仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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102話 世界の主な構成は理不尽と不平等

 

希望大陸で行われている所業はだいたい奴隷貿易が挙げられる。各国の労働力として各国に連れていかれそこで労働に従事されることもあったが、この時代はパナマやスエズの運河開発に動員された。基本奴隷階級に落とされた現地民たちは希望大陸における鉱山奴隷やプランテーションにおける農奴として扱われ、場合によっては希望大陸や南天大陸のプランテーション地域にも送られた。パルティア王国やサータバーハナ朝などは対ローマへの戦奴として最前線に放り込んだりもした。

 

世界全体が自国の利益のために動き出し、一部の強国が結託し他の国々をいいように使う時代がやって来た。そう言った強国は対外征服や略奪、鉱山開発を推し進め、国富たる貴金属を蓄積していく方向にあった。その過程で様々な形の多角貿易が行われた。

 

徳川大日本帝国もその流れに乗る、むしろ牽引することとなる。

希望大陸の植民地化が始まると帝国幕府は貴族院に押される形で植民地や入植地の現地民を対象にした麻薬ビジネスに手を染め始める。徳川帝国の薬学技術は非常に高く、蓬莱大陸の薬漬けの実績から希望大陸でも莫大な利益を出すこととなる。さらに奴隷関係の規制も緩めることとなり希望大陸民やローマ白人捕虜が徳川帝国の植民地や入植地で労働力と言う建前の奴隷化が進んでいった。弱体化したローマ帝国にローマ白人の奴隷化流出を防ぐ力はなかった。

 

徳川大日本帝国は南希望会社や東上都会社など、勅許会社を設立して、各地の派遣軍を再編する動きを見せており統監府や総督府の縮小が行われた。

 

世界の歴史は忠実とは比べ物にならないほど変わってしまったが人間と言うものはどんな人種だろうとやることは変わらないと言う事であった。

 

 

 

 

時を遡る事大晩餐会の時、高等文明諸国即ち列強諸国が貴賓休憩室で会議をしていた頃。

帝国劇場中庭

多くの参加者は割り当てられたボックス席やダンスホール、ホワイエなどで過ごしており彼らのいる中庭は然程人は多くいなかった。

 

その中に彼らが並んでも然程注目されることはなかった。

劉備軍の北郷と劉備、徳川大日本帝国天皇壱与。中華大陸の辺境の領主と実権を失い殆ど傀儡となっており名ばかりの天皇と付き人の女官達の数人だ。

 

「北郷一刀、私達外史の管理者にとってあなたは異物、特異点として目の敵にするものもいれば。私や我が父じゃなくて母である卑弥呼や貂蝉の様に良い影響を与える改変者として好意的に見る者もいます。」

壱余の言葉を聞いて何を言っているのかわからないと言う感じで困惑する一刀。

 

「君は一体?」

 

「そうでしたね。あなたはそう言った存在でした。ですが、これだけは伝えなくてはなりません。気を付けなさいあなたを陰で守って来た管理者はもういない。于吉、左慈と言った改変を嫌う・・・いえ個人的にあなたを目の敵にする者達があなたを狙うでしょう。」

 

「そんな!ご主人様は何も悪い事なんてしていないのに!!」

劉備は驚きと不快感を露にする。

 

「それは、先ほども言ったように北郷一刀が歴史の改変者だからです。」

一刀は壱与の答えに疑問を投げかける。

 

「でも、それなら徳川も彼らの嫌う存在のはずだよね。なんで、俺だけなんだ?」

 

「貴方方は知らないと思いますが、徳川にはあなたと同様の未来の知識を持った者達が3人います。徳川家茂、松平容保、松平定敬。ですが、彼らはあなたと違って複数の外史にまでは影響力を持たない。自覚はないでしょうがあなたはいくつもの世界に影響を与えているのですよ。」

 

「でも、徳川が異物なのは変わらないはずだ。彼らも排除対象のはず・・・」

 

「徳川はこの世界において異物でした。ですが、この徳川もまた別の外史の強烈な存在でした。別の世界の起爆剤であった彼らはこの世界においても強大な影響を及ぼしました。それは歴史の修正力を跳ねのけるほどに・・・。いえ少し違いますね。彼らは修正力と妥協、折り合いをつけてしまった。確かに于吉や左慈にとって北郷一刀、あなたが優先度の高い異物でした。それはあなたが異物として善、秩序の改変者であり、徳川が混沌の改変者だからです。一見、徳川の方が問題があるように思うでしょうが正史や忠実と言うものは実のところ悪意と混沌によって形作られている要素が強いのです。あなたの元居た世界もそうだったはず、あなたの近くは違っても世界を見回せばそうだったはずです。」

 

壱与の話を黙って聞く二人

 

「この世界を良い方向に導けるのはあなただけです。残された時間はそう多くありません・・・。修正力と改変力、秩序と混沌が争う日は近い・・・。北郷一刀、そして彼らに寄り添う恋姫達。私にできることは極僅か・・・、ですがこれくらいならば・・・」

 

そう言って壱与は一刀に数枚の書類を握らせる。

 

一刀達は何も言わずにその場を立ち去った。

 

残された壱与は呟く。

 

「私は寄り添う大樹を間違った様です。恋姫達もすでに道を違えた者も・・・。ですが、せめて・・・」

 

壱与は帝国劇場の中庭から煌びやかな劇場内の一室、カーテンで仕切られた貴賓休憩室を見つめていた。

 

 


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