仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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34話 旅の英傑との論 後編

 趙雲一行と別れ、一足先に宿へと戻った幕府外交団一行。

 家茂に恒興は同伴すると言ったが、形式上家茂の演じる徳田新之助は旗本の下級役人だ。

 そんな彼に、一番上の上司である恒興が同伴する保な不自然すぎると家茂は拒否したのだ。

 だが、正体を偽っているとはいえ家茂は徳川幕府の征夷大将軍だ、間違いが起こっては困る。

 普段の彼を知っているだけに恒興は不安だったのか自身の信頼のおける部下である角田門脇と家茂の小姓である森彦丸、そして、護衛役に傭兵忍者の周泰。御徒歩銃隊の隊士6名を護衛につけることで纏まった。

 

 しばらくして、趙雲一行が姿を現す。

 恒興は出迎えることなく自室で過ごしている。

 家茂と門脇の二人と護衛に着いた周泰達7人で出迎える。

「どうも、お待ちしておりました。どうぞこちらへ。」

 趙雲ら3人を宿の一室へ案内する。

「宿、そのものを貸し切るとは、さすが黄金の国です。」

「ははは、漢では我が国の事をそう呼んでいるのですか?」

 茶髪の少女の言葉に軽く笑いながら応じる家茂。

「洛陽の町を天にも届かんばかりの財宝をもって練り歩いたのは、後にも先にも日出る国だけですよ~。」

 金髪のジト目幼女より少女。

「あはは、それはそれは・・・」

 

 宿の一室へと案内する。

 3人を対面の席に座るように促し、それぞれ席に着く。

 小姓の彦丸がお茶と簡素なお茶請けを出して部屋の隅の簡素な椅子に座る。

 お茶請けに砂糖を使っている菓子が出てきたことに驚いたようだ、表情には僅かにしか出ていないが内心ではいかばかりか?

 自分たちとしてはケーキやタルト、カステラ、チョコレートなど当たり前に出回っており、煉瓦造りの洋菓子店が街中に連なり、テーブルに座って着物姿で食べる江戸庶民は珍しくないので、何とも思わないのだが・・・

 

「幕府外務事務官の徳田新之助です。」

「同じく、角田門脇です。」

 

 家茂と門脇はティーカップに入った紅茶をすすりながら、尋ねる。

「なにやら、我が国の事で論を交えたいとか。」

「我らで答えられることなら、何なりと答えよう。」

 

 家茂がカップを置いて二人に尋ねる

「その前に、趙雲殿は聞いていたが、お二人の名を知らんのだが・・・」

 

 二人の文官もしくは軍師候補の少女は立ち上がって名乗る。

「私は戯s「稟ちゃん、この場でそれは~失礼かと~」・・・・・そうですね、郭嘉と言います。お見知り置きください・・・」

「わたしは程立と申します~。よろしくお願いします~」

 郭嘉は偽名を名乗ろうとしたのか?この時代の旅路、迂闊に本名も名乗れないとは世知辛い世の中だ。

 

 彼女達と様々な議論を重ねていき、お互いの意見を幕府の公式発表を軸に話し合った。

 趙雲って武官だと思ってたけど、結構頭いいんだな。

 

「では、最後に・・・・天子様3姉弟に対して貴国の長、徳川将軍はいかにお考えなのでしょか?」

 やはり来たか。義勇烈士との議論において必ず上がる話題だ。

 実際、あの洛陽での行動は賢いものが見れば天子に金塊で殴り掛かったようにも捉えられる。それに対し角田が答える、恐らく外務省の例文通りに答えようとしているのだろう。通常ならそれでいい、だが、彼女たちは別だ・・・

「我らが主、日本国の国事を司ります。徳川家茂公は天子様に対して、この世界が天帝様のお創りした世界であることを上げ、その創造物であるご自身含める万民を天帝の臣であるとお伝えしました。それと同時に天帝の臣である家茂公は日出る国の天子様を14代に渡りお守りした生粋の守護者の家系でございます。同じ天帝の御子様であります霊帝様、少帝様、献帝様の境遇を聞き義憤にかられ金銀財宝を漢の力とするために、このたびの使節を使わされたのです。」

 これは信じていないな・・・公式にはこのように発表しているが、こういった義勇烈士はこの内容を信じない者や疑っている者も少なくない。本来ならあれやこれやで綺麗事で誤魔化すのが通例だが・・・・

 ここは・・・

 家茂は門脇の膝を軽くたたき、自分が話すと合図する。

「と言うのが、世間一般に向けて話している内容です。まあ、本音を言えば漢王朝の延命を家茂公が我が国の意志として望んだという事でしょうな。我が国はこの中華大陸以外にもいくつかもの大陸や島々と交易をしている。我が国としては隣が騒がしくなるのは我が国の商流に悪影響が出て望ましくないということだ。・・・・・・・・・・仮に王朝が倒れるとしてもすぐに落ち着いて欲しいと思っている。これでよろしいかな?」

「徳田殿・・・日本国の不利になることはあまり話さない方が・・・・」

 門脇が遠慮がちに言ってくる。

 だが、この際、こう言った英傑たちにはストレートに告げて敵味方をはっきりさせた方がいい。我が国のやり方に嫌悪感や拒否感があるのなら敵に、そう言ったものがないのならこちらの味方に・・・・群雄割拠の時代が来れば、はっきりするだろう。正直言って、こちらの本心を後から知って、我が国の駐屯軍・同盟国のどっちに仕官するかは知らないが、内部から裏切りが出るのは避けたい対処が面倒だからな。

 家茂はうなずいて、彼女たちの方に視線を向ける。

「角田殿、これは失言だったか?お嬢さん方、できれば今の話は胸の内にしまってくれるとありがたいな。では、これ以上問いがなければ、ここまでとしたいのだが・・・」

 

 

 彼女たちはそれぞれ、何とも言えない表情をしえていた。まあ、好感は抱いていないだろうが、嫌悪感を抱いたかはわからない。歴史に名を残す人物だ凡人にわかるとは思えない。

 とりあえず、宿の門まで見送ることにした。

 

 通路で、恒興とすれ違う。

「おや、お客人?我が国の事を知っていただけましたかな?我が国は非常にいい国ですので機会があればぜひ来てくださいね。」

「鮮!!鮮!!はやく来るにゃん!!」

 少し離れたところから恒興を呼ぶ声がする。朶思である。

「おっと、呼ばれてしましましたな。皆さん、私はここで失礼。」

 そう言って足早の通り過ぎて行った。

 

「あれは、南蛮の住人ではないですか?貴国はずいぶんと交友が広いのですな?」

「ええ、彼らは嘘をつかない。信用できる・・・」

 家茂の言葉に趙雲は、流し目の何とも言えない雰囲気で家茂に話しかける。

「それでは、なんだが、我々漢の民が噓つきのように聞こえますな?」

「そうは、いってませんよ。はははははっ!!まあ、付き合いの問題でしょう。彼らの方が我が国と接触したのが早かったので。」

 

 彼女たちを門の前で見送る。

 お互いに礼を述べてから、扉を開けて外に出ていく。

 趙雲、郭嘉、と宿を後にしていく。最後に程立が礼を述べる。

「本日は、皆さんありがとうございました~。それとわたしは今日から名を改めることにします。程立の立の字に日を加えさせていただきまして今後は程昱と名乗ることにしておきます。」

「おや、我が国の一文字をお使いになるとは、我が国に興味をお持ちになっていただけたようですな?」

 家茂は少し笑いながら尋ねる。それに対して程立改め程昱は意外な返答をする。

「わたしとしては貴方に興味がありますね~。我が国と言う呼び名、貴国の高官しか使っていないようですが、徳田殿は平気で使っているのに誰も咎めない・・・あなたはいったい誰でしょうか~?わたしが次に会うときに教えていただければと思いいますね~。」

 

 今の言葉、自分が幕府のかなり上位の高官と会話してもらえて事から来たものなのか、それとも、軍師として世界規模の戦略上で駒を動かすことに興味をひかれたのか・・・。

 良くはわからないが、もう一回ぐらいは会うことになるだろう・・・

 そう言って外に出ていく程昱、家茂は肝を冷やした。

 

 


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