仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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20話 遣漢使道中記②

 聖謨と政憲は青髪の美少女を追って、大きな町の門の検問で引っかかっていたのだが、彼らは門の番兵達と会話している目的の少女を見つけた。

 二人は馬車から降りてゆっくりと彼女に近づく、むしろ老齢の二人は基本的に走れない。聞き耳を立てて彼女が番兵と世間話をしているのを確認すると、声をかける。

「失礼、名のある将の方かとお見受けしたのじゃが?いかがか?」

「そうであれば、我ら、ご挨拶をと思い声をかけて次第であるのだが?」

 二人が声をかけると青髪の少女が振り返りこちらに応対してくる。

「はい?確かに私は袁紹様に御仕えする左将軍の顔良ですが、あなた方は?」

 二人は取り繕うように謝罪して名乗りを上げる。

「わたしは日本国外交使節団の団長を務めさせていただいている川路聖謨と言うものじゃ。」

「同じく副団長の筒井政憲と申す、お見知り置きを。」

 そうやって社交辞令的な挨拶をしていると後ろの方で大きな声が聞こえてきた。

「うわぁ!!!すげーぞ、こいつら!!!見てみろよ!!!斗詩!!!こんな大量の財宝、あたい初めて見た!!!」

「お、おい!やめんか!?」

 顔良と名乗った少女と似たような金色の鎧を着た短髪で水色に近い薄緑髪の少女が大川正次朗らが刀に手をかけ、他の伝習隊隊員が銃の引き金に指をかける。

「お!やんのか?いいぜ掛かってこいよ。」

「な、なにを!!」

 一触即発の状態になりかけた時、聖謨が怒鳴って諫める。

「馬鹿者が!!やめんか!!・・・・熱くなりおってからに。」

「っは、申し訳ありません!!おい!!お前たちも武器を下ろせ!!」

「「「「っは!!」」」」

 聖謨が大川ら伝習隊の隊士らを叱責している間に政憲が顔良に謝罪する。

「これは、うちの者たちが失礼を・・・」

「いえいえ、こちらこそ。うちの文ちゃん、じゃなかった文醜がご迷惑をおかけしました。ほら、文ちゃんも謝って!!」

「わるかったよ。」

「はっはっは、若いというのは活気があって良いですな!年を取るとこうはいかない。」

 顔良に促された文醜は外交団の面々に謝罪した。その文醜に対して政憲笑って許し、大人の余裕を示した。そして、会話に聖謨も加わる。

「これは、失礼したのじゃうちの部下が失礼をした。」

「いいって、いいって。あたしたちもこの仕事をやってるとこんなことよくあるって!」

「もう!文ちゃんったら調子がいいんだから。」

「なあ、あんたらの荷物もう一回見せてくれよ。あんなの姫のところでも見たことねぇよ!」

「ダメだよ、文ちゃん~。」

「かまわんよ、好きなだけお見せするぞ。」

 和気藹々とした空気が流れている流れもあったのか。簡単に見せる許可を出す聖謨。

「早速ご案内しましょうぞ。ですが、そろそろ場所を変えたいのじゃが?」

「あ、ごめんなさい!すぐに案内しますね!」

 顔良達に兵舎の裏にある空き地に案内された彼らは一つづつ説明していく聖謨と政憲、それについていく顔良と文醜。

 大甕や大きな袋をたくさん乗せた聖謨は贈答品の一覧が書かれた台帳を見ながら

「えっとこちらですな。1両目には食品系統じゃな。奥から、胡椒・岩塩・海塩・醤油に魚醤・味噌(XO)醤・米酢に粕巣・りんご酢・ぶどう酢・黒砂糖・白砂糖・ウスターソース・オイスターソース・香辛料はさらに細かいな省略するか・・・あと味噌。二両目の方は、各種茶葉に、この大きな円柱がチーズ、動物の乳を発酵させたものですな、酒によく合うのじゃ。ビスケットに煎餅・サブレー・クッキー所謂焼き菓子ですな。それと、飴玉と金平糖。乾燥果物と瓶詰果物、あとジャムに蜂蜜、蜂蜜はこの15瓶すべて種類が違うようじゃな。あとそれは甘露蜜と・・・おやどうかしましたかな?」

 あまりの種類の多さに呆然としている顔良と文醜。

 おもむろに聖謨が袋をあさりだして数枚のビスケットを取り出し、ジャムを匙で塗ってから渡す。

「どうぞ、召し上がってくだされ。」

 それを受け取った顔良と文醜は受っとったビスケットを口にする。

「おいしい。」「うめぇ!!」

 初めて食べる菓子に驚嘆の声を上げる二人。

「今後、我が国との貿易が始まれば市場にも出回りますじゃ。そのときはよろしくたのむのぞぉ。かっかっか、じゃあ、次の車両へ」

 

 三つ目の車両には大量の酒が載せられていた葡萄や林檎の果実酒。ラム酒やウィスキー、キルシュヴァッサーなどの多種多様な蒸留酒。清酒に焼酎・蜂蜜酒・椰子酒と言った酒が大量に入っていた。二人は結構な量の酒を試飲させてもらって少々顔が赤くなっていた。

 

 四両目には多くの織物。五両目には屏風絵に掛け軸・壺などの美術品。

 あまりの名品の数々を見た二人は惚けていた。

 そんな二人の背後から、高笑いが聞こえてきた。

「お~っほっほっほ!!!や~っと見つけましたわよ!!!斗詩さん、猪々子さん!!!」

「姫!?!」「麗羽様!?!」

 一瞬で酔いがさめたかのように背筋をピンと張って振り返る。

 顔良と文醜を見た先には二人の主であろうかなり奇抜な、聖謨と政憲の記憶では欧州の貴婦人が好みそうな所謂ロール髪をさらに巻きまくったような上方の少女が高笑いしていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?(唖然としている)」

「・・・・・・あ、えー、顔良殿?こちらの美しい高貴そうな方は?どちらのご令嬢で?」

 

 唖然として思考停止に陥っている聖謨、政憲はなんとか正気を保って顔良に尋ねた。

 そして、顔良は何とも言えない哀愁漂う(どちらかと言えば困っている)顔をして答える。

 

「こちらの方は、この河北南皮を治める太守様であらせられ、四代にわたって三公を輩出した名門袁家の頭首袁紹様です。」

 

 




顔良が左将軍の役職はオリジナル設定。右将軍が文醜。

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