女「そこまでです、タイムトラベラー!」男「またかよォッ?!」   作:下品な牛乳◆N1RGqRourg

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【注意】

残酷な描写が御座います。



「だからね、大丈夫!」~思い出の彼と少女~

◇◆◇

 

 

男「ほれ見ろ!俺よりカックイイ様気取ってるから、女ちゃんに殴られるんだ!」

 『閻魔帳』の一文を読み、向こうの男が殴られたと知って俺は歓喜していた。

ただでさえモテてる奴が、あんなキザったらしい態度で振舞う様を見せられているのだ、これくらいの意地の悪さは許容して貰いたい。

しかし、読んでいる限りどうやら向こうの俺は、新しい世界を始めるか否かで未だ悩んでいるらしかった。

読み手の気持ちが抜けない為、どうしても岡目八目と言った所だが、何故あんなにも意気込んでパラドックスを起こした男が、今になってあんなに尻込みするのやら。

俺が向こうの男相手に募らせているフラストレーションは、ただ確りとモテている所以外に、そう言った点もありそうだ。

男「まぁ、俺の望みを覚えていたのは感謝しよう。」

 これで、次元を超えた女ちゃんとの茶話会へと一歩近づいた。

実現可能か否かは、まぁやってみなきゃわからんけれども。

しかし、なんだ…――

男「――女ちゃん、まさか小学生だったなんて…」

 いや、確かに行動に衒いが無いのは子供の様ではあったけれども。

しかしそんな幼い相手に親しみというか、有体に言うなら好意的な何某(なにがし)かを抱くなんてなぁ…

 

男「…俺様、真性のロリコ…――」

 

妹「おはよー、あにぃちゃー!!」

 

男「――ォールっ!!ローリコールだからなチビ!今のはローリコールと言ったのだからなっ!!」

 突然、音を立てて扉を開けて、俺の部屋に突入して来たチビ。

思わず無理の有る取り繕いをしてしまう。

低い解職請求ってなんだよ俺、解職請求があまり無いなら良い事じゃないか俺。

妹「?ん~…よくわかんないけど、おはよー!」

男「あ、あぁ…おはよ。」

 俺もよくわかんなかったよ、何言ってんだろうな。

俺の焦りなど露知らず、チビはモーニングコールを連発する。

というかもうそんな時間か。

適当に返して、チビの頭を撫でる。

男「どしたぁ?今日は学校ねぇだろう。」

 世間様は日曜日だ。

昨日は第2土曜日だったので、脱ゆとり世代に組み込まれたチビは学校があった。

そしてチビに学校があるという事は、送り迎えをしている俺も一緒に出る必要があったが、私服でソレをすると何故だかにこやかな警察官に職務質問を喰らうので、仕方なしに制服に袖を通し、制服を着たなら序でに学校で補習を受けているであろう馬鹿共を冷やかしに行くかと、校内に入った訳である。

まぁ、進学校というシステムなので、立地の観点から見てチビに何かあった際はすぐに向かえるという理由から、普段も校内に入って待機しているけれども。

そんな訳で、今日は基本的に2週間に3回ある学校に行かないデーなのだが、はてさてチビはどんな理由でウチに来たんだ?

妹「おぅ!遊ぼうぜぃっ!!」

 どうやら遊び相手が欲しかっただけらしい。

しかしこんな時間からウチに来るとは、勤勉なんだか、暇なんだか。

まぁ、コイツ自身がまだ自覚してねぇ能力のせいで、俺以外とまともに交流なんか怖くて出来やしないだろうから、俺の所に来るのはわかるんだけども。

男「ふむ…なら、偶には外で一緒に遊ぶか!」

妹「うぉ~!!いつものあにぃちゃなら、外でだけは遊ばせてくれないのにっ!どうしたかぁっ!!」

 相変わらず、本を読むか俺やあの老夫婦と喋ってばかりいるせいで、言葉使いが愉快な事になっているチビの頭に乗せたままの手をワシワシと動かす。

昨日から夜なべして『閻魔帳』を読んでいたのだが、なんとなく、今の自分ならチビと一緒に外で遊ぶくらいは出来る気がした。

男「まぁ、偶にはな。」

 普段であれば、時間渡航者(タイムトラベラー)のせいで未だ安心して出歩けないから、コイツと外で長時間遊んだりはしない。

 

男「うぉっし!」

妹「うぉっし!」

 気合を入れながら、ベッドから腰を上げる。

チビも真似して声を出す。

昨日から着替えもせずにそのままだった制服を脱いで、俺の専属コーディネーターである母ちゃんセレクトの外着を適当に引っ掴む。

流石に日曜まで制服だと逆に怪しまれるので、クソダサ不審人物マンとなってしまうのは致し方無い。

はぁ、母ちゃんの専属契約を解職請求したいけど、俺の懐を痛めたくないからリコール出来ない…なるほど、これがローリコールか。

下らない事を考えながら外着を着込み、片手に『閻魔帳』を握り締め、チビを抱え上げて部屋を出た。

 

男「母ちゃ~~ん!!チビと外で遊んで来るぁ!!」

母「人ん家の子なんだから、ちゃんと見ときなさいよぉ~~!!」

 

 わかってるっつの。

 

 

―――――――

 

 

A「さぁ、この子がどうなっても良いのですか!はやくその《(ビブリオン)》を寄越しなさい。」

 

 わかってなかった。

公園へと歩き始めて数分後、道の途中で早速『閻魔帳』をつけ狙う3人の悪徳時間渡航者共に囲まれた。

すでにチビは相手に捕まってしまっている。

 

やべぇ、自惚れてかなり油断してた。

 

B「言っておきますが、少しでもその《本》を捲れば、こちらのおチビちゃんは我々が頂いて行きますよ?」

 

 その言葉で、『閻魔帳』に伸ばしたもう片方の手をとめる。

捕まっているチビは気を失っているので、出来る事なら可及的速やかに保護しなければいけない。

あの年頃の子供が気を失うなんて、それだけで酷い負担の筈だ。

 

男「…わかりました……降伏しますので、その子を返してくださいっ!!」

C「まずはそちらの《本》が先ですよ?お兄さん。」

 ビブリオンだのなんだのと此の『閻魔帳』を呼称する連中の言葉に、女ちゃんの言っていた暗喩名称(コード・ネーム)なるものを思い出していた。

確かに、第三者が聞いただけで本を連想する呼び名ってのはどうなんだろうなぁ…

この本が欲しいとかなんとか言ってたな。良いさ、やるよ。

 

男「くっ…わかりました…っ」

 

 苦い表情で、『閻魔帳』を妖しげな覆面をした女性に渡す。

ソレを受け取った女性は、他の二人が視ているからと無防備に『閻魔帳』を開いて中身を確認していた。

 

C「ふむ…どうやら本物のようですね。」

男「そ、そうですか?…で、でしたらはやく!はやくそのこをこちらにっ!!」

 

 俺のわざとらしいお決まりのセリフに、妖しい覆面をした女性は覆面越しにもわかるほどに口端を吊り上げる。

 

C「誰もお返しするとは言っておりませんが?」

男「だと思ったよ。」

 

 予定調和のやり取りが済むと同時、『閻魔帳』を持った女性に向かって手をかざす。

すると、途端にその女性は蒼い光となって散った。

宙に投げ出された『閻魔帳』を掴み、先程何処ぞへ跳ばした女性の事を意識する。

数万年以上過去に跳ばされた女性は、そこで記述が途絶えていた。

 

男「へぇ…本当にこういう使い方が出来たのか…」

 

A「お、お前ッ!!今一体何を…」

B「気にするな!さっさと跳ぶぞっ!!」

 

 チッ、手慣れてる奴が居やがる…

最初に俺へと噛み付いた覆面の男性は、「あっ、は、はいっ!!」と狼狽えながらも、もう一人に続いて辺りから消えた。

流石に焦るが、落ち着いて二人の居た場所に駆け寄って、蒼い光を身に纏う。

 

男「記録や文献を媒介に跳ぶんなら――」

 

 クレーターすら媒介に扱えるなら――

 

男「――常に形を変え続けている大気を媒介に連続で跳び続ければいいんだ!」

 

 何故文献を媒介にすればそれを記録した時間と場所に跳べるのか。

それは「イメージし易いから」だ。

そもそも紙に引かれたインクだって、空気に触れるだけでその性質は劣化してゆくので、イメージさえ出来ればその()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

この理屈は化石にも同じ事が言えて、それを媒介に時間跳躍を行うと何故その化石が生きていた時代に戻れるのかと言えば、それもまた「イメージし易いから」だ。

この地上で不変の物など存在せず、時すら可変であるのだから、記録された時間と場所なんて常に変移し続ける筈なのに、それでも狙った時間に跳べるのは「狙ったから」なのだろう。

 

故に。

 

視界一杯を覆った蒼い光を、先程まで『閻魔帳』を持っていた手で弾く。

目の前には、チビを担いだ妖しい覆面の男の後姿がマヌケに突っ立っており、その向こうでは妖しい女性が今まさに俺に因って過去に跳ばされたばかりであった。

 

A「お、お前ッ!!今一体何を…」

B「気にする…―!!後ろだっ!」

A「えっ」

 

 妖しい男性の不思議がる声が、最後まで響く事は無かった。

何故なら俺が今、背後から過去に跳ばしたからだ。

その際、男性の手が失くなって支えを失ったチビを、優しく抱き留める。

呼吸を確認し、過去の俺に向かって一つ頷き、チビを抱え直して立ち上がる。

 

男「後は貴方だけですが。――」

 

 正面から、最後に残ったその覆面をした小柄な男性へとにじり寄る。

 

男「――どうなさいますか?」

 

 その対面、小柄な男性の背後から過去の俺がにじり寄る。

男性は俺たちのどちらにも背を向けまいと半身になるが、首の挙動を見るに、視界の端の情報を捉える訓練は受けていない手合いと見た。

 

B「ばっ、化け物めっ!!」

 

 そう言い残して消えようとするが、過去の俺が『閻魔帳』をわざとらしく構えてみせ、男性の意識が僅かに其方(そちら)へと向いた瞬間にその後頭部を大きく蹴り抜く。

顔から路面へと倒れ行くその背中をストンプで踏みにじり、呼吸出来ない様にする。

走り寄って来た過去の俺に、空いた手で二進法による経過時間を示し、ソレに頷いたのを確認してから『閻魔帳』を受け取る。

先程まで俺が居た場所に立ち、蒼い光に包まれて消えてゆく過去の俺を見届ける。

 

そこでついつい、ふぅと息を吐く。

多少無理やりだったが、ループのパスは繋いだのでコレでパラドックスは回避した筈だ。

 

男「さて…」

 

 自分の声とは思えない程冷たい声が腹の底から響いたが、冷え切った思考にとっては取り沙汰す程重要な事でも無いので捨て置く。

俺の足の裏で(むせ)ながら這いつくばっている覆面の小柄な男性の背中、脇腹辺りをもう一度強くストンプし、呼吸困難に陥っている様子を見て取ってから、足で蹴り上げてうつ伏せから仰向けに寝返りを打たせる。

片手を踏み、空いた足で肘のファニーボーンを強く蹴る。

もう一方の腕にも同様の暴力を行い、両手に張っていた力が失せて指が丸まっていくのを確認し、男性の鳩尾に膝を乗せてその覆面を見下ろす。

 

男「化物だなんて、そんなにつれない事仰らずに…貴方も同じ穴の狢じゃないですか。」

 

 腕に抱いたチビの胸に『閻魔帳』を置き、空いた手でそいつの妖しい面を剥ぎ、顔を晒す。

 

男「!おやまぁ…」

B「くっ……」

 

 可愛らしい小さな男の子が中に居た。

 

B「殺せッ!」

男「おやおや、言葉遣いまで可愛らしい方ですね。」

 

 言動から察するに、コイツがさっきの2人のリーダー格の様だ。

片手で『閻魔帳』を開く。

記されていくのは、この間俺が糸を引いて留置所にぶち込んでやったサイコペド野郎の事。

いつぞやの世界では、幼児を惨殺して夕方のニュースで俺を大層慌てさせてくれた野郎だ。

足下の少年に「化物」と言われて思い出したのがコイツだった。

ギラついた目をギョロつかせて、常に殺気染みた圧を放つ野郎で、口にする言葉も極度に自己へと屈折した解釈ばかりの、相対するだけで身の危険を感じる様な化物だった。

結局、あのニュースはチビの事ではなかったが、惨殺される前に監禁されていた子供を助け出せたのは僥倖だ。

惨殺が起きていない為に事件性の調査が長引いてしまっているが、監禁に関してだけでも奴は裁かれねばならない。

ソイツは人格を破壊し尽くさない限りは更生の余地が無い程の化物なので、俺の怒りを買った仕置きには丁度いいだろう。

 

男「殺しは致しませんが――」

 

 最新の記述を手でなぞる。

 

男「――一生立ち直れなくして差し上げますよ。」

 

 小さな男の子を、外套と覆面、それから機械類だけここに残して、奴が入れられている留置所の部屋へ跳ばした。

 

男「チビに手を出すからだ。」

 

 音を立てて『閻魔帳』を閉じ、長く息を吐いて、怒りを鎮める。

腕の中ですぅすぅと寝息を立てるチビを見る。

 

男「流石に、調子に乗りすぎたか……」

 

 能力の応用の利く幅を試してみたかったのだが、その為に守る対象であるチビを巻き込んでは意味が無い。

 

男「…次は、チビに危害が加わる前に片をつけるか……」

 

 次なんて無きゃいいけど。

 

 

―――――――

 

 

 公園のベンチに腰掛け、その横にチビを寝かせる。

いくら元野生児と言えども、子供を椅子に座らせながら寝かせるのは身体に悪いが、チビの背中をそのまま席に寝かせて頭を俺の腿にのせる。

男「………」

妹「すぅ……すぅ…」

男「……ははっ」

 

 意味も無く笑い、チビの頭を雑に撫でる。

 

妹「……んぅ…すぅ…」

 なんとも、力の抜ける寝顔だ。

持て余した手を背もたれに回し、チビを撫でていた手は『閻魔帳』にまわした。

空いた腿に『閻魔帳』を開いて乗せ、パラドックスで屯している3人の様子を窺う。

男「…進展はあったのかねぇ……」

 無いと困る。

正直、読み物のつもりで途中までは読んでいた。

俺はただこの時代に生まれて、この時代で生きて来たが、この能力の由来はわからなかった。

けれど俺自身も、あの3人の話の中に出てきた、()()()()()()()()()()なのだろう。

 

…俺の発端が、そんな未来を歩んだなんて聞いたら、ただ見ている訳にもいかないだろう…。

 

男「………」

 チビを見る。

妹「すぅ…すぅ…」

 いつか家族を殺すかもしれない奴に膝枕されて、それでも安らかな顔である。

男「…なぁ、俺がお前を連れて来たのも、運命だったのかな……」

 教えてくれるなら、教えてくれ…

お前が幸せになれる道を、教えてくれ。

 

『閻魔帳』に視線を落とすも、向こうのパラドックスそのものには一切の進展が無かった。

 

またも大きなため息が出てしまう。

妹「……ん…?」

 膝の上、もたついた手つきで、目を擦るチビ。

起こしちまったか?

妹「…あれ…?あにぃちゃ……?」

男「おう、おはよ。」

 眠そうに「うぅ…おはよ~…」とぼんやり返すチビ。

もそもそと起き上がり、腰掛と敷板の間にある広い隙間に足を入れて俺に向き直る。

そして俺の顔もろくすっぽ見ずに抱きついてきた。

男「おいおい…俺じゃなかったらどうすんだ…」

妹「においでわかるもん……」

 背中に回した手がきつくしまる。

男「ぐぇっ」

 匂いでわかるなら、初めて会った時も警戒すべきだろうに…

胸元にある頭をぽふぽふ叩く。

 

男「チビよぉ・・・」

妹「ん~?」

 もぞもぞと首を動かし俺を見上げる。

男「もし、俺がお前の大事なものを盗ったら、どうする…?」

妹「ん~…そんなことは無いよ。」

男「おま…」

 ろくに考えもせずに…

 

妹「だってね、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

妹「だからね、大丈夫!」

男「………」

 

男「…そっか。」

 

 チビの頭をくしゃくしゃになるまで撫でる。

 

お前は何で、俺がいつも助けてるって知ってんだ。

 

 




 
 
 Bさんはその後、男によって助け出されましたが、大層なトラウマを抱えました。

実際、話し口が怖い人と話すとマジでトラウマになって色々吐き戻したり排泄したりするレベル。
いいか皆!人間は言葉で死ねるぞ!気の持ち様とか関係なく、心とメンタルと社会的に死ぬぞ!
その三つが死んだら自然と命も終わるから、怖い人には気を付けて、自分をしっかり持って、SAN値に注意して生きような!
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