仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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物語が始まる前に中華の大陸での勝者が暫定的に見える回です。
そして、本編の影がようやっと見えてきました。


38話 長い物には巻かれよ

 

 

 家茂が袁術に御菓子作りの実演をしていたころ。

 恒興ら残った外交官たちは午後に議題として貿易関係の交渉をしていた。

 お互いに多くの資料に囲まれ多くの議題があるようだ。

「では、袁術領からの今年度の茶葉の生産量は1億6670万斤(10万トン)と言うことでよろしいのですか?」

 恒興は張勲の提供した資料に目を通しながら確認する。

「茶葉を重点産業として農地拡大もしているのですが、なかなか。」

 恒興は張勲に茶畑拡大の利を語る。

 

 

「現在の茶葉消費量は漢王朝とローマ帝国が同率一位の各102万斤、次いで我が国の68万斤、そしてサータヴァーハナ朝の34万斤。現状漢王朝内でも十分回せるでしょうが、ローマ帝国は供給3万5千斤以下でこの需要、彼らは外に茶を求めています。袁紹殿にもお願いしましたが茶葉の生産をどんどん増やすべきです。」

 ちなみにローマに茶が流行した原因は日本の拡大期に茶葉を輸出したのが原因だ。

 現在ローマでは爆発的にお茶が流行しており、パルティア王国との戦争の目的の一つにその先のサータヴァーハナ朝の広大な茶畑を手中に収める事でもあった。

 これを知ったサータヴァーハナ朝は自国の軍備の強化のために茶葉の生産を自国分だけにおさめようと動き、徳川幕府の仲介でパルティア王国との関係改善を行い現在はパルティア王国に援軍を送ってローマ帝国との戦いに参戦している。

 サータヴァーハナ朝の余剰分も輸入していたローマ帝国はさらに需要と供給がおかしくなっていたのである。将来的にはローマ帝国は漢王朝や日本の茶畑を狙ってくると思われるが現状は消費者であり、今後もそう望んでいる。

 日本にはゴムや綿花の生産にも力を入れたいという思いがあり茶葉生産から手を引きたいと思っており、茶葉生産国を両袁家に担ってもらいたいと考えていたのだ。ちなみにローマ帝国への貿易中継地でもあるメロエ王国とアクスム王国の茶葉生産量は51万斤で第三位生産量を誇るが国力地力の問題かこれ以上の生産は行えずにいる。さらに、アフリカ以北の茶葉の輸出入の関税でかなり儲けている。

「それは分かっていますよ。ですが、これ以上続けると米や野菜等の生産地を削ることになってしまいますよ。」

 張勲の返答に恒興は食い下がる形をとる。

「扶南国や室利仏逝王国では気候が適しません。越国なら可能ですがあの密林を開拓するところから始めねばなりません。寒い華北袁家では今のが限界です。我が国も将来的には茶葉生産量を減らして別のものを作りたいのです。もちろん、茶が衰退するという訳ではありません。とにかく、我が国は茶葉生産国として汝南袁家に期待しているのです。」

 すると、張勲は態度を崩して恒興に応じる。しかも、筆でペン回しをしながら・・・

 墨が飛ばないのは彼女の手先の技術である。

「徳川さんの力添え次第では、将来的には可能だとは思いますよ~。いわゆる乱世になるでしょうし・・・」

「それは理解しています。上様もことが起きれば両袁家への支援は惜しみません。私の独断では決められませんが、近々両袁家の領地に領事館をと言う話もありますので、それで納得いただきたい。」

「そうですね・・・出来てから考えましょう♪」

 それが聞きたかったのかと言う思いを抱きながら恒興は次の話題に移る。

「張勲殿、タバコの件ですがどうですか?」

「だいぶ、流行ってきましたよ。煙管に葉巻と使い方は多いですからね。」

 タバコ、これも日本が新大陸から各国に輸出した結果世界中で流行したもの一つだ。

 こちらの場合は爆発的な流行こそなかったが一定数の喫煙者が文字通り世界中に発生した。

 無論原産国は当たり前であるが、遠いローマ、アフリカの2国と原住民、南天の原住民、サータヴァーハナ朝、パルティア王国、日本、東南アジア各国に朝鮮や北方の遊牧民、漢王朝と浸透したのだ。現状原産国である南北新大陸が最大輸出国だが、需要過多の現状まだまだ余裕のある産業である。

「こちらも本来なら生産を増やしていただきたいものでありますが・・・」

「私達汝南袁家に期待ですね♪」

 幕府が汝南袁家に対して重要な役割を期待していることを察している張勲は余裕が態度に出ているように思える。恒興の態度には本当に頼みますよと言う感情がこもっていた。

「全く、その通りです。麻に関しても同様ですよ。華北袁家には寒冷地ゆえに亜麻の生産をお願いしていますが、本来は汝南袁家の様な暖かい肥沃な土地で作れる、麻の中でも特に人気のある苧麻の方がいいのです。その辺の自覚を持っていただきたいものですな。」

 張勲は悪女の笑みを浮かべる。

「そうですよね。徳川さんの壮大な計画の一端を担う訳ですから・・・華南は頂きたいと思うんですよ。もちろん、徳川さんのお友達の越のお猿さんたちとは仲良くしますから♪」

 恒興はすこし疲れた顔をして応じた。

「本当に、貴女は喰えないお人だ・・・」

 一拍置いて

「では、このまま麻とタバコの葉の生産を続けてください。新大陸への輸送費はこれまで通り3割で。」

「はい、異存はありません。」

 

 こうして、曹操や劉備(まだ表舞台に立っていない)、孫策(この段階では母親が)と言った英傑たちが漢王朝が倒れた後に覇を唱えようと牙を研いでいる(劉備はまだ該当しない)時に袁術、否、張勲は徳川幕府の下につき別の道を選んだのであった。

 

 

「そういえば、先ほどから兵士たちが騒がしいようですが?なにか?」

 恒興の質問に軽く答える張勲

「ああ、これから孫堅さんの援軍に行くところなんですよ。」

「わざと・・・遅れてですか?」

「良くお分かりで♪」

「あなたが味方で良かったですよ。上様もそう思うでしょう。」

「うまくやりますのでご安心くださいと、徳川さんにお伝えくださいね。」

 

 


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