仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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21話 遣漢使道中記③

「こちらの方は、この河北南皮を治める太守様であらせられ、四代にわたって三公を輩出した名門袁家の頭首袁紹様です。」

 

 ババーンと言う効果音が聞こえてきそうな雰囲気を漂わせて、先ほどまで話していた顔良と文醜を左右に従えた少女は袁紹、幕府の資料でも重要人物だ。

 聖謨と政憲は今まで対応してきた人間とはかなり毛色の違う彼女に対して少々気おされてしまったが何とか声をかける。

 

「え、袁紹様でしたか。私は日本国より参りました外交使節団の長を務めております。川路聖謨と申します、このたびはお会いできて光栄です、是非にお見知り置きを・・・。」

「同副団長の筒井政憲です、どうぞよろしく。」

 

「そうですの?使節の方でしたの?ところで、あなたたちはこの二人とここで何をしていらしたのかしら?」

 

 袁紹は聖謨と政憲の自己紹介をほぼ聞き流しているようだが、自分のききたいことはしっかり聞いてきた。

 この地の長と言うことなので聖謨と政憲は丁寧に対応する。

「ええ、私達の住む日本国は、皆さんが蓬莱と呼んでいる国なのですが、我が国から持ち込んだ品々が彼女たちの目から見たら非常に珍しいものだったようで、こうして荷馬車の中身を見せていたのですよ。」

 

「なら、この地の太守であるこの!!わたくしが!!見なくてはなりませんわね!!名門袁家の当主としても、天子様のもとに送られるものは確認しなくてはなりませんわ!!」

 

 そんな道理はないだろうと思ったが、否定するとうるさそうだし、なんとなく自分も見たいんだろうなと思った。

 初対面で何となく察することはできたがかなり高飛車な性格のようだ。

 

 とりあえず案内することにした。5両目まで再び案内していく、流石は大陸屈指の名門の頭首、結構な珍品名品を見せていたが、あまり驚いてはいなかった。

 1・2・3両目は珍品ではあるが食品や酒程度では名家の頭首を唸らせることは出来なかった。

 4両目の織物や染物に関しては彼女の目から見ても上物らしくそれなりに好感触だった。逆に5両目の美術品については白磁や青磁の壺等は好感触であったが絵画などの書き物に関しては個人差が出るだろうとアドバイスをされた。彼女自身は、あまり高い評価を出していなかった様だ。しかし本番は6両目からだ。

 6両目は工芸品を乗せている鼈甲細工に銀細工・金細工・銅細工・漆細工は目玉だ。さらに意外かと思うが紙だ、それも木簡や竹簡を主に使っていて連中が頑張って手に入れるような粗悪な品ではなく良質な和紙と洋紙だ。これが意外と国力を見せつけるアイテムでもあるのだ。それ以外にもビードロ細工に水晶細工なども加えている。

 これを見た袁紹殿はとても驚いていた。

 だが、驚くのはまだ早いこの次は二つの海を制する徳川幕府の海運力にものを言わせて、世界各地から手に入れた宝石の数々よ!!大陸には存在しない宝石すら持ってきたぞ!!

 

「まあ、これは珍しい宝石ばかりですわね。見たことのない宝石までありますわ。」

 宝石を目利きするように見て回る。自分が想像していたようなオーバーリアクションではなかったが驚愕しているのはわかった。

 

 本人にそのつもりはなかったのだろうが帝室に献上する品の選別やこの国の大まかな相場が彼女のおかげで理解できた。その礼はするべきだろう。

 

 聖謨はおもむろに宝石の一つを拾い、手持ちの布でくるむ。指紋が付かないようにするためだ。それに、よく考えればこれ以降の荷台を見られるのはまずい。金や銀の延べ棒がぎっしり詰まっている。さすがにこれだけの金塊を軽く献上できる勢力などと分かれば国力が漢に並ぶもしくはそれ以上の存在だとわかってしまうに違いない。

 

 そろそろ気を散らさなくては・・・

「袁紹殿、もしよければこちらの宝石をお納めくださいれ、この大陸には二つとない宝石でございますじゃ。トルマリンと言って心身を癒す力があるとか。あ、でしたら他のお二人にも同じものを差し上げますじゃ。」

 

 聖謨は内心冷や汗をかいたが、彼女たちの反応は望ましいもので・・・

「ありがとうございます、いただきますね。麗羽様、文ちゃんお揃いだね。」

「おお、あんがと!川爺!!」

 聖謨は一瞬よくわからなかったが愛称の様だ。

「川路の爺さんで川爺な!ついでに筒井の爺さんは筒爺だな?」

 一時はしまったと思ったが彼女達と交友を持てたのは結果的に良い方向ぬ向かったはずだ。

 

 そして、袁紹が口を開く

「あなたたち、泊まるところは決まっていますの?特別に都城の客室に泊めてさし上げますわ!!」

 

「それはありがたい。名家袁家の御頭首様と誼を結べるなど、願ってもないことですじゃ。」

 

「そうですわよ、普段ならまずありえませんわ。お~ほっほっほ!!!」

 

 袁紹に招かれた外交団一行は豪華なもてなしを受けて一泊した。我々は朝早く出発したのだが顔良と文醜が見送りに来てくれた。袁紹殿は朝早すぎて見送りには来てくれなかったが、紹介状をしたためてくれたようで、顔良が渡してくれた。これがあると、他の町でも、門での待ち時間が減るらしい。

 

 華北袁家との友好度が上がった。

 

 


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