クロノと【スチームメイデン エルル】 作:クリティカル3枚
原作:カードファイト!!ヴァンガードG
タグ:ヴァンガードG 恋愛 新導クロノ イチャイチャ スチームメイデン エルル キャラ崩壊 ネタバレ注意
その中には、ある出来事がきっかけで不機嫌なままのユニットがいて……
クロノとユニットをイチャイチャさせたかっただけ。
続きは無い。
※キャラ崩壊とヴァンガードGのネタバレ注意
※Pixivとのマルチ投稿です。
俺は新導クロノ。ギアクロニクルを使うヴァンガードファイターだ。
十二支刻獣を現実世界へ呼び出し、その力でストライドゲートを開き、惑星クレイの全てを犠牲に偽りのイメージで完璧な世界を作り出そうとした明神リューズとの戦いも終わり、俺達の世界と惑星クレイに平穏が戻って来た。
ヴァンガード普及協会は壊された建物や事件の後処理に追われ、俺のチームメイトの2人も、自分の未来へと歩き出していた。
俺も高校の受験勉強や、ジェネレーションマスターの称号を持つファイターだから、ヴァンガードのイベントや俺に挑んでくる挑戦者の相手で忙しくなってきた。
そんな俺が、今一番手を焼いているのは……
「……クロノ、クロノ!」
「んぁ…………また此処か……ドラン」
ストライドゲートが開いた影響か、はたまたはリューズとの決戦で生まれた【クロノドラゴン・GG】のせいか、俺の部屋にあるカード、ユニットの全てが俺の夢に現れる様になった。
今俺の名前を呼んでいるのは【クロノ・ドラン】。
俺の切り札、【クロノジェット・ドラゴン】の幼い姿。俺のデッキのファーストヴァンガードだ。
「えへへ、今日も来たね!」
「お前らが俺の夢に現れてるんだろ?」
どうやら、ドラン達からしたら俺がユニット達の住処にやって来ているらしい。
「クロノ、ほら今日こそ謝らないと! あの人、クロノが謝らないからどんどん怒ってるよ!」
そう、今一番頭を悩ませている難題は、デッキに入れていないあるユニットが原因だ。
「(俺が謝るのが遅くなったのって、十二支刻獣達が俺と遊ぶのに夢中になったせいだろ……)」
口には出さずに、ドランに引っ張られるまま例のユニットの前へと向かった。
「…………」
「いたよ! エルルさん!」
【スチームメイデン エルル】。
ヴァンガードにライドした時にソウルブラストでライドステップにリアガードをコール出来てパワーアップも出来るユニットで、アタックする時はジェネレーションブレイクにより自身のパワーが上昇するユニットだ。
そんなエルルは今はトンデモなく不機嫌、だそうだ。
エルルはスチームメイデンの中でも口数は少なく表情も固いので、その顔から怒っているかは読み取る事が出来ない。
「ほら、クロノ! 謝って!」
「わ、分かった……」
俺はドランに押し出される様に月を背に立っている銀髪のエルルの前に向かった。
「……エルル、その……ゴメン!」
なんて言ったら良いか分からず、俺は頭を下げて謝った。
「……何をですか? マイヴァンガード」
「えぇーっと……ドラン達がいなくなった時に、デッキに入れなくて……」
以前、一時的だったけどリューズにドラン達十二支刻獣を奪われ、俺の切り札だった【クロノジェット・ドラゴン】を始めとするユニットが使用不可能となってしまった事があった。
なので俺は【変革を呼ぶギアイーグル】を主軸にしたデッキに別のグレード3を入れたいと考えた。
ギアクロニクルのグレード3であるエルルも、当然候補だったけど、結局俺はコストや能力の相性を考えて、【スチームバトラー ク・バウ】を入れた。
俺が知っている限りでは、エルルの怒る原因はそれしかない。
「……そんな事は気にしてません。
……私こそ、コストが重い女でスイマセン」
「あ、いや、そんな事は思ってないんだけど……」
何故か、余計に怒らせてしまったようだ。
俺のデッキにはソウルを2枚使って1枚カードが引ける【スチームスカラー ジジ】が何時も入っていた。そうなると、エルルのスキルとコストが被って使いづらい。
クロノジェットがいなくなった時には【ドキドキ・ワーカー】の様なソウルに入るカードも効果が使えなくなったので採用を見送ったのも確かな理由だ。
「クロノ! クロノ!」
小声でドランが俺を手招きした。
俺はエルルから離れてドランの元に戻った。
「クロノ、僕がいない時に砂浜でエルルについて何を言ってたか覚えてる?」
「……確か、ハイメが俺にエルルにライドしてみてって言われて……恥ずかしいから嫌だって」
「それだよ!」
「え?」
「クロノは、ライドしたくないユニットにライドした事、あるよね?」
「……まあ」
カードファイト!!ヴァンガードはリーダーであるヴァンガードのグレードを毎ターン1つ上のグレードを持つユニットにライドして、強くしながら進めるゲームだ。
だけど、ユニットの中には防御に使ったり、ヴァンガードではなくリアガードで有利な効果が使える奴もいる。
「完全ガードや、リアガードで効果を発揮するユニットにガッカリしながらライドするのは仕方が無い事だよ。
でも、エルルはヴァンガードで発揮できる能力を持つユニットだよ! 彼女にもみんなの前に立つヴァンガードとしてのプライドがある! クロノはそれを傷付けたんだ!」
「そうなる……のか?」
「そうだよ!」
ドランもプンスカと怒り始めた。
「でも、どうやって謝れば……」
俺は困り果てていた。俺は単純に自分が女性のユニットにライドするのが恥ずかしかっただけなんだけど……
「マイヴァンガード、私にいい考えがありますよ」
そんな俺に助け舟を出してくれたのは【スチームメイデン ウルル】だった。
「ウルル! どうすればエルルに許してもらえるんだ?」
「マイヴァンガードがエルルにライドしたくないと仰って彼女が嫌がっているなら、マイヴァンガードが彼女にライドすれば、機嫌が治ると思いますよ?」
「なるほど……じゃあ、目が覚めたらデッキを組んで……」
「いえ、その必要はありません」
「へ?」
思わず間抜けた声が出た。
デッキを組まずにライドなんて、出来ない筈なんだけど……
「マイヴァンガードは、何度も経験してきたでしょう?」
「……何を?」
「コスプレです!」
なるほど! つまり、俺がエルルと同じ格好をすれば……
「って、無理だろ! 無理無理!」
エルルは……眼帯を付けていて、下はメカって感じのスカートの様な装備、上はへそ丸出しで少し露出が多い。
そんな男として恥ずかしい格好は絶対に嫌だ。
「そんな事はありません。きっと似合いますよ」
ウルルはおっとりとそんな事を言うが言うなればそれは女装だ。そんな恥ずかしい真似、絶対出来ない。
「クロノ! エルルの為だよ! やろう!」
「気安く言うやがって……!」
「あんなに嫌がっていたヴァンガマンも最後はノリノリだったんですから大丈夫ですよ」
「嫌だ! 女装は絶対に駄目だ! ……うぁ!」
迫るウルルとドランの魔の手から逃げようと走り出すが、何かぶつかり尻餅を着いた。
「いてて…………く、ク・バウ!?」
立っていたのは沢山の武器を装備した半裸の男、【スチームバトラー ク・バウ】だった。
「マイヴァンガード、すまないがウルル殿の案を受け入れてもらえないだろうか」
「えぇ……?」
「頼む! もうエルル殿に冷たい目で「(コストが)軽い男」などと呼ばれたくないのだ! 頼む!」
ク・バウに頭を下げられ、逃げ場を失った俺はその場で降参の意思を叫んだ。
「あー! もう、好きにしろよ!」
ウルルが洗濯されて乾いたばかりのエルルの服を持って来て、俺はそれを着た。
サイズは胸の所が余ってしまうので詰め物までして合わせた。
スカートを装備して、その間にもウルルからいろんな所に手を加えられた。
「こ……ここまでする必要、あったか?」
ウィッグは流石に断ったが、頭にはカチューシャを着け、目には金色のカラーコンタクトまでつけた。
「良いですよ! 良いですよマイヴァンガード!」
「これならきっとエルルも喜ぶよ!」
ウルル達のテンションが高い。俺はサッサと着替えたかったので早速エルルの所に行く事にした。
が、シャッター音が聞こえたので思わず振り返った。
「って、何撮ってんだ!?」
「こんなマイヴァンガード、滅多に見られませんからね! 照れてる顔も良いですよ!」
「やめろって! 本当にやめてくれよ!」
ウルルから逃げる為にも、俺は全速力でエルルの元に走った。
「っはぁ……っはぁ……」
何とかウルル達を振り切り、俺はエルルのいた場所に辿り着いた。
息を整え、1人静かに佇むエルルに声をかけた。
「エルル!」
エルルはこちらに振り返る。相変わらずの無表情でこちらを見る。
「……っ」
完全に俺を視界に収めた彼女の無表情が崩れ、驚きを露わにした。
「…………」
「その……ライドしたくないなんて言って……悪かった」
俺は照れ隠しも兼ねて頭を下げて、謝罪した。
「……マイ、ヴァンガード……」
「コレはその……、お詫びって言うか、何っていうか……」
必死に言葉を探す俺。
「……あー! なんて言えばいいんだぁ!?」
言葉が浮かばず、頭をかく。
エルルは俺に近付くと、そっと俺の手を取った。
「……お揃い」
そう呟いた彼女は、小さく微笑んだ。
「……!」
その顔が余りにも綺麗だったので俺は照れ隠しにそっぽを向いた。
「……でもマイヴァンガード、胸が少し大きい」
「ん? ああ、詰め物が少し大きかったんだよな。ウルルがギリギリまで拘ろうとしてたっけ」
「……マイヴァンガードは、大きい方が好みでしょうか?」
「え!? あ、いや……」
急な質問に戸惑い、頭の中がこんがらがって答えが出てこない。
「……もしそうだったら私、【スチームメイデン エルル G】に
「あ、いや……そこは【遡る時乙女】とかじゃないんだな。
む、胸は……そのままでいいんじゃないか?」
エルルは曖昧な反応を返した俺が面白かったのか、また笑った。
「ふふ……マイヴァンガードが、クロノジェット様や私達、惑星クレイの為に必死だったのは、よく理解しています」
エルルは両手を俺の手に重ねて、そのまま優しく話し出した。
「だから、自分勝手に怒った私に謝る事なんて、1つもありません。……っ」
「!?」
エルルの唇が、俺の頬に触れた。
「嫌だったでしょうか?」
「あ、い、嫌じゃ……無かった……けど、何で?」
俺の答えに、頬を僅かに赤らめたエルル。
「私が望んだからでは、駄目でしょうか?」
「っ!」
嬉しくないわけでは決してないが、こんな事は初めてでどう答えて良いのか分からない。
「ごめんなさい、自分でも何故したのかよく分かってないんです」
「そ、そうか……」
「…………」
気不味いまま黙ってしまった俺に、エルルは少し悪戯な笑みを浮かべる。
「……それはそうと、マイヴァンガード、私の服を勝手に使いましたね」
その言葉に今の格好を思い出し、恥ずかしさが込み上げてくる。
「それはゴメン! 直ぐに脱ぐよ」
「いえ、それは構いません。ですが、1つお願いをしてもよろしいでしょうか?」
「……お願い?」
次の日、起きた俺はまだ日本にいたハイメとファイトの約束を取り付けた。
俺の先行で始まったファイトは4ターン目にアクアファース特有の連続攻撃を前に序盤から追い詰められていた。
ダメージは2対4。ハイメのリアガード、【ダイダル・アサルト】2体による4回連続攻撃とヴァンガードのアタックが終了し、次はグレード3になる俺のターン。
「行くぞハイメ! スタンド&ドロー!」
此処で俺はエルルのお願いを叶える。
「ライド、【スチームメイデン エルル】!」
「おお! エルル! クロノ、遂に女の子にライドかい!?」
「まあな……スキル発動! ソウルブラスト! 手札の【クロノジェット・ドラゴン】をコールして、パワー+5000!」
「おやぁ? クロノジェットをコール?」
「行くぜ! 【スチームブレス・ドラゴン
】のブースト、【クロノジェット・ドラゴン】でヴァンガードにアタック!」
「パワー23000……ヴァンガードが9000だから15000も必要か……ノーガード!」
ハイメの手札は4枚。1枚はグレード3だからガードに使えるのは3枚のみ。
これでダメージは3点。
「【ガンナーギア・ドラコキッド】のブースト! エルルでヴァンガードにアタック!」
「……むむむ……女性のアタックは大歓迎! ノーガードだよ!」
「後悔すんなよ! ツインドライブ!」
エルルが俺にしたお願い。それは……
「ゲット! クリティカルトリガー! 効果は全てヴァンガードに!
セカンドチェック! ゲット、クリティカルトリガー!」
「嘘ぉ!?」
ダブルクリティカルトリガーでハイメを殴らせる事だった。
俺とハイメのイメージの中で、ハイメのライドした【マグナム・アサルト】をエルルがグーでぶん殴った。
『マイヴァンガードに不埒を働いた男……成敗』
「ぐほぉ……い、イメージの筈なのに……何時もより、ハートにキタァー……がく……」
「ヒールトリガー無し、俺の勝ちだな」
机の上からカードを片付け始める俺に、カードの中のエルルが、そっと微笑んだ気がした。
だから俺も、笑い返した。