仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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超難産でした。
矛盾点もあると思うけど見逃してください。


25話 遣漢使道中記⑦ 日出国の将軍、日没する国の天子を叱責する

 その数日後、張譲の計らいで何皇后と面会することができた。

 相手は皇后皇族である。外交団も今まで以上に気合が入る。

「あの張譲がね・・・。皆さん、お掛けになって。」

「失礼します。」

 聖謨を筆頭に一礼をして席に着く外交官たち。

 自己紹介を終え、後日の交渉への口添えなどを依頼して、口利きの心づけとして漆箱に入った宝石詰め合わせを渡して帰った。

 何皇后はこの時、日本の外交団の毅然とした態度に内心驚き、後日の皇帝との謁見での波乱を予感した。

 

 

 

 聖謨ら徳川幕府外交団は将軍家茂より絶対の条件として漢王朝に屈しないという絶対命令を下されていた。しかし、交渉が決裂することも許されない。正直言ってかなり無理がある命令であった。しかし、この条件を達成し日本国の毅然とした国家の登場を世界に宣伝し、漢王朝の崩壊に拍車をかけた交渉がついに始まる。

 

 まず、外交などの舌戦において相手に衝撃を与えることは重要である。

 幕府の外交団はとんでもないことに、自分たちが拠点にしていた宿泊施設から洛陽城まで金銀財宝を乗せていた荷馬車の幌取って洛陽中の人間に見せつけたのであった。尋常ではないほどの金銀財宝、常識の範疇を超えた巨大な金の延べ棒、巨大な珊瑚、見たことない輝きを放つ数多の宝石や宝玉。

 聖謨を先頭に洛陽城の外城の正門まで凱旋して見せたのだ。

 この異様な集団を見に洛陽の多くの庶人が集まり驚きを隠さなかった。

 今までも朝貢の使者が剝き出しの荷馬車でやってきたことはあり、特別それをやめさせるような規則は漢の法典にはなく。禁裏軍の近衛たちもそれをやめさせるすべはなかったのだ。

 外城の正門を超えた先でもうわさを聞き付けた漢の下級から上級関係なく、日本の外交団を見に集まっていた。

 人が集まるがゆえに進む速度は遅く、それが鈍足に拍車をかけた。

 

 洛陽城まで半分ほど進んだところで禁裏軍の一団が行く手を阻んだ。

「そこの朝貢使!人が集まり過ぎて滞りが起きているわ!!ここで止まりなさい!!」

 薄茶色の長髪で桃色のふちの眼鏡をかけた女将軍が外交団のいく手を妨げたのだ。それに対し聖謨は女将軍に対し怒声上げる

「我らは!!漢王朝の皇帝に謁見に参っただけだ!! 五常において礼とは宗教及び儀礼での御法度や伝統的な習慣・制度を意味している!!貴国の制度において幌を付けていない馬車で来た謁見の使者の行く手を妨げる制度も前例もなし!!なぜ我らのいく手をさえぎられるか!!道を開けられよ!!!」

 まさか、蛮族の朝貢使に五常を用いられて一喝されるとは思わず。女将軍はたじろいでしまう。その後もその場で舌戦を繰り広げたが流れをつかんだ聖謨は女将軍の反論を全て潰してしまった。

 もはや、実力行使しかない。女将軍が実力行使に訴えようとした瞬間。

「待て!!」「お待ちなさい!!」

 張譲と趙忠が現れて間に入る。

「張譲様!!趙忠様!!」

 女将軍は片膝をつき拱手する。

「皇甫嵩将軍!!道を開けよ!!」

「で、ですが!?」

 聞き分けなかった皇甫嵩に対し張譲が叱責する。

「五常を用いたこの者達に道理がある!!天子様の顔に泥を塗るつもりか!!」

「す、申し訳ございません!!すぐに道を開けます!!」

 すると今度は趙忠が指示を出す。

「皇甫嵩!!この人だかりを退けなさい!!」

「っは!!直ちに!!」

 門内で騒動を起こした日本外交団に対し、場内の宦官や上級役人たちは恐れ・怒り・興味、いろいろな視線を送っていた。

 

 

 城内に通された。少々騒ぎ過ぎたと内心穏やかでない聖謨であったが、ここまで来ては力押しかないと割り切った。

 漢の文官に謁見の列へ案内される。文官は先ほどの舌戦を見ていたようでおびえているのが感じ取れた。自分たちの前に挹婁の使者がいるのを見つけた。聖謨はしめたと思い先ほどの文官を呼びつけ叱責する。

「貴様!!朝貢国の序列も守れないのか!!!五倫において長幼の序を知らんのか!!我が国は建国し1000年以上!!先に見える挹婁の使者は明らかに長幼の序において下!!そのようなものの後につかせるとは貴様らの君臣の義を疑うものである!!!!この様なことを行う漢の廷臣達は天子様に対する君臣の義に欠いていると知れ!!!!!」

 一見、途轍もなく失礼なことを言っているように見えるが、聖謨の言っていることは五倫を守れない廷臣に対するものであり、天子に対しては不忠者を抱える天子様が可哀そうだと言っているのだ。この言葉は漢王朝内であれば忠義の士の言葉に値する、これが形式的にも臣下の立場をとっている倭国の人間の言葉であることで、これは暴言ではなくなる。

 これを聞いた廷臣達は恐れおののき、順番を変える。日本以外の使者の順序を適当にすると再び怒声を浴びせられたので他国の使者も序列通りに並べられた。

 

 聖謨は、この場の空気を完全に支配した。

 この場を治められる者達に対して前日まで平身低頭して油断させての一撃である。

 日本外交団との謁見は完全に聖謨が主導権を握った。

 皇帝の姉妹はお互いに身を寄せ合って震えているのがわかる。

 張譲含めた宦官や文官達も完全に委縮している。

 

「これより求めるは!!対等の関係!!!ゆえに!!!立礼を持って対応させていただく!!!」

 

 聖謨の第一声によって空気は凍り付く。何人かの廷臣が反論をしようと、するが口をパクパクさせるだけで声が出てこない。それもそうだ、聖謨達の背中には彼らが持ってきた莫大な量の財宝が控えていたのだ。よほどの無能でなければ察することができるはずだ。この財宝は国の力だ。もし、本格的に仲違えて戦争にでもなればどっちが勝っても再起不能だ。ゆえになにも言えない。

 

 そこに霊帝が声を震わせて反論する。

「ぶ、無礼であるぞ。」

 しかし、その声を完全に押しつぶす聖謨の怒声が響き渡る。

「喝ぁあああああああああっつ!!!!!!天子とは天帝がその子として王を認めたものであり、王位は家系によって継承されていく。王家が徳を失えば新たな家系が天命により定まるものである!!!!なれば、賊徒あふれ災害が続く漢はいかなる時か!!!天帝とはこの世のすべてを作りたもうた神聖なるお方!!!すべての祖にして始まり!!!この世に生を受けし、すべての存在が天帝に忠義を示すことこそが生まれながらにしての義務なのである!!!我らが主徳川家茂公は天帝の御子であらせられる天子様の事を思い。この財宝を蓬莱よりはるばる持ってきたのである!!!そのような忠義の士に無礼とは何事ぞぉおおおおおおお!!!!!!!!」

 冷静になればこの言葉の矛盾点を見つけることは出来た。だが、この状況でそれを出来る者など天帝その人だけであろう。

 もはや、誰が上か下かわからない惨状が広がった。

「ごめんなさい、ごめんなさい、わたし・・・がんばるからぁ、がんばるからぁ・・・漢の国が・・・天下が良くなるようにぃ・・・・がんばるがらぁあ!!うぇええええん!!!!!」

「ぐず、うぐぅ、わたしもがんばるもん。天帝様のためにがんばるんだもん。」

 こんなことをすれば普通なら誰でも死罪確定である。しかし、超絶ぶっとんだ超理論で自身を天子の下に置かず天帝の臣と名乗ることで天子を叱責するという快挙?暴挙?愚挙?を正当に成し遂げてしまったのだ。彼女達帝姉妹の中で天帝の臣としての徳川家茂像がトラウマ的に出来上がってしまいもはや何も言い返さなくなっていた。

 

 何とか我に返った何皇后がその場を収め、聖謨ら外交団の交渉を行う。

 と、言ってもこの状況では何皇后もただ応答する機械以上のことは出来なかった。

 この交渉により、徳川幕府むしろ徳川家茂は本人の知らぬところで天帝の臣として天子とほぼ同列の扱いを受けることとなる。そして、対等の外交関係になったのであった。そして、遼東半島も名実ともに日本のものとなったのである。

 

 この時の内容はすべて書き換えられた。

 外交使節に天子が叱責を受けた等と残せるわけがない。

 だからと言って日本と戦争する気力も実力もない。

 

 だから、この時の記録は公式にはこう残された。

 日本(徳川幕府)より漢王朝の立て直しのために大量の財貨が送られ、この誠意にこたえる形で日本(徳川幕府)に遼東半島をもって返礼とした・・・と

 

 




とんでもないものを書いてしまった・・・
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