仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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59話 反董卓連合⑧ 汜水関の戦い後編

 劉備軍の前衛と中・後衛による包囲で華雄の軍は殲滅されるかと思った矢先、劉備軍中・後衛が割れ、その後ろの袁紹軍に食らいつく華雄軍。

 現在袁紹軍の前衛が抑え込もうと、動いているが徐々に奥深くへと進んでいく。劉備軍はそのあとを追いかける形だ。

 

「連合軍総大将、袁本初が首!!この華雄がもらい受ける!!」

 

 袁紹本陣に迫りくる華雄の軍。

 顔良と文醜が華雄軍を左右から攻め立てるが、華雄を止めるにはいたらない。

「「姫!!」」

 二人の叫びが戦場にこだまする。

 

 対する袁紹は華雄を横隊にて迎え撃つ。このままでは確実に袁紹は討たれる・・・

 戦場の誰もがそう思った瞬間、袁紹は手を振り大きく振り上げる。

「皆さん!!投擲開始ですわ!!」

 横隊になっていた袁紹軍の兵士たちが手に持っていた徳利を眼前の華雄軍に投げつける。

 

 すると、華雄軍と袁紹本隊の間に投げつけられた徳利は砕け散ると同時に中の液体が飛び散り炎が上り始める。そして、一瞬のうちに華雄軍の一部を焼き、華雄軍と袁紹本隊の間に炎の壁を現出したのだ。

 

 袁紹がこの直前に、住友財閥より買い上げた物は世界が違えばモロトフ・カクテルと呼ばれる兵器、通称火炎瓶であった。

 

 炎の壁が出来上がるのを確認した袁紹は、高覧の重装甲歩団と入れ替わり大きな声で周囲に号令をかける。

「オーホッホッホ!!!前面は塞ぎましたわ!!顔良さん!!文醜さん!!そして、劉備さん!!どなたでも構いませんわ!!華雄を討ち取りなさい!!」

 

 前面を炎の壁、左右を顔良と文醜の隊、後方を劉備軍にふさがれた。華雄は反転し、劉備軍を突き破り汜水関へ撤退しようとしたが、叶わず劉備軍の将、張飛に討ち取られるのであった。

 

 

 

 

 

 最終的には華雄は討ち取られ華雄軍も殲滅されたが、前衛の袁紹軍は混乱し、一時後退する。

 代わりに汜水関攻めを決行することになったのは袁術軍であった。

 

 袁術軍の天幕では袁術軍・孫策軍・徳川の顧問団の将が集められ、命令が告げられる。

 作戦内容は七乃と大久保が策定したものだ。それを美羽が読み上げる。

 

「汜水関攻めは、妾の軍が執り行うのじゃ。孫策は軍を二つに分け、本隊の左右で守りを固めるように、よいな?」

 前衛(紀霊)と中衛(程昱)、後衛中央(美羽・七乃・大久保利通・上原寛林)は袁術軍、後衛右翼(孫策)と後衛左翼(孫権)に孫策軍が布陣する形となる。

 

 

 汜水関を守るのは、董卓軍の将である張遼。

 汜水関攻めは袁術軍前衛の雑兵達による攻撃から始まった。

 数の利を持って、張遼軍の弓矢を物ともせず。汜水関の門を破城槌で突き、城壁に梯子を掛ける。

 

 しばらくは至ってセオリー通りの攻防戦が続く。

 現在、城攻めを行っているのは袁術軍の前衛だけである。

 それを、好機と見た張遼は門の周りにいた破城槌の部隊を撃滅し、袁術軍前衛へと襲い掛かった。

「こいつら、対して強かないで!!徹底的に追い散らして、城攻めを頓挫させるんや!!」

 袁術軍前衛をかき乱す張遼の軍、袁術軍前衛は徹底的に追い散らされる。

 

「後退!!後退であります!!」

 

 紀霊の号令が響き、前衛の雑兵達が逃げるように後退していく。

 それと入れ替わるように、今度は程昱の中衛が前進していく。しかし、今度は前衛と違いきちんと隊伍を組んでいる。

 そう、彼らは前衛の雑多な徴集兵ではない、袁術軍の常備正規兵である。

 

「では、皆さん。照潮(テルシオ)の陣を展開してください。」

 あまり声を張り上げることが得意でない程昱は、自分の横に声が大きい兵士を副官としておき、代わりに号令を掛けさせる。

「照潮の陣っ!!!」

 

 その号令に合わせて、袁術軍の兵士達が、だいたい250人づつの中隊に分かれ、槍兵が方陣を作り、その間から弩兵と弓兵が張遼軍の兵士たちを狙う。

 

 

「歩兵が分散したらあかんやろ。ま、ええわ!もう、一当たり二当たりして関に戻るで!!」

 張遼は袁術軍の照潮の陣への攻撃を決めた。

 董卓軍は北方騎馬民族に対する藩屏であり、涼州やそれに近い奥地の太守であった。ゆえ騎馬民族に対抗するには強い騎兵が多い。華雄・張遼・呂布、無論董卓自身も必然的に主兵力は騎兵とならざる負えなかった。

 しかし、騎兵を主とした董卓軍に対して袁術軍の照潮の陣は城壁、火器、塹壕、といった攻城戦の防御的要素を持ち董卓軍に対しては非常に効果的だったのだ。

 

「あ、あかん!?敵の陣形が固すぎや!!撤退するで!!」

 

 最初の一撃で返り討ちにあった張遼はすぐさま馬首を返し、汜水関へと撤退していく。

 その後は前衛と入れ替わり攻城戦の再開。

 なんどか、張遼軍が出撃して前衛を追い払おうとするものの、城門前で槍衾を形成した袁術軍に押し戻され、これを数回繰り返した後。張遼は汜水関の死守が不可能であると判断し、後方の虎牢関へと撤退した。

 

「流石は、徳川の保有する歩兵戦術と言ったところでしょうか。董卓軍の名将張遼が手も足も出ないとはぁ・・・」

 程昱の手には普段見慣れない軍学書がある。

 それは孫子や六韜と言った武経七書ではなく、『徳川幕府陸軍西洋軍学纒歩兵操典』と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

「妾に忠義を尽くす兵達よ!いざ汜水関へ討ち入りなのじゃ!!」

 

 後方の袁術の号令で最低限の兵しか残っていない汜水関へ袁術軍全軍(孫策軍含む)が突入していく。まもなく汜水関は陥落した。

 

 

 

 

 汜水関陥落後、連合軍は入場し暫し休息を設け、進軍を再開した。

 

 

 

 

汜水関入場後の休息時間での一幕、袁術軍の陣にて

 軍議の席とは名乗っているが、実際は褒章下賜の場に近い。

 今回の戦で活躍した程昱はもちろん、攻城戦を指揮した紀霊などの対して金子や本人の欲しがるものを与える約束などして、将達の士気を上げる場でもあった。

 

「孫仲謀、この度の攻城戦において城壁を最初に越え、妾の軍の士気を上げてくれたこと。感謝しておるぞよ。」

 

 七乃や大久保が美羽に言わせるように仕向けているとは言え、美羽自身は悪意なく本心で言っている言葉である。

 七乃らの本心をある程度見透かしている孫権としても、彼女の性格的に美羽の言葉に姉のように礼をかく様な軽口で返せる程の性格はしていない。ゆえに素直にその言葉を受け入れてしまう。

 その様子をあまりいい思いで見てはいない姉の孫策や周瑜達古参の臣達。

 姉妹の亀裂は本当に少しづつであったが、徐々にひび割れてきていた。

 

 

 

 

 


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