女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」 作:下品な牛乳◆N1RGqRourg
空から降り落ち、青い光から実体へと移ろってすぐに、クレーターを埋め尽くす程に大きな青い光の嵐に飛び込む。
友「男ってば…勝手な事してっ!」
確かに私だって自分の身勝手で消えようとしたけど、男がそうやって私を助けちゃうと、また
そしたらまた、男の
友「…そんな事はさせない…っ」
そうは言っても、一体どうする…?
なんとかあの化物の化石が残らないように仕向けるには…発掘されないようにするには…
いや、今は男の事が先決っ!
一向に前へと進めない程の出力で未知のエネルギーが吹き荒れる青い嵐の中、腕を眼前で交差するように構えて、風なのかもわからない力に視界を奪われないようにし、姿勢を低くしながら嵐の中心へと目指す。
そこに男が居るって、《
友「最後の顔が泣き顔なんて…認めない…」
男の言っていた言葉だ。
私が勝手に作り上げた、私の勝手な思い出だけで出来た男の言葉だ。
まったく、どこまで私に優しい世界なんだか。
でも、だったら――
友「――だったら、最期の言葉が”ごめん”なんて、ボクだって認めてあげない…っ」
男の生きる中で、今後は平穏な生活が遠のくだろうけど、それは確かに嫌だけど、だからってここで死んじゃダメでしょ、男っ!
気を抜けばクレーターの外へと放り出されそうな勢いで噴き上がってくる圧の中、ジリジリとゆっくり坂を下っていく。
こんなに凄まじい力を巻き起こすなんて、男は一体何をしたんだろう
視界も確保できない光の中、こんな時ばかりは自分の能力を恨めしく思う。
友「男と、同じ能力だからこそこの光が見えるけど…っ」
瞳を閉じないように、腕と腕の隙間から薄目で前方を睨み続ける。
すると、チラリと光のずっと向こうに、仰向けに倒れた男が見えた。
友「っ男!」
声を上げるが、その波すら押し返されて、またも男の姿は光の奔流に隠される。
友「クソっ!男!男~~っ!!」
声帯を振るわせて声を張り上げるけど、その声は前には進まず、私の耳を通って上へと遠ざかっていく。
足下すらハッキリ見えない程大量の光が噴き上がっていくのに、そこに転がる石なんかは微動だにしない。
友「この…力の流れはっ時間跳躍の力なんだっ!」
私が男と同じ力を持つからこそ、この嵐に弾かれてるんだっ!
無音の嵐を前に進む程、未知の圧力が私を押し返す力を強めていく。
なんで、なんで近付けないんだろうっ!
男は一体何をしたんだろうっ!!
またも、チラリと前方の光の流れが薄くなって、そこから男の姿が見えた。
友「っ男~っ!!おぉぉぉいっ!!」
ダメだ!やっぱり届かないっ!
走ればすぐの所に男が居るのに、なんで、どうしてっ!
男の身体が、徐々に青い光に解かれてゆくのを見る。
空を見上げる男が、小さく口元を震わせたのをハッキリと見る。
―…ごめんな、友。―
友「だめぇっ!!!」
その言葉だけは、嫌に周囲に響き渡った。
友「…うそ…。」
その言葉は、しっかりと周囲に拡がった。
周囲にはもう光はなく、そこは悠然と巨大なクレーターが穿たれていて、その中に幼い少女が倒れているだけだった。
友「うそ…」
失敗、した…?
――――――――――――――――――――――――
友「そうだった…」
そうだ、思い出した。
私はあの時失敗したんだ。
でも、たった一度の失敗でしかないから、私は諦めずに何度も男を救おうとして…
――――――――――――――――――――――――
友「だめぇっ!!!」
男「何だお前っ?!」
男へと飛びかかろうとするあの化物の前に躍り出て、けれど私の肩を掴んだ男に引き倒されるようにして立ち位置が入れ替わり――
―…ごめんな、友。―
――そうして、背中から化物の歪に伸びた太い爪を覗かせて、ポタポタと暗い滴を垂らす男を起点にして、あの青い光の嵐が噴き上がる様を見る。
そうして、またもクレーターの中に二人の少女が取り残される。
――――――――――――――――――――――――
何度も何度も、クレーターの中に二人の少女が取り残される。
まさかこの時代に来てしまった段階では、もう私には男を助けられない?
友「いや、そんなまさか。」
思考を一度纏めるのと、どう男を助けるかと策を巡らせる為、未来へと帰る。
しかしそこに男は居ない。
その時代に、私の守りたかった男は居なかった。
…そうか、ならば男が、彼がその時代に居る時間にまで戻って…
――――――――――――――――――――――――
友「駄目だ、あの人は私の事を好いてくれている…」
それでは駄目だ、いけないのだ。
私を好いてしまっては、結局最後には彼が死ぬ。
この時間の私と接しては余計なパラドックスを生んでしまい兼ねないので、暗躍に徹し続ける。
なら、
そうすれば、私の思い出の彼を守れるかも知れない…
私の事なんて、
あぁもう、伸び切った髪が鬱陶しいなぁ…
あの身勝手な女と同じ程度にしようかな…
――――――――――――――――――――――――
また、駄目でした。
一体何がいけないのでしょうか。
何度切ってもまた伸びる髪を撫でる。なんどこの三日を周回しても彼は消えてしまう。
彼は何故あんなにも彼女を気にかけるのか…
わかりませんね。彼女を好かれてしまっては、私の思い出を守れないではないですか。
…思い出…?
友「あぁ、もうほとんど思い出せませんね…」
私は一体、何を守る為にこうして彼を気にかけているのでしょうか…
わからないけれど、彼に時間跳躍だけはさせてはいけません。
睡眠時間も必要最低限に削って、足りない頭をひねり尽す訳ですが、一向に現状は良くなりません。
一体、どれだけこの時間を繰り返せばよいのでしょう…
あぁ、今日も日が昇った。義姉と、もう一人素性の知れない彼女には見つからないように。
さぁ、今日も暗躍を行いましょう。
友「
また今日も、彼を苦しめる記憶を植え付ける作業が始まります。
一体、いつになったら彼は私の思い通りに動いてくれるのか。
コレでは私の思い出が守れないではないですか。
この世界は随分と私に対して理不尽な様です。
きっと私は何度も選択肢を間違えたのでしょう。
けれど、今更立ち止まって等いられません。
この周回でも、彼が消えてしまうようであれば、次の周回では私自ら接してみましょうか。
今更、タイムパラドックスも無いでしょうし。
いえ、寧ろそれが起こった方がこの得体の知れない世界は消えてくれるかも知れませんね。
彼ではなく、この世界そのものが消えるなら、私の思い出を1からゆっくりと見直せたりしないでしょうか…
友「だとしたら、願ったり叶ったりですね。」
そうと決まれば、次の周回ではあの素性の知れない彼女の代わりにあの家に入り込む必要がありますね。
《蝶の標本》を得る為に。
《蝶の標本》を得たらどうするか?まずは接触でしょうか。
その際には、一言申し上げねばなりませんね。
友「
眠い目を擦り、監視を続ける。
《蝶の標本》を手にしながら、黙々と食事を摂っているその得体の知れない彼女を見る。
あぁ、彼女の様に食事も睡眠も安心して出来るなら。
彼女の様に気ままに彼と接触出来るなら。
それはますます成り代わるのが楽しみですね。
中2に目覚めた友…女
名前が似てると思いませんでしたか?