仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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60話 反董卓連合⑨ 虎牢関の戦いの前

 虎牢関へ進軍していく連合軍を迎え撃つのは、董卓軍、否人類最強と言っても過言ではない飛将呂布。そして、汜水関を抜かれたとはいえ、その実力は間違いなく優秀な驍将張遼。

 

 二人は諸将たちを率いて城外に布陣して、連合軍を迎え撃った。

 

連合軍本隊袁紹軍本陣

 

 袁紹達は常識ではありえない布陣に混乱と言うよりも呆れていた。自分達こそ人のことを言えるものではないのだが・・・

「あっれぇ~??姫??なんか虎牢関の奴ら、外に布陣してるみたいなんですけどー??」

「外に?籠城もしないで?・・・・全く、軍略に沿わないなんて、お馬鹿さんですわね。」

 困惑交じりの文醜の言葉に袁紹も訳が分からないと言った感じだ。

「そうっすねー」

「潔いとは思うけど・・・・・ちょっとねぇ」

 袁紹の言葉に賛意を示す文醜と顔良。

 彼女達を代表するように、ふつうの諸侯達は、なぜこのような無謀な賭けに出たのかと困惑していたが・・・呂布と張遼の真意に気が付いた者達もいた。

 

 

 

曹操の陣では

 

 配下の将や軍師達も他の諸侯同様に困惑していたが、曹操自身は気が付いていた。

「風に靡く軍旗に充溢している決意。・・・・・・それが分からないかしら?」

 

「ふむ・・・・・・華琳様は敵が決戦を望んでいると?」

 曹操の左横で曹操の感情を察して相槌を打つ夏侯淵。夏候惇は右横にいるが、こういった難しい話は対応不可だ。

 

「そう・・・・・敵は飛将軍呂布。そして、驍将張文遠。・・・・・・その二人の旗には、決戦への渇望が見えるわ。」

 荀彧が軍師として口を挟む。

「しかし華琳様。お言葉ですが・・・・今の状況では伏兵を使って我らの戦力と戦意を削ぎ、機を見て連合軍の本軍を突き、袁紹の首をあげるか、退却するのが上策ですが・・・・」

理論的に考えれば当然である。しかし、曹操が彼女にしか見えない高次元な思考をしていることを理解している荀彧は遠慮がちだ。

「軍略として見るのなら桂花の言う通りでしょう。だけど、桂花。この孟徳の片腕ならば、事象だけでなく敵の魂をも見抜いてみせなさい。」

「魂ですか・・・」

「そうよ。二人の気高い魂。そしてそこから導き出された軍略。どちらか一方を見ただけですべてを見抜いたと思うのはそうけいでしょう。敵は恐らく、堂々と決戦を行い、連合に痛手を与えた後で悠々と退却をするはずよ。」

 曹操の説明を聞いた夏候惇が、「まさか」驚きの声を上げる。

「いくらなんでもこの兵数差で、決戦をした後で退却できると・・・・・・本気で考えているのですか?」

「えぇ、いつかきっと、我が前に立ちふさがる日が来るでしょう。」

 

 曹操はその第六感ともいえる感覚で呂布と張遼を見ていたのであった。

 

 

 省略するが、孫策もその天性の勘でそれを理解していたようである。

 

 

 

 

 

 飛将呂布、アジア圏に住むものなら殆どの時代において知らぬ者なしと言われる呂布である。千年たっても全く衰えることなかった呂布の武名、徳川の顧問団も警戒を強めていた。

 大久保が顧問団軍事顧問である上原寛林を呼び出す。

 

「上原殿、よろしいな。」

「っは、飛将呂布と言えども近代武器を知らぬ田舎者。時代が変わったことを奴に教えてやりましょうぞ。」

 

 徳川の顧問部隊の一部が陣から離れていく。

 それを見送った大久保の横にスッと七乃が姿を見せる。

 

「見ていたのかね?」

「途中からですけどね。」

 

 七乃は天幕の支柱に寄りかかり、大久保に話しかける。

「恐らく大久保さんが、やろうとしていることは諸侯の多くの武将が反感を持つことなのでは?」

「・・・・・貴女と言う人は、どこまで見透かしているのか・・・。私達は君達大陸人を掌で転がしているつもりが、君の手の上で転がされているような気分だよ。」

 大久保は例によってパイプに火を入れて煙をふかせる、嫌そうな顔を隠そうともしなくなった。

「でも、そんな私を掌で転がしているのが、家茂公なのでしょう?」

「そうであって欲しいと思っているよ。」

 

「それと、先ほど陣を出た部隊は飛び道具の部隊でしょうか?もし、呂布や張遼をそれで暗殺するなら、やめた方がいいですよ。それをやると諸侯の武将たちに物凄く嫌がられますよー。」

七乃の言葉を聞いた大久保は、こう答えた。

「我々、徳川日本国の人間には、君達の様な武将の気持ちは分らんな。我が国には将はいても武将はもういないからな。張勲殿・・・戦争と言うものは如何に効率よく勝利し、自軍の損害を減らすかだ。そこに一個人の意志の介在する余地はないのだよ。」

「冷めてますねー。」

 七乃の中で自分達と彼らは戦いに対する考え方が完全に違うのだなと理解出来た瞬間でもあった。

 

 

 

劉備の陣では

 劉備の陣でも諸将たちは他の諸侯同様に呂布・張遼の真意には気が付けていなかった。

 辛うじて龐統が考えられる仮説として、玉砕覚悟の大将狙いと退却を予想した。

 

「退却?それならば関に寄って戦う方が退却しやすいではないか?」

 

 趙雲の言葉を代表するように、劉備軍の武将たちは優秀な武将揃いではあったが理性で動くものが多く、本当の意味での戦狂いな武将はいなかったのだ。だからこそ、劉備と言う光に対してよく反射して共鳴したともいえるのだが、今回はそれは当て嵌まらなかった様だ。

 

「そうとも言えないんです。・・・・・・籠城を選ぶと、関の防御力を頼り過ぎて、逃げ時を見誤ってしまうことがありますから・・・」

 

「逆に外に居れば、逃げたいときに逃げられるってことかー」

 龐統の言葉をわかりやすい形に直して言い直す張飛。そして、その張飛の言葉に頷いて答える龐統。

「そういうことです。」

 

「でも包囲されてしまえば、そこから逃げるのは至難の業だぞ?」

 あまり会話に参加していなかった一刀が自分の疑問をぶつける。それに対しても龐統が答えて見せる。

「ですが、関によって、まだ戦えるまだ戦えると時機を失するよりは、包囲されかけの時に必死で逃げる方が、生存の確率はあがりますから・・・」

 

 

「なるほどぉ~。・・・・・じゃあ、一度崩れたらすぐに逃げ出しちゃうかな?」

 彼、彼女らの会話を聞いてやっとわかったと言った感じで声を上げ、自分の疑問も龐統に聞いてみる劉備。

「その可能性が高いと思うんですが・・・・・・でも、兵を率いるのは飛将軍呂布さんと張遼さん・・・・、そう簡単にいくはずは無いかと」

 

 それを聞いた関羽と趙雲は龐統に対策がないのか尋ねた。

「厄介だな・・・」

「策は無いか?」

 

「戦術面ではいくつか腹案がありますけど・・・・未だ敵の動きが読めないので、何とも言いようがありません・・・・・・ごめんなさい。」

 龐統は申し訳なさそうに明確な策はないと告げる。

 

「雛里が謝る事じゃないよ。いましばらくは様子を見よう。・・・・・・・ね?」

 流石は原作主人公である、女の子へのフォローは忘れないのだ。

 

「ところで、朱里はどうしたんだ?」

 関羽がこの場に諸葛亮がいない事に気が付いて龐統に尋ねた。

「朱里ちゃんは、今は別に動いています。詳細は・・・・・・まだ、離せません、ごめんなさい。」

 

「いや、気にしないでくれ。皆、二人の事は信頼している。」

 

 

 


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