ・セーバーダートよし。

武器の状態を再確認する。

 

 

接近戦はこちらが不利。

遠距離戦なら分がある。

 

以前追いかけっこをしたときには刀で追ってきた。

遠距離の武器を使ってこなかったから今回も刀だけで襲い掛かってくる可能性は高い。

 

とにかく近づかせない。

これしかない。

 

「貴様とこうして戦うのは何度目か。」

刀を構え、愉快そうに語る坂本。

 

「以前も逃げるばかりで全く戦うそぶりを見せなかった。今回はちゃんと戦うのだろうな?」

「ああ。ご期待に添えてやるよ。」

 

そうか、と本当に嬉しそうに笑顔を向けてくる。

後先考えずに買った喧嘩だが、後悔はない。

 

なめられっぱなしは癪だからな。

 

「では、行くぞ。」

「こいよ。」

 

その日から、俺と坂本の長い戦いが再び始まった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

バルクホルンにスープをご馳走になり、おなかが膨らんで眠くなってきた。

あくびがでて、眠気が抑えられない。

 

「眠いのか?」

「ああ・・・・。」

テーブルにもたれそうになるが、なんとか体を支えて起き上がる。

さすがにここで眠るわけにもいかない。

マスクをかぶり直し、アーマーを着こむ。

 

「そういえば宮藤はどこだ?」

「お前が散歩に出て行ったのと入れ替わりでおまえのところに行ったら、いなくて落ちこんでいたようだぞ。」

 

それはいけない。彼女みたいな天使を放っておくわけにはいかない。

ダッシュで彼女の部屋まで向かう。

「お、おい!!?」

「メシうまかった!!ありがとう!!」

 

しっかりとお礼を述べつつ、走って彼女の元まで向かう。

ジェットパックを少し噴射して、加速をつける。

自動ドアが開く前にぶつかりそうになるがなんとか潜り抜ける。

 

一秒でも早く彼女のもとへ。

そして、部屋の前までやってきた。

 

明かりがついているようなので、まだ起きているようだ。

ドアをノックする。

「はい?」

 

がちゃり、と扉が開き、見知った顔がのぞかせる。

リネット・ビショップ。

宮藤と相部屋の女性だ。

「あれ、ボバさん。」

「宮藤はいるか?」

「まだもどってきていないですけど。」

 

おかしい。どこにいるのだろう。

行先に心当たりがないか尋ねる。

「ああ、そういえばボバさんのところに行くとか言っていました。・・・あれ?あっていないんですか?」

 

そういえばバルクホルンが俺とサーニャが部屋を出た後に来たとか言っていたな。

そっちに行ってみるか。

ありがとう、おやすみ、と言って別れる。

 

まってろよおおおおおおおおお!!

今いくぞおおおおおおおおおおお!!

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

彼女に惚れたきっかけの出来事。

 

坂本との決闘から数日がった。

お互いに意地を張って決着がつかないと思われていたが、ミーナ中佐のストップで引き分けとなった。

頭に血が登ってつい売られた挑発を買ってしまった。

 

 

反省、反省、と与えられた部屋で横になりながら傷をいやしているとドアをノックされる。

「はい?」

「あ、あの。私です。宮藤です・・・。」

おずおずとした声でドアの向こうから話しかけてきたのは、先日顔合わせしたばかりの少女だった。

 

「入ってもいいぞ。」

俺の言葉を受けて、ドアノブをまわし、中へと入ってくる宮藤。

「お邪魔します。ケガの方は大丈夫ですか・・?」

どうやらわざわざ俺が負傷していないかどうか確認に来たらしい。

 

俺の部屋に来るのはいやだろうに、律儀に来るとは。

「大丈夫だ。蚊に刺されたようなものだ。」

「刀で思いっきり切られていましたけど・・。」

 

坂本にアーマーごと斬られたときのことを言っているのだろう。

肉薄されて、斬られたときに、あ、俺死んだと思ったが、彼女が手加減したのか、アーマーが思っていた以上に丈夫だったのか、軽傷で済んだ。

 

お返しにワイヤーを巻き付けてやったが。

 

宮藤には強がったが、実はかなり痛い。

傷は深くないが、あとから来る痛みだ。

すると、手をつかまれる。

 

「私が治療します。」

そういうと、魔力を開放して、何か魔法のようなものを発動させる宮藤。

「治癒魔法か。」

「はい。これですこしでも良くなってください。」

 

目をつむって集中しながら魔法をかけ続ける彼女。

大分よくなってきた。

 

そんな献身的な姿を見て、あることを聴いてみる。

「君は見たところまだまだ若い。十代、下手をすれば十代前半だろう.

大人に任せて、戦いをしないという選択肢もあるはずだ。」

気になって仕方がなかった。

 

部隊のやつはみんな十代程度の女性というにはまだ若すぎる女子ばかりだった。

そんな人間が戦地に赴くなんて。

 

生活と、自分の在り方のためだけに戦っている俺とは違う。

 

すると、恥ずかしそうに話し始める。

「昔、ある人にスカウトされたんです。ウィッチとして。それがきっかけ今でも戦い続けているんです。私にはこういう力があるから、大切なものを守るために戦えたらなって。」

 

曇りなき目に射抜かれ、ドキリとする。

今まで裏社会で金を稼いできた俺からしたら、人間の本性は醜く、汚れきった欲望だと思っていた。しかし、目の前の彼女は全く嘘を言っている様子がない。

 

話し続けている間も、俺の手を両手で優しく包んで能力を使い続ける。

その顔は少し、苦しそうだ。

 

そこまでして、誰かを守れるものなのか。

 

その日、俺が空を飛ぶ理由が変わりつつあった。

 

この時は気が付いていなかったが、彼女のことが気になり始めたのもこのころからだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

「宮藤っ!!」

ドアノブをまわして開ける。

 

ベッドで横になっている彼女の姿が見える。

「ここにいたか。よかった。」

呑気そうに寝ている彼女の姿を見てほっとする。

俺の服を着ているのは謎だが、無事なら何でもいい。

 

彼女には何度も助けてもらった。

体も、心も、癒してくれた女性だ。

 

正直、最初は眼中になかったが、接していくうちその魅力にとりこまれ、気がついたら好きあっていた。

 

眠気で頭がくらくらしてくる。

「ああ、そういえば眠いんだった・・・・。」

我慢できずに宮藤の隣に倒れ込む。

「でもこのまま寝たらやばいか・・・。」

そうはいっても限界の様だ。

「もういいか・・・おやすみ・・・。」

彼女を抱きしめて同じく眠る。

 

・・・・・・・・・・・・・

 

宮藤芳佳は混乱していた。

自分は彼の部屋に行って、そこで寝ていたのは覚えている。

しかし、なぜ自分は彼に抱きしめられているのだろう。

 

(へっ?!!へっ!!??)

衣服の乱れを確認し、そういった行為をしていないかどうかをきちんと見る。

どうやらいたしてはいないようだ。

 

ほっとしたような、残念なような。

 

ウィッチは処女を失うか、加齢に伴って魔力を失う。

でも、例外はある。

(私はいつでもいいのに・・・バカ。)

 

私は男性とそういうことをしても魔力を失わない。

だからいつもそうなることをほのかに望んでいる。

でも、彼は夜の街に繰り出して、私やほかのみんなに手を出さないように発散している。

 

私のことが好きならば、独占してくれてもいいのに。

正直、彼がそういうところに行くのはよく思わないし、妬けてくるが、彼が私たちのことを憎からず思っての行動だとわかっているので何も言わない。

 

素顔をさらして、あどけなく寝ているの彼頬を引っ張る。

何も言わないとは言ったが、それはそれ。これはこれなのだ。

「宮藤ぃ・・・」と寝言で私のことを言っていたので少し力を緩める。

もうすこし抱かれていたかったが、腕を払い、頭を撫でて着替える。

 

時刻はもう、朝の様だ。

割烹着をつけて、食堂まで向かう。朝食を作っておいて、彼が起きたら一緒に食べるためだ。

それに軽く化粧もしておきたいから、先に起きられてよかった。

すっぴんを見られるのは恥ずかしい。

 

 

食堂に行くと、何かいい匂いがしてくる。

見知った後姿を発見した。あの黒髪のポニーテールは・・

「坂本さん!」

 

私の声に気が付いて、くるりと振り返る。

眼帯をしていて、凛とした雰囲気を漂わせている。

 

「おお、宮藤か。おはよう!」

はっはっは、と豪快に笑う坂本さん。

 

私たちの副リーダーだ。厳しいところもあるが、それも私たちのことを思っての在り方だというのはみんな気が付いているので、信頼も厚い。

 

でも、こんな朝早くにどうしたんだろう。

食堂で早めの朝食をとっているのかな?

 

彼女の後ろを見ると、二人分の朝食が用意されていた。

二人分・・・?

 

「私はもう使い終わったから後は好きにしていいぞ。では。」

そういって私の横を通りぬけようとしてくる。

声を掛ける。

 

「坂本さん。朝食が二人分あるようですけど。」

「ああ、あいつの分も作っている。一緒に食べられたらどうかと思ってな。」

 

何気ないその言葉が引っかかった。

あいつ?

それって・・・?

 

「宮藤―?どこだー?」

そういって食堂に入ってくる彼。

どうやら目を覚まして、ベッドの隣に私がに居なかったから探しに来てくれたようだ。

「ここにいたか。」

 

いつもつけている装備を外して、嬉しそうにそういう彼。

「一緒に飯食おうぜ。あれ、もっさんじゃないか。おはよう。」

「おはよう!」

 

屈託のない笑みを向けて彼に挨拶する坂本さん。

その姿を見ていると何か違和感を感じる。

 

「もっさんも一緒に・・・あれ、もう朝食用意しているのか。もしかして宮藤ともっさんの分か?」

「い、いや、あのな・・・」

 

いつものはきはきとした口調ではなく、もじもじと身をくねらせ、顔をほんのりと赤らめている。

彼は気が付いていないようだが、私にはわかってしまった。

危機感が募る。

 

「実は、お前の分の朝食も作っておいたんだ。その、喜んでくれるかなって・・・。」

「本当か?!もっさんのメシ旨いから正直嬉しいわー。」

仲良く話している二人。

私の分のご飯はまだないから、これから作る必要がある。

 

まだ、朝早いから、自分でやる必要が。

私をまっていたら坂本さんの料理が冷めてしまう。

二人っきりで食べさせるのも正直気が晴れないが、朝早く起きて、朝食を作っていた彼女のことを考えると邪魔できない。

 

気持ちが同じなだけにもどかしい。

 

「あ、宮藤の分は・・・」

「気にしないで。」

 

自分でも驚くような冷たい声を出して、拒絶するような声を出してしまった。

突き放すようなことをするつもりはなかったのに。

気まずさで、彼から目を背けて厨房に向かう。

 

やっちゃった・・・。

いつもはうまくいっているのに。

自分のこういった面に自己嫌悪しながら準備をしていると、彼が近づいてくる。

 

「・・・・どうしたの?」

「俺、食べ盛りだから、俺の分も作ってくれ。」

 

小声でそういう彼の方を見る。

私に気遣ってそんな不器用に。

バカだね、と思いつつも口角が上がってにやけてしまう。

 

「はいはい。全く子供なんだから。」

「その顔、信じてないな?本当だぞ。」

そういいながら席に戻って坂本さんと一緒に料理を楽しみながら談笑し始める。

 

(全く、ぶきっちょなんだから。)

そんな相手が気になっている自分も自分だが。

 

期待に応えるべく、腕を振るう。

男性のハートをつかむにはまず胃袋から。

 

恋のライバルは多いが、これだけは命を賭けてともに戦っている仲間でも譲る気はない。

 

楽し気に話している彼の声を背中で聴きながら、料理を作っていった。

 

 

 

 

 




説明
ボバ・フェット
主人公がスター・ウォーズを見て、憧れたキャラクター。
当初はマイナーなキャラだったのに、異常な人気を誇り、結果的に死ぬはずだったのにスピンオフの作品で生還した。親のジャンゴ・フェットも銀河系一の賞金稼ぎとして有名だった。しかし、ジェダイ・マスター、メイスにジェットパックの故障中に襲われ、首をはねられて戦死してしまう。相手が悪すぎた。
ストライクウィッチーズを見ていて、なぜか一緒に飛んでいるボバの姿が思い浮かんだので書いてしまった。まさか2万2000字以上もかくとは思わなかった。

一緒に議論を熱く交わしていた二人が好きなキャラはダース・モールとグリーヴァス将軍だった。

彼の装備をもらうという特典をもって転生を果たした主人公。
スター・ウォーズが大好きで、一番好きなのはボバ。次にジャンゴと彼のクローンのクローントルーパーたち。アーマーがかっこいいからだとかなんとか。

転生当初は戦闘経験もなく、銃の扱いもへたっぴだったので何度も命を落としかけた。
それらの体験から、強くなることを決意し、自分の目標である人物の名を傷をつけぬよう修練に励んだ。

相変わらず死にかけることが多かったが、それでも毎回生還していくうちに少しずつ強くなっていく。ワイヤーを初めて使ったときは自分の足に絡まってこけてしまったり、火炎放射器を腕から発射したら、自分の腕をやけどしてしまったなど笑えない黒歴史満載。

ストライク・ウィッチーズの面々と始めてあったときは多少の下心と、無関心さが入り混じった感情しか持ち合わせていなかった。
国や世界のために献身する彼女たちをすごいとは思っても、自分のためだけに日々の糧を得て生きてきた彼からすると、理解はできても共感はできなかった。


しかし、宮藤芳佳に何度も瀕死の傷を治してもらい、そのうちべたぼれするように。
彼もまた、彼女を守るためにその命を何度も張った。

両想いではあるが、さすがに十代の女子相手に手を出す気は起きなかったので、こっそり
水商売のお店に行っている。本人は今までばれていなかったと思っていたが、あっさり見抜かれたことを知ると、なんとかごまかせないか軍部のおっちゃんたち相談する。

政治的な意図をもって接触してくる部分を除けばおっちゃんたちのことは気に入っている模様。

今日も彼は空を飛ぶ。
世界のためでも、国のためでも、今となっては金のためでもなく。
彼女と、彼女が大切にしている物を守るために。


宮藤芳佳
原作の主人公。優しさと強さを兼ね備えた女の子。
家事料理万能、優しい、強いというこの子がヒロインの恋愛ゲームがあったらきっと人気投票一位になるんじゃないかと思えるくらいの高スペック。
さすが主人公は格が違った。
自分のことと、仲間のことをなんだかんだいいつつも守ってくれる彼に信頼を寄せている。
憎からず思っているが、私一筋ならほかの娘を口説いたりするのはやめてよ、と思いつつも最終的に私のところに帰ってくるから、とゆるぎない自信を持っている。つよい。

最初に比べればみんなと仲良くなってくれるのはいいが、最近みんなとの距離が近すぎるような気がする、と焦っている模様。

既成事実でフィニッシュ、という奥の手が自分だけは唯一使えるウィッチなので腹をくくったらそうすることを考えている。
浮気は許しません。

サーニャ
銀色の美しい髪を持つウィッチ。エイラと仲がいい。
高い感知能力を持つナイトウィッチ。性格は無口な方だが、とても穏やかで優しい。
しかし、戦士としての強い一面も持ち合わせている。

エイラがいつもガードしていて、彼と一緒にしゃべる機会がなかったが、食堂でばったり会って一緒にご飯を食べてから仲良くなった。そのことを知ったエイラが彼に襲い掛かったときにはさすがに止めた。常識人ムーブ。
一緒に夜の索敵任務を行いながら互いのことについて話すようになった。
ぎこちない会話が、数か月もたつと自然と笑顔がこぼれる会話となっていく。

素性も、経歴も知らない相手であったが、彼の素顔を見てから「人間でほっとした。」とこぼす。ストライク・ウィーチーズで二番目にボバの素顔を見たウィッチ。

口では厳しいことを言っていても、何だかんだ身を挺して囮役を買ったりしてくれる彼に感謝している。

彼に宮藤とのことに関して恋愛相談を受けてから自分の気持ちを自覚し始める。
とどめは夜の店に通っているという噂だった。
冒頭の出来事は、そのことに関して彼に問いかけるためでもあった。

夜の散歩中に詰問をしていく。ロマンスとは一体・・・。

坂本美緒
扶桑皇国の海軍少佐。
眼帯とポニーテールが特徴のボーイッシュな雰囲気を身にまとった女性。
これでも20歳超えていないとか。愛称はもっさん。もっさんかわいいよもっさん。

魔眼と呼ばれる超視力の能力を持つ。邪気眼ではない。
性格は豪快という一言が似合うほどのさばさばとした気質。
まっすぐに一本筋が通った姉御肌。厳しい鬼教官だが、それも仲間や部下のことを思っての行動である。
ボバと初めて空を飛んでドッグ・ファイトした人物。
自分はズボンをはいているのに、痴女呼ばわりされるのが納得いかない模様。
それはパンツだ、と突っ込まれるが堂々としている。

何度も何度も彼と戦っているうちに、あれ、こいつ意外と骨があるな、と気づき始める。
髪を結ったり、化粧し始める姿が確認されたとか。
恋愛も戦いと一緒で鍛錬あるのみ、と考えアプロ―チし始める。

彼が接近戦の戦い方を知らないというのでそれを教えるのを口実に一緒の時間をとっている。恋愛に関しては、どんな女性でも魔女になれるというお手本。

他のウイッチたち

ときメモの爆弾みたいに結構やばいのでご想像にお任せします。

爆弾解除に向かうボバ君。

次回「賞金稼ぎはわがままお姫様とデートする。」

ただいま活動報告にて、11月23日まで501のストライク・ウィッチーズのキャラのうち一人を選んで愛を込めて叫ぶアンケートをとっております。

くわしくはそちらをどうぞ。



KEY(ドM)




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。