ボバ・フェット(偽)はウィッチとともに空を飛ぶ   作:KeI77777

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アンケートへの協力ありがとうございました。
なんと13人中、13人とも痴情のもつれ路線がいいという結果になりましたので、路線は痴情のもつれ系、つまりあーだこーだウィッチ達と接する方法に四苦八苦するのをメインに据えることにしました
ボバ君にはハードモードで行ってもらいましょう。

痴情のもつれ編を書くにあたって必要な過去の出来事も時々挟み込みます。

では、感想返し
Qシャーリーとのエピソードも期待ですがブレイブウィッチーズとの話も魅力的ですよね!

-追記-
モチロン ブレイブではグンドュラ推しです!!

Aブレイブ・ウィッチーズも見てみたらみんなかわいいんですよねえ。
確かにグンドュラはキャリアウーマンという感じで、でも優しそうでもあるのがいいですよね。
しかも、彼女はカールストラントでバルクホルンとエーリカよりも先にネウロイ250機撃墜を果たした人物ですからね。

Qよくあるラノベ主人公みたいなオリキャラじゃなくて、こう、なんと言うか、うまく言えないんですが(大人の余裕)みたいな物が出ていてかっこよかったです。これからも更新を首を長くして待ってます。

A実はスター・ウォーズとストライク・ウィッチーズのリサーチをしながら書いており、オリ主がとにかく人間臭くなるようにどういった性格かも詳しく設定してあります。
このお話の主人公は駄目なところもあるけれど、憧れの人物のマネをしながら憎からず思っているウィッチ達を守るために徹底して戦います。
大人の余裕に見えるのも内心自分の弱さを認めながら、でも彼女たちに対してはなるべく強がって、原作のボバのようにふるまっているからです。この世界で生きるためになかなかハードな人生を送ってきたのが大きな原因です。


今回もアンケートがあります。
11月18日までです。詳しくはあとがきで。

KEY(ドM)


賞金稼ぎは彼女に背中を押される。

そう遠くない、過去のお話し。

 

 

 

ウィッチ達と初めて会ったのは、もうずっと昔のこと。

当時は、501のストライク・ウィッチーズがまだなかったころ。

ネウロイの出現によって国が公式に賞金首の政策を打ち出すようになってから。

 

ストライク・ウィッチーズと出会う前に、あるウィッチ達と出会ったのがその始まりだった。

 

 

カールスラントの試験小隊“マウス”。

対人用ではなく、ネウロイとの戦闘目的で実験的に組織された5人からなるウィッチの小隊だった。

 

エーリカやバルクホルンたちのようなスーパーエースではなく、平均的能力のウィッチでネウロイとどう戦えばいいのかを模索するために軍部が組織した小隊だとのちに聴いた。

 

今考えると、平均的な能力のウィッチだった彼女たちが選ばれたのは、失っても大して痛くないと国が判断していたからだろう。

 

当時の俺は、あちこち自由に飛び回るときにネウロイが邪魔だと感じて一人で殲滅しており、一時的に彼女たちとともに行動を共にしていた。

 

単に見た目麗しい彼女たちに対する多少の下心と、金のためだ。

軍の上層部にかけあって、現金を報酬としてもらっていた。

軍部のスキャンダルなど調べればいくらでも出る。

 

それを新聞社に対してリーク。

一斉にメディアから集中砲火を浴びて失脚するやつもいた。

 

 

宮藤に会うまではこんなことばかりしていた。

まるで改心する前のリンカーンみたいだ。

彼のような偉大さは持ち合わせてもいないが。

 

ある日ネウロイを追って空を飛んでいた時のこと。

 

シールドを展開する前にスレーブⅠを攻撃されて、破損。

しかたなくジェットパックをしようして追撃。

 

海に出た俺は、周りにウィッチ達がいたことに気が付かず、怪物が死ぬまでリストミサイルと、ブラスターを連射。

沈黙を確認した後、それを呆然と眺めていたウィッチ達に囲まれて、任意同行という名の強制連行を行われる。

 

しかし、何で彼女たちはパンツ丸出しなんだと思わずツッコミたくなるような恰好をしていた。

 

痴女。

 

それが、俺が感じた第一印象だった。

 

この時は既にもっさんとの初めてのドッグファイトを行っていたので、彼女のような仲間とも邪推したものだ。

 

もし、あの時スレーブⅠを使えていれば、俺は彼女達から逃げきっていて、宮藤たちとも会うことはなく、一生孤独に生き続けることになっていただろう。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

カールスラント。

現代で言う、ヨーロッパに存在する国。

軍本部の最上階、つまり、元帥の部屋に二人の男がいた。

 

一人は椅子に座って男と対面しているこの部屋の主。

つまり、実質的なカールストラントの軍の統帥権を担う軍の支配者。

元帥。

 

もう一人は、来客者用のソファーでくつろぎ、だらしない格好で持参した紅茶とティーカップを使って呑気にお茶をすする男。

ボバ・フェット。

 

世界最強の賞金稼ぎである。

 

おおよそ相容れないであろう経歴の人物二人がこうして向き合って対談している理由。

それはたった一つの理由だった。

 

ネウロイ。

 

それをウィッチ以外で撃破した唯一の男性。

今でも元帥は信じることができなかった。

 

目の前にいる、普通の男がそんなことを成し遂げたなどと。

 

男が口を開く。

「俺がこうしてここに来たのは、茶をしばきにきたわけじゃあない。」

「わかっている。報酬の件だろう?」

 

ネウロイの撃墜数に応じた報酬金。

つまり成果報酬。

 

小型なら一体で1000万円。

中型なら数千万円。

大型ならそれ以上、つまり1億円以上である。

 

軍事費を考えれば、確実に敵を倒してくれる目の前の男にこれだけ払うのは安上がりだと言える。

とはいえ、たかだか賞金稼ぎごときに軍がここまで下手に出る必要などどこにもない、と主張する軍の将官もいる。

 

 

そういった発言がメディアに取り上げられて、彼の耳に届くたびに、元帥は気が気でなかった。

良好な協力関係を築き上げて、ウィッチでハニートラップをしかけ、自国に引き込む。

こういった動きがどの国でも水面下で行われるようになった。

 

加齢によって魔力が減退しようとしている時期の、大体20代程度のウィッチをあてがい、

彼女たちへの退職金とともに結婚させようと試みたが、うまくいかなかった。

 

それどころか彼の下に行こうと命令違反すれすれで行動を起こそうとしているウィッチ達がいるという。

その報告を聴いた時には思わず彼は思わず頭を抱えた。

 

あのゲルトルート・バルクホルン、エーリカ・ハルトマン、そして最近ではあのグンドュラ・ラルでさえ思わせぶりな態度をとっているというではないか。

 

自国のトップのウィッチ達がそろって同じ男を。

 

悪夢だ。

 

この男をなんとしても自国に引き入れなければ、

戦歴は彼女たちと並んで申し分ない。独自の勲章を作って贈って英雄に仕立て上げてしまおう。

そのあとは広告塔として活動してもらう。

これが彼の考えていった穏便かつ、最適なプランであった。

 

そう、彼、だけにとっては。

 

「いいや、それはもう大した問題じゃない。もっと重要なことだ。」

「なんだ?」

 

バカな、金にがめつかったこの男が報酬の話に食いつかないだと?

ありえん。と元帥が感じたのも無理はない。

 

 

 

「―――――――――お宅の国のあのウィッチ達を、引退してもいいと認めろ。」

 

その言葉を受けて思わず立ち上がってしまう。

今この男はなんていった?

 

あのウィッチ達?

それは。

 

 

「貴様・・・・・!自分が何を言っているのかわかっておるのか?!!」

貴重なウイッチ、それも自国の最高戦力の実力を持つウィッチ達をまとめて引退させろという。

気がふれたのか?この男は。

そんなことを到底許せるはずもない。

魔力を失って退役しているならともかく、まだまだ戦力として使えるウィッチ達を、だと。

 

拳を握り締めて眼前で不敵な笑みを浮かべている男をにらみつける。

 

「馬鹿者が!!いくら戦線が押し上げられたといっても、まだまだネウロイとの戦争が続いておるのだぞ!!そんなこと!!」

 

 

 

 

「だから、ネウロイを壊滅させてやるって言ってるんだよ。欧州圏内のな。」

 

 

息が止まる。

ネウロイを全滅させる?

バカな、ありえない、不可能だ。

ずっとネウロイと戦ってきたから断言できる。

やつらは人間並みに厄介な相手だ。その数の多さもさることながら一体一体がシールドを持ち、コアをつぶさない限り、そして巣を破壊しないかぎりはうようよと湧いてくる。

 

 

一体、どうやってそんなことを?

 

その時、通信機に連絡が鳴る。

 

「ようやく気が付いたか。案外あんたの部下も動きが遅いもんだな。」

 

部下からの連絡だ。緊急用の回線で常時ではまず使われることはない。

通話ボタンを押し、通信を開始する。

 

「どうした?緊急用の回線だぞ。」

『た、大変です!!ネ、ネウロイの巣が・・・』

 

 

 

『ネウロイの巣が、一夜にして半壊しているとの報告が!!』

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

交渉の基本。

それは、相手にとってこいつと取引する以外の選択肢はありえないという強い証拠を見せつけること。

今回は、彼の部下から証言してもらったので俺が自分で言うよりも信頼性はぐんと上がった。

これでこちらが主導権を握った。

 

部下から連絡を受けて、声を震わせながらこちらを見てくる元帥。

 

「まさか、貴様が・・・・?」

「イエス、だな。」

 

余裕ぶって紅茶を飲む。

あー、ライーサからもらった紅茶はうまいなー。

彼女のニコニコ顔が目に浮かぶ。

 

俺がやったこと。

それは、スレーブⅠを時速1000キロで夜中ぶっ通し飛ばし続けて、欧州圏内を効率よく飛び回りネウロイを殺し続けただけ。

 

使ったのは切り札の一つ、プルトン魚雷だ。

これは、もとはスターウォーズのエピソード6にてスターデストロイヤーのシールドジェネレーターを破壊するために反乱軍の戦闘機が使った兵器だ。

小さな小惑星ぐらいなら木っ端みじんどころか消滅させられる威力だ。

今回それを惜しみなく使った。

 

俺がもらったボバの装備の特典は、自動で補充される。

だから20年間も彼の装備を使って戦い続けられたわけだ。

 

ネウロイの体は硬い。

シールドを持っているうえに、体は外殻に覆われており、コアを責めようにもまずこの二つの壁を突破する必要がある。

 

それに対する有効手段だったのだ。

 

今回戦ったのは宮藤から聴いた穏健派と呼ばれる人型のネウロイではなく、明確にこちらに敵意があったやつらだったからな。

 

しかし、油断はできない。

 

ネウロイの進化速度はすさまじい。

人類の持つ兵器やほかの生物を真似てどんどん強くなっている。

 

スレーブⅠの技術もいずれ模倣されて通用しなくなるかもしれない。

 

だから、決着をつけるのならば短期決戦だ。

 

 

やつらの住処は何年も戦っていてすでに把握していた。

 

今までは手を出しあぐねていたが、今回はそうも言ってられなくなった。

 

彼女たちにたいして責任をとる。

 

男として。

そのためにもやつらと、国のお偉いさんたちには一肌脱いでもらおう。

 

圧倒的優位に立ちながら話を続ける。

 

「今あんたが聴いた通りさ。俺が本気を出せば、ネウロイ達に奪われた箇所の戦線開放も夢じゃない。」

 

すがるような目でこちらを見てくるおっさん。

戦争を終わらせたいって気持ちをひしひしと感じる。

政治的な意図をもってこちらを抱き込もうとしてくるが、国のトップっていうのは基本こんな人格者ばかりだな。

 

リスク・リターンの計算をとるのは容易いだろう。

現に俺はデモンストレーションで実証して見せた。

 

まあ、もう何度も死ぬ気でネウロイの巣に突っ込まなけらばならなくなると考えると多少億劫ではあるが。

 

 

脳裏に宮藤の顔が浮かぶ。

プロポーズして、自分の気持ちを率直に述べたところいい笑顔でむこうずねを蹴られて、

治癒魔法をかけられた。

 

散々話し合って、でた結論がこれだ。

 

もう、開き直って、全部責任とる。

ハーレムとか柄じゃないと思ったけども、宮藤が正妻であることは間違ないけども、

己の気持ちに嘘はつけなかった。

 

その第一歩として、ネウロイの殲滅と、ウィッチ達が所属している国の軍上層部への交渉。

幸い、遊んで暮らせるほどの金はとっくにあるし、もう働かなくても適当に資産運用してりゃいい。ネウロイを倒して戦線がすべて解放されれば今まで人が立ち入ることができなかった地域も解放されて、二束三文で土地を買い、人が移住してくる前に住居を立てて賃貸で貸し付ける狙いだ。土地ころがしと言ったところだ。

 

 

 

それに、ネウロイどもを倒した後で、もっと手強い相手が待っている。

 

内心ビビりまくりだが、気持ちを切り替えて臨む。

 

おっさんが断るはずもなく、俺は取引を終えた。

 

 

 

 

 

この交渉をあと何回もすることになったが気力で乗り切った。

ウィッチの数が多すぎる・・・。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

カールストラントのウィッチ達に連行されて、連れてこられたのは空軍基地。

なるほど、こいつらがウィッチか、と他人事のように考えていると後ろでこちらに銃を向けている茶髪のきりっとした顔つきのウィッチに足を蹴られる。

 

「さっさと前に進め。」

きつい性格だな、嫁にもらう男はきっと大変だろう。

そんな感想を抱いていると、基地の中の、営倉へとぶち込まれる。

 

ネウロイと独りで戦っていた不審人物。

それも、見たこともない武装を身にまとい、空を飛んで入れば警戒されないわけもない、か。

装備を没収されて、入れられた。

 

ご丁寧に鍵まで厳重にかけてくれるとは。

中は懲罰房のような場所だった。

 

本棚とイスとテーブルがあるが、座り心地は石の上に乗っかったほうがましというレベルの劣悪ぶりだったので壁にもたれて立ち寝する。

 

 

しばらく楽しんだら、脱獄するか。

 

つかの間の囚人生活を送ることにした。

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

「ボバさん、大丈夫かなぁ・・・。」

色々と「話し合い」した結果、私に手を出してくれる・・・かも、ということになった。

やっぱりこの幼児体型がいけないのだろうか。

 

隣にいる、リネットちゃんの体つきをみる。

はっきり言ってかなりスタイルがいい。

思わず羨むほどには。

 

後ろから彼女の胸をつかむ。

「私にも少しちょーだい!!リネットちゃん!!」

「わっわわわわわわ?!どうしたの?!」

 

慌てて振りほどこうとしてくるが、しっかりと背中に張り付いて離れない。

こちらは死活問題なのだ。

もし彼が大きいのが好きだったら何としても大きくしなければ。

 

だから、これはどうやったら胸が大きくなるかを調べるための触診であって、別に下心はない。

いやらしい意図はない。

というか、彼が悪いんだ。こんなに今までもやもやさせておきながら、急に「結婚しようなんて」。全くあの人は。あの人は・・・・。

 

 

「どうしたの?芳佳ちゃん?」

「えっ、いっ、いや。何でもないよ・・・。」

 

彼からとあることを提案されたときの複雑な気持ちを思い出す。

私にプロポーズしてくれたことは嬉しいが、そのあとの言葉を聴いて、思わず脛を蹴ってしまった。

やりすぎたかな、と思ってすぐに治癒魔法をかけてあげた。

 

 

………久しぶりの膝枕は恥ずかしくて嬉しかったけども。

 

「どうしたの?顔つきが緩んでいるよ?」

リネットちゃんにそう指摘されてハッとなり、思わず顔を抑える。

表情を取り繕うとしてもだらしなく顔がにやけてしまう。

 

 

彼が、彼が私のことを特別だって・・・

 

「えへへ・・・。へへ・・・・。」

そんな私の姿に若干引きつつも、質問してくる。

「ところでボバさんは?」

「あの人はね・・・。」

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

そんなこんなでやってきたこの場所。

軍部のトップ相手に取引を持ち掛けた後、彼女達に会いに来た。

 

エーリカや、ハンナとも旧交があった人物。

パッと見は、胸がついたイケメンにも見える金髪褐色肌のショートヘアーのウィッチ。

長身でかなり男前にも見える。

女なのに女好きの享楽主義者。

 

ヴァルトルート・クルピンスキー

 

 

歴戦のエースであり、100体以上のネウロイを撃墜している。

 

彼女もカールストラントの人間だ。

 

それなりに付き合いは長い。

ああ、それなりに。

 

一緒にレストランに入ったというのに、何を考えているのかわからない表情だ。

ヴァルトルートはウェイターの女の子を目で追っかけているし、いつのまに用意したのかすでに酒をあおっている。

 

水が入ったグラスを飲みながらまずは軽い世間話をする。

「よう。元気だった?エーリカとバルクホルンは元気だったぞ。」

そういうと彼女の表情が少しほころぶ。

まずは、つかみは良し。このまま少しずつ優位に立つために話を進める。

 

「そうか。あの二人がねぇ。ところで前言っていたけど、エーリカがずぼらから真面目になりかけているって本当かい?」

自分のだらしなさをエーリカに移した本人がそういう。

彼女から昔のエーリカのことをいろいろ聞いたが、今の姿には似ても似つかないと聞いてびっくりした。

最近は料理もうまくなってきていて、掃除もこまめにやっているようだが。

 

グラスを振って中の氷をカラカラと鳴らしながら答える。

「ああ、もうそれはそれは。今のエーリカをヴァルトルートが見たら嘘だと思うよ。」

「そんなにかぁ・・・。」

 

ちょっと悪かったと思っていたのか気まずそうにそういう。

しかし、酒好き、女好きのヴァルトルートのことだ。反省はしても改善はしないだろう。

いつものことなので気にしない。

 

「ヴァルトルートも二人と知り合いとは奇妙な縁だよな。」

「あの二人だけじゃないさ。マルセイユもそうだよ。」

 

胸をはってそう誇らしげに述べる。

まあ、世界でもトップクラスに入るであろうウィッチ達だもんな、あの三人。

ドッグファイトすると本当に手強かった。

頼もしくも、怖くもある。

 

「それで、えーと。何というか。」

歯切れが悪い言葉しか出ない。

この言葉を言うために彼女に会いに来たのだ。

 

なぜ最初に彼女に会いに来たのか。

それは、彼女はいつも冷静な方だからだ。

別に他のブレイブの娘達や、他のウィッチ達がそうではないという意味ではない。

 

この娘さえ味方につければあとは何とかできると思ってきたのだ。

 

 

もし、ミスれば俺は死ぬかもしれない。

 

相関図を思い出す。

 

ヴァルトルートは実は自分が女らしくないんじゃないのかなー、っていうコンプレックスを少し持っていた。そこへ俺がかわいいだの、きれいだの歯の浮くような言葉を投げかけて、彼女と一緒にかわいい娘探しに付き合ったり、一晩中彼女の酒に付き合ったりしたのが原因だ。

 

はっきり言って、最初は彼女に嫌われていたと思う。

 

まあ、ウィッチ達以外で、唯一男で単独飛行しているのは俺ぐらいだったから色物扱いだったのだろう。

 

しかし、エーリカや、バルクホルンの知り合いだと知るや否やなぜが急に仲良くなった。

自分の気に入っている相手の仲良しは、自分の仲良し、と言ったところか。

彼女のことを何を考えているのかわからない男女と基地の男が陰口を叩いていて、それを裏でこっそりしめたが、彼女自身は自分の命さえ顧みずに仲間のために戦えるタフな女性だ。

 

そこがいいのだが、知り合いの男に言っても理解されない。

 

見る目がない奴らだ。

 

 

話がそれたが、そんな彼女だから真っ先に言っておきたいことがあった。

 

それを遂に言う。

 

「前から話していた宮藤と結婚することにした。」

「そうか。」

 

あれ、意外と反応が薄いな。

相関図のレポートによれば、少なからず俺のことを思っていてくれていると出たのに。

間違いだったのだろうか。

結構落ち込む。

 

「じゃあ、それで・・・!?」

 

俺は信じられない光景を目にした。

 

 

 

目の前の彼女が急にワイン瓶を一気飲みし始めたのだ。

 

しかも結構度数が強い奴を、だ。

 

いつも飄々としている彼女からは信じられない姿に少し恐ろしさを感じながらも、おそるおそる尋ねる。

 

 

「ヴァ、ヴァルトルート・・・?」

「気にしてないぞ。全然気にしてない。ああそうだ。気にしていないよ。ボバ。」

次から次に酒をあおる。

その尋常じゃない様子に戸惑う。

もしかして・・・・俺のせいなのか?

 

いくらなんでもいつもの彼女と違いすぎる。

とりあえず、彼女の腕をつかんで店を出た。

 

・・・・・・・・・

 

彼女が持っていた酒瓶を取り上げて、スレーブⅠの中に入れて横にさせる。

持っていた上着を畳んで枕代わりにして頭を横にした。

 

酒の飲みすぎは体に悪いというのに、彼女は休肝日を設けないこともしばしばあるほどだ。

傍から見ているとハラハラする。

 

仕方がないので、扶桑皇国に行ったときに知り合いのおばちゃんから教わったおかゆの作り方を実践することにした。

 

なぜか中についている原理不明のコンロと水道を使って料理を始める。

 

米をといで、炊飯器に入れて炊き、ねぎを散らして沸騰させてかるく塩味をつけておいたスープに炊いた米を入れていく。

 

これなら胃にも負担がないので彼女も食べられるだろう。

 

彼女の目の前に水と一緒に出す。

 

「大丈夫か?ヴァルトルート。」

「すまないね。ありがとう。」

 

そういって俺からおかゆと水が入ったグラスを受け取る。

 

水をぐいっとグラスを傾けて飲み、深呼吸する。

 

どうやら幾分か落ち着いたようだ。

その姿にホッとする。

 

「それで、だ。さっきの話の続きを・・・・。」

「聴きたくない。」

 

ぴしゃりと冷たく言われてしまう。

こちらに背を向けて、すねた猫のようにそっぽを向いている。

彼女が普段見せないこういった女としての魅力ある姿を見られてうれしくもあるが、今はそれどころじゃない。

 

こっちは国に喧嘩を売ってきたんだ。

 

後には引けない。

 

彼女の肩をつかんでこちらを向かせる。

 

その目には、悲しみと怒りが同居していた。

 

ああ、やってしまった。

 

女好きで、普段感情を荒げない彼女ならこういったことを話してもきっと大丈夫だろうと鷹をくくった結果がこれか。

 

彼女だって感情があるし、傷つくことは傷つくのだ。

 

そんな当たり前のことを俺は見逃していた。

 

彼女に甘えていたばかりにこんなことに。

 

彼女の両手をがっちりと握る。

 

「ヴァルトルート。君は怒っているだろう。あれだけ思わせぶりな態度をこちらがとっておきながらいきなり他の女と結婚するなどと。はったおしたいだろう、俺の首を絞めてやりたいだろう。だからこれだけは言わせてくれ。」

 

いやだ、と言わんばかりに顔を背ける彼女に進んでいう。

 

 

「俺と結婚してくれ。」

 

「・・・・・・・・は?」

 

めったに見れない彼女の間抜けな顔。

思わず笑いそうになるが、なんとかこらえて真面目な表情を取り繕う。

 

人間、ふざけて言い時と悪い時くらいがあることくらい知っている。

 

「何を言っているんだ?だってボバは・・・。」

 

「ああ、だから、ほしいモノ全部掻っ攫うことにしたよ。」

 

俺が出した答え。

 

それは、ほしいと思っている女性全員を口説いて回ってプロポーズすること。

 

我ながらひどい答えだとも思う。

 

俺は、その他大勢のうちの一人になれ、と彼女達に言っているようなものだからだ。

 

「本気か?いや、正気か?」

 

「ああ。」

 

そう答えて、彼女が向けてくる疑惑の目線に顔を合わせて答える。

 

もう、逃げない。

 

たぶん、痴情のもつれはまた何回も起きるだろうけども。

 

 

それでも、芳佳の一言が俺を駆り立てた。

 

 

『正直、ボバさんのこと見損ないました。それと同時に見直しました。ずっとみんなからアピールされても手をださなかったんですもん。・・・・・・・・・・だから、ちゃんと話あいしてみんなの気持ちをくんであげてくださいね。・・・・・・あ、もう夜のお店に行っちゃだめですよ。これからは、わ、わたしがいるんですから・・・・』

 

多くの人間からは蔑まされるだろう。

 

国民からは批判も出るし、政情的な事情で籍を入れられないウィッチも出てくるだろう。

 

一夫多妻を受け入れてくれないウィッチだって存在するはずだ。

 

それでも、そうしたかった。

 

憧れの人物の真似事から始まった俺の人生だが、多くのモノを得た。

 

「・・・・ははは。」

 

泣きながら笑う彼女。

 

愉快そうに、だけども心の底から楽しそうに笑ってくれた。

 

「馬鹿だな。お前。本当に・・・・。」

 

「知っている。」

 

そんなことを言いながらも機嫌を直してくれたのか、涙をぬぐってこちらを見据えてくる。

 

「そうだな・・・・。じゃあ、勝負しよう。これで賭けよう。」

 

彼女がギャンブルを提案してくる。

取り出したのは女神と悪魔が書かれてるコイン。

 

「女神か、悪魔か。でいこう。」

 

こちらに投げ渡してくる。

 

投げろ、ということか。

 

親指に乗せて、はじく。

 

それは、大きく上まで跳ね上げられて、手の甲の上に乗った。

 

それを上からそっと手を乗せて隠してくる。

 

素早い動きでどちらが出たのかわからなかった。

 

だけどもどちらに賭けるのかはもう決めてある。

 

「どっちだ?」

 

俺が選んだのはもちろん

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「自分で戻るから心配しないでいいよ。」

「そうか。」

 

そういって出口に立つ彼女。

 

先ほどまでの陰鬱さは消え、元の状態に戻ったようだ。

 

「しかし、まさかあのボバがねえ・・・・。」

にやにやとこちらを笑いながら茶化してくる。

芳佳のことか。

 

「ノーコメント。」

「ありゃま、重症なんだね。」

 

目の前にヴァルトルートがいるのにさすがに芳佳の話をする気にはなれない。

 

一体何股になるかはわからないが、それでも責任は取る。

 

こちらに近づいてきた彼女に抱きしめられる。

 

俺より背が高いので、こちらが少し複雑な気持ちになる。

 

 

「今はこれだけでいいよ。・・・・・だけど、あんまり放っておいたら見限っちゃうかもね。」

笑顔でとんでもないことを言う彼女に肝が冷える。

 

ありえそうだから困る。

 

「うそうそ。他のみんなにはまだ伝えておかなくていいの?」

「まずは時間をかけてゆっくりと誠実に向き合おうかと。少し懸念もあるが。」

 

脳裏に浮かぶ、あのウィッチの顔。

 

茶髪にショートカットボブ、ヴァルトルートと同じくらい背が高く、モデル体型の美しいプロポーションの女性。

 

そう、502方面の彼女たちに話すにあたって絶対に向き合わなければならない彼女。

 

「ボバってカールストラントのネウロイ撃墜数トップ3と深いかかわりがあるんだよね。傍から聴くととんでもないね。」

「まったくだ。それじゃあ、必ず連絡入れるよ。」

「離れ離れになって寂しくないかい?」

 

茶化してそういってくるが、それに対して穀然とした態度で返す。

 

「いつもヴァルトルートのことを想っているからな。寂しくないさ。」

「・・・・・・・・・・・・・・。」

 

急に黙り込むヴァルトルート。

その目は、ジト目というか、心底あきれたという感じか。

 

「この、女ったらし。」

「お前もだろう。」

 

あはははは、と言ってお互いに離れる。

 

そうだ、彼女に念を押しておかなければ。

 

「絶対その指輪がばれないようにするんだぞ!!いいな!!ふりとかじゃないからな!!」

「ああ。ボバと一緒にいたらかわいい女の子達と一緒になれるというのに、そんなヘマはしないよ。」

 

しれっとそういう彼女。

こういったところを改める気は全くないらしい。

彼女の女好きと酒好きももう少し控えめなものになってほしいと思う反面、それこそが彼女の魅力であると思うとそのままであったほしいとも思う。

 

 

 

「またね。」

「ああ。必ず。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、ウィッチの統合戦闘航空団は502のブレイブ・ウィッチーズ、503のタイフーン・ウィッチーズ、半壊してしまった504のアルダー・ウィッチーズ、505のミラージュ・ウィッチーズ、506のノーブル・ウィッチーズ、507のサイレントウィッチーズ、508のマイティ・ウィッチーズ、

 

 

そして宮藤、じゃなくて、芳佳のいる501のストライク・ウィッチーズとその数は莫大だ。

 

統合戦闘航空団以外にはハンナのいる統合戦闘飛行隊も存在する。

 

それぞれの統合戦闘航空団には最低でも4人以上のウィッチ達がいる。

 

全員に対して粉をかけたというわけでもないが、改めて数えるとものすごい数だ。

 

 

「俺、死ぬんじゃないか・・・・?」

 

ネウロイとの決着の前に、精神が死にかける。

 

太陽が、まるで俺をあざ笑うかのように輝いているような気がした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

懲罰房に入れられて、ウィッチ達が出ていってヒマになってしまった。

しかし、何でいきなりこんなことになったんだろうか。

 

こんな愉快な経験、なかなかないだろう。

 

そうだ、サーロックに飲み込まれたボバ・フェットごっこしよう。

ここから脱出出来たら俺の勝ちだ。

 

さっそく床に落ちていた針金を拾い上げて、鍵穴をいじくる。

 

 

しかし、意外と複雑な形状をしていてなかなか開錠できない。

手強い相手だ。

 

そんな風に悪戦苦闘していると、声を掛けられる。

 

「あの・・・。」

 

 

 

顔を上げると、パンツ丸出しの女子が目の前に立っていた。

 

その顔には困惑といった感情が浮かんでいる。

 

どうしたのだろうか。

 

「一応喉が渇いていないかなと思ってお水を持ってきたんですけど・・・。」

 

何ということだろうか。

目の前にいるこの娘は怪しさ満点である俺のためにわざわざ水を持ってここまでやってきてくれたのだという。

 

こちらの世界に来てから久しぶりに人にやさしくされたように感じ思わず目元を抑えてしまう。裏社会でこういった娘と会えればな・・・。

 

「わわわ!どうされたのですか!?」

こちらがけがをして痛くて泣いていると勘違いしている。

悪意を知らない、純粋培養といった雰囲気だ。

 

とりあえず涙を拭いて、彼女から水が入ったグラスを受け取って飲み干す。

 

よく冷えていて、のどの渇きが癒えた。

 

「ありがとう。」

「いえ。あの、一つお聞きしてもよろしいでしょうか。」

 

かしこまってそう聞いてくる彼女。

何だろうか。

 

「あなたもネウロイと戦っているのですか?」

まさかの真剣な質問に思わず閉口する。

興味津々、もしかしたら男性のウィッチ?といった期待をしているように見える。

いい加減、あいつらが邪魔だったから、ぶちぎれて戦い始めたとは言えんよな。

 

それも始まりは扶桑皇国の食糧事情が悪化するからそれを改善するためだったなんて。

 

目の前の少女の夢を壊さないように言葉を慎重に選んでを言う。

 

「大切なもの(日本食)を守るためさ。」

「わたし、ウィッチ以外の人で私たちみたいに空を飛んでいる人って始めてみました!!それも男性だなんて!!」

 

はっはっは、と笑ってごまかしておく。

本当のことを言っていないが嘘も言っていない。

 

さすがに節操がないと自覚している俺でも、目の前の善意を袖にするほど腐っては居なかった。

 

キラキラと目を輝かせる彼女の瞳がこちらの罪悪感を呼び起こす。

胸が痛い。

 

・・・・・・・・・・・

 

夢か・・・・・・・。

 

なんとも懐かしい夢を見たものだ。

 

ヴァルトルートと別れて、ストライク・ウィッチーズの基地近くまで俺は帰ってきていた。

 

芳佳に対してきちんと報告しないといけない。

 

しかし、何というか、不安だ。

 

彼女は口ではああいっていたが、本当は重婚とかいやだと思って傷ついてはいないだろうか。

 

左手につけられている、銀色の指輪を見て思う。

 

頭の中をぐるぐるといろいろな考えが飛び回る。

今からでも遅くない、ヴァルトルートと芳佳だけにするんだ、という声もあれば、

何を言っているんだ、ちゃんと全員と向き合うといったじゃないか、と自分で自分を責めてくるような声も聞こえてきた。

 

サーニャに芳佳とはそういう関係じゃないといったばかりなのに、実は芳佳にプロポーズしました、なんて彼女にいったらどうなるのだろうか。

 

しかも、「お前たちとそういう関係になる気はない」などと面と向かって言っておきながらこれから口説こうというのだから。

 

一度こういった思考の袋小路に入ってしまうとどうも止まらない。

 

ウィッチ達の中にも、本当に厳しい子はいる。

 

特にもっさんやミーナのような年長組はそういったところが厳格そうだ。

 

考えるほど胃が痛くなってくるが、買っておいた胃薬を飲んで基地へと向かう。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

「馬鹿ですか?」

 

顔を合わせて開口一番そういわれた。

おかしいな、どんどん彼女の尻に敷かれているような気がする。

ヴァルトルートにもからかわれたし。

 

少し眉が吊り上がって全くもー、という表情でこちらを見てくる芳佳を見つめる。

 

「私は浮気は許しませんが、合意ならいいと思いますよ。」

 

面とむかってそういってくれるだけでもかなり気が和らぐ。

特に心が傷ついていることもないという。

あれだけ話し合って決めたことだが、やはり億尾になってしまう。

 

今の俺の姿を裏社会の人間どもが見たらさぞかし笑うだろう。

 

「というかですね、私を口説いた時のあの甲斐性はどこに行ったんですか。

嘘だったんですか?」

 

「そんなわけないっ!!」

 

自分の気持ちを、他の誰でもない彼女自身に否定されたような気がして思わず怒鳴るように叫んでしまう。

 

んん、落ち着け。彼女の前だ。

かっこつけたいからな。

深呼吸して息を整え冷静になる。

 

ふーっ、と息を吐き、吸って新鮮な空気を肺に送り込む。

 

「なら、私が信じたあなたならきっと大丈夫です。・・・・・・でも、危ないことはしないようにしてくださいね。」

 

ぎゅうっと抱きしめられる。

 

彼女には叶わない。

こうしてこちらの不安をすべて見透かされて諭されてしまった。

 

でも、不思議と悪くない。

宮藤、ではなく芳佳にはいつも助けられている。

 

何があっても彼女がそばいるとなんでもできるような気がしてならない。

 

彼女の瞳を見つめる。

 

目は潤んでおり、頬はほんのりと赤く色づいている。

 

彼女が目をつぶる。

 

それに従うようにこちらも目を同じくつむり、顔を寄せる。

唇と唇が重なる。

 

「芳佳。」

「はい。」

 

膝をついて、彼女の腕をとる。

彼女の左手の薬指に緑色の指輪をそっとはめる。

 

「遅くなったけど、これ。君にきっと似合うと思って。」

 

緑色の意味は「癒し」。

優しい彼女にぴったりだと思って選んだものだ。

それを受け取って涙を流す彼女。

 

「おそい・・・ですよ・・・・。まったく、もう・・・・。」

グスグスと泣きながら指輪を撫でる彼女。

今まで他のどのウィッチにも送ったことがないもの。

 

ついに婚約指輪を送ってしまった。

 

 

胸中に喜びが込み上げてきた。

 

と、ここで終わったのなら平和だったのだろうが。

 

 

 

今まで、芳佳のような小さな子供相手に欲情するわけない、と自分で言い訳してきた。

が、彼女がルッキーニやその他のおこちゃまウィッチのように色恋沙汰をしらない相手だったらこちらも手を出す気にはならなかった。

 

しかし、その最後の理由がとっぱわれてしまった。

 

つまり、

 

 

「シャワー、浴びておきましたから・・・。」

 

だから、ね?と彼女がぼそぼそっと耳元で囁いてきたとき、俺は我慢の限界を迎えた。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「おかしいな・・・・。」

そういってトランシーバーを片手に連絡を取ろうとする一人の女性。

第31統合飛行戦闘団、「ストーム・ウィッチーズ」所属、ライーサ・ベットゲン。

 

彼女は今、とある男性から渡されたトランシーバーを使って連絡を取ろうとしていた。

夜中になったら、こまめに連絡を取ってくれる彼へと。

 

しかし、いつもの時間に掛けてみても、うまくつながらない。

どういうことなのだろうか。

 

(何かあったのかな・・・・。それとも・・・。)

あの花畑での逢瀬を思い出す。

私は彼に対して秘密を共有してください、と頼んだ。

 

もしかしたらそれが重いと思われたのだろうか。

それは、悲しい。

 

(ああ、彼はどうしているのだろう。)

ベッドにぼすん、と倒れて横になる。

そして、彼からもらって、ずっと大切に飾ってあるものを眺める。

 

私があげたティーカップのお返しの湯飲み。

月の意匠をあしらってあるペンダント。

 

どれも私にとっては宝物だ。

 

そして思い返す。

 

彼が言った信じられないような情報。

 

この世界ではない、別の場所から生まれ変わりを果たして転生した人間であること。

 

でも、今重要なのはそこではない。

 

彼が誰にも、あの宮藤という彼の想い人にさえ言っていないことを私だけに行ってくれたのが嬉しいのだ。

これはハンナでさえ知らないことだ。

 

(全く、そう思わせるなんて、一体何人のウィッチを泣かせてきたんだろう。)

彼がそのことを聴いたら、泣かしたんじゃなくて、刺されたんだ、と言うだろう。

彼女にとっては知るよしもない。

 

まさか、ぎりぎりの女性関係を清算するために世界中を飛び回っているなんて。

 

これから彼が、平手打ちを食らわせられても仕方がないことを提案しに来るなんて。

 

その時、トランシーバーから連絡が入る。

 

すぐに態勢を整えて、手に取る。

 

「はい、ライーサです。」

『こんばんは。遅れてごめんね。心配かけた。』

「まったくですよ。もうっ。」

 

先ほどまで彼の悪行について考えていたので、自然と口調が厳しいものになってしまうが、

心情的にはごろごろと床を転がるほど嬉しかった。

 

こうしてちゃんと連絡をくれたのだから、ゆるすけど。

 

尻尾がぱたぱたと横に振れるが手で押さえて動かないようにする。

 

私は、そんな安い女じゃないもん。

 

「今日はどうしたんですか?」

いつも几帳面な彼にしては珍しい。

気になって聴いてみた。

 

『うん。ああ。いや。その。』

何かを気にしているようだ。

一体どんな状況なんだろう。

 

「もしかして、今結構まずい状況ですか?」

直感的にそう尋ねる。

彼が口ごもる時はいつも女性がらみだ。

大方今回もそうなのだろう。

 

そんな状況でもまめにかけてくれたことを喜ぶべきか、他の女性をほったらかしにしている現状を怒るべきか。

迷った。

 

その通り、と言わんばかりに彼が答える。

『ああ。でもなんとかなっているから安心して。今はライーサとの時間だから。』

 

こういうところがずるいんだから。

 

節操なし、女泣かせの極悪人。

 

 

でも、そんな人なのに気になってしまう私も私なんだろう。

 

 

・・・・・・・・・・・

 

「これで大丈夫かな・・・・。」

トランシーバーを切り、ライーサとの会話を終える。

芳佳とのハードな一時が終わり、すぐにライーサに連絡を入れた。

芳佳は今、入れ替わりにおいておいた抱き枕を愛おしそうに抱きしめて寝ている。

いくらトレーニングで基礎体力をつけている扶桑軍人とはいえ、あの小さな体ではいろいろときつかったようだ。

 

けれども、彼女は治癒魔法が使えるので、あとは言わずもがな。

傷の治療以外にも使えるんだなぁ、と遠い目をして思い返す。

 

男としての最後の一線、プライドを守ることに成功したが、彼女が慣れたら、こちらが苦しくなってくるだろう。

俺はもう30代だが、彼女はこれからまだまだ体力が付く時期だ。

 

初めて夜の店に行った時のように緊張した夜だった。

 

廊下で月を眺めながら考え事をする。

今までのことと、これからのこと。

 

ヴァルトルートをまず味方につけることには成功した。

これ以上頼りになる相手もそうそういない。

 

一応、まだ他のウィッチ達には黙っておくように念を押しておいた。

ネウロイを倒す前にやることはこれくらいか。

 

しかし、そこで大変なことを思い出す。

 

(俺、芳佳のご両親に挨拶に行っていない・・・。)

まさかの事実にうなだれる。

俺が居た時代よりもそういったことにこの世界は厳しいように思える。

真っ先に彼女にプロポーズして、受け入れてもらったのはいいが、これは重大な過失だ。

 

しかし、いつ行けばいいのか

どうすればいいのか。

 

握り締めたこぶしに汗が湧いてくる。

 

まあ、今はネウロイを倒すのが先決だ。

彼女たちとコミュニケーションをうまく取りながら敵の戦力を削っていく。

 

芳佳を優先しつつ、他のウィッチ達に気づかれないようにそれとなく距離を調整する。

 

サーカスの綱渡りさながらの難易度だ。

 

ネウロイを殲滅できるなんて大口を叩いたのも、彼女たちの戦後のことを考えてのことだ。

少なくとも、今以上の結果を出しておいて、ウィッチ達の待遇向上を取り計りたい。

 

ハンナのように国の広告塔として大々的に宣伝されているウィッチはどうするべきか。

 

 

彼女がもし、俺のところへ来てくれるなら嬉しいが、きっと今了承したら黙っていられずに周りに言いふらすだろう。

 

ライーサと圭子が外付け良心回路だから彼女たちの精神が死ぬこととなる。

さすがにそれは看過できないので却下だ。

 

特に圭子はハンナに隊長職を押し付けられて、一日で彼女のために部隊を作るという無茶をさせられているからこれ以上の負担はありえない。

 

そんなことをずっと考えていると、後ろから声を掛けられる。

 

「ボバ。」

 

後ろを向くと、そこにはサーニャがいた。

 

なぜ彼女がここに・・?

 

トランシーバーを後ろ手に隠して、彼女の前に立つ。

 

きわめて自然に、いつも通りの調子で彼女に問いかける。

 

「よう、サーニャ。もうこんな時間だよ。眠れないの?」

 

「ん。そう。なんかここに来た方がいい気がしたから。」

 

先ほどまで眠っていたのか、目をこしこしとこすりながらそういう彼女。

まさか、女の直感で・・?

 

恐ろしい、さすがナイトウィッチ。

確か祖国で最優秀のウィッチだといわれていた。

 

彼女には以前のこともあり、若干気まずい。

 

口が少し乾いて、うまく動かない。

 

「ねえ。どうしてボバは廊下で立っていたの?」

 

一番聞かれたくないことを聴かれてしまった。

しかし、それに対して過去の経験から咄嗟に最適な返事をできた。

 

「いやあ、月を眺めていて。」

 

嘘っぱちもいいところだが、ここで芳佳とのことを言ったらどうなるかわからない。

彼女は冷静で、静かな人物に見えるが、実際には感情豊かなのだ。

ただ、それをあまり表に出そうとしないだけどとても人間味がある。

 

それを好ましく思うが、そういった相手が暴走したらどうなるのかわからない。

 

予想がつかないというのは恐怖だ。

特に、女性に至っては。

 

「じゃあ、私も。」

そういって隣に立って、一緒に月を眺め始めるサーニャ。

 

ツッコミどころ満載だったがどうやら気づかれずに済んだようだ。

 

内心ほっとしてると、次の一言で心臓をわしづかみにされたような気分になる。

 

「・・・・・・何か、匂いが違う・・・。」

こちらの首元をスンスンと嗅ぎながらそう断言してくる。

 

まさか、いや。

 

ここでばれたら終わりだ。

他のウィッチ達にも広まったらそれこそ収拾がつかなくなる。

 

ストライクウィッチーズだけでなく、他の戦闘航空団にも広まるだろう。

それは、何としても阻止しなければ。

 

「あー、寝汗が酷かったんでシャワー浴びなおしたんだ。シャンプーとボディソープ変えたし。・・・・・・変だったか?」

「ううん。この匂い、いつものボバのとは違うけど落ち着く。」

 

セーフ、と内心ガッツポーズ。

部屋を出る前に、まずシャワーを浴びて香水をつけろ、という天からのお告げがあったのでそれに従ったら何とかばれずに済んだようだ。

 

本当に運がいいとしか言いようがない。

 

するとこちらの服の袖をくい、くいと引っ張りながら上目遣いで見つめてくる。

ん、どうしたんだ?

 

「香水、私にもちょうだい。」

「あ、ああ。いいけど・・・。」

 

 

自分が持っていた小さなタイプの香水を渡す。

何というか、以前スレーブⅠで一緒に宇宙に行った時よりも積極的な気がする。

 

前よりも、こう、ぐいぐい来ているというか。

 

プシュッ、と押して自分の体に軽くかける彼女。

自分の体のにおいを確かめている。

 

「これでおそろいの匂いだね。」

 

そういわれて思わずむせてしまう。

そんなことを言われたのは初めてだ。

 

アクセサリーのタグ類のペアルックとかは結構したこともあったが。

不意打ちにもほどがある。

 

そこで一つの考えに至る。

これ結構やばい状況じゃないか?

 

例えば、このままサーニャが俺の香水をもっていって明日の朝、食堂に行ったとしよう。

当然他の皆と鉢合わせする。

そこで同じ匂いの香水をつけている俺とサーニャ。

 

芳佳は俺がどんな香水をつけているのか知っているので、問い詰められる可能性が大だ。

 

「やっぱりかえし」

「おやすみ。」

 

そういって踵を返して帰っていってしまう彼女。

彼女のほうに手を伸ばした態勢のまま固まる俺。

 

小さくなっていく彼女の背中を見ながら、もらった他の香水をつけるしかない、と観念した。

 

 

 




今回出した“マウス”はストライク・ウィッチーズの設定を見ていた時にきっとこういう部隊もあったんだろうなぁ、という想像の産物です。
わかりやすくいえばガンダム08小隊のようなものです。



ということで、宮藤に怒られながらケツを蹴られつつもなんとかけじめをつける戦いが始まりました。
ある意味ネウロイよりも手強い相手です。

501のストライク・ウィッチーズ
502ブレイブ・ウィッチーズ
503のタイフーン・ウィッチーズ
504のアルダー・ウィッチーズ
505のミラージュ・ウィッチーズ
506のノーブル・ウィッチーズ
507のサイレントウィッチーズ
508のマイティ・ウィッチーズ、

とストライク・ウィッチーズの成功をもとに作られた統合戦闘航空団は数多く存在します。
それまでの統合戦闘飛行隊とは違い、様々な地域への派遣を目的として作られているのが特徴です。

そもそもがストライク・ウイッチーズがアニメ一期で活躍した結果、他の統合戦闘航空団が組織されたという経緯です。

統合戦闘飛行隊は特定の地域専門という感覚です。

それぞれの統合戦闘航空団には多種多様な魅力的なウィッチがおります。
長くなるので詳しくは言えませんが、調べてみると、ストライク・ウィッチーズの面々とも深いかかわり、つながりがある人物多いです。

今回の作品のメインで取り上げるのはストライク・ウィッチーズ、ブレイブ・ウィッチーズ、そしてストーム・ウィッチーズのハンナ、ライーサ、加東の三人あたりとなります。

今回の話を読んでいて、おい、主人公は宮藤一筋じゃないのかよ、と思われた方もおられますでしょう。
彼は自分ではあまり気が付いてませんが、魅力あるウィッチ達と接するうちに無意識に魅かれていっているのがその原因です。

つまり、宮藤に対する想いは強く自覚しているけれども、それ以外は単なる性欲で他の娘達に目が行っていたんじゃないか、と切り捨てていました。

宮藤にいろいろ怒られた結果、覚醒。
正妻は何があっても彼女だけれども、でも、自分の気持ちを押し通してみることにしました。
このお話ではヴァルトルートを泣かせてしまったり、サーニャにどぎまぎさせられながらも痴情のもつれにずぶずぶとはまっていくことになるでしょう。

ヴァルトルートを出した理由は好きだからです。
彼女みたいな何というか、艦これの隼鷹みたいな不敵なキャラがお気に入りです。
ああいった人物が「女」を見せたらどれだけ可愛いのかな、というのが見たいからです。

のちに出す予定のブレイブの面々のお話を書くにあたってまず彼女のことを描いてみたという部分もあります。

ネウロイを倒して、前線を押し上げるのはいいけれども、彼女たちと果たしてどうなるのでしょうか。


ペリ犬とかは「不潔ですわ!!」とか言いそうだなあ。(でも嫌とはいっていない。)


ヴァルトルートとの賭けに勝利し、浮足立つボバ君。
そんな彼の元に、また寿命が短くなりそうな出来事が起きる。

次回「賞金稼ぎは肝を冷やす。」

救いの手はある。(ただし彼以外)


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