仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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51話 国際万国博覧会④ 次の時代の呼び水

 翌日、袁術一行を含む各国の国賓達は開会式典に出席する。

 

 

 幕府役人に誘導されて、彼女たちは式典会場の最前列に誘導される。

「お嬢様、席はこちらのようですよ。」

「そうか!」

 張勲が袁術を呼ぶために後ろを向いた瞬間隣の女性とぶつかる。

「おっと、これは失礼した。お嬢さん方・・・」

「いえ、こちらこそ、失礼しました。」

「どうしたのじゃ?七乃?」

 張勲がぶつかった人物を示して袁術に事情を話す。

「私の不注意で、こちらの方とぶつかってしまいましてー。」

「すまなかったの、家臣が失礼したのじゃ。」

 そう言って、ペコリと頭を下げる袁術。

「あら、ずいぶんと可愛らしい主さんですね。わたしはパルティア王国の王妹アルタバヌス4世と申します。そちらは?」

 アルタバヌスの問いに張勲が応じる。

「漢王朝に御仕えする重臣の汝南袁家当主袁術公路様です。」

「よろしくなのじゃ。」

「おや、お若いのにしっかりしていらっしゃる。」

 

 袁術達が隣の席のパルティア王国代表団と話している時、孫権は物思いに耽っていた。

 

 

 

 

 袁術達の隣に座った孫権は後ろの席を見回す。四夷の蛮族の族長やその子息たち、袁術と話しているのは書物などで伝え聞いている天竺の向こう側の国々のものだろうか。

 見たことも聞いたことまないような国の者達も多くいる。今までは漢が世界の中心だと思っていたが、この光景を見ると漢王朝が世界の中心の時代は終わっているのだと思える。

 世界の中心は間違いなく徳川日本国に移っている。

 今回の国際万国博覧会に招かれた国々を見ればわかる。普段粗野な蛮族ですら彼らに一目も二目も置いているのがわかる。何せ、敵対していたり仲の悪い民族同士の者達がいても揉め事を起こそうともしない。理由はわかる徳川日本国の主催する式典で揉め事を起こして、徳川日本国の顔に泥を塗ることを良しとしないからだ。蛮族ですら畏敬の念を送る徳川日本国、この国の号令で多くの国が動く。徳川日本国と敵対する事、それ即ちここにいるすべての国と民族と敵対することを意味するのだと・・・

 

 

 

 賓客達すべてが着席したのを確認した幕府役人が演壇の上役に伝える。

 

「えぇー、皆様席に着いたようなので、開会式を始めさせていただきます。司会進行は徳川幕府外国奉行栗本鋤雲が務めさせていただきます。まずは、式典演舞をご覧ください。」

 

 賓客席と演壇の間の空間を各国民族が舞踊を舞ったり、歌を歌たりして行進していく。均等に距離が開いているのでぶつかったり歌が混ざったりする事はない。

 

 歌と舞踊の行進が終わると

「徳川日本国国歌斉唱。徳川日本国国民の方はご起立ください。」

 

「「「「「「「「「「君が代は~(歌詞全文は乗せれません)」」」」」」」」」」

 

 見たこともない楽器が奏でる荘厳で神秘的な音色が響き渡り、徳川日本国の国民たちが唱和する。かなり、大勢いるはずなのに音ズレが一切なかった。

 

「では、徳川日本国幕府第十四代征夷大将軍徳川家茂様より開会式の御挨拶をさせていただきます。」

 

 楽団の演奏が流れる、徳川家茂が通路の方から現れると思って皆が注目したが誰も現れない。

 

「おい!空だ!空に何かいるぞ!!」

 賓客の一人が空中を指さす。

 

 指さす先には日本国旗と徳川葵の紋が描かれた楕円柱の何かが空を飛んでいる。その周りにも同じく徳川葵の紋が描かれた球体が複数飛んでいる。

 

 賓客の一人が呟く。

「徳川日本国は天上をも征するというのか。」

 

 

「皆さん、落ち着いてください!!空のあれらは我が国の乗り物でございます!!怪異の類ではございません!!怪異の類ではございません!!」

 周囲の気球が先行して客席の方に紙吹雪を散らす。

 そして、飛行船が演壇のすぐ後ろに着陸し、そこから徳川家茂が姿を現す。

 

 その場の全員が拍手喝采で家茂を迎える。

 家茂が演台の前に立つと拍手がやむ。

 

「皆さんと、こういった形で会えたことに、私は嬉しさで感無量です。今回の国際万国博覧会は世界の国々の文化や歴史を互いに認識し理解を深めることに重点を置いた融和を目的の友愛の祭典であります。この世界は今、新しい時代を迎えようとしています。それは、今までの様な、無理解と高慢から生まれる流血の時代から、理解と友愛を深め、互いに手を取り合い流血のない平和な時代の到来へ。遠くない未来必ず訪れると私は信じております。私の好きな言葉に八紘一宇と言う言葉があります。これは道義的に天下を一つの家のようにするという意味であります。そう、一つの家です!天下をひとつの家として、皆さん方の様な国家・民族をその家に住む兄弟姉妹であると思っています。これに似たような言葉に八紘同軌と言う言葉があります。こちらは天下を一つの家にするという意味です。皆さんこの二つの言葉は似ているようで全く違うのです!八紘同軌は天下をひとつの家としてそこに住む者達をひとつの轍でまとめ上げると言う意味です。私はこの言葉は嫌いだ。なぜか!!この言葉の持つ意味はあまりにも独りよがりで高慢だ!一つの大国がそれ以外の者達のすべてを否定し、自由と尊厳を奪う事を正当化する悪しき言葉だ!だから、私は八紘同軌ではなく八紘一宇を選ぶ!!私は八紘一宇の様なお互いを尊重し助け合う、そのような世界を作りたい!!兄弟姉妹達が互いにいがみ合い憎しみ合い殺し合った時代にわたし達の手で終止符を打ち、新たなる時代への一歩を踏み出しましょう!!この思いを皆さんと共有し私たちの代で成し遂げようではありませんか!!!」

 

 

「天下をひとつの家に!!兄弟姉妹達と共に新たな時代を!!」

 家茂の言葉に、越の大使費桟(ひせん)が拳を上げて叫んだのを皮切りに各国の大使や部族の特使達も同様に拳を上げて唱和する。

「「「天下をひとつの家に!!兄弟姉妹達と共に新たな時代を!!」」」

「「「「「天下をひとつの家に!!兄弟姉妹達と共に新たな時代を!!」」」」」

「「「「「「「天下をひとつの家に!!兄弟姉妹達と共に新たな時代を!!」」」」」」」

 

 後に徳川家茂のこの演説は『徳川家茂の新時代宣言』と呼ばれ、この世界に訪れる嵐と、そのあと訪れる平和な時代の呼び水になった。

 

 




この時代この演説でこれはないと思うけど・・・
恋姫世界だから、比較的優しい世界だから・・・

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