仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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37話 御菓子の姫

 

 昼食の宴は庭園で催された。

 テーブルの左右で袁術の臣と幕府外交官別れそれぞれの上座に袁術と恒興が座る形をとっている。

 張勲と徳川高官の関係はかなり深いものであったが、袁術も自分の好きな蜂蜜や甘い砂糖を高品質で多種多様なものを輸出してくれる。徳川幕府に対しては非常に好意的であった。

 この宴席では軽い食事が終わったところで徳川幕府が持ってきたカステラにチョコレート、ラスクにプレッツェルが並べられた。恒興も朶思に菓子を食べさせてあげていたりしていて、この席を各々楽しんでいた。それにしてもこの二人、もうそろそろ付き合っているのではないだろうか。

 袁術は目の前に並ぶ菓子数々に興奮が抑えられないようだ。

「妾は今後も徳川殿とよき関係を続けたいと思っておるぞよ!最初に持ってきた金平糖に始まり、有平糖、金華糖・・・見た目も美しく妾は目を奪われてしもうたぞよ。貴国ではこう言ったもの作る職人を飴細工師よぶらしいの。機会がれば是非に妾のもとに来て欲しい者じゃ。クッキーにビスケット、それにあのボーロと言う菓子も美味であったぞ。」

 

「お褒めにあずかり恐悦でございます。」

 恒興が代表して礼を述べる。

「徳川殿はまた新しい菓子を持ってきてくれたのじゃな?誠に嬉しく思うぞよ!今後とも仲良うしてたもれ。」

「こちらこそ是非に」

 

 お菓子の会は進んでいき、

「このカステラなる食べ物は卵を使っておるのか?ふわっとしていて食べ心地もよく誠に美味じゃ!」

「ん?この茶色い菓子はなんじゃろう?・・・・んー!!あんまいの~!!日本にはこのような菓子があるのじゃのう~!!」

「うむうむ、このラスクやプレッツェルもサクサクしていておいしいのぅ。」

袁術は菓子の感想をそれぞれ述べ、大変喜んでいた。

 

「お嬢様~、滅多に食べれないからって食べすぎですよ~。夜の宴までお預けにしましょうね~」

「な、なんじゃと!?い、いやじゃ!いやじゃ~!まだ食べたいのじゃ~!」

「そんなことを言っていると、夜のお菓子はなしにして他の皆さんで全部食べちゃいますよー。」

「うぅ、わ、わかったのじゃ。夜まで我慢するのじゃ。」

 

 そんな様子を袁術の家臣たちや幕府外交官達は和みながら見ていた。

 恒興が袁術に良い知らせを伝える。

「夜まで、お待ちいただけるのでしたら、こちらの徳田新之助がもう一品菓子を用意しますゆえ。お待ちいただけますか。」

 家茂が頭を伏せる。

 

「なんと、ここに並んでない物が出てくるのかや!!今から楽しみじゃ!!」

 

 

 

 昼の宴席がひとまずお開きとなり各々それぞれの仕事に戻っていた。

「では、このまま麻とタバコの葉の生産を続けてください。新大陸への輸送費はこれまで通り3割で。」

「はい、異存はありません。」

 午後の会談は工芸作物に関する取引の内容であった。

 しかし、この場には家茂の姿がなかった。そう彼は汝南の都城の厨房にいた。

 

 

 泡立て器でよく混ぜた卵液に砂糖を混ぜ、さらに蜂蜜・みりんを混ぜる、そして小麦粉をよくかき混ぜる。油紙で作った型に流し込み。窯に入れる、火の加減に注意して1時間弱焼き続ける。

 そして出来たものをしばらく冷やすのだ。

 家茂は次の支度にと比較的浅い鍋に湯を張り、砂糖を流し込む。

 鍋が煮詰まるのを待っていると、厨房の外から袁術殿が覗き込んでいるのが見えた。

「これは、袁術殿。よろしければこちらで見ていかれますか?」

「良いのか?」

「かまいませんよ。」

「そうか!では遠慮なくじゃ。」

 袁術殿は興味深そうに卓上の道具や作っている物や材料を見ている。

 彼女は無類の甘いもの好きである、なので菓子の制作途中も興味があるのだろう。

「すごいの~砂糖や蜜がいっぱいじゃの~♪」

「やはり、砂糖や糖蜜の類は珍しいですか?」

「そうじゃの、砂糖も蜂蜜も貴重じゃの。この妾でも蜂蜜水は決まった量しか飲めんのじゃよ。じゃから、このようにたくさんの砂糖や蜜を見るのは初めてという訳じゃないのじゃが、まずないのぅ。そういえば、そこにあるのはカステラかや?カステラを出してくれるのかや?」

 家茂がカステラを切り分けながら軽く笑いながら答える。

「いえ、このカステラはまだ途中の姿、この様にするのです。」

 カステラを卵黄にくぐらせて次々と上げていく。

「お~なんと豪気な!?それに、いい香りじゃ~。」

 糖蜜がゆるすぎたり、長い時間糖蜜に入れて置くと中のカステラまで糖蜜がしみこんでぐちゃぐちゃになってしまうのだが趣味の菓子作りが高じて職人レベルに到達している家茂にとってそんな失敗はありえない。

 家茂はそれに粉砂糖を軽く振りかけた。

「この黄色に掛かる白が何とも言えぬ色合いじゃ。この場で食べれぬのが残念じゃ・・・・のう、徳田殿、七乃に内緒で一つ分けてくれぬかのぉ?」

 上目遣いで家茂にお願いする袁術殿。うっ・・・・こ、これは・・・・だが、張勲殿の育児の邪魔をするわけには・・・・だが、これは・・・・

「申し訳ございません、この菓子は夜の宴に出すもの。今、お食べになることは出来ません。」

「ぬー、残念じゃ。」

 肩を落として残念そうにする袁術。

「しばらく時間をいただけますか?別のものを用意しますので・・・・」

 家茂は先ほどの鍋に砂糖をさらに加え煮詰める。しばらくの間は袁術殿とたわいのない話をしながら過ごす。

「主には菓子を貰った故な、そのようにかしこまらんでもよいぞ。」

「そうですか。では、遠慮なく。もうできたようだ。」

 薄い黄金色になった鍋の液体を小さめの肩に次々と流し込む。

「おお、まるで鼈甲細工のようじゃ。」

「ええ、これは鼈甲飴と言います。」

 そう言って冷えて固まった鼈甲飴を袁術の口に放り込む。

「う~ん!!おいしいの~!」

 

 袁術はとても喜んでくれていた。夜のカスドースもきっと喜ぶだろう。

 

 


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