幻想悪魔伝~Nameless Little Devil~ 作:超淑女
突如幻想郷に現れた塔。
そこの半分ほどの階。
先に小悪魔と出会ったミス・ヴァイオレットと呼ばれた女性が、塔の中の一角。
外に少し飛び出した場所に立っていた。
バイクもそばに置いてある。そろそろ乗って上にいくのも限界だろう。
月光が女性の金髪を明るく照らす。女性は立ったまま、サブマシンガンのマガジンを入れ替えて、銃身を見ていた。
「お久しぶりです」
女性の背後に、背を向けたままの藍が立っている。
一瞬で女性の表情が変わって、後ろを向く。
それと同時に銃を向けたが、そこには既に藍がいなかった。
「冷たいですね」
背後にいる藍が女性の腕をつかみ、放り投げた。
投げられた女性が、塔から落ちる。押していく女性を、塔から少し顔を出して見る藍だったがサブマシンガンのトリガーを引いた女性。
吐き出された無数の弾丸の一発が、藍の額を貫いた。
頭が上に傾く。
藍は数歩下がって倒れる———ことは無かい。
顔を下げる。
その額には穴が空き、血が流れていた。
白い肌を汚す血は、それ以上出ることは無い。
「まったく……」
片手に握られた弾丸。
先に撃たれた内の一発をつかんでいたのだ。
それをもう一度掴む。
「私は悪魔になったのだ。それはお前が良く知っているだろう……八雲紫」
つぶやいて、藍は手を開く。
その手につぶれた弾丸が握られていた。
小悪魔は塔の半分より少し下にいた。
少し飛び出た足場があり、そこから月を見ていた。
綺麗な満月。慧音は今頃『ハクタク』になっているのだろうか?
息をついて上にあがろうと思った時、小悪魔は腕を塔の外側に伸ばす。
上空から落ちてくるなにか、それを片腕でつかんだ。
それは足。
足の先には少女がついている。
「これは可愛らしい雨が降ってきたもんですね」
笑って言う。
掴んでいたのは先の女性。
本名『八雲紫』
彼女は小悪魔を睨むと、手に持ったサブマシンガンを小悪魔の額に向ける。
「ちょっ」
トリガーが引かれ、吐き出される弾丸。
数歩下がる小悪魔だが、紫を離さない。
紫を塔の中に投げる。
転がって、体勢を整えると同時に彼女は小悪魔に拳銃を向けた。
小悪魔が紫を見る。その歯には弾丸が挟んであった。
先に撃たれた弾丸を口でくわえて防いだ。
化け物くさいその能力。
紫は額に汗を流した。
「もう良いです……せっかく助けたのに鉛弾くれるとは思いませんでしたよ」
「悪魔に助けてもらう覚えは無いわ!」
そう言うと紫の方へと歩き出す小悪魔。
サブマシンガンを撃つ紫。
小悪魔の眼が紅く光る。
華麗に、周りながらその銃弾を避けていく小悪魔。
気づいた時には、小悪魔は紫の横にいた。
「失礼」
そうつぶやいて、紫の横を通り過ぎる。
その場で、座り込む紫。震える手。
彼女の眼を見てからだ。
紫は、地面を力一杯殴った。
小悪魔は紫から分かれて、どんどんと上の階層へと上がっていった。
道沿いに歩いていると、外に出る。
幻想郷中が見渡せるのではないか? と思えるほど高い塔の外。
横には上に続く階段があった。小悪魔はその階段に足をかけて昇っていく。
後、半分も無い。
だが階段の、上の方から自分を見下げている敵がいた。
黒い影。
紅い目と口だけがわかる黒いヒト型。
「There's not covering up!(ひどいもんです!)」
両手を広げて笑う。
階段は塔の周りを回るように伸びている。
横は柵も無いので、足を滑らせれば真っ逆さま。
そしてもう一方はなんとか壁があるが、危険に変わりない。
「Come on!」
跳ぶ、黒い影。
階段故下にいる小悪魔は両手に拳銃を持って、撃ち続ける。
数十発の弾丸が放たれ、それらすべてが黒い影に直撃した。
だが何かがおかしい……直撃したのだが、黒い影の背を弾丸が貫くことは無い。
小悪魔が跳んで、階段の一番下、少し広い場所に立つ。
黒い影は何かを耐えるように、両手をクロスさせる。
「オーライ!」
影が上体をそらして、両手を左右に広げた時、黒い影から銃弾があふれ出た。
それは小悪魔が撃ち込んだ数十発の弾丸。
それらが同時に放たれる様はまるでショットガン。散った弾丸。
それらが迫る数十秒、小悪魔の体に紅い魔力が迸る。
小悪魔を撃ちぬくはずだった弾丸は、すべて小悪魔の目の前で落ちた。
その小悪魔の背中から現れる大きな黒い翼、頭に現れる小さな黒い翼、スカートから伸びる尻尾。
紅い瞳が影を射抜く。
影は小悪魔へと走り、同じく小悪魔も背中の剣を抜いて影へと走った。
影の手が黒い剣へとカタチを変える。
振られた影の剣。小悪魔は跳んだ。
影の頭の上を抜けて、背後に立つと小悪魔は
右肩から左腹を斬ると、小悪魔は手首で剣を振るって背中にしまう。
影に背を向けると小悪魔は上へと歩いていくために階段を上る。
翼を開いたまま階段を上る小悪魔の横に、先ほどの黒い影が立っていた。
影は腕を振りかぶると、その手を槍のカタチに変える。
気づいていない小悪魔、いや———相手にしていなかった小悪魔が影の頭に手をかけて、跳ぶ。
そのまま影の背後に立つと、小悪魔は影の背中を蹴った。
吹き飛び、塔の壁を破壊して内部に入る影。
「丁度良い所に来てくれましたね」
小悪魔が上がろうとした階段の先は、崩れていた。
開いた穴に入ると、小悪魔の表情が変わる。
その部屋には真っ赤な壁と床。いや、色にすれば紅と言った方が正しいのだろう。
その部屋には、テーブル、その上に置かれた飲みかけの紅茶。置かれた天蓋付きのベッド。
置かれた大きな椅子。良い木と布で作られた椅子は、彼女専用。
「最高で最低の趣味ですね……」
黒い影が現れる。
それは、歩き出し———。
「やめろ」
小悪魔らしからぬ言葉と声音。
だが、それほどまでに止めたいのだ。
拳銃を両手で持ち何発も撃ちこむ。
影に吸収される銃弾。
影はそのまま―――その椅子に座った。
その瞬間、小悪魔の眼が見開かれる。
「You're going down!(くたばれ!)」
小悪魔が飛び出す。
そして、影の横顔を蹴り飛ばした。
吹き飛び、壁にぶつかる影。
実態ある影というのも不思議だが、今の小悪魔はそんなものを気にしているほどの余裕はなかった。
自分の主とも言うべきヒトが、愚弄されたのだ。
壁に当たった影が立ち上がり、小悪魔をその紅い瞳で見据える。
「Tough guy, huh……(タフですね……)」
影を貫く紅い瞳。
その小悪魔の体には、何かが揺らめいている。
薄い、なにかの影が出たり消えたりを繰り返す。
〜〜〜〜〜
塔の上に立つ蒼い少女。
蒼い刀を片手に持って、満月を見つめている。
「目覚めた。いや、目覚めかけているのか小悪魔」
少女がつぶやく。
蒼い髪と青いコートがなびく。
「チルノ」
少女、チルノの背後に立つのは藍。
その声に振り向くことは無い。
「なんだ?」
「奴をここに呼んだ理由はなんだ?」
「……教える必要はあったか?」
その言葉に、藍は表情を変えることはなかった。
ゆっくりとチルノの横に立つと、チルノの首に下げられた紅いペンダントを見る。
横目で藍を見るチルノ。
「もしかしたら、
その言葉に、藍は目を見開いた。
「どういうことだ!」
チルノの腕をつかむ藍。
微動だにしないチルノが、藍の眼を見る。
「そのままの意味だ。さぁ、小悪魔が来るまでここで待て」
チルノはそう言って、目をつむった。
藍はチルノから離れて、塔の上に置かれている大きな像の足元に座り込む。
その額には、汗が流れていた。
焦ったような表情で、彼女はチルノを見る。
〜〜〜〜〜
小悪魔が、紅い魔力を纏い走り出す。
影が腕を動かそうとした時には、すでに小悪魔は背後にいた。
背後に立っている小悪魔は影の背中を殴る。
転がる影が立ち上がろうとした瞬間、小悪魔が背中の剣を投げる。
その剣はまっすぐ飛んでいき、影を貫く。影を串刺しにして、そのまま剣は壁に刺さった。
串刺しにされた影は、黒い砂へと還り風に散る。
だが、まだ終わりではない———。
あふれ出る先の影と同じ形をした悪魔たち。
「……LET'S ROCK!!」
小悪魔がコートの中に片手を入れて、出した。
そこには紅い宝石のついた指輪。妹紅からの贈り物だ。
「バハムート!」
叫び声と共に、その指輪から炎が吹き上がる。
小悪魔は指輪から手を放す。
吹き出した炎は小悪魔の腕に纏わる。
灼熱の炎を纏った腕。
炎を噴出していた指輪はいつのまにか消えている。
その両腕を振るう小悪魔。
四散する炎。散った炎の下の小悪魔の腕には、ガントレットがついていた。
肘から指一本一本までを覆うガントレット。
指の先端は鋭い爪。
「Things're really beginning to heat up!!(熱くなってきましたよっ!!)」
その手甲を装備したまま小悪魔は影を殴る。
その破壊力は剣を凌駕し、影は吹き飛び一瞬で砂へと還った。
背後から迫る影を足で蹴り飛ばす。その足には蹴る直前に炎がまとわり、威力を数倍にあげる。
殴り、蹴り、殴り、それらを繰り返して敵を殲滅していく小悪魔。
影は次々と灰へと還る。
そして小悪魔の前方に立つのは一体。
「貴方たちはレミリアお嬢様を愚弄しました……よって!」
小悪魔が、手を振りかぶる。
しかし、到底届くリーチではない。
だがそれでも構わぬというように、腕を前に振った。
瞬間―――ガントレットから炎が溢れ出て、紅く大きな腕を形作る。
それは影を握った。 小悪魔の腕を見ても何かを握ったように見える。
ガントレットとその炎の腕はリンクしていた。
ググッと、小悪魔は腕に力を込めていく。
「Grip &————!(キュッとして———!)」
腕を大きく引く。
炎の腕が小悪魔の目の前に迫り、影と小悪魔の距離はまじかになる。
影が奇妙に紅い目と紅い口をゆがませた。
一方―――小悪魔はニヒルに笑みを浮かべる。
「———Break down!!(———ドカン!!)」
まっすぐ伸ばされた拳。
それは壁を破壊した。
壁を破壊したことにより起こった砂埃。
それが晴れた時、そこには黒い灰が少しあるだけだった。
小悪魔のガントレットは炎に包まれ、消える。
開いた掌にある指輪を、もう一度コートの内側にしまった。
壁から剣を抜くと背中に背負う。
開いた壁の穴を通って、その部屋を出ようとしたが、出る直前で止まる。
「Let's clean up this mess……(私が終わらせます……)」
そうつぶやいて、彼女は部屋から出て行った。
小悪魔はそのまま歩いていく。
どこかに向かってだ。
〜〜〜〜〜
塔の上で、チルノが目を開いた。
なにかを悟ったのだろう。
彼女は片手を月に向ける。
「早く来い……」
「少し出てくる」
背後から聞こえる藍の声に、チルノは顔を横に向けて、視線だけで藍を見る。
藍はチルノを視線を感じながら立ち上がった。
「好きにしろ」
その言葉に、藍は塔の上から歩き出す。
階段を下りていく藍。
チルノは一人、月を見る。雲で満月が隠れはじめた。
踵を返すチルノ。蒼い長髪と、青いロングコートがなびいた。
刀を強く持ち、彼女は己が目的のために、その時を待つ。
次回予告
彼女はそこへと向かう。
パーティーへと招待された自分。
されなかった一人。
従者と従者の出会い。
裏切り者へと吐き出される制裁の銃弾。
彼女はそこに立つ。
悪魔と悪魔。
再開とは、終局への道。
次回『悪魔の命』
悪魔は命と踊る。
あとがき
さてみなさん、今回の話はなぜか塔の中にあったレミリアの部屋でした。
まぁ後々これも解決しますのでご安心を!
そういえば一言をくれた方々ありがとうございました。私のモチベーションにつながりますw
次回もお楽しみに♪