女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」   作:下品な牛乳◆N1RGqRourg

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未知的なやべぇのとの遭遇。~箱庭の彼と彼女と時守の気取り手~

男「いや、案の定ってなんだよ…」

 

 

 

 

 

 教室、友と向き合う様にして互いの机を繋げ、その席で手持無沙汰に小銭を弄びながら昼時の空気に混ざるでもなく先程の事を考える。

確かに俺は考え事をしながら歩いていた、だがそれでも人並みの歩行速度だったのだ。

だというのに、 購買についた頃にはめぼしい物どころかすべての飲食物が売り切れていた。

後に残ったのは「何をしに来たのか」と訊きた気な表情で購買をたたむ配給のおばちゃんだけであり、俺はその視線を背中に受けながら教室へと戻り、なぜか申し訳なさそうな友に一つ肩をすくめてみせてから、

黙々と机を突き合わせて今こうしている。

 

男「この学校のパン買い猛者(ガチ)勢どもはどんだけ脚が速いのか…」

友「お菓子パンみたいやね~」

 

 俺の真向かいに座りミルクパンをもふもふといただいて、よくわからんことを抜かしやがるコイツは、

いつの間にか購買部にたどり着いている素早さの甲斐あってか一番乗りだったそうな。

「小さいせいで人混みには弾かれちゃうから、人混みになる前に用を済ませればいいんだよ」

とはコイツの談である。

 

友「んくっ、あれ?今の巧くなかった?」

男「シラネェよ」

 

 咀嚼したパンをんぐんぐと嚥下しながら、先ほどのよくわからん比喩への評価を求めてくる友。

コイツの比喩を読み解くには少々頭を使わねばならないのだが、俺は菓子パンを買えていないのだぞっ! そんな他事に割けるエネルギーはない!

と心中で悪態つきながらも、友の言葉を反芻して解釈してみる。

 

 菓子パンとパン買い猛者(ガチ)勢とがなぜつながった?連中は脚が速いが……ん?”脚が速い”?

まさかコイツ、消費期限の短い総菜パンと割と保存の利く菓子パンを取り違えて認識してないか…?

 

 パンを買えずに余ってしまった小銭を、相も変わらず手の中でジャラジャラリと弄びつつ、

やっぱコイツ馬鹿だなぁー、”巧い事言う=関西人”って考えてそうな辺りも馬鹿っぽい。

と失礼な事を追確認していると、――

 

 

友「うん、わかんなかったならいいや。そいでさ、”今日はどうするの”?」

 

 

――と、訊ねられた。

 

 

 

 

 突然だが、俺には特別な能力がある。

 

 

 

 

誤解を恐れず有り体に言えば、身体一つでタイムトラベルできるのだ。

それを知っているコイツは、小銭を弄び続ける俺に「今回はどうするのか」と問うのだ。

 

 

友「―っても決まってるか。食堂が閉まっても未練たらたらしく減っていないお昼代を持て余してるみたいだし?」

 

 そう、俺は未だにお昼を食べていないし買ってすらいない。

それはひとえに菓子パンに固執しているということ。

そんな些細な欲望を満たすにも、俺の持つタイムトラベルは安易に役立つ。それほどにお手軽だがしかし―

 

男「うぅむ…」

 

―この力に伴う大きなリスクがまだみつからないのがネックだよなぁ…―

 

 指で弄んでいた小銭をぎゅっと握り、己の力に対して湧き出す疑念と恐怖を抑える。

 

友「やっぱ悩む?」

男「うん…正直、反則過ぎるだろ?」

 

 具体的なタイトルはパッと出てこない様な読み物の中でしか知らないが、普通こういった能力にはなんらかの制限やデメリットがある筈なのだ。

しかし、現状で確認できているそれらを鑑みても、明らかにメリットが勝ち過ぎている。

せめて学校から渡される配布物みたく、「コレはダメ、アレもダメ」と許諾やらなにやらを列挙しておいてくれれば良いのに…。

 

 

友「その考えは正しいと思うよ。まぁ一応、レシート渡しておく。」

 

 眼前に突き出される細く血色のいい柔らかそうな手と、そこに握られているレシートを見る。

別にコイツに集られている訳ではない。むしろ俺がコイツに集っている。

 

 己の口からふぅと小さく吐息が洩れるが、友には何も言われない為、俺自身も構わないようにしてそのレシートを受け取る。

校内でレシートの発行はいいのだろうか?と思いつつ、受け取った簡素な購買部のレシートを眺める。

 

 

友「あ、ついでに言っておくと、次の授業は”保健”をとっぱらった”保健体育”だからな。」

 

 しげしげと眺めつつまたも考え込みそうになった俺に、友からそんな声がかかる。

 

男「?……ホケンをとったホケンタイイク??…あ、あぁ。なるほど。―おいおい、そりゃあますます、時間飛んでパン買わなきゃならんじゃないか。」

 

 つまり腹に何か入れておかなきゃばてるかも知れない。いや、男子高校生の食欲舐めんな、入れてもばてるわ。

しかし、コイツもコイツで覚えたての言葉や言い回しを使いたがる子供みたく、遠回りな表現をしやがるなぁ。

わかり難い……というか、昼休み前に保健体育の授業やってたの?朝からお盛んね!スケベィ!

 

 

友「変な顔になってるぞ~。」

男「フガッ!プガッフガガ~!!」

 

 妄想の最中だというのに、レシートをくれたこいつは俺の鼻をひっつかみうりうりとねじる様に引っぱりやがった。

「下らない事考えてるだろ~?」との指摘を受けるが、いやいや、もしかしたら下らなくはないかも知れないだろう?

 

 ってかンな事よりも―

 

男「ハガヘッ!ハッハトハガフンダッ!!」

 

 いい加減痛くなってきた鼻に、放せ!と抗議の声を上げる

友「あぁーはいはい。」

男「プヘッ…意外と痛いな。」

 

 空気が冷えてると肌も敏感になる。

教室の中は暖房で暖かいとはいえ、季節は冬の為か、凍てつくような空気がすぐ外に広がっている気配を感じられる。

少しひりひりとする鼻を撫でつつ、友と視線を合わせる。

 

 

男「それで、また訊くけどさ…お前はそれでいいのかよ?」

友「またそれぇ?」

 

 「たはっ」と照れ隠しのように破顔一笑してから、友は頭をぽりぽりとかいた。

 

俺の能力、タイムトラベル――正確には違うが――の効果を感じるのは主観のみなら俺だけのはず。

ならば、俺の能力を唯一知っているこいつは、俺が時間を飛ぶたびにその間の自分の記憶が無くなる事を―

 

―つまりその間の人の記憶や感情を俺が殺すような行為を、こいつは容認しているということになる。

 

俺一人で背負うなら訳無いと思える問題だか、それを知っているコイツに同じ様な荷物を余計に背負わせていたくはないというのが本音だ。

そんな俺の独善を知っていてか否か「別に構わないよ」と軽く前置いてから友は言葉を続ける。

 

友「今のボクと記憶が違うのなら、それはどうしたってボクとは言い切れないから。」

 

 照れくさそうに言ってるけど、それって答えになってるのか?

 

男「…お前がそうならいいんだけどさ。」

 

 ふっと息を吐き、それに合わせてクシャっと今貰ったレシートを握り締める。

 

すると、その拳の中に暖房の効いた教室の中で尚ハッキリと感じられる熱が湧き出す。

拳の中からはみ出すレシートが、蒼い光になってどこかへさらさらと飛んでゆくイメージを視る。

 

 

男「なら多分、今のお前とはこれでオサラバだ。」

友「いつも言ってるよね」

 

 ぐっ・・・正しいが正しくないぞその指摘。

精一杯のカッコつけで、心に一旦区切りを付けようとした折に、友の容赦ないツッコミが刺さる。

 

 

友「まぁ、いつの時間だろうと、ボクがそこにいればボクはボクだと思うし。」

男「抽象的かつテキトーな奴だなぁ……」

 

 最後まで言葉遊びが好きな奴である。

 

男「それじゃあな。菓子パンはおいしくいただいてくる。」

 

 改めて恰好をつけて、俺はその時間から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

――蒼く淡く輝く砂粒が、暗い宙を流れるように漂う。

――暗い宙にくっきりと浮かび、大きく逆巻く蒼い渦がその集合体であり、流れ着く場所である。

 

 

 俺のタイムトラベルには、いくつかの制約がある。

その内で一番大きい物が、”手元に何らかの情報がないと時間を飛べない。”ということ。

そして、”その情報が記録された時間と場所にしか行き先は選べない。”

 

 発掘大好きな考古学者などには重宝しそうな制約だが、 未来に帰る為にはかなりめんどくさいプロセスを踏まえなければならないので、俺は発掘の為に何千何万年も時を越えるつもりは無い。

 

 

――どこか遠くで荒々しくも儚げに逆巻く渦の中から、いくつかの蒼い光が漏れ出て行き、遠いどこかの星の表面で集まる。

 

 

――その光の粒がサラサラと、握り締めたレシートの形に寄り集まってゆく幻を見る。

 

 

 

 足先から頭へと下降感が走り巡り、足下に地を踏みしめた時の痛みを感じるとともに、握りしめたレシートは淡く輝きながらサラサラとまた崩れ去ってしまった。

 

ゆっくりと息を吐く。

 

正直辛い。

 

時間を飛ぶことがじゃない。

 

 

飛ぶ時に椅子に座っていたので、今は完全に空気椅子の姿勢なのだ。

 

 

男「フッ………フゥッ…フフゥワツ!!」

 

 

 姿勢の維持に限界を感じて変な吐息が洩れるが、構わず眼を見開きながら、思いっきり後ろへと倒れた。

 

 受身はカンペキにっ!

と、体を丸めてゆくが、すぐ後ろに壁があった。

 

男「あだっ!!っつぅ」

友「たはっ、大丈夫?」

 

 パンと飲み物を買っていた様子の友は、購買部のおばちゃんからおつりとレシートを受け取りながら、苦笑しつつも心配そうに俺に振り返る。

心配はいらないと手を振って応えるが、正直声が出ない。

 

「巧く隠れたもんだねぇ。」 なんて、感心したように言葉を洩らす配給のおばちゃん。

 

配給「友ちゃんから今日も隠れてるって聞いてたけど、いつも全然わかんないんだもんねぇ」

 

男「は、ハハハ…」

友「ホラ、立てるか?」

 

 起き上がろうとしつつおばちゃんに笑って返そうとするが、巧く笑えず少しむせてまた姿勢が崩れて倒れる。

そんな俺へと差し出された友の手をつかみ、助力を受けて立ち上がる。

 

男「はぁ…はぁ…空気椅子は辛いなぁ……おばちゃん、クリームパン一つ。」

 

 立ち上がるときの勢いをそのまま購買部の受付にぶつかるようにしがみつく。

 

配給「無駄にがんばったねぇ!飲み物おまけしたげるわ!」

男「おぉ…太っ腹!」

配給「倍額取るぞ」

男「スリムウェストッ!!」

 

 調子にのったせいでぼったくられる所ではあったが、切り返しが巧く決まってか、おばちゃんはデレデレと顔を綻ばせながらカフェオレを2つくれた。

 

男「2つも良いと申すか…かたじけない…っ!!」

 

 言いながら拝むように手を合わせ、クリームパンの会計を済ます。

教室でゆっくり味わうか。なんて、思わぬ収穫に笑みを浮かべて、受け取ったお釣りの小銭を尻ポケットに突っ込み、後ろで待っていた友と連れ立って教室目指して歩き出す。

すると、目の前にあるピロティの先から、大勢の生徒らが走るともすり足ともつかない歩法により、サカサカドドドと音を立てて大挙した。

 

男「おーおー、パン買い猛者が慌てておるわい!」

 

 あそこまで慌てずとも目当てのパンを買えた俺は、ズルした気持ちを誤魔化すためにそんな事を言う。

 

友「お前のせいでありつけなくなる奴が一人くらい出るかもなー」

男「ぐっ……それを言うなよ…」

 

 時々真っ直ぐ鋭利なツッコミをしてくるからコイツは油断ならない。

 

友「でもまぁ、よかったよ。今日も来てくれて。」

 

 本来なら俺が購買に間に合わないであろう事も、それを経て時間を飛び越えてくるであろう事も予想していたのか、誤魔化すようにそんな事を言う友の横顔に目を向ける。

「よかった」等と言われる様な事をした覚えはないが、一緒に食事を摂ることを楽しみにしてくれていたのだろうかと考えて、少し嬉しくなった俺は「なんで?」と素知らぬ顔して言葉の続きを促す。

 

友「…”男が隠れてる”って購買のおばちゃんに言ったの、嘘になるところだったから!」

男「え、いやいやいやいや!予定嘘もいいところだろ?!」

 

 勝手にいい気になっていた俺の予想を裏切って、返ってきたのはなんとも下らない返答だった。

というか友よ、それはどう転んでも嘘つきになるぞ。

実際俺は隠れてなかったからな。

 

肩を落として、嘆きを漏らす。

 

男「なんかもっとこう……友情味溢れる話かと思ったのに…」

友「友情味?」

 

 「たとえば、どんな?」とリクエストがかかったので、少し姿勢を正して空いている両手を胸元の高さでグッと握りしめながら答える。

 

男「「一人で食うより百倍いいからなっ!」スマイルにかっ! とかさぁ…」

 

友「それは今でも難しいんじゃないかなぁ……たはは」

男「えっ…?」

 

 バツが悪そうに、友は俺の手元を指差した。

互いに立ち止まってから、友の指摘の意味がわからない俺はその指示する先をゆっくりと眼で辿った。

 

そこには…――

 

 

男「なにも……ない…?!」

 

 

 先程会計を済ませた筈のクリームパンも、サービスされた2つのカフェオレも存在しなかった。

 

 

――そんなまさか!わざわざ昼食のために時を越えてきたというのに!

 

――これがバタフライ・エフェクトというものなのだろうか…っ!!

 

 

男「これが…タイムトラベルのデメリット……!」

友「いやいや、違う違う。絶ぇ~っ対に違ぁ~う。」

 

 冷や汗を滲ませ、自分の能力の恐ろしさを確認していた俺に、友はヤレヤレと呆れた様子で言葉を差し込んでくる。

 

友「お金払うだけ払ってパンを受け取ってなかったじゃないか。」

男「悪い、ちょっと急用を今お前に知らされた。行ってくる。」

 

 言い切るのもまどろっこしくて、言葉の途中から駆け出していた。

 

友「…走れエロスか……食欲なのにな。」

 

 そんな言葉を背中に受けて、エロスは先程の大勢の生徒らの十倍も早く走った。

購買に置かれた無地の袋を提げた一団の生徒と颯っとすれちがった瞬間、更にと気が逸る会話を小耳にはさんだ。

「今日は食いっぱぐれずに済んだよ、多くの奴らは、今頃は泣く泣く食堂の不味い飯に並んでいるよ」ああ、その奴ら、その奴らに混ざらないために私は、いまこんなに走っているのだ。

クリームパンを売られてはならない。急げ、エロス。おくれてはならぬ。金と食欲の力を、いまこそ知らせてやるがよい。

風態なんかは、どうでもいい。エロスは、いまは「戻ったらエロスとやらについて問い詰める」という邪念と、食欲とで一ぱいだった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

男「ここ数十分で、この道三往復目だぞ…」

 

 まぁ。主観でだけど。 と心の内にて二の句を続ける。

 

パン買い猛者勢が一通り購買部の在庫を片付けた直後、

震える声でおばちゃんに話しかけた今しがた。

おばちゃんの馬鹿笑いと共に忘れ物のビニール袋を贈られ、俺はまたまたこの廊下を通るのである。

 

男「ラッシュが終わった途端、閑散としすぎだろうこの廊下…」

 

 昼休みは誰もが通る道だというのに…パン買い猛者勢は凄い勢力なんだな…

などと感嘆しつつ、教室にて待たせる友のことを申し訳なく思っていると――

 

 

 

 

 

 

 

 「そこまでです、タイムトラベラー。」

 

 

 

 

 

 

 

――勝気な雰囲気の見知らぬ女生徒が、俺の前に立ちはだかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 筆者は激怒した。必ず、この無知蒙昧のパロディを作品から除かなければならぬと決意したのに。
筆者には国語がわからぬ。筆者は、『ハーメルン』のROM専である。
笛を吹き、作品を読んで暮して来た。けれどもパロディに対しては、人一倍に敏感♥であった。


 あからさまなパロネタは手直しの際にカットしているのですが、
1つカットしたと思ったら2つ増えたという具合。
何故?何故なの僕の両手の白魚くん…プラナリアよりも厄介な分裂能力を持つパロディ盛り込みたい病を患ったこの指を、一体どうしてくれようか。
静養させるために、とりあえずキーボードの上に乗せておこう…。


「オリジナル作品」とタグ付けしているにも関わらず、彼の『太宰治』先生による言わずと知れた短編小説をパロってしまうこの始末。
パロディは病気なんだ、言語野にしわを増やす悪い病気なんだ、俺は詳しいんだ。


 もはやただの自責ではありますが、これをもって『太宰治』先生への謝辞とさせていただきます。


※改稿情報
10/23/2016:改行と文頭の空白を削減。
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