仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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23話 遣漢使道中記⑤

 外交使節団の旅路は南皮や魯の様な良い思い出だけではない。

 正直言って、悪い思い出の方が多いのだ。袁紹の紹介状は本当にあって助かった、なければ死んでいた。

 わたし達は外務の仕事に携わる関係上いろいろな料理を食べたことがある。まずいと言えば転移前の世界のエンゲレスの料理を上げるが、転移後なら間違いなく大陸の料理だ。あれは不味い不味くないの次元を超えていた。はっきり言っておくがあれは劇物だった。店の中に入ればあまりの匂いに目が痛くなり涙が止まらなくなる。大陸の庶人があれを普段食べているというのだから、あの国の民の異常性を認識できてしまう。

 あの国の連中の見栄とでもいうのか、高価な塩や香辛料をバカみたいに放り込めば美味いとでも本気で思っているのだろうか?見栄っ張りがあの国の特色だが、裕福な者たちは正しい贅沢を知るが、愚民たちは贅沢の仕方がわからないのだ。そもそも、農村都市で貧しい貧しいと喘いでいるくせに、商業都市や州都では庶人達も辺境き比べて馬鹿みたいに贅沢をしている。こんな国は滅びるだろうと思ったし、実際にもそうなった。

 この漢民族と言う民族は一握りの天才や善人が生まれることがあるようだが、周りがバカとクズしかいなければ、糞みたいな国にしかつくれないのだ。

 そしてもう一つは、陳留でのことだ・・・・・・・

筒井政憲 著 外交使節団の回顧録、忘れたい記憶 より

 

 

 

 寝台の上に国より持ってきた寝具を敷いて、ぐったりしている聖謨。

「腹が・・・痛い。すまぬが陳留の太守への挨拶は・・・」

 疲れた声で話しかけてくる聖謨に政憲は

「ああ、わしが行ってくるから、そこで休んでおれ。」

「すまぬ、すまぬ」

「ああ、行ってくる。行ってくるから、もう寝ておれ。」

 袁紹殿の紹介状のおかげで宿泊地は大概高品質の宿なのだが、袁紹殿の影響力が低い地域と言うものもあり、そう言った地域では庶人の宿泊施設を利用するのだが、庶人の料理と言うのは味が濃く塩辛く唐辛子などの香辛料を使うため恐ろしく辛い。この国には、老人が異様に少ない(華南の方にはそれなりにいます。)、劇物ばかり食べてれば死ぬに決まってる。

 年寄りには恐ろしく厳しい国だ孔子の教えはどこに行ったのだ年長者を敬う心はないのか?それとも、敬いたくないから年取らせる前に殺してしまえとでもいうのか。そんなことを考えてしまう。

 そして、そんな政憲もあまり腹の調子が良くない下痢している。今度から庶人の宿に泊まるときは食べ物は献上品の食品から食べてしまおう。

 

 護衛を連れて挨拶をするために時間を決めて予約を入れていたのだが、なぜか予約もない女商人が先に通されていった。腹の調子も悪いのでやることをやって早く宿に帰りたいのだが・・・・

 待ちぼうけを食らうこと半刻、女性兵士が順番だと伝えに来た。

 女性兵士に案内されて謁見の間に通される。

 謁見の間に通された一行は曹操と対面し会談は進んでいった。

 

「袁本初の紹介状を持ってきているようね。町の案内をしてほしいとか?」

「は、はい」

「この荀彧をつけるわ。いいわね、桂花!」

「はい!お任せください!!」

 

 歴史において曹操の失策の代表例にされる日本国との亀裂。

 原因は曹操自身が軽んじていた袁紹の紹介だから、東夷であったから、等といろいろ言われている、この案内人の人選ミスであった。当時曹操の握っていた日本国の情報が少なかった事、袁紹の紹介状によって門での荷物チェックが省かれたこと、様々な不運が重ってしまったがゆえに、日本国を一時とはいえ軽視し、大の男嫌いの荀彧の練習台にしてしまったことは、稀代の英雄曹操の最大にして最悪の失策であった。

 

「下がりなさい。」

「失礼します。」

 

 外交団の一行は曹操に一礼し謁見の間を後にした。

 

 

謁見の間の外で

 

「おっと・・・」

 少しよろける、横にいた伝習隊隊員が支えてくれた。

 隊長が悪いせいか足元もふらつく様だ。

 

「ちょっと!のろのろしないでくれる!!早く案内して終わらせたいのよ!!」

 な、なんだ、この娘はさっきと態度が違いすぎるぞ!?

 速足で歩きだす少女、さすがについてこれないので護衛の伝習隊隊員に背負ってもらう。

 

「曹操殿はお忙しいようですな。」

「当たり前でしょ!!なんでそんな当たり前のことを聞いてくるのよ!!」

 この娘、性格がきつ過ぎる。なんで曹操殿はこの娘を案内に着けたのだ!?

 しかし、各都市の発展度や領主の情報集めは外交官として集めなければならない最低限の仕事。

 案内される施設について聞いているのだが、すごい突っかかってくるし、失礼な発言が多い。

 頭は良いようだが、こんな娘を重用している曹操は何を考えているのだろう。

 施設や町を回って気が付いたのだが、この陳留の町は女性の比率が高すぎる。まるで、会津藩の新選組の男女比率みたいだ。

「ところで、荀彧殿。この街には男はいないのですか?」

 それを聞いた荀彧は急に先ほどより機嫌が悪くなってしまった。

「男ぉ~!そんな汚らわしい存在、華凛様の視界に入れるわけないでしょう!!男ならあそこよあそこ!!」

 彼女が指さしたところは路地裏。男たちは皆下働きのようで馬車馬のように働いている。

 な、なんだ!?この町は、外務省の資料でも女尊男卑の傾向があると書いてあったが、そんな生易しい者じゃないではないか!?これはもう、女尊男畜ではないか!!

 き、危険だ。この娘、先程から敵意むき出しではないか!?このままでは命が危ない。

「ここで終わりよ!!質問はないわね!!私は帰るわ!!」

 

 

 政憲は慌てて宿に戻る。

「政憲殿。先ほど女中が持ってきた粥なのだが味が濃くてな・・・」

「聖謨殿!!食べてはいかん!!ここは危険だ!!すぐ出発だ!!」

 

 筒井政憲の手記には曹操の評価は英邁なれど高慢にして差別主義者と書かれていた。

 

 




次回はついに皇帝と謁見、道中記編も終わりです。

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