ボバ・フェット(偽)はウィッチとともに空を飛ぶ 作:KeI77777
その一端が上手く描写したくて書いた話。
ある程度仲良くなっちゃったら、もうそれを維持しないと刺されると経験上でわかっているボバ君。
感想返し
Qどうも、更新お疲れ様です。
傍から観たら女ったらしのクソ野郎にしかみえない様な気が微妙にするんですが・・・
まぁ、魅力的な女性に囲まれればそりゃムラっとしますよねー
キャラ一人一人の魅力が深く伝わってくる作品だと思います。
これからも頑張ってください。
A彼女たちの魅力に触れて、宮藤一筋を誓いながらも限界を迎えつつある主人公。
そして、自分が結構やばい状態にあることを自覚しているので、爆弾が爆発しないように女性に対してマメにしているので防げております。それが泥沼へと至る道なのですが・・・。
KEY(ドM)
わがままプリンセスの部屋に泊まって一日後。
他のウィッチ達に絶対にばれないように振る舞うことを条件に同意した。
代わりにハンナにはサーニャにつけられた首の傷を黙っておくようにしておいた。
等価交換。なんてすばらしい。
これ以上女性につねられずに済むとは。
呑気な顔をして寝ている隣のハンナの頬をむにゅむにゅと伸ばしたり、縮めたりして
もて遊びながらそう考える。
サーニャに一緒に寝ることをお誘いされたときには断ったが、ハンナと寝ることを了承したのは睡眠薬を持ってきていたからだ。
これを飲んでおけば死んだように眠ることができるので、万が一と言ったことも起こらない。
というかウィッチ相手に起こしたら困る。
それは何としても避けなければ。
満足そうな笑みを浮かべて眠るハンナを見つめながら、彼女が起きるのを待ち続けた。
窓から早く出て、一旦帰っておきたかったが一緒に寝ていて相手がいなくなったらかなりまずいと考えこうして待機している。
鈍感、朴念仁、狼と言われ続けて、女性関係を少しでもマシにするためにしてきた数々の失敗による経験が、ここに留まるよう告げていた。
男は鈍い。それが俺の出した結論だった。
・・・・・・・・・・・・・・・
ハンナが起きたとき、こちらは寝たふりをしておいた。
すっぴんの女の顔をまじまじと見つめていたのではないかという疑念を持たせないようにするためだ。
いい気がしないだろう。
早くシャワーでも浴びに行ってくれ。
そう願ってやまなかったが、こちらの頬を突っつくばかりで一向に動く気配がない。
ちら、と薄めで目を開けると笑顔を浮かべているハンナと目が合う。
どうやら狸寝入りに気づいていたようだ。
観念してむくり、と起き上がる。
「おはよう。」
「おはよう。嘘つき。」
起床一番に掛けられる声としてはきつい一言をもらい、胸が痛む。
俺が寝たふりをしようとしたことについて言っているのだろうか。
体を起こしてベッドから抜け出そうとすると、腕をつかまれて布団の中に引きずり込まれる。
足を絡められ、腕を腰に回されて抱き着かれる。
さすがに止めようと言葉をかける。
「おい。」
「いいだろ。・・・・・・まだライーサの番じゃないし。」
なぜ彼女の名前が。
体を強張らせて固まってしまう。
予想だにしていなかった名前に驚く。
「ほう。やはりそうだったのか。」
カマをかけられたことに今更になって気が付く。
しまった。
しかし、今更気が付いたところでもう遅かった。
彼女に知られてしまった。
「・・・・要求は?」
何か企んでいることを察知して先回りして聴く。
すこしでも機嫌をよくさせて、被害を抑えるために。
口を開けた彼女が求めたのは・・・・
・・・・・・・・・・・・・
ハンナのお願いを聴いて、窮地を脱してすぐあと
スレーヴⅠに戻る。
時速1000キロという旅客機と同じスピードが出るこの宇宙船はやはり便利極まりなかった。
夜中に目的地を設定しておいて、オートパイロットで操縦をするようにしておけば一夜で大抵のところへ行ってくれる。
ライーサとのデートが近い。
急いで準備に取り掛かる。
彼女にもサプライズを用意しておいた。
花束はもちろん、他のプレゼントも。
ハンナとは別のモノを選んで個性を出す工夫もしてある。
まとめて適当に選んだように思われることはないだろう。
いつもの戦闘装備のチェックを行う。
死活問題となる武器装備の点検は欠かせない。
こういったことをなめていたやつらは早死にしていったからなおのこと。
場所は広場の噴水。
彼女がどんな格好をしてきてくれるのか楽しみだった。
最初に出会ったときは、病室だった。
その時にはお互いに相手のことも知らずに警戒しあっていた。
鬼ごっこをしていて、病院送りになり、起きてすぐにハンナに飛び掛かられた後の場面を思い浮かべていく。
・・・・・・・・・・・・・
さて、ここはどこだろうか。
少なくとも三度目のあの世というわけではなさそうだ。
身を起こしてあたりを伺おうとすると、誰かが自分の手を握っているのに気が付く。
その人物の正体を調べるために顔をそちらに向けると、鬼ごっこを仕掛けてきたあの女だった。
何で俺はこの子に手を握られているのか。
痛む体を抑えつつ、頭を必死に動かして、何があったのかを思い出す。
迫る壁。落ちていく二人。
自分が彼女を抱えて地面に落ちたことを思い出し、我ながらよく生きていたのもだ、と感心する。
アーマーの装甲がしっかりしていたのか、打ち所がよかったのか。
こちらの手をつなぎながらベッドにもたれて膝立ちで眠っている彼女の顔を見つめていると、その瞼が動き出し、瞳が向けられる。
目と目があい、時間が止まったかのように二人の動きが止まる。
そして、こちらの姿を確認すると
ベッドに飛び込んできた。
まさかのダイブに慌てて腕を広げて受け止める。
体はとてつもなく悲鳴を上げて、不調を訴えているが、そうもいっていられない。
なんとかベッドから落ちないように彼女を受け止めて、何のつもりだ、という意図を込めた視線を向ける。
すると、彼女は顔をかがやせて話しかけてきた。
「生きていたか!!よかったよかった!!お前、なかなか悪運が強い奴だな!!」
はっはっは、と豪快に笑う金髪の女性。
何だかあの子に似ているな、とおもいつつも尋ねる。
「大体俺が何でこの病室っぽいところにいるかはわかる。気を失う前に地面が眼前まで迫ってきていたことは覚えているからな。きみは誰だ?」
名前も知らずに追いかけあっていた相手の名前を聴く。
すると、ベッドから降りて、こちらに振り返って笑いかけながら自己紹介してくる。
「私の名前はハンナ・ユスティーナ・マルセイユ。ウィッチだ。お前が私をかばって地面に落ちてから知り合いのウィッチを呼んでこの病室まで運んできた。ところどころ骨折や打撲はあるが奇跡的に助かったそうだ。」
そうか、と一言だけ返して起き上がり、近くに掛けてあった自分の装備を取るために起き上がろうと身を起こす。
すると、あわてた様子でそれを止めてくる。
「おいおい!生きているとはいえ重症であることには違いないんだ!おとなしく眠っておけよ。」
そういってこちらの肩をそっと押してきて、ベッドに寝かしてくる。
いや、スレーヴⅠで宮藤のところまで行けばすぐに直してくれるんだけど。
そう言いかけたが、なぜかそれを言うと目の前の女性を傷つけてしまいそうな気がしていうのをためらってしまう。
言われたとおりにベッドに横になり、シーツを上からかけて頭を枕において、安静にする。
自分はアフリカのウィッチの部隊の応援という名目でネウロイの討伐に来たのだが、
時刻は何時だろう。
気になって壁に掛けてある時計を見ると、時刻は12時を回ったところだった。
指定のポイントまで行って合流するのが10時。
どうみても遅刻の様だ。
すると、こちらの慌てた様子が伝わったのか、こちらを安心させるようにハンナさんが言っってくる。
「ああ。もしかして待ち合わせの時刻を過ぎたことを気にしているのか?安心しろ。お前が眠っているときにほぼ全員のウィッチが顔を見に来ている。それが代わりということで大丈夫だろう。」
既にファーストコンタクトを終えていたというまさかの展開に気が抜ける。
マスクで隠していた顔を知らない相手に見られるのはどうも嫌なんだが。
過ぎたことはもういいとして俺はこの後どうなるのか。
「で、怪我が治るのはいつ頃なんだ?」
「一か月。」
よし、こっそり抜けだして宮藤に治してもらおう。
でも、最近要求がエスカレートしていって理性が持たなくなってきたんだよなぁ。
はあ、とため息をつきながらあの大天使にナニをおねだりされるのか不安を抱きつつ、
隣で質問を洪水のように浴びせてくるハンナさんをあしらっていた。
・・・・・・・・・・・・・・
「待ったか?」
「いえ、今来たところです、と言えば嬉しいですか?」
クスクス、とこちらの顔を見ながらそんな軽口を言ってくる彼女。
待ち合わせの広場までやってきて、小走りでやってきた。
時間にはまだまだ余裕があったが、彼女の性格からして、待ち合わせ時刻の何分も前から待ち続けるのが目に見えていたので早めに来た。
案の定、先に来ていたらしく、遠目に彼女の姿を確認してちょっと焦ったくらいだ。
ライーサの近くまで行き、持っている花束を渡す。
「これ。花屋の店員さんにいろいろ聴いて見繕った。喜んでくれるといいが・・・」
「わあ、きれい・・・・・。」
そういって嬉しそうに花束を見つめる。
時間をかけて粘り強く店員さんに聞いておいてよかった、とほっとする。
手を差し出されたのでこちらも手を差し出して手をつなぐ。
同じ景色を見ながら近くのベンチに座る。
彼女とのお出かけはあまりしゃべることがない。
初めにあったときにはそれなりに話し込んだりもしたが、時間を重ねて親しくなっていくうちに自然とこうなった。
街を行きかう人々の様子をじっと眺めながら、時々ちらりと彼女の横顔を見る。
すると、同じようにこちらをのぞき見しようとしていた彼女と目があい微笑まれる。
花の咲くような笑みとはこういったものか、と胸が熱くなる。
いつもはミステリアスな雰囲気を持つ彼女も、こうしていると年齢相応の少女なんだな、と感じる。
そんな彼女を独占していることへの優越感もさることながら、今までの戦いの日々から離れて過ごす時間は特別で、かけがえのないものに思えた。
しばらくそうしていたが、彼女が口を開く。
「こういうのもいいですね。何だか映画のワンシーンみたいで。」
「俺の隣には女優顔負けの綺麗な花がいるからな。待ちゆく人々も目を奪われているさ。」
「あら、私が持っているこの花はきれいというよりはかわいらしい感じですけど。」
明らかにこちらの言う“花”が何かを知っている様子でにこやかにそういってくる彼女。
彼女は接しやすく、穏やかなので、こうして気軽に会ってやりとりするだけで癒される。
さて、そろそろ行くか。
彼女の手を引き、再び歩き始める。
「どこへ行くんですか?」
興味深そうにそう聞いてくる。
その瞳には、どんな面白いいたずらが待ち受けているのか解き明かそうという好奇心が見え隠れしている。
毎回、女性の期待を超えるサプライズを演出するのも大変だが、それだけの価値がある。
「君が好きそうな場所さ。」
・・・・・・・・・・・・・・
アフリカのウィッチ達と合流してしばらく。
共同で戦線維持のために戦いに赴いた。
俺はジェットパックで、彼女たちはストライカーユニットで。
小回りの利くジェットパックを使ってアフリカ戦線の情報を収集するのが
今回の戦闘の目的だ。
ウィッチたちはネウロイ撃破が主要な目標のようだが。
飛んでいくと、ネウロイを視認する。
他のウィッチ達も気づき始めたようだ。
牽制にブラスターガンを撃ち込む。
しかし、シールドのようなもので軽減される。
いくらかは当たってダメージを与えることができだようだがまだ原型を保っている。
捕まらないように、そしてほかのウィッチ達にターゲットがいかないように攪乱しながら囮になる。
こいつらを殲滅するには背中にあるミサイルを撃ち込むか、中にはいって火炎放射器で焼き尽くした方が早い。
スレーヴⅠがあればすぐに終わるがないものねだりしても仕方ない。
避けながらも他のウィッチ達がネウロイを撃ち落していくのを見ていく。
いい腕だ。
ストライク・ウィッチーズの面々とどっこいどっこいと言ったところか。
ハンナとかいうあの女もやはりというかかなりの腕前だ。
しかし、動きがおかしい。
先日追いかけっこしていた時よりも挙動が不自然だ。
そしてそこで思い至る。
俺は地面に落下してけがを負った。
なら、俺が彼女をかばったとはいえもしかしたら彼女もまさか。
気が付いた時には遅く、ネウロイの攻撃がハンナの体をかすめる。
「ハンナ!!」
ライーサという少女がカバーに入ろうとするが、それを待っていたかのようにネウロイがそちらに攻撃を仕掛ける。
ハンナを落とせるのに落とさなかったのは囮にしてほかのウィッチを確実に落とすためか。
なめやがって。
気づいた時にはもう遅く、彼女は恐怖か、戸惑いからか、動きが止まってしまっていた。
考えるより先にライーサのところまで一直線に飛んでいき、突き飛ばす。
それと同時にガンマンの銃の抜きあいのようにネウロイと俺が銃撃しあう。
ブラスターとネウロイの攻撃がぶつかり
あたりに衝撃波が広がった。
・・・・・・・・・・・・・・・
「ここは・・・・・?」
「秘密の場所さ。君が気に入ってくれると思って、ね。」
そうして船で降り立ったのは一面の花畑。
季節にそった色とりどりの旬花が咲き乱れている。
あたり一面を覆いつくすその景色に見とれているのか言葉を失って見つめ続けるライーサ。
「もらった花束がかすんでしまうほどすごいお花ですね。」
「だろう?気に入ってもらえてよかったよ。」
花畑にもちこんで設置しておいた椅子とテーブルまで向かう。
ここにきては考え事やデートのプランを練ったり、宮藤が喜びそうな花を見繕ったりしている。
隠れ家、秘密基地は数多く持っているが、その中でもお気に入りの場所だ。
船からもってきた紅茶と茶請けをテーブルに置き、注ぐ。
茶葉の豊潤な香りが鼻をくすぐる。
彼女の分を入れ終わり、ソーサー事渡す。
「あら、このティーカップ・・・・。」
気づいた彼女が思わず声を挙げる。
「大切にとっておいてくれたんですね。うれしい・・・。」
「君から初めてもらったプレゼントだからね。」
ティーカップを傾けて紅茶を飲む。
おっと、しまった、とさらに乗っけてある砂糖とレモン彼女の方まで
動かす。
こういうことは今まであまりしたことがなかったが上手くいっただろうか。
見たところ喜んでくれてるようには見えるが。
「大丈夫ですよ。あなたがくれるものなら何でも嬉しいですから。」
「そうか。」
会話が終わり、沈黙が訪れる。
風が軽く吹くごとに花びらが少しずつ散ってゆく。
何とも幻想的な景色だ。
彼女がそれをじっと見つめている。
それも、とても不思議な表情で。
絵になる、という言葉を使うとしたらこういった場面なのだろうか。
この瞬間を切り取って永遠に保存しておきたいぐらい綺麗だ。
野暮なことを言いそうだったので紅茶を飲んで口を塞ぐ。
彼女の視線の先を追うと、花が全くない、一メートルくらい地面がむき出している円を見ている。
「あれは?」
「気が付いたか。まあ、ここは俺たちが初めて一緒にネウロイと戦った場所の近くだからな。」
彼女もなぜ俺がここに連れてきたのかその理由がうすうすわかっているのだろう。
「あれは君のせいじゃない。俺も、ハンナも恨んじゃいない。君が生きていてよかった思っている。それは、事実だ。」
泣きそうな表情で瞳を揺らしながらこちらをじっと見つめてくる。
目元には涙がうっすらと溜まっているのが伺える。
心優しい彼女は、あの時俺がかばったことを気にしていた。
それで自分で自分を責め続けていた。
気が付いてもどうすればいいのかわからずに、ただごまかして時を重ねるばかりだったが。
今日、ようやく言えた。
椅子から立ち上がり、こちらの前まで歩いてきたライーサが腕を伸ばして、こちらの肩を触ってくる。
あの時に負った怪我だ。
「わたしも、あなたが生きていて、よかった、です。」
彼女の手を引いて、椅子に座ったままライーサを抱き留める。
彼女が泣き止むまで、しばらくそうしていた。
・・・・・・・・・・・・・
「落ち着いたか?」
「ええ。」
そういう彼女の表情は何かを吹っ切れたような顔つきだった。
何というか、強さを感じる。
もともと彼女は芯のあるタフな女性だったがそれとは異質な雰囲気だ。
目元は泣きはらしたからか少し赤くはれており、すこし嬉しそうにも見える。
「あなたが私に気をつかってくれたのは嬉しいです。でも」
そういってこちらの腕をつねってくる。
まさか今朝に続いて女性に連続でつねられるとは。
つねられた場所が赤く腫れる。
「いつもこういうことを女性に対しているのですか?」
彼女の追及に思わず目をそらす。
だが、じっとこちらを見つめてくる彼女。
どうして女性というのはこういうことに察しがよすぎるのか。
もっと俺たち男のように鈍くさくてもいいんじゃないか。
彼女の視線による問いかけから必死に逃げながらそう考える。
「やっぱり悪い人。でも、許してあげます。」
ちょっとばかり頬をぷくっと膨らませてそういうライーサ。
「その代わり私だけと秘密を共有してください。」
「・・・・・なぜ?」
いきなりの提案に眉をひそめてそう聞き返す。
なぜそんなことを望むのだろうか。
意図も意味も分からない。
すると、やれやれ、といった感じの母親がやんちゃな子供をたしなめるような表情で告げてくる。
「愛する人の特別になりたい・・・。・・・いけませんか?」
ススッ、と近くまで寄ってきてそういう。
指を絡められ、思わず動きが止まる。
俺の秘密。
確かにあるが、それはこの世界の誰にも言ったことはない。
話したところで狂人扱いをされて、精神病院にでもぶちこまれるのが関の山だと思ったからだ。
目をつむると仲の良かった二人の姿が目に浮かぶ。
同じスターウォーズの作品が好きで、違うキャラに憧れていたが、よき関係だった。
彼女の姿を見据える。
表情は真剣そのものだ。
話していいのかもしれない。
そうして俺は述べた。
自分が生まれ変わりを果たした人間であることを。
彼女は黙ってそれに耳を傾け続けてくれた。
ひとしきり話し終わり、彼女が口を開くのを待つ。
意を決して話し始める彼女。
「ありがとう。」
「信じるのか?」
「ええ。」
そうか、と短く返してまたティーカップに口をつける。
すっかり冷めた紅茶は不思議と悪くなかった。
・・・・・・・・・・・・・
「今日はありがとうございます。」
「いや。俺のほうこそ。君と一緒の時間を過ごせて嬉しかったよ。」
基地の近くまでやってきて、彼女を送り届けに来た。
あれから他愛のない話をしていた。
ネウロイとの戦争が終わるかもしれないこと。
ライーサたちがウィッチを引退するのかもしれないこと。
そして、
「私の気持ちは本当ですから。」
情熱的な告白。
いつも自分がする側であったが,
こうはっきり面と向かって言われるとむずがゆい。
頬をポリポリとかく.
気持ちが揺れて、ぐらつくのをはっきり自覚する。
「じゃあ、また。」
そういって帰ろうとすると、手を握られる。
振り向くと
頬に柔らかな感触を感じる。
「今日のお礼です。おやすみなさい。」
ぱたぱたと小走りで走っていく。
その姿を呆然と見つめる。
頬を手で触り、感触があった箇所に触れる。
「・・・・・・・・・うそ。」
そんな間抜けな感想しか言えず、その場に立ち尽くしていた。
我に返ったのは、帰りが遅いのを心配したストライク・ウィッチ―ズの面々からの連絡によるものだった。
・・・・・・・・・・
ネウロイに撃ち落されて、地面へと吸い込まれていく彼。
それを目で追う私。
叫ぶハンナ。
わたしを、かばって・・・?
「ライーサ!!」
襲い掛かってくるネウロイを蹴散らしてこちらにやってくる。
その顔には言い知れぬものが浮かんでいる。
「今は戦いに集中しろ!!」
その一喝で現実に引き戻される。
武器を構えて応戦しようとする。
手が震える。
危なげなく、敵をさばいていく。
ぬぐおうとしても、頭の中に浮かぶのは、墜ちていく彼の姿だった。
・・・・・・・・・・・
「はあっ、げっほ、げっほ!!」
ウイッチをかばって攻撃を食らうとは。
裏社会にいた時にもこんなへましたことなかったのに。
府抜けたか。
死んだと思っていたが、地面に咲いていた花がクッションになって無事だったようだ。
しかし、墜ちた部分に咲いていた花はぐずぐずに潰れてしまっている。
綺麗な花だ。
痛む体を動かす。体がきしみ、声が漏れる。
体を支えきれず寝転んでしまう。
洒落にならない。
(宮藤・・・)
ここにはいない、最愛の女性の顔を思い浮かべる。
それだけで不思議と勇気が湧いてくる。
ここで死んだら彼女が悲しむ。
仲間のウィッチも誰一人死なせはしないし、死ぬ気もない。
ジェットパックの状態を点検する。
穴が開いて燃料が漏れてきているがなんとかまだ飛べるようだ。
ブラスターガン墜ちたときの衝撃で故障。
使えるのはワイヤーと火炎放射器、そして一発限りのミサイル。
分の悪い賭けだ。しかし、自然と笑みが浮かんでくる。
体をずり、ずりと引きずって這って動く。
飲料用のボトルを取り出す。
(宮藤。死ぬ気はないけど、死んだらごめんな。)
心の中で謝りつつ、覚悟を決める。
・・・・・・・・
彼女は自分の無力さに苛立っていた。
戦場だ、集中しろ、などと言ったもののそれは自分自身に対して言い聞かせていた面もある。
彼が撃墜されて動揺しているのはライーサだけじゃない。
魔法と銃器を駆使し、敵を落としていくがいかんせん数が多い。
怒りと憎しみを込めて敵を殲滅していく。
「ああああああああああああっっ!!!」
冷静さを失って、注意がそれたその時に。
シャチのような形状をしたネウロイが口を大きく開けてこちらを飲み込もうとするのが見える。
(しまっーーーーーーー!!)
食われると思い、目をつむって恐怖から逃れる。
爆音が響く。
ネウロイが声にならないようなつんざく悲鳴を挙げる。
目を見開いた私が見たのは、ボロボロの体でネウロイの近くまで来ていたボバの姿だった。
・・・・・・・・・・・・・・・
(浅かったか!!)
切り札のミサイルを受けてもまだ生きているネウロイを見てそう考える。
しかし、どうやらバリアのようなものが出せないくらいには弱らせられたようだ。
敵の周りを攪乱するように小回りをきかして飛び回る。
火炎放射器であぶっていく。
体を振って、こちらにその巨体を叩きつけようとしてくる。
体をそらして避ける。
そこで最悪の事態がやってくる。
避け切ったと思っていたが背中をかすめていたらしい。
ジェットパックへの被弾。
ということは。
「うおおおおおおおおおおおおっ!!!」
空中に投げ出されたような浮遊感。
体が重力を浴びて、地面へと引きずり込まれていく。
そして、そんなこちらを食べようと噛みついてくるネウロイ。
体半分が飲み込まれるが、必死に腕を使って抵抗する。
皮肉なことに、ネウロイが噛みついてきたので地面に墜ちずに済むとは。
アーマーがなんとか代わりに耐えてくれているが、ヒビが入ってきている。
ボトルを取り出して、ネウロイの体に掛ける。
右手をシャチ型のネウロイの顔にむけて、火炎放射器を発射する。
燃え盛るネウロイ。
先ほど、ジェットパックが漏れていたのでそれをボトルに入れて詰めておいた。
敵にかけて、ウェルダンの強火で焼くために。
口を開けて、脱出する。
墜ちたときに、マントをワイヤーと組み合わせて作った即席のパラシュートを展開する。
がくん、と体が揺れて、減速し始める。
つたない日曜大工の工作程度の代物だったがどうにか役割は果たしてくれているようだ。
ホッとしていると
何かが背後から発射された音がして
パラシュートに穴が開く。
「は?」
後ろを振り返ると、燃えてもだえながらもこちらに向けて攻撃しているネウロイの姿が。
やろう、しつこい奴だ・・・!!
右手のワイヤーはパラシュート制作のために使っているので、左手の方から発射する。
狙いはネウロイだ。
俺だけ地獄に落ちてたまるか。
「てめえもっ!!こい!!!」
・・・・・・・・・・・・・
「ん・・・・・。」
ネウロイを道づれにした場面から引き戻される。
目を開けると見慣れた部屋が目に入ってくる。
スレーヴⅠを自動操縦にしておいて、そのまま横になって眠ってしまっていたようだ。
なんとも後味が悪い夢だ。
とんでもないものを見せてくれる。
どうせなら最愛の女性との逢瀬のシーンでも見せてくれれいいのに。
ストライク・ウィッチ―ズの面々から連絡を受けて、ライーサとのデートからの帰り道。
至福のひと時を終えて、帰投する。
ちゃぶ台の上に乗っかっているせんべいを取り、口に持っていき、ぼりぼりとかみ砕いていく。
食べなれた醤油味の米の風味が口いっぱいに広がる。
(戦いが終わる、か。)
ライーサが言っていたこともあながち間違いじゃない。
彼女たちと一緒に戦って、こっそり一人でスレーヴⅠにのって敵の本拠地を叩いている。
敵の数はずいぶん減ったような気もするし、戦線も上にかなり押し上げられた気もする。
戦いが終わり、彼女たちもそれぞれの場所に帰っていくのだろう。
随分多くのウィッチ達と知り合ったものだ。
写真は好きじゃないが、無理やりせがまれて取らされたものを取り出し、見ていく。
戦場での凛々しさがどこにも感じられない、年齢相応の少女たちがそこには笑顔で写っていた。
写真の真ん中に座らされて、両脇から頬を引っ張られて変な顔にされているのもある。
一枚、一枚見ていき振り返る。
一匹狼気取りの弱者が、よくもまあここまで来たものだ。
裏社会で賞金首たちから恨みを買い、命を狙われるようになった時でさえ一人で戦い続けていた。
その、自分が、だ。
大切なものがあると、失ったときに感じる悲しみが大きい。
だから作らないように、持たないようにしていたのに、そう切り捨てるには自分の中で彼女たちの存在は大きくなりすぎた。
自嘲気味に笑う。
戦いが終わったら、どこかにひっそりと雲隠れするのもいいかもしれない。
ゆっくりと思索にふけるのも一案だ。
決して今までの女性関係を清算するのが怖いというわけではない。
決して。
女性の執念を甘く見ていたと、のちに後悔することになる。
・・・・・・・・・・・・
時はボバ・フェットが連絡を受けて基地に戻る途中のこと。
基地の食堂には現在複数の人物が集まっていた。
微笑みを浮かべながらも凄みを感じさせる形相のミーナ。
目を閉じて、何かを考えている坂本こと、もっさん。
腕を組みながら足をトントンと鳴らしているバルクホルン。
少し離れた場所にいる、数人のほかのウィッチ達。
ただならぬ三人の様子に狼狽している。
自身の親友にエイラが聴く。
「なァ、何かあったのカ?」
自分の首につけられているペンダントをいじりながらんー、と考えるそぶりを見せるサーニャ。
「さあ。十中八九あの人のことだと思うけど。」
その答えを聴いて、あきれたような、納得したような顔をするエイラ。
心当たりがあるどころの話ではなかった。
何か胸騒ぎがする。タロットカードを一枚引いてみる。
出たカードは恋人。
思わず顔を赤らめる。
サーニャにばれないように素早くしまうエイラ。
「どうしたの?」
挙動不審のエイラにそう尋ねるサーニャ。
あわててごまかすエイラ。
「な、なんでもないゾ!!・・・・うん。」
あのバカは何をやっているのだろう。
早く帰ってこい、スケこまし。
と男の帰りを待つ。
・・・・・・・・・・
「で、なんだって?」
刀をぱちん、ぱちんと抜き差ししてもてあそびながらそう己の知己に問いかける坂本こともっさん。いつもの凛とした雰囲気を残したまま苛立った様子でそう聞く。
そんな自分の戦友に告げるミーナ。
「帰ってくるそうよ。ええ。本当に、あの人は。」
持っているカップがみしみしと音を立てて悲鳴を挙げる。
ひびが軽く入り、軋む。
今にも割れそうだ。
その胸中をいったいどれだけの激昂が支配しているのだろうか。
怪力の魔法を展開し、持っていたお菓子を文字通りこなごなにするバルクホルン。
「宮藤がいるというのに・・・・。あいつめ。」
隠しているつもりだろうが、はたから見たらバレバレの彼の思い。
宮藤の方も彼にべったりだ。
あれで付き合っていないとは一体どういうことなのかわかりかねるほどに。
同じ女性としては理解に苦しむ。意味が分からないといった感じだ。
「よく宮藤のやつは平気だな。嫉妬したりしないのか?」
「彼女に聴いてみたら『えっ?だって彼の一番で特別なのは私ですし。確かにほかの女の子と仲が良すぎると思いますけど、最後の最後には私のところまで甘えに来ますから。』、だと。」
「コーヒーに砂糖は入れていないはずなんだけど。」
ごちそうさま、といった様子でブラックコーヒーのお代わりを飲むミーナ。
同じ基地に、同僚に女性がいるのにそれを放って他の人のところまで行くとはどういうことなのか。
それが、ここにいるみんなの気持ちだった。
「ああいった男だと承知してはいるさ。ああ、だけどな、納得はできんな。」
「全くね。」
しん、と静まる。
食堂で聞こえるのは、換気扇のファンが駆動している音だけだった。
すると、そこに入ってくる別の人物。
金髪のショートカットに短パンの軍服の少女。エーリカがやってきた。
異様な光景に驚きながらもミーナたちのテーブルまでやってくる。
「あれー?どうしたの?もうこんな時間だよ?」
いつもは早めに寝て、早起きする習慣がある三人がまだ起きていることに疑問をこぼす。
そんな質問をはぐらかして、言い訳をする。
「いや、ちょっと目が覚めてね。」
コーヒーをズズ、と飲みながらそういうミーナ。
彼女は決して夜型というほど夜更かしするような人物でもないのに。
話をそらすためにもっさんがエーリカに食堂まで来た理由を尋ねる。
「そういうエーリカこそどうした?何か夜食でもつまみに来たか?」
「違うよ。私はちょっとずぼらな方だけど体型管理はしっかりしているんだからね。」
ちょっと?とエーリカの主張に疑問を覚える同室のバルクホルン。
あのごみ部屋を作るような人間のだらしなさがちょっとで済まされるのだろうか。
「いやー。まあ、何というか、ね。」
言いにくそうに後頭部をぽりぽりと搔きながらそういう。
はて、とそんなエーリカの姿に違和感を感じる三人。
ちょっと離れたところにいるほかのウィッチ達もどういうことだろう、と首を傾げている。
すると、彼女が右手に何か白い紙のようなものを持っていることに気が付くウィッチ達。
しまった、という顔で紙をポケットにしまい隠すエーリカ。
怪しい。
そう思った三人が椅子から立ち上がってエーリカの方に向かう。
じりじりとにじり寄ってくる三人から距離を取って離れるエーリカ。
「ちょっとまった。これはいかんでしょ。ねえ?」
そういうと、三人がニッコリと笑う。
その笑みにつられて引きつった笑顔を向けるエーリカ。
「確保だな。」
「ああ。」
「ええ。」
もっさんの意見に賛同し、三人で紙を奪い取る。
必死に抵抗するも、数の暴力には勝てずに屈するエーリカ。
「ちょちょちょちょちょちょ・・・・・」
顔を赤くして何かとてつもなく焦っている。
そんな様子を彼女を見て、ますます怪しい。有罪、と判決を言い渡す三人。
紙を奪い取ったもっさんが中身を広げる。
何の変哲もないただの紙切れだ。
裏に何か書いてある。
それを最初の文から目を通して読み始める。
読み終えたもっさんはふっ、と何かを悟ったような顔になり、
紙をくしゃくしゃに丸めた。
「あーーっ!!何やってんの!!」、と叫んで抗議するエーリカ。
もっさんの様子に並々ならぬものを感じる残りの二人。
ハラハラしながらその光景を見守るエイラ。
ペンダントを手でいじりながら自分の世界に完全に入っているサーニャ。
「何が書いてあったんだ?」
「デートのお誘いだ。一体どういう神経をしているんだあいつは・・・!!」
丸めた紙を空中に放り投げ、刀で細切れに切り刻むもっさん。
それをとがめるエーリカ。
「ちょっと!それはやりすぎじゃない?!」
「あいつは私にあんなことを言っておきながら、舌の根が乾かぬうちにこんなことをほかの女に行っていたとは・・・。さすがに怒るぞ。私も。」
ぷんぷんと、いつもは理知的な彼女が怒る。
隣にいるミーナとバルクホルンも機嫌が悪そうだ。
「とにかく!!お誘いを受けたのは私なんだから二人っきりにさせてよね!!邪魔はなし!!」
「そうはいっても正直な・・・。」
彼女たちとしては、エーリカの望むようにさせてあげたい。
しかし、気になっている相手と二人っきりでデートに行くなど、嫌な気持ちにもなる。
心にもやがかかる。
「皆だっていっつもおでかけしているじゃん!いーじゃん!たまにはさ!!」
「あいつは神出鬼没で、日を跨いだら一夜で別の大陸に行くほどふらふらしているから言うほど私たちも同じ時間を過ごしてはいないぞ。首輪でもつけるか?」
「あら、それはいいアイディアね。」
冗談とも、本気ともわからない雰囲気でそんなやり取りをしている。
お仕置きをかねて、そろそろ彼に根を下ろしてもらう計画だ。
質問攻めから抜けだして、キッチンに向かうエーリカ。
何かをごそごそと用意している。
それをもっさんに聴くバルクホルン。
「あいつは何をやっているんだ?」
「大方、帰ってくるやつのためにお茶の一杯でも入れてやろうとしているのだろう。
・・・・・・さすがにお茶は入れられるよな?」
割とひどいことを言ってけなす。
普段が普段なので、あまりそういった面が信用できないといった感じだ。
からかわれながらもなんとかぎこちなくお茶を入れていくエーリカ。
どうやらお茶をいれることはできるらしい。
できたーっと嬉しそうにはしゃぐエーリカ。
それをほほえましく見守る三人。
すると、そこへまた新しく闖入者がやってきた。
マスクをかぶり、アーマーを着こんでいる男。
件の人物がやってきた。
「ただいまー。これ、おみやげ。」
そういってテーブルの上に、有名なお菓子屋のスイーツの詰め合わせを置く。
とてもおいしそうだ。
「ただいま。これは?」
「みんなこういうの食べてみたいって言ってでしょ?だから買ってきたんだけど・・。」
「そうか。ありがとう。」
袋をばらして、中のお菓子を取り出す。
そこへエーリカがお盆にお茶を入れて彼のもとへ持ってくる。
「おっ、エーリカ。どうした?」
「あっ、あのさ・・・。これ。」
そういって彼が座っているテーブルの上にお茶が入ったカップを置く。
緑入りの翡翠の色合いでとても健康そうな緑茶だ。
「よかったら飲んでみてほしいなーって・・・・。」
お盆を後ろ手に持ち、もじもじと身をよじる。
まさか、いつも飄々としていてこういった恋愛ごとに関心がないと思っていた彼女がここまで積極的に動くとは。
その姿に危機感を覚えるウィッチ達。
最近は彼の周りに女性が近寄りすぎているような気が・・・・・。
マスクを外して喜びながらそれを飲むボバ。
「ありがとう。いただきまーす。」
口をつけてズズズ、と飲む。
苦みのある茶葉の香りが鼻を突き抜ける。
近くに置いてあったクッキーを口に入れてぼりぼりと噛む。
甘いものに苦いものの組み合わせは何でこんなにもおいしいのか、永遠の謎だな、とボバは感じた。
「うまいぞ。エーリカ。」
「ほんとっ!?えへへへ・・・・・」
ほめられて気を良くする。
顔を見合わせる三人と、ポカンと口を大きく開けて信じられないものを見たという表情のエイラと、座りながら眠っているサーニャ。
これは、もしや。
(((出遅れている・・?!)))
ただでさえ、宮藤という大切な仲間であり、一番の強敵が立ちはだかっているというのに、エーリカまで家事万能、料理得意になってしまったらそれこそ女として立つ瀬がなくなる。
まずい、それだけは女として負けたような気がする。
がたっ、がたたっとサーニャとエイラ以外のウィッチが厨房に向かう。
もっさんは腕まくりをし、ミーナはエプロンをつけ、バルクホルンは頭にナプキンを三角巾のように巻いている。
その彼女たちの姿に圧倒される彼。
何かあったのか。
彼がそう思うほどに。
そう考えながらお茶をすすっていると、いつの間にか隣に座っていたエーリカがニコニコ顔で彼のほうをじっと見つめている。
見られて落ち着かない様子で飲み続ける。
気にしないようにしていても、どうにも居心地が悪く、彼女に尋ねる。
「・・・・・どうしたの?」
「見ているだけだから気にしないで。」
「楽しい?」
「うん。」
そうか、と一言だけ言ってまたお茶を飲み始める。
普段厨房に立つことのない、というか上官命令で立つことが禁じられている彼女がお茶を汲めるようになったのは、必死に努力を積み重ねたからに他ならない。
めんどくさい、いやだ、やる気が出ない。
そういった言い訳が吹き飛ぶほどに、女としての意地を見せていると言える。
彼女の妹が、今のエーリカを見たら「ドッペルゲンガー?」と言うだろう。
すると、ボバが何かを思い出したように懐からある物を取り出す。
それを彼女の方に差し出す。
「これは?」
「ああ。ほら、前あげたあの赤いかんざし。そろそろボロボロだろ?だから新しいのがいるんじゃないかと思って注文しておいた、きっとエーリカの綺麗なブロンドに合うと思う。」
そういって彼女に向けられる、日本の漆塗りの漆器を思わせる、つややかな色の黒のかんざし。
それを震える指先で触り、受け取るエーリカ。
「わざわざ私のために・・・・?」
「ああ。本当は二人っきりで渡したかったんだけど、早くあげたかったから。」
ぎゅっと胸に抱えるように両手で持つ。
「ねえ、つけてくれない?」
「いいけど・・・・人の髪にかんざしをつけたことなんてあまりないから下手かもしれないぞ?」
「いいから。」
彼女にせがまれ、たどたどしい手つきでエーリカの髪につける。
しゃらん、とかんざしについている小さな鈴が鳴る。
「似合っているぞ。」
「本当?うれしい・・・・・。」
気に入ってもらえてホッとするボバ。
お茶をすべて飲み干して椅子から立ち上がる。
エーリカの手をとりとある提案をする。
「二人っきりで月を眺めないか?」
まさかのお誘いに息が止まりそうになるエーリカ。
千載一遇のチャンスと首を縦に激しく振る。
「いいスポットがあるんだ。じゃあ、行こうか。・・・・・ああ、外は寒いから俺のコート貸そうか?」
「うん、お願い。」
手をつなぎながら食堂を後にする二人。
残されたのは、それに気が付かずに厨房でいそしむ三人と、ずっと固まっているエイラ。
彼の気配を感じて目を覚ましたサーニャだった。
「何があったの?」
「なんでもない・・・。・・・ズルイゾ・・・・」
ライーサとの過去について。
宮藤とは別のある意味心からの付き合いをしている二人。
ぎりぎりで踏みとどまっている様子。
しかし、ライーサの方は・・・・。
エーリカの変化
もうぐーたら、ずぼら、汚部屋の主とは呼ばせないという目標を掲げて成長中。
もともと才能の塊だったので料理もめきめき上手くなっているとか。
つけてもらったかんざしをにやけ面で眺めながら一日を過ごしこともしばしば。
ついに自分の女性関係のやばさを自覚するボバ君。
かれの運命は。
次回「賞金稼ぎは現状に絶句する。」
あれ?これ死ぬじゃね?(すっとぼけ)
KEY(ドM)