仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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恋姫編はゆっくり書くといったな。あれは嘘だ・・・


22話 遣漢使道中記④

 南皮を出た外交団一行は黄河を渡り、青州を通過し一時兗州も通り過ぎて豫州の魯と言う街に立ち寄った。

 聖謨達は町で比較的大きな宿を貸し切って一泊することにした。

 通常、東夷に当たる我が国の人間が町一番と言わずとも上位に入る大きな宿など高官であろうとも貸し切ることはまずできない。

 だが、袁紹からもらった紹介状には検問順の口添えだけではなく、宿泊場所に対しても口添えがしてあったようだ。老齢の二人にとってはとてもありがたい話であった。

 魯の町の役人に案内された宿は町で3・4番目の優良な宿だったようだ。

 

 二人は、宿の外にテーブルを並べて飲茶を楽しみながら、本来は献上品にしようと思って持ってきた屏風や掛け軸などを並べて優雅にお茶を楽しんでいた。

 やはり、袁紹が評価したように大陸人の美的感覚の琴線にふれないようで、誰も興味を持たずに通り過ぎていく。

「大陸の人間には侘び寂びの味わいはわからんようじゃのぅ。」

「この国の人間は派手好きだからなぁ。」

 

 ゆっくりと時間が過ぎていく。

 

「ふむ、陽光があたたかく寝てしまっていたようじゃな。これ、政憲殿。おきられよ、日が沈み始めておりますぞ。」

「う~む、少々寝すぎてしまったようだな。」

 聖謨と政憲は肩や腰をたたく、年を取るとちょっと同じ体位でいただけで体中が痛くなるのだ。

「政憲殿、早う人を呼んで片付けさせよう。風呂にも入りたいしのぅ。」

「そうだな。体中が痛とうてかなわん。」

 聖謨が人を呼び片付けさせようとした時、自分たちのすぐ横に人がいるのに気が付いた。

 三つ編みツインテールの薄紫髪の少女が浮世絵をじーっと見ていたのだ。

「お嬢さん、これに興味があるのかのぅ?」

「はい」

 聖謨は彼女が見ている絵を一緒に見る。

「職人絵じゃな。」

「庶人達の普段の暮らしや、在り様がわかってとても興味深いです。」

 彼女の服装は比較的洒落た服装だ。庶人達のような簡素な物ではない。どこぞの貴人の子女だろうか。

「こう言った絵は、漢では受けが悪いと聞いていたのじゃが?」

「そうでしょうね。普通はもっと派手なのが好きな人が多いと思います、龍や虎とか神聖なものの方が好まれるでしょう。ですが、私はそんな薄っぺらい者よりも人々の今ある姿を残そうとしているこの絵の方が好きです。」

 何かしら取っ付きにくく、鼻につく様ななことが多い大陸人(袁紹・顔良・文醜の様な例外もいたが)にしては珍しい。穏やかな、それでいて芯の強さが見えるこの少女に聖謨は興味を持った。

「お~い!聖謨殿!風呂に行こうぞ!」

「後にするのじゃ!先に入ってくれ!!」

「そうか!わかった!!」

 建物の中から政憲が声をかけてきたが、先に入るように言って、ここで少女と話すことにした。

「よかったのですか。」

「ああ、かまわんよ。」

 少女は才女だったらしく、聖謨と話していると結構高度な話題もあがり。聖謨自身非常に感心した。

 1時間ほどその場で話したのあたりで聖謨は足腰に痛みが出てきたので椅子に座り少女にも座るように促した。聖謨は彼女と話しているうちに彼女が何か悩みを持っていることに気が付いた。

「お嬢さんは何かお悩みのようじゃのぅ。差し支えなければこの老骨に話してみては下しませんか?もしかしたら、力になれるやもしれませんぞ?」

 聖謨が優しく促すとポツリポツリと話し始めた。

 自分は、北海の地で働いている役人だと・・・

 日々、民のためを思い身を粉にして働いてきているのに、民の暮らしは一向に良くならない。

 民達は自分を頼りにして尽くしてくれているのに、何も出来ていない自分の無力さが情けないと・・・

「ふむ、わしから言えることは少ない。じゃが・・・・落胆するよりも、次の策を考える。・・・・・・・・・・・・お主には事を為すための才がある・・・あとは運だけじゃ!あきらめず何度でも挑み続けよ。いつか道は開けるじゃろう。」

 少女はハッとした表情をしてこちらをみる。

「もう、すっかり暗くなってしもうた。誰ぞある!!」

 聖謨が声を上げると伝習隊隊員が2人ほど現れる。

「夜道は危ないからの、この者達にそなたの宿まで送らせよう。」

「ありがとうございます。」

「気をつけて帰るのじゃぞ。」

 聖謨が手を振って見送る。

 少女が曲がり角の直前で振り返り、こちらに声を上げる。

「孔融文挙、性は孔、名は融、字は文挙です!!いつか!いつか必ず北海の国を豊かな国にします!!その時は見に来てください!!」

 そう言って、角を曲がった。

 孔融・・・孔子の子孫じゃったか、それならあの聡明さにも頷ける。むしろ、よく彼女の会話についてこれたものだ・・・。

 しかし、見に来てくれか・・・長生きしなくてはならんのぅ。

 若い者は皆眩しい・・・、わしももう少し若ければ大志を抱いて、それに精力をそそいだのじゃろうな。そういえば、わしは若い頃なにがしたかったのじゃろうか。

 

 


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