女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」 作:下品な牛乳◆N1RGqRourg
さ、三大欲求が物語の始まりなんスよ…。~箱庭の彼と彼女~
カツカツと、黒板とチョークの奏でる規則的な旋律が響いている。
微睡の中、その音によって段階的に意識が覚醒してゆく感覚に集中していた俺は、先程まで居た、寒風さざめく夜の荒野とは打って変わって暖かい空気の漂う空間に違和感を覚えた。
男「――ぶぇ…」
それはつまり
男「ぶぇっくしゅんっ!!ちくしょうめぇっ!!!!」
急激な気温の変化に肉体がついていけなかった為の違和感、
つまりくしゃみが出そうだったのである。
微睡の中に居た意識が己の大声で覚醒する。
男「……ふぇっ?」
どこだここは。
あ、いや、ここ学校だ。
しかも授業中だわ
担任はチョーク持つ手止めてるし、みんなも俺を見てるし…
男「…今何時?」
居眠りバレをなんとか誤魔化せんものかととぼけてみるも、どこかから「マジかよコイツ…」という声が響いただけで、空気の弛緩は望めなかった。
というか今の言ったの担任だ、ダメだこりゃ。
友「自分のくしゃみで目覚めるとは…器用な奴…」
隣の席に居る、俺の数少ない友人がワザとらしくため息を漏らしながら、「じっとり」といった擬音の似合う視線を俺に寄越してくる。
目が合いそうになったが、こちらから自然に視線を逸らす事でそれを回避する。
コレは決して、俺のコミュニケーション能力に難があって人と目を合わすことに抵抗があるとか、唯一の友人と言っても異性と目を合わせるのが恥ずかしいからとかではない、決して。
そうして眼と首と座っている姿勢とで自然にそれぞれバラバラな方向に向いた俺の視線と、呆れたように草臥れた表情を向けてくる担任の視線とがかち合った。
うん、全然自然じゃないなこれは。
担任「今時だが、バケツ持って廊下に立ってくるかぁ?」
なんて、今日日問題になりそうな冗談を嚙ましながら、
「私の授業サボって見た夢はどうだったぁ?あぁん?」
と教科用図書片手に凄む担任。
あぁーっと…と口から漏らしながらどう弁明したものか考えるが
男「ゆ、夢?」
夢というにはやけに現実感が強くあるものだったので、その点を突き詰める方向に思考が逸れる。
友「寝てる自覚無しだったのか・・・」
と横から「僕呆れてますよ」と言わんばかりの声をかけられるがそちらは見ない。
友よ、早とちりするんじゃない。寝ている自覚はあるよ、超あるよ。自覚無い訳無いアルヨ。
夢だったのかどうかがあやふやなのであってだな――
担任「よぉーっし、男。寝覚めの一発目だ、236Pを読め。」
男「ふぇっ?あ、はい。」
どうやら完全な居眠りだった、という事にしておくのがよさそうだ。
そりゃそうか、俺があんな獰猛な
それに変な事を考え込んでいたせいで「ふぇっ?」なんて反応をしてしまったし。
ふぇぇぇ…気持ち悪いよぉぉ…。
夢だと思えば粗末なことで、
未だ眠いながらも思考を現実に引き戻し、机の中から教本を取り出し、しっかりと両手で開いて立ち上がった。
オホンと咳払いを一つ挟み、思考に区切りを打ってから、手元に並ぶ文字列を読み上げる。
男「”らめぇぇぇぇぇっ♥♥そこぉっ♥んぅ♥そこぉっしゅごいのぉぉぉぉっ♥♥♥あへぇっ♥♥♥”」
男「”みっともないくらいに乱れ狂う彼女の首筋に吸い付き もっとその情欲に駆り立てられた獣の様な歓喜の悲鳴を聞きたくて 強く打ち付ける腰の抽送を速める”」
男「”鎖骨 胸骨と口付けする位置を徐々に下げながら彼女の顔を視線だけで仰ぎ見るが 跳ね上がった頤に隠れてその表情は視えず 頬からつたう涙と汗 そして俺の唾液とで混ざり合いぬらぬらと妖しく照る様が窺えるだけであった”―――」
男「―――…あれ?」
なんか違うな?と不思議になり、やや眠い思考を振るいながら隣の友を仰ぎ見るが、机に突いた肘から伸びる手に顎を乗せていた友は、俺の視線に気付くと少しばかり赤らんだ肌の血色を更によくしながらも、視線を合わせまいとしているのか不自然に眼を泳がせてそっぽを向いた。
担任「よぉーし、男にまかせた私が悪かった。だからそんな非健全な物を感情込めて音読しないでくれ。それと何度も言うがそんなものを学校に持ってこないでくれ。」
音を立てて片手に携えた教科用図書を閉じ、それを両手で抱えて顔を隠しながら担任は小さく、しかし長い溜息をこぼした。
教室全体が「またかこいつ…」と言いたげな、無言の威圧感に包まれていた。
一部からはなんだか艶っぽく異な圧を感じるが、そんな友を今度は俺が無視する。
男「センセー、これって何の授業でしたっけ。」
なんで机ン中にこんなもん入ってんだ?あ、入れたの俺か。
と、自分で手にしている青年誌をしげしげと眺める。
担任「どれだけ居眠りして授業を消化しようとも、そんなマンガは教材として取り扱う日は来ないから安心しろ。」
友「いや、むしろ男は危機感を持て。」
双方からの尤もな指摘に頷きながら、「全部処分すっか」と口にはせずとも予定を決める。
しかし結構な量入ってるしなぁ…俺が処分すんのかぁ、いや俺のだけれども…
かぁーっ、センセーが没収してってくんねぇかなぁー!めんどくせーなー!
担任「この授業は保健体育です。」
どうにか楽してゴミを処分できないかと策を練る俺に対して、教師然とした態度を意識してか若干背筋を伸ばした担任がそう言った。
ふむ、しかし保健体育か…
今一度、手元の青年誌に目を向ける。
男「…どっちも一緒じゃないの?」
友「お前は体操着ではなく体育館の外観だけでコーフンしそうな奴だな。」
ボソッと呟いたが故に隣の席にはしっかり聞こえたようで、そんな比喩が友から飛んできた。
だがしかし失敬な奴だ、俺は変態ではない。
……変態…ではない…よなぁ?
少なくとも体育館より体操着の方が好きだし…
男「―というか、センセーは保体の教科書を音読させようとしたんですかっ!!」
どう転んでも変態という結論に転がり落ちる思考の坩堝に嵌りそうだった為、矛先を担任に向けた。
「スケベィ!」と声を上げれば顔を真っ赤にした担任が「お前に言われたかないわっ!」と声を荒げる。
担任「私だってセクハラでお前を事案提議することも出来るんだぞ!」
男「人を性犯罪者みたいに…っ!!音読ぐらい、俺以外にも出来る人はいるでしょうが!」
言い合いに熱が入ったが、俺の返した言葉に教室全体から「むしろお前が適任だろう」という視線が飛んできた。
俺ってクラスを纏めて導いていく才能があるのではなかろうか?なかろうな、うん。
担任「…大体の奴が恥ずかしがって小声だよ。」
担任「お前みたく、起き抜け一発目で青年誌熱読するやつなんざ稀だ。」
男「ぐぬぬ…。」
「いない」とは言い切らない辺りに、担任の苦労しそうな人柄が窺い知れて、今この場において俺は加害者側だというのに担任に同情しかけた。
しかしこのまま「変態」のレッテルを貼りつけられるのも嫌なのでなにか言葉を返そうと思考していると…
―キーンコーンカーンコーン…―
友「あ…」
担任「がっ…?!」
男「ぬ…」
教室全体が、またも俺に対する意識を一つにしている気がした。
なんだこのアウェー感…いつもより薄いじゃないかっ!!
あの夢の荒野も斯くやと言わんばかりの寒風が教室を撫でて行ったが、普段に比べればこんなもの俺のホームの内である。
ではその普段とは如何程かと問えば、「訊かないでほしい」としか返せない。
記憶に御座いませんといったレベルなので、本能的に忘れる事で俺自身の存在を擁立しているのだろう。
男「今回はこのぐらいにして差し上げますよ!」
うぉっほっほ!と大仰に笑って勝利宣言をしながら、青年誌を机の中に押し戻す。
担任「お前のお陰で、人としての器が大きくなってゆく気がするよ。」
そんな事を仏の表情で言わないでほしいが、確かに俺が悪いので甘んじて受け入れる。
友「うぉーい!男~!購買のパン売りきれっぞぉ~!!」
窓の外から友の呼ぶ声がした。
男「…ここ何階でしたっけ?」
担任「3階さ。」
教室を撫でて行った寒風とは、心象的なものではなく友が物理的に巻き起こしたものだった。
男「…おつかれさまでーす。」
友のフィジカルに毒気を抜かれた俺は、そう断って机に椅子を直し席を離れた。
担任「お前と友のコンビネーションはやっかいだなぁ」
教室の扉から出る際、背中でやけにアメリカンな担任の笑い声を聞いたが、
開き直ったのか、居直ったのか、或いはその両方か、その声には万感がこもっていた。
担任「まぁいいや、はい、キリー、レー、行ってこーい」
友よ、お前の素早さはどうなっているんだ。
そんな雑念にとらわれながら、廊下に虚しくこだます担任の号令と、校舎中から響く生徒の足音をBGMに俺は購買へと足を運んだ。
案の定パンは売り切れていた。
「違和感を感じる」
と
「違和感を覚える」
これらは”厳密に言えばどちらも二重表現ではない”という見解を伺った事があります。
要するに
「”違和感を感じる”が二重表現なら”性感帯で感じる”も二重表現だし、そもそも”違和感”を指す場合に置いては”感じる”も”覚える”も一緒じゃから必然的に”覚える”も二重表現になるわボケェっ!カァッ!!」
との事ですので、”違和感”を文章として表す際は、
「違和を感じる・覚える」
か
「違和感がある・あらわれる」
と記し別ける事が余計な煩いを避けるにはよいかもしれませんね。
今回の本文中の表現に関して、「R-18」のタグ付けを行うか否かで迷いましたが、
作中の人物は誰もそういった行為に及んでおりませぬ上、
グロ或いはゴアな表現もございませんし、
そもそも「ずぽ」「どぴゅ」と書き換えてしまえる点は一切描写しておりませんので「R-18」タグを付けるのは違和感を感じるのぉぉぉお♥んほぉぉおおお♥♥♥
違和感を♥んぅっ♥身体で覚えちゃうぅんっ♥♥♥
大丈夫、まだ大丈夫、まだ「R-15」のテリトリーだ。
「違和感があらわれる」「違和感をあらわす」
の表現において、”あらわれる”は
”表れる”でも
”現れる”でも
”顕れる”でも意味は通る為、
その違和感がどういったものであるかを考えて記しわけるのがよいでしょう。
考えて尚、どの漢字で記すか決まらない場合は無理に感じで記さずにひらがなで通すのが得策です。
現に僕は「よいでしょう」を変換しませんでした。
やったね!
※改稿情報
10/23/2016:改行と文頭の空白を削減。