幻想悪魔伝~Nameless Little Devil~   作:超淑女

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Mission11~不死鳥舞う~

 月の畑。

 その向日葵畑の中心に、上白沢慧音が立っていた。

 彼女は右手にショットガンを持ち鋭い目で空を見上げる。

 スカートにスリット、そして腰にベルト。そのベルトには、ショットガンの弾丸がつけられていた。

 慧音の左手には二つの弾丸。

 ショットガンの銃身を折り、そこにある二つの穴に弾丸を入れると、手の中でショットガンを一回転させる。

 ガチャン、という音と共にショットガンの銃身は直る。

 

「さぁ、来い」

 

 結界にぶつかる悪魔たち。

 虫型の悪魔『インセク』が主で、結界にぶつかってはバラバラになっていく。

 慧音は、空いた左手を空高くに掲げる。

 

「どちらにしろ結界も、私も持たないときが来ている……ならば、これで終わりにしよう」

 

 指を、鳴らした。

 ガラス細工が壊れるように結界が壊れる。

 虫型の悪魔が、中へと侵入してきた。

 

「この畑は絶対に汚させん!」

 

 どこからともなく、慧音は拳銃を取り出す。

 M1911コルト・ガバメント。

 右手のショットガン『コヨーテ』と左手の拳銃で、彼女は一人踊りだした。

 

 

 

 人里。

 博麗神社にて、机の上には酒瓶が並べられている。

 ちゃぶだいを囲むように倒れている霊夢と魔理沙。

 小悪魔は一人、杯を傾けてゆっくりと酒を飲む。

 

「ペースを守って飲まないからそうなるのです」

 

 もう二人は寝てしまっていた。

 フッとほほ笑んで立ち上がる小悪魔は、紅いコートを着る。

 置いてある双銃を拾うと、手で回してホルダーに入れ、剣を持って背中にかけた。

 

 そして小悪魔は歩きだす。

 

 

 

 慧音が一人、片手の拳銃と片手のショットガンを撃ちながら畑を守っていた。

 だが、それはならず、虫型の悪魔はひまわりを踏みつけながら慧音へと迫る。

 幽香が残した枯れないひまわり。

 それを一つでも多く守るために戦う慧音。

 

 だが、すでにけーねハウスはボロボロで引き返すこともできなければ、逃げることなど到底できない。

 

「だがっ!」

 

 慧音の撃っているのは、魔力を込めた自作の特殊な弾丸で、弾丸一つで数十発は撃つことができる。

 だが、弾切れだってもちろん起こす。

 そして、拳銃の弾が尽きた。

 

「まだだっ!」

 

 慧音は拳銃のマガジンを落すと、拳銃を口にくわえる。

 ショットガンを悪魔数体に撃つと、十数秒の安全を得た。

 

 その瞬間、スカートのスリットの間から慧音の艶かしい足が見える。

 その太腿にはベルトがつけてあった。

 巻いてあるベルトには拳銃のマガジンが幾つか着いていて、それのマガジン一つをとって空中に投げる。

 

 散るひまわり。舞う花びらの中踊るようにショットガンを撃つ慧音。

 そして空いている左手でショットガンの弾丸二つをとって空中に投げる。

 流れるような動作で次はショットガンを手で折り、拳銃を口から取ると落ちてきたマガジンに丁度合わせるように拳銃を振る。

 拳銃にマガジンが装填された。

 まわるように拳銃を撃ち、迫ってくるインセクをかたっぱしから撃ち落としていく。

 その動きをしているうちに落ちてくるショットガンの弾を、先ほどの拳銃と同じ要領でショットガンに入れ、手の内でショットガンを一回転させ、直す。

 

「まだ終わってない!」

 

 ひまわりはまだ残っている。

 まわりにたかる悪魔たち。

 それらを殺し続ければ、いつかはひまわりを守れる。

 

 そして、彼女は戦い(踊り)続ける。

 

 

 

 その光景を、木の影から見る者がいる。

 少女は無表情にその光景を見ていた。

 黙って見ている少女の背後に、一人の女性が現れる。

 

「助けに行かなくても良いのか?」

 

「必要ない……私は準備の方にとりかかる」

 

 少女の言葉に、女性は二つ返事でその場から消えるように去っていく。

 月の畑から、踵を返す少女。

 背後に現れたインセク。

 それが大きな口を開き、牙をむいて少女に襲い掛かろうとした時。

 

 なにかの音がした。

 

 インセクは止まっている、少女は左手に刀を持ち、その柄を右手で持っている。

 

 ―――カチン、という音共に刀が鞘に収まった。

 少女が歩き出す。

 その瞬間、インセクとその両横にあった大木が両断され、倒れた。

 少女は、青い髪をなびかせながらその場を去る。

 

 

 

 慧音がたった一人、魔弾で悪魔たちを撃ち抜いていく。

 その顔には明らかな疲労が見えた。

 そのせいだろう。

 背後からせまるインセクに反応できなかった。

 跳びかかってくるインセクに気づいて振り返ったときには、もう構えるには遅すぎる距離。

 

「妹紅っ!」

 

 思わずつぶやいた名前。

 その瞬間、真っ赤な炎が目の前のインセクを灰へと変えた。

 炎と共に現れる人影。

 

 白銀の髪をなびかせて、現れた。

 

「呼んだ?」

 

 現れたのは、藤原妹紅。

 体の半分を炎に包んだ彼女。

 その炎が消えると、いつも通りの彼女だ。

 慧音の知っている彼女とは、少し違う。

 

「……ポニーテールも似合うじゃないか」

 

「ありがと」

 

 笑う妹紅。

 笑う慧音。

 あの頃とは少し違うけど、少ししか違わない。

 

「今はデビルハンター、依頼はある?」

 

「このひまわりたちを、守ってくれ」

 

 その言葉に、妹紅は胸ポケットから煙草の箱をとりだして、一本をくわえる。

 胸ポケットに箱をしまうと、人差し指を煙草の先端に向け———そこから火が出た。

 煙を出すタバコをくわえたまま、妹紅が笑う。

 

「ブッ飛ばす!」

 

 妹紅の両手から炎が舞い上がった。

 守護の炎が彼女を守る。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 悪魔が現れる前の頃の幻想郷……。

 三日月の下、慧音は自宅の縁側に腰をかけていた。

 杯を片手に、隣の少女を見る。

 少女が月を見る瞳は、自分とは違うものだ。

 

 少女。藤原妹紅も杯片手に口を開く。

 

「ねぇ慧音?」

 

 妹紅がつぶやく。

 いつもと違いしんみりとした、寂しそうな声でつぶやく妹紅。

 そんな雰囲気に動揺するわけでもなく、慧音は『どうした?』とだけ聞く。

 杯を置く妹紅に、慧音も同様に杯を置く。

 

「慧音はいつも隣にいて笑っててくれる。でも、怖い……いつか来るんだよ、こうして一緒にお酒飲んだり、喧嘩したりだっていつかできなくなるんじゃないかって、怖いんだよっ」

 

 少し震えている妹紅。

 彼女が蓬莱の薬を飲んで不老不死になってからずっと別れを繰り返してきた。

 だから必要以上に人とは仲良くしないようにと、そうしていた。

 

「なんで、慧音は、私と……私のそばに」

 

 次の言葉を出そうとした瞬間、慧音の手が肩に触れた。

 妹紅が慧音の顔を見る。

 慧音は笑っていた。

 

「私が……いつもそばにいる……隣で笑っててあげる」

 

 そういう慧音は、妹紅をそっと抱きしめた。

 妹紅は、慧音の背中に手を回す。

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 慧音と妹紅は背中合わせで立っている。

 お互いの疲労が激しいようで、肩で息をしていた。

 

「ご、ごめん慧音……助けてあげられなくて……」

 

「助けに来てくれたじゃないか、良いんだ妹紅……」

 

 そう言って笑う慧音。妹紅も、死はそんなに怖くなかった。

 慧音と、愛すべき者と共に死ねるのだから。

 怖いものなど何もない。

 ならば、彼女は両手を広げる。

 

「まだ、あきらめるのは早いんじゃないんですか?」

 

 幾度かの銃声。

 それと共に灰になるインセク。

 足音が聞こえてくる。

 二人が同時に見たその方向には―――紅の小悪魔がいた。

 

「お二人とも良く持ちこたえました……後は私が引き継ぎましょう」

 

 手の内にある拳銃を回転させる小悪魔。

 笑いながら、彼女は拳銃をホルダーにいれる。

 

「小悪魔、お前……」

 

 慧音がつぶやく、妹紅も唖然としているようだ。

 小悪魔の目はいつもと違う。

 鋭く、獲物を狩るような目だ。

 

「妹紅さん、良くやりました……貴女はそれで良い」

 

 彼女は背中の剣の柄を掴む。

 

「私に回された依頼は太陽の畑の調査依頼、場合によっての悪魔狩り、さて仕事の時間です!」

 

 剣を引き抜くと共に走り出した小悪魔。

 まず最初に、彼女はインセクを切り裂いた。

 インセクから吹き出す血飛沫、周囲のインセクが鳴き声を上げた瞬間、彼女の唇が不敵に歪む。

 

「Let's rock!」

 

 紅いコートと髪をひるがえしながら悪魔を切り裂く悪魔。

 彼女は片手で剣を振りながら、片手で銃を抜いて敵を撃つ。

 妹紅と慧音はその場を動けずにいた。

 

「はやく大将を出せば良いものを……」

 

 小悪魔は敵を葬りながらつぶやく。

 彼女が戦いだしてからというもの、ひまわりは一輪たりとも散らされてはいない。

 ひまわりの上に降りようとしたインセクはすべて小悪魔に撃たれ灰へとかわるからだ。

 

「っ……来ますか!?」

 

 強い力を感じた小悪魔。

 だが、その瞬間地響きがする。

 慧音と妹紅も体勢をくずさないようにしているが、突如大きな音共に地面が割れた。

 ひまわりが咲き誇っている中心から、大きな生き物が飛び出した。

 

 見るからに凶暴そうな顔をした蛇。

 いや、蛇というのもおぞましいほどだ。

 強靭な顎と体。だがその体はクジラのようにも見える。

 顔と半身だけが飛び出しているその巨大な悪魔を見上げる小悪魔。

 全長で言えば10メートル超はあるだろうか?

 

「貴様が反旗をひるがえした小悪魔かっ!」

 

 大きな悪魔が、声を上げる。

 小悪魔を見下ろしながら言う悪魔。

 

「私をご存じですか? これはこれは、名無しの小悪魔風情を知っていただいて光栄です……レヴィアタン様?」

 

 クスクスと笑う小悪魔。

 だが、その眼は笑っていない。

 

「さっそく質問をさせていただきます。紅魔館という真っ赤な館はご存じですか?」

 

 その言葉に、レヴィアタンは特に何も答えない。

 小悪魔はホルダーから拳銃を取り出すと、レヴィアタンに向けた。

 その瞳は鋭くとがっている。

 

「聞こえませんでしたか?」

 

「知らんな」

 

 普通にしゃべったつもりなのだろうが、大きな体故か、声も大きい。

 

「10年前のことですが……本当に覚えてらっしゃりませんか?」

 

「くどい! 我は10年前はここについてすらいない!」

 

 その言葉に、小悪魔は“いつも通り”不敵に笑う。

 紅魔館、かの双子の悪魔と共にいるに相応しき笑み。

 拳銃をホルダーにしまうと、小悪魔はレヴィアタンに指を向ける。

 

「さて———you ready to fight now or what?(そろそろ遊びますか?)」

 

「小悪魔風情が、わきまえろ!」

 

 暴れだし、ひまわりを散らすレヴィアタン。

 小悪魔が、紅い魔力を纏う。

 大きな翼がその背中から現れた。

 

「瞬殺コースと、しっかりフルコース……どう料理してほしいですか?」

 

「小悪魔ごときがよく吠える!」

 

 声を上げて暴れる。

 散るひまわり。

 小悪魔は両手で耳をふさぎながらレヴィアタンをにらむ。

 

「これ以上うるさいのはごめんです……」

 

 小悪魔の背中から現れた黒い悪魔の翼は彼女が悪魔だという証。

 その翼を羽ばたかせながら言う彼女に、鋭い目を向けるレヴィアタン。

 

「だまれぇっ!!」

 

 飛び上がる小悪魔。

 レヴィアタンは小悪魔に向かって口を開き、口から高密度の水弾を撃つ。

 だが、そんなものが当たるはずもなく、小悪魔は避けていく。

 

「Come on!」

 

「こざかしいわ!」

 

 その言葉と共に、撃ちだされる水弾。

 小悪魔は急降下してその水弾を避けた。

 

「甘いわ!」

 

 連続して撃ちだされた水弾。

 小悪魔は地上に着地する。

 直撃コースにも関わらず、彼女は表情を変えない。

 小悪魔の目の前で―――水は蒸発した。

 それは紅蓮の炎に阻まれたからだろう。炎と共に現れるのは藤原妹紅。

 

「たく、あたしもデビルハンターだってこと忘れるなよ?」

 

「申し訳ありません」

 

 妹紅と小悪魔は横に並ぶ。

 二人でレヴィアタンを見上げて、その口元に笑みを浮かべた。

 

「どうするか?」

 

「ブッ飛ばす……でしょ?」

 

「わかってんじゃねぇか、相棒!」

 

 走り出す妹紅、飛び上がる小悪魔。

 レヴィアタンは妹紅に水弾を撃つ。

 妹紅は走りながらそれらを避ける。

 

「必殺フジヤマ———」

 

 飛び上がる妹紅。

 そして、レヴィアタンの胴体部分まで飛ぶ。

 

「ヴォルケイノォ!」

 

 胴体を殴ると、その拳を撃ちつけた場所から炎が噴き出す。

 その炎はレヴィアタンの胴体を貫き、炎の槍となった。

 

「小悪魔ぁっ!!」

 

 地上に着地する妹紅。

 飛び上がっていた小悪魔は、口元に笑みを浮かべている。

 そして、高速でレヴィアタンの顎の下で止まった。

 

「撃符『大鵬拳』!」

 

 拳を、レヴィアタンの顎に撃ちつける。

 紅い気が込められた一撃は、レヴィアタンの体を体を打ち上げた。

 地面から飛び出して、レヴィアタンは空中へと投げ出される。

 

「ばっ……かなぁっ」

 

 その声が上空から聞こえた。

 小悪魔が、地面に背を向け、上空のレヴィアタンに体を向ける。

 双銃を抜いて、レヴィアタンに構えた。

 紅い魔力が雷のように双銃に奔る。

 

「小悪魔、つかえ!」

 

 妹紅の声と共に、炎が小悪魔の右の銃に纏わりつく。

 それは赤などという色ではない。

 言うなれば、生きている色だ。

 何度も何度もトリガーを引き、銃弾を吐き出す。

 その銃弾はレヴィアタンを貫いていく。

 

「Are you ready?」

 

 小悪魔が着地して、再び双銃を上空に向けた。

 紅蓮の炎と紅の魔力が臨界点まで高まり交わる。

 

「合言葉は?」

 

 妹紅の問いかけに、小悪魔は口の端を吊り上げ笑みを浮かべた。

 

「Jack pot!」

 

 トリガーが引かれる。

 左の紅い魔力を纏った銃弾。

 右の紅蓮の炎を纏った銃弾。

 二人の力を纏った二つの銃弾が、交差して一つになる。

 そしてその銃弾は、レヴィアタンを貫き———。

 

「おのれ小悪魔ぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

 ———灰へと還した。

 

 風に乗り、灰は散っていく。

 小悪魔は双銃を回転させてホルダーに入れる。

 振り返ると、妹紅はすでにそこにいなかった。

 

「一緒に倒したのに……冷たいですね」

 

 別段表情を変えずにつぶやく。

 先ほどから同じ場所にずっと立っている慧音。

 回りを見ているのは、あたりのひまわりがすべて散ってしまったからだろう。

 妹紅が慧音に駆け寄る。

 

「慧音……」

 

「妹紅っ……」

 

 妹紅の胸元を、すがるようにつかむ。

 そんな慧音を見たことがない妹紅。

 長年付き合っていたが、そんな姿は見たことが無かった。

 

「幽香にっ……嫌われてしまうっ、このままじゃっ……こんなことにしてしまって、私は幽香のように強く、生きて、ここを守らなければならなかった、のにっ!!」

 

 涙を流す慧音。

 妹紅はどうしていいかわからずしどろもどろしている。

 そんな光景に呆れた悪魔が一人。

 

「いい加減にしなさい」

 

 凛とした声が響く。

 その声の主は小悪魔。

 

「幽香さんはもういません、嫌われることはありません……死人にばかり目をやって、今、目の前で心配している人は置き去りですか?」

 

 その言葉に、慧音は顔を上げる。

 そこには、困ったような顔をしている妹紅―――だが、笑っている。

 慧音は涙をぬぐうと、まっすぐに妹紅を見た。

 

「妹紅、すまん」

 

「なに、気にしないでよ……ただこれだけはわかって欲しい、慧音が望むなら」

 

 表情を引き締める。

 申し訳なさそうな表情をする慧音。

 

「慧音が望むなら、私はいつでもそばにいる、隣で笑っててあげる……」

 

 その言葉に、慧音の瞳から拭い取ったはずの涙がこぼれ出てきた。

 流れる涙が地面を濡らす。

 ここで声をかけるなどという無粋なことはしたくない小悪魔だったが仕方ないと一息つく。

 

「あと一つ」

 

 少し話しづらそうに、小悪魔が口を開いた。

 邪魔者は早々に退散したいところ。

 

「慧音さん、そこからゆっくり下がってください」

 

 その言葉と共に慧音は小悪魔を見ながら数歩下がる。

 笑みを浮かべて、下を指さす小悪魔。

 

「ん?」

 

 先ほどまで慧音が立っていた場所、そこには———。

 

「こ、れは……」

 

 一輪のひまわりが咲いていた。

 いや、咲いているわけではない。

 まだ小さいが、ひまわりだった。

 

 幽香が残したひまわりの子供だろう。

 

 慧音がしゃがみこんで、そのひまわりを撫でる。

 嬉しそうに笑いながら涙を流してそのひまわりを見ていた。

 そんな慧音を見ながら、妹紅が笑い、タバコの箱から一本の煙草を取り出し、口にくわえる。

 火をつけようとした直前、そのタバコが誰かに奪われた。

 もちろん、小悪魔だ。

 

「このままじゃ、幽香さんに慧音さんをとられちゃいますよ?」

 

 そうつぶやいてやると、少し焦ったような表情を見せる。

 そんな顔を見て、小悪魔はおかしそうに笑うと踵を返す。

 

「じゃ、出口……おもに私の家方面で待ってますね」

 

 そういって小悪魔は歩き出した。

 散ったひまわりの花びらをふみつけながら歩き、先ほど没収したタバコをくわえる。

 無表情だが、どことなく嬉しそうにも見えた。

 タバコの前に右手をそえる。

 親指と中指を合わせて———弾く。

 一瞬だけ出た火で、たばこに火がついた。

 そのまま歩いていると気づく。

 小悪魔は呆れたように笑うのだった。

 

 

 

 二人の女性が森を歩いていた。

 若干ふらつきながらも、げんなりとした表情で歩く二人。

 

「だぁ~飲みすぎた!」

 

「っさいわね……何回目よ」

 

 魔理沙と霊夢の二人だ。

 霊夢は片手にデザートイーグルを持って歩いている。

 悪魔と戦った後なのだろう、その銃口からは煙が出ていた。

 

「あっ、出口じゃない?」

 

「まじか!?」

 

 魔理沙と霊夢が小走りで森を抜けた。

 そこは太陽の畑。

 まず二人の視界に入ったのは小悪魔。

 

「どうしたんですか?」

 

「どうしたんですか? じゃないわよ……迎えに、来たのよ」

 

 誰が、とは言わない。霊夢は少し気恥ずかしそうにしていた。

 小悪魔が月の畑(太陽の畑)を見渡す。

 あたりに散った花びらを見る霊夢と魔理沙は、小悪魔を見てすべてが終わったことを悟る。

 そんな時、ふと魔理沙が気付く。

 

「ん、小悪魔……それどうしたんだ?」

 

 魔理沙が言ったのは、小悪魔の頭にある一輪の花飾りだ。

 先ほどまでつけたそれを指摘されて、小悪魔は苦笑する。

 彼女の置き土産の一つ。

 

「幽香さんは全部お見通しだったんですかね?」

 

 心底まいったと言った感じの表情の小悪魔。

 だが、楽しそうで嬉しそうだ。

 

「この花の名前知ってます?」

 

 美鈴に教えてもらい、知っていた花。

 かつて、その花は美鈴が紅魔館の家族全員にあげたこともある花。

 そんな花を、二人は知っているわけもなく頭を横に傾ける。

 

「ムーンダストって言うんですよ」

 

 花言葉は——。

 

「いつか居なくなる人ですか……ですが、残される者に望ませてください」

 

 ———永遠の幸福。

 

 

 

 ひまわりの花びらが散っている月の畑(太陽の畑)の中、咲いていない一輪のひまわり。

 そしてその上で、二つの影が一つになった。

 永遠の幸福を求めるように……。

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 魔が堕ち、月が落ち、再び太陽が昇る。

 穏やかな朝。激しい朝。

 それぞれの朝は再びやってきた。

 

 欠けた月は満月へと変わり、再び夜の闇を照らす。

 それぞれの幸福を見守りながら、彼女は離れた場所で笑う。

 彼女の心はどこにある。

 

 次回『心ノ在リ方』

 

 悪魔はドコかでダレかと踊る。

 

 

 

 




あとがき
これにて妹紅&慧音編終了! そして次回はこの章のエピローグとなります。
まぁまだこの章は起承転結の起ぐらいのものであり、いやもはや起でもなかったりします。
まぁわけがわからないことを言ってもあれなので簡潔にまとめると、10年後の幻想郷の説明みたいなものでした♪

では、次回もお楽しみに♪

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