幻想悪魔伝~Nameless Little Devil~ 作:超淑女
小悪魔の家。
一階の事務所で、小悪魔が寝ていた。
ソファに寝っころがりながら、顔の上には雑誌のような魔導書を置いている。
まぁ、雑誌のように薄い魔導書なので一件魔導書には見えないだろう。
整った寝息が聞こえるそんなところに、足音が聞こえた。
「小悪魔!」
大きな声に、小悪魔がビクッとして顔の上の魔導書に手をかけてどかした。
ダルそうな表情で、声を出した人物を見る。
「勘弁してくださいよ」
溜息を吐く。
だが、声を出した本人は机の前で、手を腰に当てたまま仁王立ちしている。
「慧音さん……」
上白沢慧音だ。
あの後、とりあえず全員小悪魔の家で泊まるということになって、小悪魔だけが下の階で寝ていたはずだ。
他の霊夢、魔理沙、妹紅、そして慧音の四人は二階の小悪魔の部屋の大きなベッドで寝ているはず、それなのに、なぜ。
「朝っぱらからそんなに怒らなくても」
「朝はシャキッと起きろ!」
慧音の言葉に小悪魔は魔導書を机に置く。
机から足をどかして立ち上がると、体をパンパンと叩き埃を落とす。
背中を伸ばして、コートを着る。
ソファに座ると、慧音も机を挟んで向かいに座った。
「さて、どうです?」
「花はしっかり魔法で保温してある……完璧だ」
その言葉に、小悪魔は『そうですか』とだけ答える。
机の上には先に慧音が汲んでおいたコーヒー。
小悪魔はそれを一口飲むと、カップを持ったまま慧音を見た。
「妹紅さんとはどうするんです?」
「一緒にいるさ、せめて私がこと切れるその時まで」
「ワーハクタクですか、普通の人間よりは寿命が長いのでしょう?」
「それだけだ」
そう、それだけなのだ。
藤原妹紅の『死なない程度の能力』は消えた。
だが、肝心な『老化』するということは消えていないのだ。
藤原妹紅という永遠を生きる者にとっては、ワーハクタクのそれも所詮その程度。
慧音はいまだに思っているのだろう。
共に生きるのであれば、蓬莱人が良いと———。
「それでも、十分なんですよ」
「そんなわけあるか」
その言葉に、小悪魔が再びコーヒーを飲む。
決してほほ笑むこともにらむことも無い。
「なぜそう言い切れるんですか……」
「お前にはわからない、愛しい者を置いていく者の気持ちは」
「ですが、置いて行かれる者の気持ちは貴女にはわかりません」
そう言い切る小悪魔。
紅魔館。妖怪と魔女と妖精と悪魔が共存する地にたった一人居た人間。
寿命が短い人間という存在。
紅魔館のメンバーは理解していた。
彼女が一番早く死ぬ。
置いて行かれる者。
「おいて行かれる者は……幸せをあげてください」
静かに、言葉が紡がれる。
「生きている間だけで良い、めいっぱいの幸せを……」
いたって無表情でそういう小悪魔。
慧音は、ハッとしたような表情で小悪魔の顔をみるのみだ、
そのまま言葉を止めない。
「いなくなっても、何度でも思い出して笑みを浮かべられるほどの数々の幸せ。それが置いて行かれる者が望むものです」
そう言って笑う彼女。
慧音は、その表情に見とれていた。
満面の笑みなどでは決してない。
そして慧音は自分の中で考えている推測を完成させた。
―――彼女は、置いて行かれたのだ。
予定していた彼女にだけでなく、皆に置いて行かれた。
名前もなにもなくなってしまった彼女。
本当はそれ以外だってたくさんある。
だが、彼女は気づけていない。霊夢のことも、妹紅のこともだ。
友人だって、好意を持ってくれているヒトだっている。
だがそれに彼女自身は気づいていない。
本人が言ったとしても、否定するだろう。
それはとても———残酷なことだ。
「……小悪魔」
「だからあげてください。永遠分の幸せを、彼女にね」
そういうと、慧音は頷いた。
それに満足したのか、小悪魔も嬉しそうに頷く。
机の後ろの扉が開く。
階段に通じる扉から出てきたのは、霊夢、魔理沙、妹紅の三人。
まだ三人とも眠そうだ。
「おはよ」
三人が一斉に言う。
それに、思わず吹き出してしまう小悪魔と慧音。
三人は首をかしげた。
「さてみなさん、これから帰るんですからしっかりしてください」
小悪魔がそういうと、慧音がうつむく。
それを見逃すはずがない小悪魔、そして妹紅。
「どうしたの慧音?」
「いや、私は帰っても良いのか? 半分は妖怪である私が」
その言葉に、暗い表情になる妹紅。
「バカねぇ、帰ってきなさいよ」
霊夢が言う。
顔を上げる慧音に、魔理沙が笑って見せる。
「今の人里はあの頃みたいに荒れちゃいないさ」
人里にいた二人の言葉に、慧音は少し希望を見入る。
それに、と霊夢は頬をかきながらそっぽを向く。
「あんたが帰ってこないと迎えに来た意味がないでしょう」
慧音は、嬉しそうに頷いた。
その表情を見た妹紅も嬉しそうだ。
そんな光景を見て、小悪魔ももちろん嬉しそうにほほ笑んでいた。
幾度も悪魔をしいたげて、五人は帰ってきた。
人里の前についた五人。
右から、デザートイーグルを肩に当てながら歩く霊夢。その右にミニ八卦炉を片手で持ち、片手で帽子を押さえている魔理沙。
左から、片手でショットガンを持ち、もう片手で拳銃を持つ慧音。さらに左に体からバチバチと火花を発す妹紅。
そして、真ん中には小悪魔。片手に拳銃、片手に剣を持っていた。
「ようやくついたわね」
霊夢が袖にデザートイーグルを入れる。
同様に武器をしまいだす面々。
ミニ八卦炉を腰につける魔理沙。
妹紅も炎を消して、慧音も腰にショットガンと拳銃をつける。
小悪魔は、剣を手首で振って背中にしまうと、同様に拳銃もホルダーにしまう。
霊夢が上に向かって手を振ると、扉が開く。
五人が人里へと入る。
慧音が、妹紅の服の袖をつかんでいるが、妹紅は黙って慧音を連れていた。
人里に入ると、顔が知れている霊夢、魔理沙、妹紅、小悪魔には誰も反応しないが、慧音を見たときに表情を変える。
約10年振りの顔だ。
だが、誰も忘れてなどいない。
彼女は里にとってなによりもかけがえのない存在だった。
「慧音先生!?」
一人の声。
それに呼応するように大声を上げる人里の住民たち。
家や店から出てきた住人が慧音の周りを囲む。
「慧音先生!」
「あの時はすみませんでした!」
「帰ってきてくれたんですね!」
慧音の周りは数々の人々で溢れかえってしまった。
妹紅と慧音を除いた三人は、少し離れた場所でその光景を見ている。
人の群れの中から、妹紅が出てきた。
無理矢理出てきたからか、髪の毛はボサボサになっている。
「まったく、良かったよ」
妹紅は小悪魔の隣に立つ。
苦笑する妹紅と、ほほ笑む小悪魔。
霊夢と魔理沙も嬉しそうだ。
「あのままじゃ、慧音さんが男の人にとられてしまったりして~」
いたずらするような顔で、そんなことを言ってみると———。
妹紅の顔からサーと血の気が引く。
少し涙目だ。
そんな妹紅に逆に小悪魔の笑顔が凍りつく。
「け、けいねがっ…」
「Do forgive me. I didn't mean it!(そんなつもりじゃなかったんだ、勘弁してください!)」
必死の言葉だったが、妹紅は涙目のままだ。
小悪魔は頭を抱える。
「そんなっ、慧音ぇ……」
人の輪の中から、慧音が出てくる。
「妹紅どうした!?」
涙目の妹紅を見て驚いている慧音。
肩をしっかりとつかんで、ゆさぶる。
「慧音がほかのヒトに、そんなっ……」
「何を言う妹紅! 私はお前一筋だ!」
その言葉に、妹紅がハッとした表情になった。
慧音もいざ言ってしまって大勢の人の前だと気づくが、表情を引き締めたままだ。
「慧音っ!」
「妹紅っ!」
抱き合う二人。
人目もはばからずそんなことをやらかす二人を見て、顔を赤くしながら苦笑する魔理沙。
溜息を吐きながらも笑う霊夢。
小悪魔はただ一言つぶやいた。
「バカップル……」
抱き合った二人を見て、小悪魔はため息を吐く。
けれど、嬉しそうな小悪魔だった。
小悪魔たち五人は、霊夢の家にきている。
住人達からのもらい物を持って歩いている最中も、イチャイチャとする二人に何度も振り回された3人。
居間に倒れこむ五人。もちろん慧音と妹紅は密着状態。
なにかが吹っ切れたのだろうか?
「天才となんとやらは紙一重ってやつですかねぇ」
「そのとおりね」
小悪魔のつぶやきに同意する霊夢。
ふと、小悪魔の手と霊夢の手がぶつかる。
霊夢を見ると、紅い顔をして手をどかした。
「……お酒でも飲みましょうか」
そんな言葉に、魔理沙が起き上がって小悪魔を見る。
「昨日飲んだばっかだぜ?」
「知ってるぜ?」
「真似するな」
魔理沙が少し咎めるような表情をすると、小悪魔はケラケラと笑って、慧音と妹紅を見た。
既に二人は呑む気でいるようだ。
深いため息を吐く魔理沙。
「呑まなくても良いんですよ?」
「目の前に酒があったら、手が伸びるだろ?」
結局呑む気のようだ。
霊夢と小悪魔と慧音が立つ。
三人が食べ物を用意するようで、酒は居間のすみにつまれている。
小悪魔がコートを脱ぐ。
三人は台所に行った。
残されたのは妹紅と魔理沙。
ジッと魔理沙を見る妹紅。
「なんだよ、掘るなよ?」
「あたしは慧音じゃないんだ。ところで、霊夢のことは良いのか?」
そう聞く妹紅に、魔理沙は表情を変える。
不愉快そうな顔だった。
「あんだよ、昨日までうじうじ慧音のこと引き摺ってたやつには言われたくないな」
その言葉に、今度は妹紅が不機嫌そうな顔になる。
二人の間に見えない火花が散る。
「そんなこと言ってて霊夢をとられても知らないからな?」
「もともと私のものでもないんだぜ?」
二人が立ち上がる。
口の端を釣り上げて笑う二人。
だが、目が笑っていなかった。
「妹紅こそ……慧音がほかの誰かを掘っちゃって恋に発展したりしてな?」
「そんなことあるはずないだろ、慧音は教師だぞ?」
元だが、教師と言っておく。
そちらの方が清潔感は出るだろう。
「教師か、それこそ生徒と、とか?」
「良く言った! 表に出ろ魔理沙!」
一触即発の雰囲気の中、音がした。
机に皿を置く小悪魔、二人に笑顔を向ける。
少し大きな音に、二人してそちらを見た。
「何もしてないんですから、面倒事はおこさないでくださいよ?」
その笑顔に殺される二人の怒気。
おとなしく座った二人は並べられていく皿を黙ってみていることにした。
しばらくして、机の上にたくさんの皿が並べられていた。
全員が座ると、一斉に杯を掲げる。
『乾杯!』
五人同時にそう言い、杯を軽くぶつけた。
博麗神社でちょっとした酒盛りが行われているのと同じ時刻。
犬走椛は、湖のほとりに居た。
その周りには10人ほどの白狼天狗。
「これは一体……」
あたりに散らばっているのは悪魔の死体。
しかも上級悪魔だ。
小悪魔の場合、魔力を込めた攻撃で敵をすぐ灰にする。
だ、この攻撃は小悪魔らしさがしない。。
自分と似た類だ。
———悪魔に対しての冷熱な斬撃攻撃。
「椛さん! こっちに山ほどある!」
白狼天狗の声が聞こえる。
そちらに行くと、そちらにはばらばらにされた悪魔がやまほどいた。
湖のほとりにはいくつかの道がある。
妖怪の山への道。
人里への道。
魔法の森への道。
そして悪魔が転がっている方の道は———。
「紅魔館への、道……」
犬走椛は、そちらを見る。
暗い道の先に、なにかがあるのだろう。
踏み込んではいけないという本能に従い、椛は撤退を余儀なくされた。
〜〜〜〜〜
博麗神社の居間にて、妹紅、慧音、魔理沙、霊夢が寝ていた。
小悪魔は一人起きたまま杯を傾ける。
ゆっくりと酒を飲む。
「さて———」
小悪魔は立ち上がり、台所からグラスを持ってくる。
そこに酒瓶から酒を注ぐと、グラスを持って居間を出た。
縁側に腰をかけて、グラスを傾ける。
喉を通る熱いアルコールを感じながら、小悪魔はふぅ、と息をついた。
その姿はそこはかとなく艶やかだ。
「一人でどうしたのよ」
頭を押さえながら、霊夢が現れた。
鈍痛に襲われているであろう霊夢を見て、小悪魔はほほ笑んだ。
小悪魔と同じように酒の入ったグラス片手に、小悪魔の隣に座った霊夢。
「……」
「……」
無言で、月を眺めながら酒を飲む。
それから会話もないまま、二人の酒はゆっくり飲んでいるにもかかわらず半分になってしまった。
そんな時、ふと口を開いた霊夢。
「あたし……私ね、あんたのこと———」
そこから言葉が続こうした。
次の言葉がなんなのかなど容易に想像がつくだろう。
だが、小悪魔はグラスを音を立てて置いた。
一瞬止まる言葉、霊夢が小悪魔を見る。
「実は、私って……霊夢さんが初恋なんですよ」
決して霊夢は見ず、満月だけを見たまま彼女は言った。
霊夢は、目を見開いて小悪魔を見た。
「初めて出会ったのは、紅霧異変の時でした」
目を伏せ、楽しそうに語る小悪魔。
実際。彼女は今この現状になんらかのプラスの感情を抱いているのだろう。
「なんのためらいもなく、表情一つ変えずに私を落とした霊夢さんに、私は堕ちました……一目惚れってやつですかね」
霊夢は無言で小悪魔の話に聞き入っている。
「それ以降も、時たま苦戦をしいられた時に変わるぐらいで、その他の表情は全く変わらない。そして表情と同じように、私のような悪魔相手でもパチュリー様のような魔女相手でも、咲夜さんのような人間が相手でも……決して変えない態度、こびない姿勢……己を貫くその姿に、私は惚れました」
紡がれていく言葉。
それは霊夢が知るよしもなかった彼女の中の感情。
「だが残念ながら、私は悪魔で彼女は巫女、それはそれは相いれない禁断。私は卑猥を具現化させたような存在……ですが彼女は純粋を貫く聖なる巫女」
そんなわけ、と霊夢が口を挟もうとしたが、小悪魔はそれをさせないために霊夢の口元に人差し指を添えた。
霊夢が黙ったのを確認して、小悪魔が手を下ろす。
「彼女は純粋です。すべてに等しくすべてを受け入れる。そう、まるでこの
ならば、と立ち上がる小悪魔。
「私がその気持ちを伝えたらどうなります?私には恐ろしくて見当もつきませんでした。彼女が受け入れなかったにしろ受け入れたにしろ、博麗霊夢という世界の均等は崩れ去ります」
小悪魔は紅い髪と紅いコートをひるがえして言う。
その声は霊夢だけに聞こえている。
「一番怖いのは受け入れられた時です…私の愛した彼女は、きっと変わってしまう。悪魔に優しく…その悪魔だけを愛してくれるでしょう。そうなれば彼女は巫女ではなくなるのです」
言いたいことは理解できた。
霊夢自身、自分を自画自賛するようで嫌だったが、実際彼女が言っているのはそういうことだ。
———自分を受け入れることによって起こる、博麗霊夢への異変。
「狂おしい程に、愛していました……えぇ、愛していました……」
ですが、とだけ言うと次の言葉は霊夢の予想だにしていない言葉だった。
「もう愛していません」
冷たい声、熱い声、悲しい声、嬉しい声。
どれにも該当しない。
無機質な声。
「今の私には、愛するなんてもの考えている余裕はないんですよ。一杯一杯でしてね」
振り返って、クールに笑う小悪魔。
いつも通りのそのニヒルな笑み。
「そして、たぶん私はもう彼女を好きではありません……あの狂おしいほどの愛はすべて泡になり消えた。白状な女と彼女は思うでしょう。実際はそんなに愛していなかったんだと、彼女は思うでしょう。でも、真に愛していたと私は豪語しましょう。そしてその愛を踊って歌いましょう。彼女が望むならね」
そう言う彼女は月明かりを受け、幻想的な姿を見せてくれていた。
霊夢がほほ笑む。
すべてを理解したのだろう。
小悪魔はテンポよく歩いて、霊夢の横に再び座る。
「さて———」
楽しそうに笑う小悪魔に、霊夢は困ったように笑う。
「そろそろ私は行きますね♪」
グラスの中の酒を一気に飲み干す。
その豪快な飲みっぷりに、霊夢が苦笑した。
小悪魔は縁側にグラスを置くと、縁側に立ち上がる。
霊夢も立ち上がった。
二人が玄関に歩き出す。
玄関にて、小悪魔が立っていた。
背中には剣を背負っていて、完全に帰り支度をすましている。
霊夢に言われて待っていると、玄関へとやってきたのは霊夢だけではない慧音と妹紅と魔理沙も一緒だった。
「あ~あ……ひっそりと帰りたかったんですがね」
「冷たいじゃないか」
魔理沙が言うと、小悪魔は苦笑で返す。
表情で察するからに、正直うれしいのだろう。
「あぁ小悪魔、これを持って行け」
慧音から渡される。
受け取ると楽しそうに回転させて、しっかりと持つ。
それはショットガン。
「ありがとうございます」
「なに、もう使うことのないものだ」
穏やかな笑顔で言う彼女。小悪魔は頷く。
慧音は終止符を打った。
小悪魔は打っていない。
だから、次は小悪魔だ。
「頑張れ」
慧音がそう言うと、小悪魔は頷いた。
隣の妹紅を見るが、彼女はみんなとは違う視線だ。
わずかな時間とはいえ、共にいて共に歩んだ仲だ。
相棒、お互いをそう呼んだ時もある。
「お前が助けを必要とするなら、いつでも行くからな……」
「お気持ちだけいただいておきます」
そう言って紳士のように一礼する小悪魔に、妹紅はやっぱり、と言った。
顔を上げた小悪魔も特に気にしている様子は無い。
「あ、あとお前の部屋にプレゼントを置いといたから……あたしは使わないから使ってくれ」
その言葉に、少し楽しみを覚える。
妹紅の気遣いに感謝しつつ、表情はあまり変えない。
「オーライ、ではこれで……元相棒」
その言葉に、妹紅も手を軽く振る。
「じゃあな……元相棒」
その言葉を聞いて、小悪魔は踵を返す。
玄関から出ると、しっかり戸がしめられた。
それと同時に霊夢を除いた面々は居間へと帰っていく。
霊夢が一人玄関の戸を開くと、外に出る。
神社の境内で、霊夢が一人立っていた。
空を見上げている。
何度も、袖で顔をぬぐっているが、ぬぐった後の袖は濡れていた。
「……あ〜ぁ、フラれたのなんて初めてだわっ」
そうぼやくと、賽銭箱の前に立ち小銭を投げ入れた。
鐘を鳴らして二拍手。
手を合わせて、目をつむって、何かを祈った。
〜〜〜〜〜
小悪魔が、家へと帰ってきた。
自分の部屋に置いてあるプレゼントも気になったが、小悪魔はただそこに立つ。
すでに外には太陽が出ていた。
普通に歩いても、人里からあるいてくればそこまで明るくはならないだろう。
明るくなったのには理由があった。
小悪魔はコートを脱いで部屋の角にある服掛けにコートをかける。
真紅のコートについていた黄色い花びらを払う。
「見つかるものですね」
小悪魔は、それを机の上に置くと、拳銃を重り代わりにその上に置いた。
薄いそれは写真、二枚の写真がそこにあった。
一枚は幽香と美鈴。そしてもう一枚は幽香とチルノと大妖精。
小悪魔は静かに椅子に座り、その二枚の写真を見て笑う。
その瞬間、小悪魔の背後の次元がガラス細工のように割れた。
現れたのはヘル=サイズ。振り上げられた鎌。
だが、その骸骨の口に拳銃がぶち込まれる。
その拳銃を持っている本人は、背中を向けたままだが、口元に笑みを浮かべていた。
トリガーが引かれると、その悪魔は灰へと還る。
店の中に数々の悪魔たちがあふれかえり、小悪魔を囲んでいく。
彼女は笑う。
イカれたように笑って、拳銃とショットガンを持つ。
「Let's get crazy yeah!」
トリガーが引かれるのと同時に、紅い悪魔は踊る。
銃と剣を持ち悪魔は踊る。
さぁ、悪魔と踊ろう。
次回予告
紅い館があった。
紅い塔があった。
紅い液があった。
紅い悪魔がいた。
蒼い空があった。
蒼い湖があった。
蒼い闇があった。
蒼い妖精がいた。
主がいた。従者がいた。
もう無い。誰も居ない。
次回『刻む時』
悪魔は妖と踊る。
あとがき
さて、これにて終わり!
なわけがありませんね、はい。ですが、第一章が終了しました。
次は第二章。とうとう彼女が登場、誰とは言いませんが!
では、次回もお楽しみに♪