幻想悪魔伝~Nameless Little Devil~ 作:超淑女
小悪魔と椎名は人里まで続く一本道を歩いていた。
ここには人里の人間が幻想入りしてきた車などで走るので広めに作られている。
小悪魔はそこを椎名と共に歩いていく。
結局あの後、悪魔からの襲撃に2、3度あり、そのたびに椎名が腰を抜かすので予想以上に遅れてしまっていた。
もう夕方、帰るのは夜の森を行く事になりそうで溜息を吐く。
椎名が、振り向いて申し訳なさそうな顔をした。
「ハァ~、大丈夫です。私は悪魔に負けるほどやわじゃありませんから……夜の森でも平気ですよ」
そう言うと、安心したように笑う椎名。
子供みたいに表情が変わる女性だ。
そう思いながら歩いていくと、目の前に人里が見えた。
―――否。
正確には人里を守る砦だ。
人里には現在大きな砦がはられている50メートルほどだろうか?
作られたのは9年ほど前らしい。
まだ少数の妖怪が人間に協力的だった頃。
八雲紫たちが協力する者達の筆頭だったのは考えるまでも無いだろう。
そして、完成されたコレは現在も高くされいっている。
「要塞にでもするつもりですか」
呟きながらも、椎名と共に門の前へとやってきた。
砦の上に二人。
椎名が手を振ると、向こうも振り替えしてきた。
そして、数十秒待つと目の前の壁が二つに割れる。
轟音を響かせて開いた扉は、小さかった。
1メートルもないほどの扉をくぐって、中に入る。
「はぁ~! ようやく帰って来た♪」
そう言って背中を伸ばすと、小悪魔の方を見てお辞儀をした。
「ありがとうございました! 報酬ですよね?」
そう言われると、間髪なく頷く。
報酬がないことにはここに来た意味が無い。
食べ物でもお金でも良いからということで、ここに来たのだ。
そして、歩き出そうとした時だった。
道を歩いていた男が小悪魔を指差し大声を出す。
「あっ! ああ、あ、あ、悪魔だぁっ!!」
その声が響き。人々が小悪魔を見て逃げていく。
椎名は驚きながら、小悪魔の傍まで寄る。
溜息を吐く小悪魔。
あたりには随分現代的になったもので、マシンガンを持った兵隊たちが集った。
この十年でここまでに上り詰めたのだから人里の発展には恐れ入る。
「悪魔! 覚悟しろっ!!」
溜息をついて、男を見た。
「私が何をしました?」
「悪魔めっ!」
男たちは憎悪の瞳をむけてきている。
小悪魔が拳銃を抜こうとした時———。
「下がりなさい、その悪魔は良いわ!」
———女性の声がした。
その声と同時に、男たちは不服そうに銃を降ろす。
そして声の主が現れる。
一瞬、わからなかった。
紅と白がトレードマークの巫女が現れた。
声と雰囲気で理解。
あの頃と変わらず、その雰囲気はお同じだ。
「久しぶりね小悪魔」
博麗霊夢。
主人達と仲の良かった。
少女の一人。
小悪魔は博麗霊夢と共に人里内にある博麗神社へとやってきた。
神社は砦を作るときに人里の内部に移動させたらしいのだが、スキマ妖怪が手伝ったらしい。
それなら納得だ。
霊夢に着いて行き神社の中に入る。
ちなみに、椎名とは別れた。
報酬は後日と言っていたが、彼女が嘘を言うとは思わないので頷くことにしたのだ。
居間に入ると、霊夢が振り向く。
先ほどは気づかなかったが、彼女はだいぶ変わっていた。
やはり10年の月日は長いのだろう。
霊夢は髪が伸びていた。長くキレイな黒髪は腰ほどまである。
そして顔や体も、大人の女性だ。
あの頃とは違うことを思い知らされた。
「座りなさい」
大量に重ねてある座布団の中の一枚を投げてくる。
それを受け取って座ると、霊夢も先ほどと人が変わったように表情をゆるめて座布団の上に座った。
「久しぶりねぇ、元気してた?」
そう言って笑う霊夢。
小悪魔はつい噴出してしまった。
座るのを忘れて笑う。
「ぷっ……ハハハッ、ハハハハッ! か、変わってませんね、霊夢さん」
笑う小悪魔に、小首をかしげる霊夢。
笑いをたえながら、首を横に振る。
「いえいえなんでもありません、大事な部分が変わってないのは大事ですよね」
そう言うと、霊夢は理解したようだ。
目を伏せて微笑む。
仲が良かったか悪かったか、と聞かれれば……普通。
別段どちらでもなく、顔見知りのような関係だったが、こんな世の中になってしまうとそれがとても心地良い関係に思えてくる。
特に妖怪たちも人里に来ないだろうから、昔の話しをする相手なんていないだろう。
「……あれ、魔理沙さんは?」
「あぁ、アイツなら……3年前から行方不明」
あの霧雨魔理沙が行方不明。
どういうことかと、目を細める。
「出かけるって言って……帰ってこなかったのよ、あいつ」
そう言って笑う。
笑っている霊夢だが、なんだか寂しそうにも見えた。
「たぶん、生きてますよ。大妖怪にだって勝てる人です……負けるとは思いません」
「そう、よね……」
小悪魔の言葉に、安心したようになる霊夢。
たった一人の言葉でそこまで救われたようだったが、小悪魔は内心、生きてるなどとは思わなかった。
魔理沙と霊夢が妖怪や神に勝てたのは、おそらくスペルカードルールのおかげだろう。
悪魔にはそれが通じない。
「ありがと、少しだけど、元気でたわ」
そう言うと笑顔になった。
昔なら強がるところなのだが、意外と大人になったということだろうか?
良い方向に変わったと、少し嬉しく思う。
「ところで、慧音さんは元気ですか?」
その言葉に、霊夢がばつの悪そうな顔をする。
少し謎だったが、すぐ察した。
なんらかの問題があったのだろう。
「あいつは自分から出て行った……半妖だからね、酷い仕打ちをうけたのよ、今まで人里を守ってたのに砦ができてすぐに出て行った」
その言葉と共に、霊夢が頭を抱える。
相当辛い事だったのだろう。
表情を見てもうかがえる。
「酷い奴よね。あんなに守ってくれていた慧音を、追い出すしかなかったのよ」
「大きな力には、どうしても適わないものです」
そう言うと、驚いた表情で霊夢が顔を上げた。
小悪魔は静かに笑顔を作っている。
「未来にむかって歩き続けるのは、人間や妖怪、妖精にしかできないことです」
そう言って笑いかける。
その笑顔は綺麗で、こんな世の中にはまったく珍しい。
だが、霊夢はその笑顔で心が潤った。嬉しくなれた。
「まさか、あんたが居て良かったと思うなんて思わなかったわ」
からかうようにそういう霊夢。
苦笑して答える小悪魔。
「そりゃ手厳しい……ですがありがとうございます、居て良かったと思ってくれてるんでしょう?」
そう言うと、恥ずかしかったのか顔をそらす。
なんだかこうゆっくり、霊夢と話すなど初めてで表情を見るのも新鮮だ。
いつもは主人や主人の友人を交えて、ぐらいでの会話しかなかった。
「それにしても、アンタ雰囲気変わったわね」
「えっ、そうですか?」
答えると、ジト目で小悪魔を見る霊夢。
なんとなくだが言いたいことはわかる。
「はい、変わりましたよ……強くなったつもりです♪」
そう言って、二挺の銃を引き抜いてウインクをした。
驚くも、溜息を吐いて頷く霊夢。
「変わるわね、みんな……」
その言葉に、今度は小悪魔が疑問を浮かべた。
「みんな、とは?」
「いや、なんでもないわ」
そう言うと頷いて立ち上がる。
外から声が聞こえた。
なにか慌しい。人の声でなく、何かを叩きつけるような音だ。
「またかしらね」
「また…とは?」
霊夢が、視線を向ける。
付いて来いという意味だと理解して立ち上がり霊夢の後をついていく。
襖を開いて外に出た後、霊夢の足が少し速くなった。
「急ぐわよっ」
「どうしたんですか?」
さすがに聞きたくもなった。
だが、霊夢は焦りの表情をみせるばかり。
そして彼女のあとを追い家を出て走る。
大きな音が聞こえる方へとやってくれば、砦に岩を叩きつける男たち。
20人ほどだ。
その男たちは全員。霊夢を見るとにらみつける。
「博麗の巫女! 俺たちは外へと出る! こんな牢獄に閉じ込められるのはもうゴメンだ!!」
霊夢は焦った顔をしていない。
先ほどとは違い冷静で冷徹。
「気が狂ったの? 悪魔共に食われるだけよ……」
否。彼女は平等な視線だ。
妖怪にも人間にも、悪魔にも。
親しいもの以外はすべて平等。
だからこそ、彼女。
「ハッハハッ! だがもう遅い!」
月が雲に隠れた真っ暗な夜。男たちの持つ松明だけが、辺りを照らしている。
男たちは大きな岩を、止めと言わんばかりの強さでたたきつけた。
そしてとうとう、壁に人数人分ほどの穴が開く。
「自由だぁぁぁっ!!」
男達が出て行こうとするが―――直後に止まる。
月を隠していた雲が全て引く。
満月の光が、地上に降り注ぐ。
そして影になった壁の向こうから、いくつもの赤い目がコチラを見据えていた。
次回予告
溢れ出る夜の魔。
しかし、真におぞましきはそれを呼び寄せる人に巣ぐう
だが彼女は守り続ける。
博麗にかせられた宿命のために……
次回『博麗』
悪魔は
あとがき
ようやく出てきました原作キャラクター!
一人目は皆さん大好き(?)博麗霊夢ということで、次回はボス戦!
お楽しみに♪