仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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ちょっと犯罪臭がしますよ。
まあ、光があれば闇もあると言う訳で・・・


30話 闇の宰相、松平定敬

「いやだー!!いやだー!!俺も大陸に行くんじゃい!!」

 

 外交団の船に乗りたいと駄々をこねて柱にしがみ付く家茂。

 

「お放しください!!上様!!」

 幕臣達が引き離そうとするが、家茂は離さない。

 

「まあ、よいでしょう。上様を離して差し上げなさい。」

 そこへやってきた松平定敬が幕臣達に言う。その後ろには井伊直弼の姿もあった。

 長きにわたる養生を済ませて表舞台に復帰してきたのだ。

「上様は相変わらずのようですな。」

 井伊直弼は笑顔で家茂の肩をたたく。

「おお、直弼か!!話には聞いておったが目出度いことだ!!」

 

 幕臣達が定敬に詰め寄る。

「上様を止めてください!!」

「不要、このような時のために田安慶頼を政治総裁職に置いているのです。」

 そんな幕臣達を一蹴する定敬。

 そしてそんな定敬に家茂は感謝の意を伝える。

「さすがは、定敬!!持つべきものは友だよな!!!あっはっはっはっは!!!」

 

 そう言った経緯で家茂を外航船への乗船を認めた。無論、非公式の物なので家茂の偽名である徳田新之助を名乗らせることを徹底させたのであった。

 

 

 そして、家茂を送り出した定敬に直弼が話しかける。

「良かったのか。上様を送り出して?」

「構いません、上様には知られたくない物もやらねばなりません。こういったときに一気に進めてしまうのです。」

「あれか、わしはあまり好かん。」

「個人の意見で、大局を曲げることは出来ませんよ。」

「分かっておる。」

「さて我々も行きましょうか。」

 幕臣達が居なくなった港を二人も後にする。

 

 

 定敬と直弼はともに護衛の藩士を連れて列車に乗り、鉄道馬車を使い富山藩の薬師岳の山中の開けたところに行くと、地下へと続く洞窟状の地下施設があった。

 定敬と直弼の二人がその開けたところに出ると、加賀藩藩主前田慶寧と富山藩主前田利同が出迎えた。

 

「お待ちしておりました。大政参与松平定敬殿、大老井伊直弼殿。」

 慶寧は定敬と直弼を出迎える。後ろに続いた利同も深くお辞儀をする。

 

 それを定敬は手で制し、中に入れるように目で促すと、慶寧は自身の横に控えていた加賀藩士に洞窟をふさいでいた扉を開けさせた。

 その加賀藩士に明かりを持たせて地下と続く階段を下りる。

 階段を下りると薄暗い中から再び扉が見える、その周りには富山藩士数名が見張りに立っていた。

 利同が藩士達に扉を開けさせ。

 一同は中に入る。

 そこには、いくつもの牢屋と鎖に繋がれた人。研究員と思われる白衣の人達が何やらせわしなく動いていた。

 

 その中の一つの部屋に通された定敬と直弼。

 その部屋にはみすぼらしい格好の男たちが数人立っていた。

「では、成果をお見せしましょう。進め!!」

 慶寧がそう叫ぶと、男たちが一斉に前へと歩き出す。

 壁にぶつかると左右に動き彷徨う。

「これは失礼、止まれ!!」

 すると男たちが動きを止める。

 

 それを見た定敬は感心したよう呟く。

「ほう、なるほど上出来です。」

 それを聞いた慶寧は笑いながらそれに応じる。

「お褒めにあずかり光栄です。ですが、お褒めになるのはまだ早いですよ。」

 そう言って慶寧は刀を鞘から抜き、男達の一人の腕をはねる。

あたりに飛び散る血、だが男は平然とその場から動かない。

「ふんっ、悪趣味だ。」

 顔に血が付いた直弼は不快気に布でふき取り鼻を鳴らす。

「おや、大老様は気に入らないようだ。」

 慶寧は定敬の方を見る。

「すばらしい、すばらしいです!!続けてください!!」

「お褒めにあずかり恐悦至極。利同、説明を」

 定敬に促された慶寧は利同に説明をするように促す。

「フグ、アカハライモリ、ツムギハゼ、ヒョウモンダコ、スベスベマンジュウガニから毒素抽出し、その毒素を対象者の傷口から浸透させる事により仮死状態を作り出し、濃度が高ければ死に至りますが、中和粉末全量に対する毒素の濃度が丁度よければ薬と施術により蘇生します。濃度が高ければ死に至ります。仮死状態にある脳は酸欠によりダメージを負うため、自発的意思のない人間が作り出せるのです。南新大陸の樹木であるコカの木の葉から抽出できる麻酔成分をこれら対象者に投与することでただ言われたことに従う痛みと恐怖を感じない兵士が完成したのです。」

 利同の説明を聞いた定敬はうんうんと頷いて利同の肩をたたく。

「素晴らしい成果です。死刑囚はこちらで用立てますので、あなたたちは薬を増産させなさい。よいですか」

「もちろんで御座います。」「承知しました。」

 慶寧と利同は深々と頭を下げる。そして、慶寧が口を開く。

「ところで大政参与殿?こちらをいかがいたしましょうか?」

 そう言って慶寧は無色透明な結晶に手を突っ込む。

「おや、まだメタンフェタミンが残っていたのですか?阿片計画が頓挫して、阿片製造が中止されましたからね。まあ、いいでしょう。もっと濃度を落としなさい、そうしないと軍にヒロポンとして流せませんよ。念のため言っておきますが、あまり作り過ぎないように・・・ヒロポンは長期戦の時以外の使用はありませんので・・・。」

「大政参与様・・・・申し訳ないのですが実は・・・。」

 そう言っている定敬に利同が申し訳なさそうに顔を窺う。

 その後ろの方に似たような箱が数箱・・・

「はあ、あなた方は・・・・富山の売薬とは言いますが、あなた方は何を売ろうとしているのですか・・・・」

 利同が中を見るように促してくるので定敬は箱を開けるように促す。

「定敬様、中をお改めください。」

「とりあえず・・・。そこのあなた達、この箱を開けなさい。」

声をかけられた桑名藩士と富山藩士が釘を抜き箱を開ける。

「おや、これは?青いですね?」

「はい、富山藩独自の製法でつくりました青いメタンフェタミンで純度は99%ですよ。」

「ほお、これはすごい。」

 定敬は本日何回目かの感嘆をもらす。

「これはさすがに、軍には下ろせませんね。阿片計画はあくまで凍結、再始動した際はこちらを使いましょう。」

 

 松平定敬、家茂の時代を支えた名宰相。国の暗部の一切を取りし来る闇の宰相でもあった。

 

「お気遣い感謝します。」「今後とも富山藩を御贔屓に。」

 感謝の意を告げて頭を下げる慶寧と利同。

 

「いえいえ、構いませんよ。・・・・・ところで、味はどうなんです?」

 




不死の兵云々の元ネタはわかる人多いだろうけど。
麻薬ネタのわかる人はいるかな?

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